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竜娘と行く世界旅行記  作者: 塩分
2章.鋼の国
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36話「カーバンクル狩り?」

BFF百貨店。

そこは、ジレーザが誇る高級ブランドが集う場所であり、日夜様々な階級の人々が押し寄せる憩いの場所。


そんな場所が今、二つの魔力で満たされ、徐々に異常現象が起こり始めていた。

オネスタが発した、深海を思わせる群青の魔力に触れた建造物は、フジツボや多種多様な海藻が繁茂し、侵食され始めていた。


一方で、アルバの発する落ち葉を思わせる黄緑色の魔力に触れた建造物は、時間が加速したように朽ち始めていた。


「初めまして、オネスタ殿。魔神の息子として一度あなたにお会いしたいと思っていましたよ。しかし、魔神ベルトゥールの妃であるあなたが、何故人間などに絆されてしまったのですか?」


オネスタは、右手に魔力を収束させ、アルバに向けて魔力の塊を発射する。


アルバは、その場から半歩動き、これを躱す。外れた魔力の弾は、彼の背後にあった壁面に激突、爆裂して百貨店の一部を崩落させた。


元来、固めて飛ばす事など不可能なのだが、規格外の魔力量がそれを可能にしていた。


「奴とは離婚した。最早思い出したくもない、」


オネスタの瞳が蛸の形に変化し、両袖から無数の触腕が飛び出した。

それを見たアルバは目を見開き、両手を挙げる。


「おっと、その気になった所で悪いけど、あなたとは戦いたく無いんだ」


アルバは敵意の無い様子で一歩踏み出し、キュルヌの後ろに立つシルヴィアを見つめる。


「僕と来る気はありますか?」


「……嫌、来ないで」


シルヴィアはアルバを睨み、冷淡に答える。

しかし、彼は少し考える素振りをして、笑みを浮かべた。


「……かしこまりました。では後ほど、支度が整い次第迎えに参ります。もう少しの辛抱です、()()()()()


その発言を聞いた瞬間、オネスタは目の色を変え、魔法を起動した。


〈__酸桃毒(ヴァージニア)


オネスタの指先から赤桃色の液体が溢れ出し、細長い槍のような軌跡を描いて、射出された。


その速度は規格外で、指から飛び出たと同時に着弾した程だった。

空気抵抗によって、水弾が通過した場所を中心に、熱せられた突風が吹き荒び、アルバの放出していた魔力を霧散させた。


一瞬の出来事だった。


「お見事」


アルバはわざとらしく手を叩いた。

直後、水風船のように内側から破裂し、樹液に似た白濁色の液体を撒き散らした。


「……死んだの?」


シルヴィアは、キュルヌの背後から覗き込むようにアルバの亡骸を眺める。


「……逃げられましたね」


アルバが消えた事により、メイシュガルは体の自由を取り戻し、右手を押さえながら二人の側まで来ていた。


「良い見識だな、模造品。これは、魔力を詰めただけの人形だ。とは言え、あの男はこれを作る為に、自身の数週間分の魔力を注ぎ込んだ事だろう。用意周到にも程がある」


メイシュガルはモノ扱いされたにも関わらず、深く頭を下げる。


「申し訳ありませんでした、僕が力及ばず。あなたが来ていなかったらシルヴィア様は__」


オネスタはそんな彼を見兼ね、彼の額を指で弾いた。


「痛っ」


「産まれて2歳かどうかだろう。芸を仕込み過ぎた子供は愛嬌が無いぞ」


「……すいません」


オネスタは気まずそうに顔を顰め、全身から出していた触腕を体内に引っ込める。


「さて、私は帰る。ケルスの後ろ盾があるとは言え、お前達の尖兵と鉢合わせたくは無い」


オネスタは踵を返し、指を弾いて眼前に転移門を作る。


「オネスタさんっ!」


シルヴィアが、彼女に抱き付く。


「シルヴィア?」


「……私の中に、憎悪とソルクスが眠ってるって、あの人は言ってました。何か、何か知らないんですか!?私っ……怖いです」


シルヴィアは胸元を握り締め、恐怖で震えていた。オネスタもまた、そんな彼女の姿に心を痛め、顔を歪めた。


「シルヴィア」


オネスタは、彼女の両肩を掴む。


「私からは言えないんだ。私は……これから何度も二人に嘘を吐くかもしれないし、何度も騙すかもしれない……けど最後には、私が死んでも二人だけは絶対に護るから……お願い。こんな私を……信じて」


