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ラリマール  作者: 西埜水彩
【2】中学生と優しい人
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【2-2】

「失礼しまーす」


 私は今楝くんの家にいる。


「どうかした?」


 ジャージにフリースの上着という暖かそうな服装の楝くんは、私を不思議そうな顔で見ている。


「実は姫海商店街である人のことを探したいの。でもヒントが『ストロベリーブロンドの人に話しかけていた』しかなくて、困っているから、手伝って欲しい」


「めんどくさいから、やだ」


「へーそういうのなら、この写真を樹利(きり)先輩に見せるよ」 


 スマートフォンの画面を、楝くんに見せる。以前ひょんなことで撮った、楝くんの女装写真だ。


「それひきょーじゃない? 樹利先輩がそういうのを見たら嫌な思いをするかもしれないと思ったのに」


「そのひきょうな手を使わないといけないくらい、困っているの」


 なんせ姫海商店街で私は異物のようで、他の人みたいに普通の会話をすることが難しい。


 それも全部女装趣味で私とそっくりな山葵さんが姫海商店街で排除されていて、それに巻き込まれているからだ。普段商店街へ行かないからいいけど、こーいう時は困る。


「じゃあ行こうから。俺もああいう閉鎖的な商店街に行きにくいしさ。イートインの付いている洋菓子店があるから、そこに実は行きたかったんだよね」


 なんとか楝くんを説得することができたらしい。私達は2人で姫海商店街へ行くこととなった。


「ここが目当ての洋菓子店」


 洋菓子店はぎやまん飴屋の隣にある、ってことは何度か見かけたことがある。


「いかにも洋菓子店ってところだ」


 楝くんに連れられたきた洋菓子店の中へ入る。外と中、両方ともドラマで見る洋菓子店のようで、落ち着いた色のイートインスペースが素敵だ。


「コーヒー味のフィナンシェをお願いします」


「シュークリームをお願いします」


 私は目に入った物を適当に、楝くんはショーケースをじっくり見て注文する。洋菓子店だからだろうか、ケーキはほとんどなかった。


「フィナンシェとシュークリームですね。お持ち帰りですか、イートインですか?」


「イートインでお願いします」


「イートインですね、かしこまりました。そういえば隣のお店で働いている山葵の妹ですか? めっちゃそっくりで驚きました」


 洋菓子店の店員は山葵さんと知り合いらしい。この感じからすると、他の人のように悪く思っていないみたい。


「そうです。山葵の妹のわらびです」


「僕は山葵のはとこの谷田春帆(たにだ はるほ)ってやつと高校が同じだったんです。妹さんは春帆や山葵よりも格好いいです」


 はとこは親同士がいとこって関係なので、遠い。そんな遠い親戚のことも山葵さんは把握できていたんだ。私は近い本当の親戚のことすら知らないので。うらやましい。


「そうなんですか。実はストロベリーブロンドの子に話しかけていた人を探しているのです。知りませんか?」


「それは知りません。ストロベリーブロンドっていう派手な髪色の子も見かけたことないです」


 洋菓子店の店員さんも、私達が探している人のことは知らないみたい。そこで話を終えた私達はイートンスペースに向かい、そこで食べ始める。


「ストロベリーブロンドの子に話しかけたのは、地元の人じゃないかも」


 シュークリームを食べ終えてから少しした後、楝くんはそう言った。


「どうしてそう思うの?」


「地元の人じゃなければ、派手な髪の人に対して関わってくれる可能性は高いよ」


 それは確かにそうだ。姫海村の人じゃなければ、髪の色を気にしないかもしれない。そのことは前からうすうす思っていたけど、改めてそのことを聞くと、それが間違いないって断言できる。


「そうだね。じゃあ見知らぬ人を探した方が早いかも」


 私達は洋菓子店を出て、商店街の中を再び歩き始める。


「次は駄菓子屋へ行こうぜ」


 飴屋とは別の隣にある駄菓子屋。ここも見かけたことはあっても、一度も入ったことはない。


 駄菓子屋の中は古びている。くすんだ木材が印象的で、ざるの中に小さなお菓子が入っている。


「このスナック菓子、美味しそう」


 楝くんは駄菓子に興味津々だけど、今はストロベリーブロンドの人に話しかけた人を探さなきゃいけない。


「いらっしゃいませ。あっ姫海図書館で働いている人ですね」


 小さい女の子が話しかけてきた。この子は私や楝くんがアルバイトしている図書館の常連で、それもあってかこの子の子を私は知っている。


「俺達以外で、この商店街で外から来た人を見かけた?」


「うーんなんか赤っぽい髪の女の子がホームレスと話してたって、小学校でうわさになっていた。それでそのホームレス、今は姫海神社の巫女さんがめんどうを見ているんだって」


「それ本当か?」


 楝くんは信じていないみたいで、私もそうだ。


 第一こんな閉鎖的な田舎でホームレスがいるとは思えなかったし、何よりもホームレスを個人で支援する人がいるかどうかは怪しい。


「確か八百屋の邦子(くにこ)さんが見たって言ったらしいよ。しかもホームレスの人を預かっている巫女さんが20歳未満で、いつも着物を着ていて、長い黒髪の人で、探偵をしているうーんと大人な彼がいるらしいよ」


 田舎恐い。彼氏のことまで色々な人に知られるんだ。


「それなら巫女さんに話を聞けば良いか」


 私はつぶやく。それがうそか本当かは、巫女さんに聞けば良い。探偵の彼がいるという情報は役に立たなさそうだけど、残りは仕事や見た目だから役に立つはず。


「そうだね。その巫女さんに話を聞きに行こう」


「その巫女さんの名前は川口(かわぐち)キウイだって。線が3本の川に顔にある口、そして名前はカタカナ」


「名前教えてくれてありがとう」


 ここまで知ったら、川口キウイさんという巫女に会うために、姫海神社へ行けばいいだけだ。


「教えてくれてありがとう。これの会計お願い」


 情報料なのだろうか、楝くんが駄菓子をどさっとレジに持って行く。


 スナック菓子メインで、甘い物がちらほら見える。このお菓子は健康に悪いんじゃないか、少し不安になった。


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