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リコレクション  作者: 空犬
第一章 『運命の出会い』
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第一章3 「勧誘」

 「は?」それしか言葉が出なかった。

 いきなり自分の名前を当てられて、やっぱりヤバい案件だっだなと思い若干一緒に着いてきたことに後悔を抱いていたところで、本当の理由はまさかの勧誘。


(もしかしてヤバいところに働かないかみたいな勧誘なのか?)


 蓮の中ではこの一之瀬 潤というのはめちゃくちゃ怪しい男という評価止まりなため、何も言われるか分からないから警戒モードはマックスだ。


「そんなに警戒しないでよ~。別にヤバい職場とかに勧誘っていう訳じゃないから」


(さらっと心読まれた……)


「まずはその職場を紹介しないとね」


 一之瀬 潤は組んでいた手をほどき、着ているスーツの内ポケットから何か小さい紙を出した。

 それは名刺だった。一之瀬 潤はその名刺を蓮に渡す。


「これって名刺ですか?」


「そう。ちょっと見てみて」


 渡された名刺を見る。そこには会社名の『異能(いのう)探偵事務所』と書かれたものと、一之瀬 潤の名前。しかも驚いたことに名前の横に『社長』と書いてあった。


「異能探偵事務所……え、社長!? 一之瀬さんってこの探偵事務所の社長なんですか!?」


「そそっ。改めて、異能探偵事務所の社長、一之瀬 潤。よろしくね」


 そして次に話されるのはその異能探偵事務所についてだった。

 その内容は蓮にとっては願ったり叶ったりだった。


「じゃあまず探偵事務所のことについてだけど、――この探偵事務所は()()()()()使()()なんだ」


 化身使い(けしんつかい)というのは、化身を所持している人という意味だ。化身を召還するにはスピリツメタルがいる。そのスピリツメタルは犯罪防止のために公共の場では売っていない。まずスピリツメタルを手に入れるには政府が決めた化身専用の教習所で色々試験をし、合格しないといけない。まずスピリツメタルを所持可能な年齢『十五歳以上』という条件だったり、その他にも『化身を扱うための適正検査』や『書類検査』等を受けないといけない。それは一種の免許取得みたいなものだった。あとそれなりにお金も飛んでいく。


 だが例外もあり、それは既に所持している人物から許可を貰えば、『十五歳以上』、『化身を扱うための適正検査』、『書類検査』を取っ払いスピリツメタルをゲットできる。この方法は所持している人物が化身を扱う職業を生業(なりわい)としているものが多く、予備のスピリツメタルを所持している者がほとんどなため、お金はそこまでかからない。


 だから日本防衛軍は隊員全員が化身使いであり、防衛軍内でスピリツメタルと化身の取り扱いについて必ず話されているから、わざわざ教習所に行かなくてもそこで化身使いになれる。


 そして、蓮は昔から化身に憧れがあった。蓮にとって化身は単純にかっこいいというのもあるが、化身は自分の精神エネルギーを具現化した存在、簡単に言うと化身は自分自身という意味にも捉えられ、自分のことをすべて理解している絶対的な親友という存在とも言われているのだ。


「全員が化身使い……それって、本当なんですか!?」


 この話は予想通り化身に憧れ、化身オタクとも言っていい蓮の化身への憧れと熱意に火をつけることになる。


「化身って政府が決めた教習所に行って、検査とか色々して、合格できたらスピリツメタルを貰うことができて、化身を出せるんですよね! 一番手っ取り早いのが既に化身使いの人から許可を得ることですけど、一番身近なのが日本防衛軍の隊員になることですよね! ニュースとかでも化身についてやってることあるし、あと俺たまに防衛軍の隊員さん達が自分の化身に乗って移動してるところ見たことあるんです! もし俺がその探偵事務所に入ってスピリツメタルゲットすることができたら、自分の化身を出せて……うわーーいいなーー!」


 ※今蓮が言った言葉はすべて早口でお送りしています。


 流石に蓮の化身に対する早口マシンガントークにやられたのか、一之瀬 潤はうっすらと冷や汗をかいていた。


「蓮くんちょっと落ち着いて。……いやぁ、ここまで化身に対する熱意を話されたのは初めてだよ」


「そりゃそうですよ! 化身はやっぱ全男子の憧れですよ! 女子も憧れてる人いるかも知れないですけど!」


「まあ今言った通り、僕達の探偵事務所は全員が化身使いだ。そしてこの探偵事務所に入れば、もれなく君もスピリツメタルを貰えて、化身使いになることができちゃう!」


 その言葉を待っていたかのように机に身を乗り出し、視線は真っ直ぐ、熱意の眼差しを一之瀬 潤に向けた。


「本当ですよね!? 嘘じゃないですよね!?」


「蓮くん。僕の目をみてごらん? こんな綺麗な目をしている僕が、嘘をつくと思うのかい?」


「……確かに! 最初は怪しさマックスだったのに今は一之瀬さんの目がすごく輝いてみえる!」


 ※これは蓮の幻覚です。一之瀬 潤の目はいつも通りです。特段輝いてもいません。


「まあまあ一回席に戻って。まず疑問なのは何故全員が化身使いなのか、ってところだよね」


 机から身を乗り出す蓮をなだめ、席につかせ、探偵事務所の概要について話す。


「基本化身を扱う仕事って防衛軍以外にあまり聞いたことないでしょ?」


「そうですね。主に化身は防衛軍って感じで、それ以外はあんまり聞いたことないですね」


「僕達、異能探偵事務所の仕事は普通の探偵とあまり変わらない。一つ違うのは、化身が関係している依頼も引き受けているってところかな」


「化身が関係している依頼?」


「そう、防衛軍から仕事を貰ったりもするから、時には戦うことだってある。……怪我をしたり、最悪意識不明の重体になったりもね」


 蓮は驚いていた。さっきまでチャラそうな感じで勧誘を受けて、蓮が飛び付くような情報をくれた。だけど今はデメリットのような話をしている。


「ちゃんと言うんですね、そういうこと。勧誘って言っていたので表向きの情報しか言わないと思ってました」


「そりゃそうだよ。僕は君を勧誘している。君が僕達の職場に入ってくれるようにメリットのある話もするけど、勧誘しているんだから君には長く働いてもらいたい。だからこういう情報も言うんだよ。理解した上で入ってきてほしいからね」

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