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二十話 パンツよりもぱんつと書いた方がエロい気がする


 澄んだ空気が冷たい感触と共に肺一杯に広がった。遮るものなく降り注ぐ太陽に目を細め、裕一はあたり一面に広がる青空に目を細める。いつも小憎らしく浮いている白い綿菓子どもはその欠片すらなく、洗濯物の皆様がミイラになりそうなほど良い天気だった。

 はるか足元には一面の農耕地で働くお百姓さんたちが木陰で昼食を堪能していた。心地よい風が一人の麦藁帽子を救い上げる。慌てた男が固焼きパンを放り投げて風の手を追いかけて駆け出した。遠目からでは年齢を知ることは不可能であるが、動きのきれからそれなりに人生を歩んできたことが伺える。裕一は風に干渉し、小麦色の帽子を彼の手元に導いた。男は肩を上下させながら、大事そうに麦わらを胸に抱える。よほど大事なものだったのだろう。安心したように、もといた木陰に身体を向けた。

 犬が、彼のお弁当を幸せそうに頬張っていた。男は何かを叫びながら、憩いの場に突入していった。

 なんだかまったりした光景に癒されてしまう。微笑んで、裕一は身を躍らせて大空を泳いだ。田畑を貫くように、一本の街道が真っ直ぐと延びていた。石畳で舗装された道は広く、本来なら馬車が横並びで四台は通れそうなほどである。実際、年季の入った大道は、途絶えることなく人や荷馬車が行き来している気配を全身から発していた。車輪や人の足で程よく削れた彼らは、まさに歴戦とも言うべき風体である。

 しかし、今の街道からは常の空気が微塵も感じられなかった。裕一は視界の続く限り周囲を見下ろし、果てまで無人であることを確認する。否、それは少し正確ではない。街道の周辺には確かに幾人もがせわしなく動き、あるいは忠実に職務を遂行している。しかし、明らかに旅人であったり、商人であったりする者たち、所謂民間人が足に石畳を敷いている姿はどこにも見当たらなかった。

 わざわざ通行止めにしたのか。自分の後方から、例外的に街道を踏みしめている集団が近付いてくるのを感じ取り、裕一は苦笑した。くるりと回転し、天地を逆さまにする。いまや頭上となった地面を、銀色の集団が金音を響かせて闊歩していた。肩に槍を乗せ、輝くような鎧は太陽の笑みを受けて輝いていた。農民の子供たちがそれを見て歓声を上げる。今にも走り出して近付こうとする彼ら彼女らを、大人たちが必死になって止めていた。

 全身を鏡で纏いつくした連中の中を、一台の馬車が居心地悪そうに車輪を回していた。正しくいえば肩身を狭めているのは馬車馬だけなのだが、その印象が強すぎて壮麗な馬車までもぐったりしているように感じられる。不可視結界を張っているはずの裕一の眼差しに、ふとお馬さんが顔を上げて視線を交差させた。「なに、なんなのこのぴかぴかした人たち。これこわい、これこわいよ裕一さん」裕一が勝手に末吉と名付けたお馬さん――彼自身は喜んでくれた――が瞳を潤ませていた。

 かわいそうだが、どうにもしてやれない。身を切るような思いで裕一は彼を説得した。「後で栄養満点のご飯をあげるから」末吉君は鎧への警戒心を完全に忘れたようだ。唐突に上がった馬車の速度に、周囲の鎧たちが目を見張った。やはり食への欲求はあらゆる困難を退けるようである。美食家万歳。

 身体の向きを戻すと、視線が馬車集団を差し置いて街道を歩いていった。等間隔で配置された兵たちと、何事かと街道を遠巻きにしている野次馬という名のお百姓。彼らを飛び越えた先に、鎧とは別の煌きが裕一の目に焼きついた。小高い丘に囲まれた、海かと見まがうほどの大きな湖が広がっている。空気が澄み、天候も優れているというのに対岸がまったく見えなかった。夏なら泳げそうである。

 そんな大湖に寄り添う形で、巨大な都がその威容を万人に知らしめるかのように横たわっていた。街を護る城壁はその三分の一を水に抱かれ、アルファベットのCを描くように取り巻いている。中心は巨大な塔に何本もの尖塔が合わさった巨大構造物で占められ、街並みはそこからまるで木の年輪のごとく外側に向かう形で広がっていた。陳腐かつ十人並みな感想であるが、壮麗の一言に尽きる。嗚呼、何とファンタジックな光景であろうか。

 ヴェイルヘルム帝国の中枢、帝都ブラナ・ティアス。水の都とも名高いらしいそこは、主の帰還を色々な意味で意識しているようであった。城を真ん中にして街を分割する十字路には、人ごみらしき黒山がひしめいている。人ごみが苦手な裕一であれば、きっとお家で円くなっていたくなるほどの混雑振りであろう。頬が引きつった。

