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竜娘と行く世界旅行記  作者: 塩分
3章.魔道の国
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短編「待つ人は」

クリスマスを記念して短編です。

クリフとシルヴィアは出ず、本編で度々触れられる魔界もとい、魔神の領域での小話となります。

雲ひとつ無い快晴の下で、吸血鬼の少女リサは、家業の酪農を手伝っていた。

やや古びた厩舎の中、彼女は家畜用のおがくずの入った袋を3束程下ろし、大きく息を吐いた。


「今日は冬至祭前夜。頑張るぞー!!」


彼女は長い金髪を揺らしながら、右腕を振り上げた。


「ぴぎー」


そんな彼女の独り言に答えるかのように、コウモリの羽が生えた、黒毛の子豚が側で鳴いた。


「よしよしピギー。いい子だぞ。私の独りごとに付き合ってくれるのもお前だけだからな」


リサはピギーと名付けた子豚を軽々と抱えると、次の手伝いを進めるべく、厩舎(きゅうしゃ)内を駆け足で抜けた。


出口に差し掛かったその時、すぐ側にあった鉄柵が弾け飛び、中から二足歩行の怪物が飛び出す。

アウレアではコカトリスと呼ばれる生き物の亜種であり、それの半分程度の体躯しかないものの、鉄を軽々と裂き、時には人すらも捕食してしまう、非常に危険な生物だった。


「もうっ、お父さんに怒られるぞ」


しかし、少女はそれに恐れることなく肩で体当たりをすると、コカトリスを軽々と突き飛ばした。

強烈な突進によって巨体がよろめき、バランスを取る為か、短い羽をばたつかせていた。


〈__凝血(サングリス)