シルヴィアは目を丸くし、暫し思案して、不安そうな表情を振り払ってみせた。


「信じます」


それが、彼女の出来る精一杯の強がりだった。


「ありがとう」


オネスタはシルヴィアの頭を優しく撫でた後、作り出した転移門を潜り、その場から消失した。


彼女を見送り、シルヴィアは下唇を噛む。

当事者であるにも関わらず、立場としては部外者である事に、シルヴィアは堪らなく悔しかった。


「シルヴィア様……」


メイシュガルが心配した様子で、彼女に左手を伸ばす。シルヴィアは、振り向いて彼の手を握り締めた。


「メイ君。ううん、メイシュガル君……あなたは何者なの?どうして……私に会いに来たの?教えてよ」


シルヴィアは瞳に強い意志を宿し、彼を真っ直ぐ見つめた。

メイシュガルは、切断された右手の傷口からに魔力を放出、そこから強い光を発した。

光が晴れると、彼の手は完全に再生していた。


「……でしたら、僕にも教えて下さい。クリフ様の事を」


メイシュガルの眼差しもまた、強かった。


「……分かった」


シルヴィアは返答に詰まるも、可能な限り素早く返事をした。


「ただし、僕の正体は言いふらさないで下さい。例えクリフ様でも……あの人と、ソフィヤさんには知られたく無いのです」


「分かった、約束するよ」


「場所、変えよっか。パンケーキは食べれそうにないね」


シルヴィアは周囲を見渡し、苦笑した。



アキムは山の斜面を転がり落ちる。

ウシュムガルの放ったブレスを回避した三人は、その場から散り散りになっていた。


「どうにかしないと……!」


アキムは両腕から赤い触手を出し、自生する樹木を掴み、その場で急停止する。

そして、その場から見上げると、斜面から凄まじい勢いでウシュムガルがやって来ていた。


「クリフとセルゲイがやられた?」


__ふたりとも、ぶじ。


アキムが先程分裂させたカーバンクル型のチペワから、言葉と位置情報が彼の脳裏に送り込まれた。


「怪我はないか……けどコイツは!!」


アキムは射出した触手を引っ込め、それらを両腕に巻き付けた。


__肉厚で無骨な構造、過度な装飾や刃の構造は要らないんだったか。


アキムは、腕に巻き付いた触手を粘土のように蠢かせ、クリフの剣を模倣する。


腕と一体化したそれは、彼が持っていたものよりも二倍の刀身を持っていた。


「やってみようかな……!」


アキムは斜面を駆け上がり、ウシュムガルに向かって突き進んだ。


ウシュムガルは顎を大きく開き、勢い良く噛み付いた。

鋭利な歯が迫る中、アキムは敢えてその場から跳躍し、ウシュムガルの口部に飛び込んだ。


「見よう見まねでっ!」


舌に着地したアキムは、踵を軸に、その場で回転しながら剣を振り回し、ウシュムガルの鱗だけを残して両頬を切り裂いた。


クリフが大蛇にしたように、ウシュムガルは顎を閉じれなくなってしまう。


「コレだ!!」


アキムはクリフの真似をし、脳があるべき場所を剣で貫く。

しかし、ウシュムガルが暴れる様子は無く、効いていないようだった。

更にそこで、アキムの誤算が起きた。


ウシュムガルの喉奥が発光した。


「やばい!!」


アキムは慌ててウシュムガルの口内から飛び出す。しかし、それと同時にウシュムガルの頬の再生が完了し、顎が閉じてアキムの両脚を食い千切った。


「……っ!?」


アキムはその場に転がり落ちる。

ウシュムガルは再び口部を開いており、ブレスの発射態勢に入っていた。


「やば……っ!!」


アキムは、両腕から更に触手を放出し、両腕を強化した。

その場からの跳躍を試みるも、ブレスが発射される方が早かった。


光が一際強く瞬いた瞬間、レナートが木々の隙間から凄まじい速度で飛び出し、ウシュムガルの眼球を蹴り飛ばした。


鋼鉄製の脚が眼窩に深くめり込み、彼はそれを踏み台にして、孤を描きながら飛び退く。