 裕一はしばし帝都を心に納めるかのように見つめ、やがて落ちるように降下した。細かな制動を駆けつつ、馬車の屋根を透過して内部に入った。結界をとき、ふかふかの椅子に腰を下ろす。


「どうじゃった、帝都は?」


 対面するように腕を組んで座る姫皇は、小首を傾げて微笑んだ。


「近くで見たわけじゃないからまだ何とも。でも、大きな湖だね。街の一部が水没してるってことは、昔はそんなに広くなかったのかな?」

「うむ。帝都がこの場所に制定されてから随分経つが、当初は湖などなく、ただの平地であったらしい。伝承によると、あの湖は六十九代皇帝の御世に唐突に沸きあがったとされておるが、どこまで本当やら」


 今から二百年前、帝国は長きに渡る乾期に見舞われていた。空には一滴の雨もなく、地は枯れ、木々は死に絶え、歴史に残る大飢饉を招き起こした。作物を育てようにも水がない。それどころか、生命維持に必要な分を確保するだけで手一杯。そんな状況を憂いた時の皇帝は、帝城の最上階にて三日三晩、不眠不休で祈りをささげた。すると三日目の夜、突如として帝城がまばゆいばかりの光に包まれ、その膝元からとめどなく澄んだ水があふれだした。水は瞬く間に平野に広がり、翌朝には巨大な湖と化していたのである。

 湖は幾筋もの川を作り出し、帝国全土へと水を運んでいった。人びとは神に感謝し、飲まず食わずでその助力を請うた皇帝に敬意を表して、湖に『皇帝の慈愛』と名付けたそうな。


「実際のところは、誰にもわからぬがな」


 そんな御伽噺を話し終えた姫皇は、苦笑して肩をすくめた。しかし裕一は、その話を聞いて、また何ぞの魔具でもつかったのかな、という感想を抱く。城に入ったら、気晴らしに調べてみるのもいいかもしれない。少し楽しみになった。

 かすかなざわめきが、閉め切られた場車内にまで響いてきた。どうやら、帝都に近付きつつあるらしい。先ほどの光景を思い出し、裕一はかすかに頬を引きつらせた。


「さっき見てきたけど、もの凄い人だかりが道を埋め尽くしていたよ。まるでお祭りだね」

「姫様は民に人気がございますからなぁ」


 直ぐ隣のオルガがにこにこしながら一度大きく頷く。拳を握り、岩をも砕かんばかりの力が全身にみなぎった。


「臣民にとって、姫様は仰ぐべき主君であると同時に、幼き頃より見守ってきたつぼみでもあるのです。雨の日も風の日も、国民は姫様の日々を重い、熱きパトスを滾らせてまいりました。姫様が粗相をなさって納屋に閉じ込められたことも、迷子になられて花畑でべそをかかれていたことも、勿論ベッドに地図を描かれたことも、国民は温かく見守っておりましたとも! 具体的にはこの肖像画で!」

「な、なんじゃそれは!」


 裕一は神速を持ってオルガの取り出した手のひらサイズの肖像を見やった。納屋の扉を涙目で叩く幼き姫皇。花畑で目をこすりながら花をすすっている幼き姫皇。先日奥さんによって葬られたベッドでへたり込んだ幼き姫皇。その他様々な幼い少女が描かれた絵が、紳士の手によって馬車内で広げられた。写真家と見まがうほどのできである。すばらしい、裕一は思わず呟いた。姫皇はぷるぷると震えながらその光景を見守っていた。肖像を一つ一つ確認していくうちに、彼女のかんばせが朱色に染まっていく。羞恥か、はたまた怒りにか。どちらにせよ、美少女である。


「…爺、これは一体なんじゃ?」

「勿論、姫様の御尊影にございます」

「…何故、こんなものをお主が持っておる?」

「わたくしだけではありませぬ。少なくとも帝都に住まう臣民は殆どが所持しておりましょう。何せ、銅貨三枚での販売でございましたし、一種類につき平均十万枚は売れておりますからな」

「…これを描いたのは、誰じゃ?」

「無論、わたくしですが? 一枚一枚、心を込めて描き上げました」

「嗚呼、やっぱり。いいできです、大変にいいできです、同志オルガ殿」

「お褒めに預かり、恐悦至極に存じます。恥ずかしながら我がショタロリア家の私財を投げ打った、歴史に残る偉業と自負しております。幼き美少女を後世に残すは、これ紳士の務め」

「然り。では今度、取って置きの映像記録装置を進呈いたします。写真と呼ばれるものですが、本物と見まがうかのような絵であれば、きっとオルガ殿の覇業の一助となりましょう」