彼女はすかさず片手で魔法を起こすと、指先から血を飛ばし、それを凝固させて檻を修復してみせた。

コカトリスは怒った様子で、クチバシではげしく激しく檻を揺らし、けたたましく鳴いていた。


「あー……どうしよ、お父さーん!!!」


リサはピギーを抱え、厩舎を出た。


長閑(のどか)な自然が広がる厩舎の外では、彼女の母ベレンがコカトリスを宥めながら、注射針と輸血パックを手にし、採血を行っていた。


「今はトレンスタインで納品してるわよ?どうかしたの?」


「コカトリスが脱走したから、今閉じ込めてる!!」


リサは作業着に付いた泥を払いながら言った。


「まだ人馴れしてないあの子でしょう……」


ベレンはため息を吐くと、採血が終わったコカトリスの頭を撫で、リードを引きながら厩舎へと向かった。


「多分そう。昨日入った子だったかな」


ベレンは厩舎前の(ひさし)を支える柱にリードを括り付け、血の柵に閉じ込められたコカトリスの前に立った。


「リサ、魔法を解いてくれる?」


彼女は微笑みながら言った。


「えっ?うん。行くよ……」


リサが両手を突き出した時、血の檻は液体となって崩れ、金切り声を上げながら、ベレンへ突進した。


「家畜のしつけ方をまだ教えていなかったわよね?」


コカトリスが丸太のような右脚を振り上げたその時、彼女はまるで小枝を掴むかのように、片手で受け止めた。


「穏やかな子も居るけど、大体の子は凶暴で、向こう見ずなの」


片脚を掴まれたことで、慣性を殺し切れずにコカトリスは目の前で転倒してしまう。

彼女は家畜の脚を脱臼させないよう、直前で掴んだ脚を離した。


「だからね、分からせてあげないと駄目なの」


彼女は片膝を付き、コカトリスの首に腕を回して押さえ付けた。


「__!」


コカトリスは羽毛を散らし、体を捻って暴れるも、彼女の力に勝つことが出来なかった。

激しく(くちばし)を鳴らすも、彼女に掴まれ、身動きを封じられた。


「そのあとは、目を合わせるのよ。どっちが生き物として強いのかを、この子に理解させるの」


彼女はそう言ってコカトリスの瞳を凝視した。

橙色の瞳が、彼女の赤い瞳を凝視した後、諦めたように身体をぐったりと伸ばした。


「はいっ、これでおしまい」


ベレンはそう答えると、手を払いながら立ち上がる。

コカトリスはやや怯えた様子で立ち上がり、檻の中へと戻り、藁のベッドで横になった。


「ちょっと可哀想だけどね。こうしないと、飼育なんて出来ないし、他の子にとってもストレスになるから」


リサは壊れた柵の欠片を拾い上げた。


「酪農家の使命……だもんね」


「ふふ……そうよ。逃げないようにしてくれて助かったわ」


ベレンは膝を折り、嬉しげにリサの頭を撫でる。


「……ん」


幼い彼女は、少し恥ずかしそうに目を逸らすも、満更でもない様子で、その身を預けていた。


「……ぴぃ」


ピギーもまた、撫でて欲しそうに頭を出した。


「ピギーは何もしてないじゃん」


リサは不服そうに呟くも、ピギーも頭を撫でて貰っていた。


「良いのよ、二人とも可愛いんだから。して欲しいならいつだって、やってあげるわ」


ベレンは立ち上がり、厩舎の出口に手を掛けて振り向いた。


「それじゃあ、この子の採血の続きをするから、ピギーの散歩をしてくれるかしら?」


散歩。そのワードを聞いた瞬間、リサの顔に皺が寄った。


