第5話 すれ違い
飲みに行ってからもう2ヶ月経とうとしている。高橋に遊びに誘っても最近断られる。なんだか不思議だ。高校卒業してから毎月会っていたし長期休みになると毎日会う日もあったのにこんな会ってないのは久しぶりだ。
しかし、今日は元カノ(ななかさん)と遊びに行く。今日ぐらいは高橋のことを忘れて楽しんでこよう。どうせ、高橋は俺のことを恋愛対象として見てないだろうし頑張って無駄なら元カノにいった方が楽しいだろう。
改札の向こうにポニーテール姿で青色のスカートを着たななかさんの姿が見えた。まだ集合時間の15分前である。そんな俺は30分前からいたのは内緒である。まだ付き合っていた頃集合時間にいくと毎回ななかさんは先にいた。だから今日は早めにきてみた。予想通り早めにきていた。
ブブッ
ななかさんから連絡がきた。
(もしかして、もういる?)
(いるよ)
なんか懐かしい気分である。
ななかさんは人混みを避けながら早足でこっちにきた。
「ねえ、早いよ。今日も私が先に待っていようと思ったのに」
ななかさんは笑いながら話した。
「残念でした。今日は俺が先でした」
俺もニコニコしながら話した。
今日は水族館に行く。決してデートではない友達で水族館に行くだけ。一緒に行く人が異性でたまたま元カノだというだけ。好きなのは高橋だ。たぶん…いや、間違いないはず。
「どうしたの?置いてくよ」
「あー、すまんすまん。今行くよ」
付き合っていたあの頃と変わらず、ななかさんは右側を俺は左側を歩く。話している内容は違えどあの頃に戻った気分だ。
「たかちゃん、今日の服似合ってるね」
「ありがとう」
今日の服はあの日高橋に選んでもらった服である。
「ななかさんも似合ってるよ」
「ありがとう」
ななかさんは顔を赤らめながら答えた。うん。ずるい。可愛いすぎる。こんな反応されたら男はイチコロである。危ない危ない。俺は高橋が好きなんだ。
平日の水族館は遠足できてる小学生とカップルばっかりで空いていた。
よくみたらちらほら大学生がいる。その中に高橋に似た姿が見えた。思わず追いかけてしまった。ななかさんは斜め後ろを歩きながらついてきている。
「どうしたの?たかちゃん」
「いや、知り合いがいたから追ってる」
高橋は俺より少し背が高く、俺より少しかっこいい人と2人で行動していた。
「あ、神田さんだ」
ななかさんは急に言った。
「え?神田さん?」
「うん、今追ってる人」
あ、高橋の隣にいるのは神田か。
「おーい、高橋」
高橋はこちらを向いた。神田という人も。