第10話 これからの事
観覧車の中に入るとななかさんは対面に座った。思い出すと観覧車に乗る時とか多くは隣に座っていたから対面で見ること少なかったな。
「ねぇ、たかちゃん。いや、石田さん。改めて私たち付き合いませんか?」
いきなりだった。でもなんかそんな気がしてた。ななかさんは言葉を濁さない。伝えたいことがある時はちゃんと言う。そんな芯のある女性だった。正直かっこいい。その上、可愛いからずるい。そんな人だから隣にいるのが申し訳なくなった。今の俺ならいいのかな。
「ちょっと考える時間をくれない?この観覧車をおりるまでには返事するから」
「いいよ」
「ありがとう。別れてから5年ぐらいかな」
「そうだね、どう私変わったかな」
「うーん、変わったかだと変わったと思う。良い意味で」
「ありがとう」
「俺はどうかな」
「思ったより変わってない。でも前より優しい雰囲気が強い気がする」
「そっか、良かった。優しさが俺の1番の取り柄だから」
「あとはあんなにも仲の良い異性の友達が出来てることは驚いたかな。あの頃は男子のなかでの中心で騒いでたのに」
「まあ、あの頃は女子と話すの苦手やったからね」
「そうやったんや」
「うん。でも大学に上がってから男女関係なく喋ってたらめっちゃ仲の良い友達ができたよ」
「変わったね」
「そうだね。失礼な質問やけどそんな俺でもいいの?」
気づいたら観覧車の1番高い所にさしかかっていた。
「うん。あの頃のあなたも好きだったけど、今のあなたは大好き」
「ありがとう。うん」
悩む。こんなに愛を伝えてくれる人にはもう会わないと思ってたから悩む。もう時間がない。でもよく考えたら悩む必要なんてないのかもしれない。
「ギリギリやけど、こちらこそ付き合ってください」
「はい!」
さっきまでとは一変してとても明るい声になった。よっぽど緊張していたんだろうな。
観覧車からおりると先におりてた高橋と神田さんがいた。
「よし、遊園地でてショッピングモールいくよ!」
高橋は何も知らないみたいでまだテンションが高かった。神田さんはなんか知っているみたいで作り笑いをしているようにみえる。
遊園地をでて女子2人組は仲良くショッピングモールに行っている。神田さんはなんか微妙な顔をしていた。
「神田さん。大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だよ。思っていたより高い場所が苦手だったみたい」
あぁ、そっちか。
「ゆっくり行きましょ。どうせ俺たちはゆっくりついていくだけなので」
「はい。そうですね」
神田さんの顔がさっきより柔らかくなったように感じる。