「はい……」


リサは柵の欠片を立て掛け、作業用のエプロンを脱いだ。諦めてピギーを抱えたまま、自宅を経由して道路に出た。


一面の畑が広がっていた。

畑の合間には、アスファルトで舗装された道路が存在しており、ジャージ姿のリサが端の歩道に立っていた。


「ほらピギー、歩くよ」


リサは面倒臭そうにピギーに取り付けたリードを引く。


「ぴぎ」


しかし、ピギーは微動だにしなかった。


「ピギー!今日こそはダメなんだから!!自分の!足で!!歩いて!!!」


「ぴぎ……ふごご!」


リサは歯を食い縛りながらリードを引っ張るも、ピギーもは道路の手前で踏み止まり、抵抗していた。


互いの足元から魔力が滲み始めたその時、金属よりも頑丈な筈のリードが千切れ、破断した。

リサはその場で尻もちを付き、ピギーは頭から隣の畑に突き刺さった。


「……もうっ」


リサは千切れたリードを結び直すと、ピギーを地面から引き抜いた。

幸い、作物を植えていない位置だった為、スニーカーで土を蹴って軽く穴を埋めた。


「ふごご」


子豚は間抜けな声で鳴いた。

彼女はため息を吐きながら、ピギーの顔に付いた泥を払うと、道路の端をゆっくりと歩き始めた。


「ねえピギー」


リサは少し寂しげに呟いた。


「ぴ?」


ピギーは不思議そうに鳴いた。


「お爺ちゃん、今年も帰って来なかったって」


ピギーは俯き、寂しげに鳴く。


「向こうとこっちが繋がって1000年。家畜と一緒に連れてかれたお爺ちゃんは今日も帰って来ない」


リサは小石を蹴った。

跳ねた石が近くの麦畑に飛んで行くのを眺めた彼女は、ため息をついた。


「冬至祭の夜はね、お婆ちゃんとお母さんはずっと寂しい顔してるんだ。まだ私が産まれたのも知らないのにって」


リサは空を見上げた。


「……会ってみたいなあ」


彼女がそう呟いた時、遥か遠くに見える市庁舎から、放送が響いた。


「ただ……ま、市内……て、ド……ゴン……ました……の皆様は……下さい」


質の悪い大音量スピーカーで流されているそれは、一回で聞き取れるようなものではなかった。


「んー……?」


リサは眉間に皺を寄せ、片耳を市庁舎の方角に向けた。


「ただ今、市内上空にて、ドラゴンが出没しました。市民の皆様は、家屋へと退避して下さい」


その言葉を聞き終えたと同時に、リサの頭上の陽が遮られ、大きな日陰が出来た。


「あー……もしかして?」


リサは顔を引きつらせ、空を見上げると、大きな翼を生やしたドラゴンが彼女を見下ろしていた。


涎を垂らし、巨大な牙を覗かせながら、翼に纏わせた魔力を調節し、徐々に高度を下げていた。


「……っ、ふぎゃあああああっ!!!」


女の子とは思えない程の声で叫び、ピギーを抱えたまま、猛スピードで自宅に向かって走り出した。


しかし、巨大な翼竜に速さで勝てる筈がなく、リサの目の前に爪が迫った。


「あっ」


戦闘技能を持たないリサは呆気なく捕まり、かぎ爪に挟まれたまま地面から連れ去られてしまった。


「痛っ……女の子に何するんだ!!」


彼女は軽く血を吐きながら抗議した。

かぎ爪はリサの腹部と背中に深々と突き刺さり、貫通していた。

しかし、頭を飛ばされても血さえあれば生きられる吸血鬼にとって、内臓の裂創や骨折は、大した痛みではなかった。


〈__凝血(サングリス)