「おお、なんと! ありがたいことです。同志裕一様!」


 上半身だけ、がっしりと抱き合った。『平行世界連盟』の法で、発展途上世界にむやみやたらと技術を流出させることを禁じられているものの、彼の漢気を見てそれに応えられないものが紳士と呼べようか。否、呼べぬ! 魔法使いとして、そして一人の人間として、この偉業は達成させなければならない。裕一は硬く心に刻み込んだ。


『馬鹿じゃないの?』


 冷ややかな天使様の声でさえ、熱き血潮を止めることは不可能である。

 奇声を発しながら大暴れする姫皇を抑える時でさえ、裕一とオルガの顔から笑みと覇気は途絶えることがなかった。




 ☆☆☆




 ラヴォワの街で急遽編成された護衛兵たちが、一瞬だけ揺れた気配を発した。小柄な背中から凄まじい怒気を発する少女に続いて、裕一とオルガが馬車を降りる。お互い顔に青痣や靴後を貼り付けているが、その顔はひどく晴れやかだ。こと身体能力に関しては小学生にも負けると自負している裕一ならばともかく、武王と誉れ高いオルガまで彼女の攻撃を受けていたことを見ると、考えていたことは同じらしい。少女のすらりとしたおみ足が宙を舞うたびにスカートの合間からあふれ出していた聖域の光景は、きっと何事にも変えがたい至宝となって心に染み渡っていることだろう。ふと崇高なる同志と視線が合った。爽やかな笑みが間を行き来すると、何故か護衛兵たちの動揺がさざなみのように広がった。かすかなどよめきの故郷をたどると、男たちは一斉に明後日の方向へと顔をそらした。まるで見てはいけないものを見てしまったかのような反応である。二十歳前後と思しき騎士の青年などは瞳に雫をたたえていた。

 はて、彼らをおびえさせるようなことをしただろうか。ただ姫皇の勘気を受け流しただけだというのに。馬車も防音ではないし、遮音結界も張っていなかったから中の会話は漏れていたはずだから、どのような経緯であったかは承知しているはずだ。間違っても恐怖を振りまくような真似はしていなかった。


『皇帝に対してセクハラかましまくった挙句、「パンツゲトー!」なんて叫びが上がる有様を聞いていたのなら、ドン引きするに決まってると思うけど』


 まさかそんな、と裕一は天使様の呆れた視線を跳ね返した。こんなやり取り、『魔法使いによる世界征服組織』では日常的に行われているようなものではないか。引かれるのなら、以前ある上位魔術師が提唱した「全人類男の娘計画」くらいやらなければ不可能であろう。「リーマンものを否定するのか!」とさる女性魔術師によって企みは未然に防がれたものの、全ての属性を否定するかのごときかの計画は、さすがの『征服』でも若干腰が引けた対応になっていたのを覚えている。

「嗚呼。あのころは若かったですから。今はもう、もし昔に戻れるならあの計画を練っていた自分に、リーマンものの素晴らしさを教えてあげたいくらいですよ」とは、女性魔術師によって更生させられた男性魔術師の言である。話が逸れたが、その程度で引かれるほど、人類という生き物はか細い神経をしていないと裕一は思うのだ。


「あと奥さん。パンツじゃなくてぱんつ。カタカナ表記よりもひらがな表記のほうが、エロさが違うと思うとです」


 ぱんつ、のほうがどこかまろやかである。裕一は心内で力説したが、生憎と天使様はご多忙らしくとっとと引っ込んでしまった。このクーデレさんめ。

 思考が一区切りついたので、意識を周囲へと戻した。ちらりと頭上を見ると、アーチ型の構造物が空に抱かれて霞んでいた。オブジェにしては少し大きすぎる代物である。帝城の正門には、それを警護する騎士らしき鎧たちが両脇でずらりと整列し、合間を黒ローブの人影が埋めている。その中央にはマントやらアクセサリーやらをごてごてと着飾った人の集まりが、こちらを見て何事かを囁きながらずっしりと陣取っていた。見るからに偉そうな連中である。


「一応は政治を司る貴族方でございますよ」


 裕一の視線を追ったのか、オルガがそう注釈してくれた。なるほど、いかにも汚職役人です! というオーラで満ち満ちている。日本人の持つ一般的貴族感に寸分たがわぬその姿は、ある種の感動すら引き起こしかねないほどまざまざと瞳に写った。前を行く姫皇がちらりと、肩越しにこちらを見た。裕一たちが頷くと、彼女はどっしりした足取りで、騎士たちの道を踏破した。

 一斉に槍が掲げられ、貴族方が片膝をついて出迎える。姫皇は彼らの手前まで歩を進めると、「面を上げよ」と穏やかに命じた。ここからでは銀の絹糸しか見えないが、声音から察するに、微笑んでいるようである。

