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2 紅い瞳
よろしくお願いします。
子供達が大地を駆け回る。
男達は作業から時折目を離し、子供達を見ては、笑顔を浮かべる。
男達は大地を耕し、鍬を下ろすたびに迸る汗を大地は優しく吸い込む。
母なる大地。
男達の一人が、鍬を持つ手を休め、土をひと掴みし、余念なく土を指で揉む。
「よし、粘り気が出てきたぞ」
今年も豊作が期待できそうだと思い、空を見上げる。
日の光を受けた其の目は、鮮やかな紅色をしている。
男達が作業を終える前に、既に子供達はそれぞれの家に帰っている。
今頃は湯でも浴びているだろう。
そう思いながら、男達もそれぞれの家へ帰る。
遠く村の家々から白い煙が上っている。
村中に夕食の匂いが漂っている。
風が夕食の匂いを運ぶには、男達の帰る道は遠すぎる。
眩しいくらいの光に包まれていた山々は、既に赤く染まりつつある。
夕日の赤よりも透き通るように赤い瞳が茜色の空を見上げている。
ありがとうございました。