彼女が血でナイフを作成した瞬間、竜は掴む力を強めると、彼女の胴体周りの骨をまとめて粉砕した。


「うっ……」


肺が潰れ、声すら出せなくなったその時だった。


「ぴぎー」


ピギーがリサの手を蹴って離れ、宙を舞う。

次の瞬間、ピギーは黒い光に包まれた。


竜がそれにたじろいだのも束の間、黒色の甲殻に覆われた、巨大な猪が現れた。

逆三角形体型の人の体を持ったそれは、悪魔の翼を広げ、まるで転移したかのように一瞬で竜の眼前に現れた。


「__!」


大気を震わせる程の咆哮を上げ、鉄塔のような腕を振りかぶる。

竜は回避を試みるも、それを許す事なく拳を胴体に叩き付けた。

円状の衝撃波が大気に伝わり、竜の胴体が歪に変形した。規格外のダメージを前に、竜はリサを手放し、翼を広げて逃亡を試みる。


巨大な猪はリサを両手で優しく受け止めると、黒い霧となって霧散した。


「ぴぎー」


入れ替わるように現れたピギーは、リサのジャージの端を咥え、小さな羽を必死に羽ばたかせ、ゆっくりと降下していた。


瀕死の竜が二人から距離を取っていたその時、二人の周囲に立ち込めていた黒い霧を、赤い閃光が突き抜けて行った。


弾丸のように一直線に飛び出したそれは、竜の眼前で急停止すると、一人の人影へと姿を変えた。


ジーパンにロゴの入ったジャケット。

顎ひげと髪型をカッチリと決めた、気立ての良い若い男だった。

しかしその手には、軍用ナイフをそのまま巨大化させたようなブレードが握り締められていた。


「てめぇ……人の娘に手出ししといて、帰れると思ってるんじゃないだろうな」


彼はそう呟くと怒りの形相で竜を睨み、剣を竜の背に突き立てた。


「__!」


竜は悲鳴を上げ、彼を振り落とそうと暴れるも、次の瞬間には首が寸断されていた。


頭を失い落下して行く竜を、数の再生を終えたリサは感慨深そうに眺めていた。


「おぉっ……お父さんカッコいい」


「ふごごご……」


ピギーは変わらず、苦しげに羽ばたいていた。



陽が暮れ、リサは家族全員で集まって、パーティーを準備していた。


今年はコカトリスの丸焼きが並ぶ予定だったが、食べ切れない程のドラゴンステーキが入荷したことで、卓上のラインナップは一気に変化していた。


血が滴るようなレアで焼かれたステーキ、デミグラスが抜群に効いたシチュー。

揚げたてのフライドポテトに、指でほぐせるまでカリカリに焼かれたドラゴン肉。

ボウル一杯に積まれたおばあちゃん特製ドレッシングのサラダ。


そんな傍ら、ベレンの表情がやや暗かった。

この場がつまらないのではなく、リサを一人で歩かせた自責によるものだった。


「そう浮かない顔するな。ピギーが頑張ったお陰でリサは処方箋を貰うくらいで済んだ。その上で今夜の夕食にも随分色が付いた」


そう言いながら、リサの父アレックスはシャンパンの栓を抜いた。

小気味の良い音が響き、ピギーが驚いてリビングを駆け回り、落ちたコルクの栓を咥えると、おしゃぶりのように噛み始めた。

通りがかったリサがピギーを抱え、二人の元に駆け寄った。


「そうだよ。私も無事だったし、レントゲンでも大丈夫だって」


彼女はそう言ってワンピースとシャツを捲って、背中を見せた。

爪で裂かれた穴は完璧に塞がっており、酷い開放骨折を起こしていた胸骨も元通りに治っていた。


「はしたないぞ」


アレックスはそう呟いて、彼女のワンピースを下ろした。

その光景を見て、ベレンは微笑んだ。


「そうね。こんな日に落ち込んでも仕方ないわ。素敵な騎士団長様が私の娘を助けてくれたことだし」


彼女はそう呟いて、シャンパンを二つのワイングラスに注いだ。


「元だ。今は若手で俺より強い奴らがゴロゴロ居るさ」


アレックスはグラスを手に取り、苦笑した。


「そんな事言ってたら、あなたの後輩が嫉妬するわよ?」


会話に置いて行かれたリサは、二人の間を抜け、冷蔵庫の扉を開いて何かを探していた。

そんな折、玄関の扉が開き、厚手のコートを着た中年の女性がリビングに上がった。


「あら、もう始める所だったかしら」


彼女は気さくに微笑み、コートをハンガーに掛けて、洗面台に歩き始めた。

彼女はリサの祖母だった。


「まさか、お母様を差し置いて始めませんよ」


アレックスはテーブルにグラスを置いた。

冷蔵庫の前では、リサがシャンメリーを見つけ、栓抜きを探していた。


「お母さんも飲む?」


ベレンは彼女に尋ねた。


「私は遠慮しておくわ。去年熟成させてたドラゴンの血を、ロックでお願い」


彼女がそう言った瞬間、リサが外したシャンメリーの蓋が勢いよく弾けた。


プラスチック製の栓が放物線を描き、祖母に向かって飛来した。

彼女はそれを難なく掴んでみせた。


「あっ……ごめんおばあちゃん」


小走りでリサは栓を受け取りに来る。


「良いのよ……はい」


祖母は栓に赤い魔力を込め、リサに手渡した。

彼女が手に取った瞬間、栓の底から血が噴水のように吹き出し、それらが落下するよりも先に凝固し、血の造花を形作った。


