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リコレクション  作者: 空犬
第一章 『運命の出会い』
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第一章5 「憧れを現実に」

 予想していなかった一之瀬 潤が建物の脇から出てきた。蓮は「一之瀬さんって社長だよね? なんでこんなところにいるの?」と思ったが、助けに来てくれたのかもしれないのでその考えは声に出さなかった。


「なんで一之瀬さんがここに……」


「いやぁ、偶然僕もこの近くにいてね? 何事かと思って来たわけ」


「そうなんですか……あと、その肩に乗っているのは……」


 この前会った一之瀬 潤と違うところがあった。服装はこの前と同じスーツで見た目は何も変わっていないのだが、違う点はただ一つ、一之瀬 潤の肩に紫色の鳥が乗っているのだ。

 インコのような小さいサイズではなく、それなりに大きいサイズをしている。


「ん? ああ、この子は僕の化身」


「やっぱりそうですよね!?」


「名前は紫苑(しおん)


「よろしく!」


「喋った!?」


 いくら、化身オタクの蓮でも、化身って喋るんだ、と初めて気付いた瞬間だった。


「え、化身って喋るんですか!? なんで!? どうやって!?」


「はいはい、落ち着いて落ち着いて。それよりも目の前の敵に集中」


 目の前にいる強盗犯に目を向ける。相手は少しだけ焦っているように見える。もしかしたら蓮と一之瀬 潤二人が化身使いだと思って警戒しているのかもしれない。


「で、君はどうして強盗なんかやってるの? 止めといた方がいいよー? 捕まるだけなんだから」


 そう言いながら、強盗犯の方に足を進めていく一之瀬 潤。慌てて蓮も一之瀬 潤の後を着いていく。


「来るな……俺の方に来るなぁーーー!!」


 強盗犯は自分の方に近寄ってほしくないようだ。


「サスケッ!」


 強盗犯はそう叫ぶ。その名前と共に動き出したのは隣にいる強盗犯の化身だ。


「斬撃でアイツらを切り刻めッ!」


 サスケという名前の忍者の化身は刀を取り出し、構える。そして刀身が光り、その状態で刀を振る。

 刀を振った瞬間、光っている刀身から幾重の斬撃が蓮と一之瀬 潤を襲う。


「紫苑、前方に炎で作ったバリアを展開」


「おっけー」


 そう言った途端、燃え上がる紫の炎が地面から伸び、蓮達を隠す。紫の炎と斬撃が衝突すると、炎と斬撃はお互いに相殺し消滅する。


「すごい……!」


「よし、攻撃は防げたね」


「潤、一応防げるけど、今一割しか力出してないから俺から攻撃しても致命傷は与えられないよ」


「それでいい。元々蓮くんに対処してもらうつもりだったし」


「え!?」


 化身との会話。蓮は化身は好きだが、戦闘に関してはからっきしなため若干空気になっていたが、一之瀬 潤の言葉を聞いていたら、そうもなっていられなかった。


「まさか特攻してこいとかじゃないですよね?」


 顔に冷や汗をかきながら聞く。もしその通りだったら蓮に「死んでこい」って言ってるようなものだ。


「違うよ」


 そう言って、蓮に何かを投げた。


「わっ! 急に投げないでくださいよ」


 驚きながらも渡されたものをキャッチする。


「これは……?」


 手のひらを見ると、それは太陽の光に反射する普通の金属だった。

 蓮は一目見て、これが何の金属なのか分かった。それは化身に憧れを抱く蓮だからこそ、分かるもの。


「! もしかしてこれって……!」


「化身が大好きな蓮くんなら、これが何か分かるでしょ? この状況、そして今僕が渡したその金属。そこから導かれる答えは?」


「――化身を召還する道具――スピリツメタル!」


「ピンポーン、正解。そう、これはスピリツメタル。化身を現実世界に顕現するために必要不可欠なものだ。今渡したものはまだアクセサリーに加工していない原石の状態のものだけどね」


「もしかして、これを使って化身を出して、強盗犯と戦えってことですか?」


「そう、これは見定めでもあるんだ。君の実力を知るためにね」


「いきなり実践ってことですか……」


 蓮は渡されたスピリツメタルを握りしめる。憧れを現実にできる折角の機会、逃すなんてあり得ない。


「化身を出すには『強い想い』、これが重要なんだ。スピリツメタルは君の中にある精神エネルギーを具現化し、現実世界に顕現するゲートの役割をしている。今君がスピリツメタルに触れているからゲートは既にある。後は想いだけ」


「想い……」


「そんなに難しく考えなくていい。そうだね……蓮くんの場合なら、化身に対する想いを強く思ってみて。そうしたらスピリツメタルは答えてくれるはずさ」


 蓮は「ふぅ」と息を吐く。何故だか蓮の表情はこんな状況なのに明るいし、心臓の音がうるさいくらいの緊張をしていない。おそらくそれは今から化身を出す、自分の化身を出す、ずっと憧れてきた、願っていたことが叶うからだろう。緊張より、今から夢が叶うという嬉しさの方が勝っているのかもしれない。


(ずっと夢見てた。初めて化身っていう存在を知ったときから……会ってみたかった、見てみたかった。)


 これは正真正銘の蓮の化身に対する想い。昔から、一目化身を見たときからずっとずっと思っていた、化身に対する本当の想い。今、この想いに導かれ、化身は姿を現す――!


(――姿を見せて。俺は――君に会いたい――!)


 その想いに反応したスピリツメタルが小さく光る。


 その瞬間、蓮の周りから赤く燃え上がる炎が巻き上がる。その炎は一つにまとまり、炎は周囲に拡散する。


 拡散された炎から顕現されたもの――それは赤い炎を宿し、どこまでも高く飛べる翼を持つ。


 それはまるで、炎の鳥――フェニックスを思い浮かべるものだった。

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