それによってブレスの発射方向が大きくズレ、アキムの横にあった木々を熱線が焼き尽くして行った。


「__!」


ウシュムガルは長く伸びた左腕で、右目から溢れる血を抑える。

そして、怒りのまま咆哮し、レナートに向かって突進する。


しかし、僅かな時間差を置いて、側面から飛来した矢がウシュムガルの左目にも突き刺さった。


ウシュムガルはその場でよろけ、目に刺さった矢を引き抜こうと手を伸ばす。

しかし、その直後に矢は爆裂し、肉と骨の破片を撒き散らし、顔の左半分を吹き飛ばした。


ウシュムガルはその場から崩れ落ち、その巨体を地面に叩きつけた。


「ミラナに改良してもらった、爆裂ボルト5号だ。眼球に爆弾詰めれば大体の魔物は解決してくれる。だろ?」


得意げにボルトガンを片手で揺らしながら、クリフが木陰から顔を出す。


「すまなかった、こちらの不手際で危険な目に遭わせたな」


二人は戦闘態勢を解き、ウシュムガルを見下ろす。


「はっ……宝珠探しを手伝ってくれる理由が増えたか?」


しかし、アキムは違った。


「そいつはまだ生きてるッ!!!」


彼は右腕を振り上げ、掌をウシュムガルに向ける。

それと同時にウシュムガルは上体を起こし、両腕を振り回す。

木々を薙ぎ倒しながら剛腕が振り回される。


「よく言った!!」


クリフはその場で跳躍し、ウシュムガルの腕を飛び越えながらボルトガンを再装填し、砕けた顔に向けて再度発射した。


一方でレナートは、その場で片膝を付いた。


「リミッター解除、人工魔力放出開始」


彼がそう呟いた途端、両手足と頬が裂け、その下から放熱板に似た物が露出する。


《OVER DOSE》


レナートの周囲から青い魔力が放出され、彼は更に腰を深く落とした。

迫る腕を一瞬にして乗り越え、そのまま腕を伝って肩へと駆け上がっていく。


目標地点に到達したと同時に、クリフが放った矢が爆裂し、ウシュムガルの頭部を更に破壊する。


「お気に召すと良いがな」


そして、僅かな時間差を置いて、レナートは右足に魔力を纏わせ、振り抜いた。


半壊していたウシュムガルの頭が根本から砕け散る。

それを、少し離れた位置からアキムが凝視していた。


「チペワ、生きてるか?」


__いきてる。


頭から響く情報に、アキムは口角を釣り上げ、鋭く尖った歯を見せる。


「いいね」


アキムは、突き出した右手の構造を作り変える。

筋肉の構造を花の蕾のような形に組み替えた。そして、心臓を限界まで稼働させ、血圧を一気に上げる。


次の瞬間、右腕が筋肉と血液によって膨張し、破裂した。

多量の血液が閃光のように弾け、砕け散った拳の奥から、槍のように変化した前腕骨が射出される。


骨は、弾丸並みの初速を保持しながら、ウシュムガルの首の断面に着弾、食道へと滑り込んで、胃に突き刺さり、内臓を揺らした。


しかし、ウシュムガルの身体に魔力が収束し、欠損した頭部が一瞬にして治癒した。


「不死身か!?」


レナートはウシュムガルの額に踵を落とす。

鱗が砕け、互いの魔力が金属のように火花を散らす。


「蝿……め……!」


ウシュムガルが低い声で唸り、その場から飛び退いてレナートを振り落とす。


「喋ったと!?」


動揺するレナートをよそに、ウシュムガルは尻尾に魔力を乗せる。

そして、空中に投げられた彼を尾で打ちつけた。

僅かな残像を残し、彼は遠方にある小さな山へと吹き飛ばされ、大きな土煙を巻き起こした。


「レナートッ!」


クリフが一瞬振り向く。

しかし即座に向き直り、ウシュムガルに向けて走る。


しかし、相手の方が素早かった。

ウシュムガルも同時に距離を詰め、先程よりも明らかに素早い速度でクリフに腕を振り下ろす。

クリフは防御態勢すら取れず、目で追うことしか出来なかった。