高度な魔法を前に、アレックスは感嘆の声を漏らし、リサは思わず笑みをこぼした。


「年の功よ。食卓にでも飾っておきましょう」


「うんっ!」


リサは造花をテーブルに添えると、彼女の横からベレンが血の注がれたロックグラスをテーブルに置いた。


リサはブドウ味のシャンメリーをコップに注ぐと、勢い良く席に付いた。

それに合わせて、三人も着席するとグラスを軽く持ち上げた。


「今年もお疲れ様」


ベレンがそう呟くと、四人は互いのグラスを小突かせ、乾杯をした。


「ねぇ、今年の特番何観る?」


リサはテレビリモコンを手にし、二人に振り返った。


「グレートホリデークッキングショーで良いんじゃないか?」


リサは返事を待たずにボタンを押すと、リモコンを置いてフライドポテトを摘んだ。


「良いかも」


テレビが点灯し、素早く番組が切り替わると、コメディアンが軽快なジョークを言いながら、子供達が作った菓子を評価していた。


「あら?珍しい子が居るわね」


と、祖母が画面を見て呟く。

民族衣装をアレンジした洋服に身を包んだ、白い鱗の竜人が、恥ずかしげにバースデーケーキを評価して貰っていた。


「ヴァストゥリル様の所から来たんだって」


リサはドラゴンステーキを口いっぱいに頬張り、咀嚼(そしゃく)しながら答えた。


『姉妹が4000人居るんです』


少女のインタビューを聞いたアレックスが口笛を吹き、リサが期待に満ちた眼差しをベレンに向けた。


「妹はいつ?」


「えっ?……そうね」


ベレンは目を逸らし、アレックスを見つめた。


「来年くらいには産まれるかもしれないな」


彼はシャンパンをあおり、砕けた口調でそう答えた。

ベレンは少し顔を赤くし、アレックスの背中を叩いた。


「えっ!??妹嫌なの?」


そんな不可解な母の行動を前に、リサは困惑していた。


「あっ……いや、これはそうじゃなくてね?」


慌てて訂正するベレンの肩に手を回し、アレックスは得意げに笑った。


「俺と子供を作るのが恥ずかしいみたいでな、可愛いだろ?」


リサを盾にして揶揄うアレックスの横腹に、ベレンの肘が突き刺さった。


「ぐふっ……」


グラスを机に置き、彼は大げさに怯んだ。


「とりあえず、来年の夏には出来ると思うわ。良い子にして待てる?」


「……うん」


作り笑いを浮かべるベレンにリサはひきつった笑みをこぼした。


「ちょっと風に当たって来るわね」


その光景を見ていた祖母は嬉しげに微笑んで席を立ち、ロックグラスをもってキッチンへと向かった。


「うん、行ってらっしゃい」


祖母はもう一つのグラスに竜の血を注ぎ、ベランダに出た。

冷たい風が彼女の肌を刺し、白い息を吐いた。

アレックスが日曜大工で組んだウッドデッキに上がり、設えられたテーブルに腰掛けた。


「全く、まだ帰ってこないのかしら」


彼女はため息を吐いて、二つ持ったグラスの片方を卓に置いた。


「あなたの大切な娘は、もう子供まで出来てるのよ」


彼女はため息を吐くと、グラスを一気に傾け、血を飲み干した。


瞳孔が開き、軽い酩酊感に誘われる中、もう一つのグラスを持ち上げると、水面に一粒の灰が浮かんでいた。


彼女は不思議そうに周囲を見渡すも、誰の姿も見当たらなかった。

浮かぶ灰を眺めて苦笑し、月を見上げて呟いた。


「早く帰っていらっしゃい、ベルナルド」

・魔物図鑑

「ベヒモス」

種目:悪魔族魔獣系

平均体長:50cm〜15m

生殖方法:有性生殖、胎生

性別:オス、メス有り

食性:雑食

創造者:魔神第1席、イステア・フェルカルバス

彼が創造した生物の中で最も最悪な生物と称されており、木々から肉に至るまで何でも食べ尽くしてしまう。

嗜虐心が強く、捕らえた獲物を痛めつけて遊ぶ個体も多かった。


ヒト型の猪に、巨大な蝙蝠の翼が生えており、全身は強固な甲殻で覆われている。

その強度は凄まじく、ディアボロの行使する超域魔法や、対城砦ミサイルを易々と耐え切る個体さえ存在していた。


7500年前に創造され、異常な速度で繁殖を開始しては、イステアの領域内に存在する生命の9.5割を死滅させてしまった。


その光景を見兼ねたイステアが直々に彼らに呪いを掛け、矮小な子豚へと退化させてしまった。

身体こそ頑強で、無限の寿命や再生能力を持つものの、攻撃能力が絶無に等しく、退化してからはその数を大きく減らしてしまっており、準絶滅危惧種に指定されている。


大切な相手を守ろうとした時のみ、その呪いが解け、本来の力を取り戻す。

しかし、あくまで撃退が精々で、攻勢に出ると再び呪いが生じて子豚に戻ってしまう。

ベヒモス達もそんな特性を理解している為、基本的に群れで行動し、互いに守り合えるように生活している。

そんな習性が幸いしてか、残虐な気質はなりをひそめ、愛情深く人懐こい生物として知られており、現在は動物園のアイドルとして君臨している。

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