 集団が顔を上げた。彼らから発された政治家特有の威圧感が微風となって裕一の頬を撫でる。ふうん、と口内で言葉を転がした。姫皇は彼らに散々な評価を下していたようだが、それでも政治という業界に大なり小なり足を踏み入れている以上、それなりの風格は身に着けているらしい。世界最大の帝国の中枢ともなれば、行宮長のような小物臭を纏っているものは少数、と見てよさそうだ。まあ、それが本人の資質や性格に直結するとは限らないのだが。

 しかし、その中で一際異彩を放っている影が裕一の目をひきつけた。比較的年をとった、といえば聞こえの良い狸老人どもの中で、一人だけ若々しい姿をとったものがいたのである。といっても、おそらく四十は越えているはずだ。あくまでも周りと比較し、なおかつ帝国を担っているものの中では若いという意味である。がっしりした体躯は無駄な脂肪が一切なく、神話の巨人族を思わせるほどの長身。鋭い視線と鷲鼻は、美形というわけではないか不思議な魅力をかもし出していた。文官、貴族よりは武人が似合いそうな容姿の男は、限りなく冷めた視線で姫皇を見やりながら、魔王戴冠の祝辞と無事の帰還を讃えている。深いバリトンが、何故か耳から離れなかった。


「オルガ殿」

「はい、あの方こそ我らが帝国の宰相、マンシュテン=ベルガ=ワイヤルド公にございます」


 こっそりと、囁くような呟きを受けて裕一は彼の一挙一動に注目した。膝を突き、臣下の礼をとっているものの、気配の一切から忠節の念が感じられない。それは周囲の貴族大なり小なりも同じであるが、彼はそれを隠そうともせずどうどうと姫皇の眼前にさらしていた。知性ある澄んだ瞳、全身から発される濃密な気配。傑物だ。裕一は素直に認めた。

 ともすれば引き込まれそうになる空気は、カリスマとでもいえばいいのか。洗練された動作を持って、宰相は立ち上がってこちらに歩み寄った。


「ショタロリア公、陛下の護衛、ご苦労だった」

「もったいなきお言葉にございます」


 まずオルガが完璧な一礼をとった。本心からか、あるいは皮肉なのか。感情を一切表さないマンシュテンから、それを読み取るのは不可能である。彼の視線がわが身に降り注ぐと、宰相は誰何の言葉を発した。あからさまに怪しい自分にさえ、侮蔑の一睨みすらない。


「そやつは、我が友人でのう。此度の魔王戴冠を機に、余の近衛魔術師に任じたものじゃ」


 かすかなどよめきが貴族、騎士、ローブを問わずに巻き起こった。中でも黒尽くめのものたちからは尋常ならざる興味と敵意らしき感情が突き刺さっている。彼らから発される魔力から察するに、おそらくこの国の魔術師たちなのであろう。あのよそ者は何者だ、そんな台詞が背後でブイサインしているようであった。


「ほう、では彼はテレノーラの?」

「うむ、以前余がテレノーラに留学したときに知りおうてな。強力な水属性魔術師じゃ」


 嘘八百、ここに極まれり。事前に決めておいたこととはいえ、すらすらとよどみなく出てくる言葉の数々に、ああこの子も政治家なんだな、という思いが胸のうちで湧き上がった。どうせ調べたらすぐにばれるのだ。ならばおおよその感覚だけでもこの場でつかませてしまえば、後は舌先三寸で切り抜けてしまえ、という寸法である。近衛魔術師は皇族に一任される存在であるため、建前上は身分を問うていないからこそできる、荒業であった。


「なるほど。魔術師殿、よければ名をお聞かせいただけないか?」

「神崎裕一、と申します。宰相殿」


 仕事柄、お偉いさんとも話さなければならなかったため宮廷作法は一通りこなしているが、この国で通用するかどうかは不明である。当たり障りのない表現で一礼すると、マンシュテンの顔に、かすかな笑みが閃いた。理性的な瞳に似合わぬ、しかし体躯から見るとこの上なく絵になる粗野な笑み。瞬間、男の全身から吹き上がった覇気が裕一の身体に叩きつけられた。びしり、と足元の石畳が悲鳴を上げた。

 だから、裕一は唇の端を吊り上げただけの、簡潔な笑顔に留めた。見方によっては不適とも取れる表情に、刹那の間だけ宰相が瞠目した。

 しかしそれらは直ぐに無情の仮面に覆われ、しかし隠しきれないほどの感情が頬を吊り上げさせたようだ。先ほどとは別種の、意味合いの読み取れない笑顔で握手を求めた。貴族連中の間でさらにどよめきが起こったが、そんなことはもはや意識の埒外であった。

 裕一はそれに応じ、右手を明け渡す。がっしりと力強く握られた手を見ながら、内心だけで大笑いした。どこか遠く。ゴングが鳴る音を聞いた気がした。



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