だが、ウシュムガルは寸前で止まった。

彼は全身を震わせ、白目を剥いた。


「何とか……間に合った」


アキムは破裂した右腕を押さえ、よろけながらクリフのもとに近付く。


「察しはつくが、何をしたんだ?」


「さっき食いちぎられた足に……()()を送った。骨の形にしてさ」


アキムはその場で尻もちをつき、苦笑する。

その直後、ウシュムガルの胴体が風船のように膨張する。


「__!!?」


ウシュムガルは、声にならない悲鳴を上げる。

そして、彼の皮膚の下から無数の赤い触手が突き破り、溢れ出した。


「何を食べたか、ちゃんと吟味しないと」


溢れ出した触手は、ウシュムガルの全身に巻き付き、彼の手足をへし折り、折り畳み始める。


「溢れ続ける魔力、無尽蔵の再生……そういうのは俺たちの大好物だ」


ウシュムガルの肉や魔力を食らい、彼の体内から溢れ出した触手は爆発的に増殖する。

ウシュムガルは、口から火を吐いて身体を焼こうと試みるも、既に体内で繁殖したチペワを駆除するには火力不足だった。


「恐ろしいな」


一度寄生され掛けたクリフは顔を青くする。


「アイツは俺らを直接飲んだから。効果てきめんだよ」


アキムは微笑した。


「__アルバっ、アルバァァ……!話が違うぞ!!」


それを聞いたアキムは、目の色を変え、その場から立ち上がる。


「はっ……どうして、彼の名前が出てくるんだ!」


アキムは右手を掲げ、触手を操る。

触手の動きは激しさを増し、ウシュムガルの手足を、胴体を球状に押し潰す。


ウシュムガルは抵抗すらままらならず、ただ悲痛な悲鳴をあげ続け、クリフは思わず眉を顰めた。

果てには、赤い球体に顔の先端部だけが出た状態にまで圧縮してしまった。

アキムは、ゆっくりとウシュムガルに近づく。


「お前と、アルバに何の関係がある。答えろ、味わう痛みを増やしたくなかったらな」


ウシュムガルは大きく口を開く。

攻撃か、服従か。その判断の是非に悩んだアキムは、反応が僅かに遅れてしまった。


彼の口から鱗に覆われた細長い腕が飛び出し、アキムを鷲掴みにした。


「馬鹿野郎ッ!」


クリフが飛び出し、ウシュムガルの腕を切り落とす。そして、二人との間をレナートが凄まじい速度で通過した。


彼は無数の裂傷を負い、身体の一部から火花すら出していたが、瞳には明確な殺意が宿っていた。


「返礼だ……!!」


ウシュムガルの頭上で縦に三度回転し、彼の額に再び踵を落とした。


充分な加速が掛かったその一撃は鱗を粉砕し、肉を割いた。

そして、その反動でセルゲイは打ち上がり、ウシュムガルの頭は潰れ、赤い触手の中に押し込められた。


「チペワッ!!」


アキムが叫ぶと触手が蠢き、ウシュムガルを完全に閉じ込め、捕食し始めた。


アキムは息を切らし、切り落とされたウシュムガルの腕を振り解く。


「栄養補給しないと……ヤバい」


ふらふらとよろめきながら、球状のチペワに近付く。

チペワは内部に居るであろうウシュムガルを消化しながら縮小し続け、次第に飴玉程の大きさにまで圧縮してしまった。


アキムはそれを摘み上げ、口へと運ぶ。


「待てよ」


クリフは彼の左腕を掴んで、制止した。


「何?」


アキムは顔を顰め、身構える。


「最後に聞かせろ、お前は本当にアキムか?」


ありきたりな質問に、アキムは思わずため息をついた。


「俺が、チペワに頭まで乗っ取られてるのか知りたいんだろ?」


アキムは腕を振り払い、飴玉を口に入れて飲み込む。


「でもそんな事、どうやって決めるんだよ。記憶や人格なんて、全て一過性のものでしかないのに。ならさ、シルヴィアと会う前のクリフは本物なのか?」


栄養を得た事でアキムの右腕が瞬く間に治癒し、傷が塞がる。


「断言してやるよ。今の満たされた俺も、死に方しか考えて居なかった昔の俺も……本物だ。記憶があるから、俺は俺で居られるんだ」


