明日の存在
人が生きる上で最も大切な事とは何でしょう。
これ、そんな女々しいことを考えてどうする。働け、働け。
『働く』ですか。そうですね。お金は大切かも知れませんね。この世の大半は誰かの所有物で、所有者はお金がないと夜も眠れないと言うのですから、お金はとても大切ですね。
ただ私の財布には2400円とプリペイドカードが一枚。それも500円しかありません。こんな貧乏人がお金は一番大切なものだなんて、皮肉か嫌味にしか聞こえないでしょう。お金を捨てて山に籠れたなら、私はきっとそうする。あ、いや、それは矛盾ですね。山も誰かの所有物です。そのために熊も猪も追い出されたのですから。いやぁ、貧乏、貧乏。
まだ寝ているのか、早く動けというのに。
そうですね。このまま一生眠っていたい気もしますし、今すぐ働きたい気持ちもあるので辛いものです。それでは人生で一番大切なことは『退屈』ということにならないかしら。なんとも嫌な答えだけど、現実とは不条理でとことん皮肉めいているものでしょう?
あ? 退屈だぁ。んなら働けというに。
いえいえ、ダメです。働いたら退屈したくなるじゃないですか。私はこれ以上の退屈はごめんなのです。これ以上の退屈は死ねてしまうから嫌です。恐いです。あと何年、何十年この退屈のシーツに包まっていなくてはならないのでしょう。街灯のない道ほど、虚しく恐ろしいものはありません。
何が虚しいだ。こっちは嫁さんに会えなくて泣きたいっていうのに。
『家庭』もまた大切なのかも知れませんね。いえ、『愛』と言った方がみなさんは気持ちが良いのでしょうか。『愛』と言えば、先日何となく広辞苑を開くと面白いものがありまして、恋と愛、これはどちらが重いのか、どちらがより深いのか様々な論争がありますね。『恋』というのは死者などの会えない者に対して抱く好意だそうです。『愛』の方は忘れてしまいました。しかしながら青春の成分として括られる『恋』にそこまでの深い想いがあっただなんて、その文言を見た時、私は思わず泣いてしまって、図書館にいた皆さん大変に驚いていましたね。
ほら、はよ立って働け
あぁ、あぁ、あぁ。まだ考えている途中なんですよ。
そんな無駄なこと考えていてどうする。それで生活が良くなるのか。
いや、まぁ、分かりませんけど。ただ、こう、幸せになっている感覚だけ湧くんですよ。
そうか、そうか。俺はお前が働かないから一向に幸せにゃあなってないぞ。
へいへい、すいません。
人生で大切なものは結局『時間』らしい。