しかし、クリフは悩むことすらなく、すぐさに答えた。


「……なら、俺だってそうだ。俺だって、あの村で暮らしてた記憶は持ってる。ただ……チペワと一つになって、多くを知っただけだ」


アキムはその場で少し屈む。

すると、彼の背中が隆起し、皮膚が割れた。


脊椎に位置する部位から、真っ赤な手が伸び、ヒト型のチペワが一体、這い出して来た。


「アキム!」


クリフは思わず剣を構える。

アキムは両手を上げ、無抵抗の意思を示した。

しかし、彼の背後に立つチペワは両手を組み、祈るような仕草をした。

チペワから赤黒い魔力が放出され、円状の形に集まる。


「さっき言ったアルバって人に話を付けてくる。大丈夫、俺はクリフの味方だよ」


アキムはそう言って微笑むと、集まった魔力が転移門に変化する。そしてアキムは、その場から後ろに倒れ、転移門を潜った。


「じゃあね、くりふ」


チペワはそう呟き、アキムに続いて転移門を抜けた。


「……マジかよ」


残されたクリフは、その場で膝を曲げ、へたり込む。


「本当に無関係だったとはな」


レナートは、身体の至る場所から火花を発し、体を引き摺りながらも、クリフの隣に立つ。


「……アルバという名に聞き覚えは?」


「いいや無い」


レナートは即答し、それと同時に空を覆っていた魔力が霧散した。

それと同時に、レナートの瞳が複数回光り瞬く。彼は軽くよろけ、頭を軽く押さえる。


「訂正だ。今情報が入った」


「シルヴィア様がその男に襲撃されたらしい」


クリフは、眉をピクリと動かす。


「何だと?」


「一先ずは解決してる。シルヴィア様も無事だ。それより、お前にお届け物が来ているみたいだ」


レナートは、要点だけ掻い摘んで説明すると、クリフの背後をあごで示した。


「あ?」


「ちゅー」


そこには、赤いネズミが二本の足で立っており、空いた前足で事切れたカーバンクルを抱えていた。


「……助かる」


クリフはカーバンクルを受け取り、赤いネズミに礼を告げる。


「ちゅー」


赤いネズミは、なぜか後ろ足だけで走り出し、瞬く間に木々の間に消えて行った。

相変わらず、どこか冒涜的だ。


「穏便に終わると良いが」


セルゲイは、ネズミが消えた場所を眺め、呟いた。


「ああ、そう信じてるよ。アイツは俺のダチだ」


クリフは空を見上げ、剣を収めた。

ひとくちじゃない図鑑

「VerMein」

種目:ヒト属

平均体長:175cm

生殖方法:用途に応じて着脱可能。

性別:有り

食性:雑食


通称ヴァーメイン、全身の100%をバベルの作った機械と有機パーツに身体を置き換えたドワーフで、ハイヒューマンと同等以上の性能を保有している他、レーザー、ビーム兵器の携行、重力下での飛行性能を持ち合わせている。


元は、魔法が扱えない先天性の障害を負ったの古代人に用意したインプラントを改造したものとなっている。


その為、彼らが保有する兵器の中での性能は下級に位置している。

しかし、アウレアの侵攻作戦によって、セルゲイ=ヴォーカンが戦死した事を踏まえ、現在は総合的なアップデートが行われており、魔力を放出する永久機関、「カルジウスリアクター」の積載によって、各種平均機能も大幅に向上した。

更には全身を魔力で覆い、一時的に身体能力を強化するシステム機構、〈OVER DOSE〉システムを搭載する事で、格闘戦においても、驚異的な性能を発揮するようになった。


余談ではあるが、VerMeinの呼称は現場ではあまり浸透しておらず、「改造人間」と呼ばれる事が多い。


Versatile Mechanized infantry

多目的機械化歩兵

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