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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第7章 ミステリーオブラウンズ
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89話 付き人たちのディヴェルティメント

翌日。


「ヒマね」


「ヒマですね」


「ヒマだな」


「ヒマです」


リンがユリアちゃんになってたら殺人事件の容疑者にされて、しかもヨミちゃんだと思ってたのが怪盗で、そんなこんなで会議が中断した。これだけ聞くと意味が分からないが、実際そうなのが困りものである。元々城内を探検するくらいしかやることがなかった上に、従者たち全員に謹慎命令を出されて部屋から出れなくなったことでついにやることが尽きた。


要するに私、ソルスはヒマである。


リンが怪盗の正体を暴いた後、私たちの手によって介抱されたヨミちゃんはとっくの昔に(そもそも寝ていただけだった)回復しており、今や私たちと一緒にヒマしている。


「ねえメリルちゃん、賢いあなたならこの状況をサクッと打破できるはずよ。この私が言うんだから間違いないわ。だからできるだけめんどっちくない方法で退屈を紛らわすことができないか考えてみてちょうだい」


「むぅ、そうですね…………あ」


どうやら早速何かを思いついたようだ。流石ウチのパーティーの頭脳担当。私の天元突破した知力には及ばずとも、他の筋肉と火力担当よりは有能ね。


しかし、少し言いにくそうにしてから、その後なにか吹っ切れたかのようにこう言った。


「私達も独自に事件の捜査をしましょう」


「何それ面白そう」


素晴らしい提案だった。これは私もちょこっとだけ負けを認めてあげてもいいかもしれない。


「えっと……でも、謹慎命令が出てますよね?」


「あくまでも従者だけでしょう?王侯貴族には謹慎命令は愚か、パーティーの中止命令すら出ていません。そして私たちは従者のフリをしていただけの、マテリア王国最強のパーティーです。本来ならば国賓並みの待遇を受けていてもおかしくない存在ですから、ちょこっとマテリア王を説得すれば実現できなくもないでしょう」


……珍しくかなり大胆なことを言い出したわね。


「メ、メリルさん!?流石にやりすぎでは……」


ほら、ウチの火力兼良心担当がしっかり職務を果たし出したじゃない。でも、これは流石の私もリンに怒られる気がする。いや、別に怒られるのが怖い訳じゃないわよ?ただ、高貴なるこの私が一人間に叱られるなんてことがあれば、全宇宙五十兆の太陽教徒に面目が立たない。そ、それだけなんだからねっ!


「……うん、流石の私もちょこっとやりすぎな気がしなくもないわ。メリルちゃん、こう、もうちょっと穏便に行けない?」


「ユリアはともかくソルスにも言われるとは思ってませんでしたよ!じゃあなんですか、皆はリンくんのことが心配ではないんですか!?心配してる私が馬鹿なんですか!?」


「…………うーむ、正直心配する方が馬鹿では無いかと思ってしまうが」


「そうね、私もヨミちゃんに同意するわ」


そういえばメリルちゃんも良心担当だったわね。でもリンの心配をするくらいなら明日の天気を心配した方がいいと私も思うの。ほら、結局あの子は自分で何でもかんでも何とかしちゃいそうじゃない?


「し、心配と言えば心配ですが、それはまた別種の心配な気がしますね……」


あら、良心担当ユリアちゃんはどうやらリンには呆れ返っているようね。まぁ今までの行動を見れば仕方ないと思うけれど。


「……メリル、一旦落ち着け。本当に行くと言うのであれば、私も着いていくから、な?」


「私もです、別種とは言え心配は心配ですし。事件も早期解決できるのであればその方がいいでしょうから」


「フーッ……フーッ…………すみません、熱くなってしまいました…………」


あれ、これって私以外みんな行っちゃう感じ?そうなったら逆に手伝いに行かなかった私だけ怒られるんじゃ……


「そ、そうね。やっぱりみんなで行ってこそのパーティーよね!いつも一緒なんだもの、助け合わなきゃダメよね!ね!」


「…………このまま自分だけ参加しなかったら怒られるかも、とか考えてませんか?」


「なんで分かったの!?」


こうして、密かに新たな探偵団が生まれていたことを、この時リンは知る由もなかった。



「いいよー」


あっさり許可が出た。


マテリア王国国王、マテリア・ネスト・クロノに臆することなくメリルちゃんが交渉に挑み、大した見せ場もなく了承された。楽チンなのはいいことである。


「えっと……本当に良いんですか?」


流石に早すぎると思ったのか、ユリアちゃんが確認をとろうとする。


「うん、もう破創の魔女さんにも大分強い権限をあげちゃってるし。その仲間ってならみんな許してくれるでしょ」


あっはっはー、と軽い調子で笑ってみせるクロノからは為政者の威厳など微塵も感じられなかった。隣でこちらをマジマジと見つめる女性の方が幾許かの圧力を感じるくらいだ。あれ、この国女王が統治してます?


「ねぇヨミちゃん、あのお姉さんすごく見てくるんだけど」


「あぁ……あれは好奇の目だな。ユリアの素性は知っているだろうし、大方メリルかお前の魔力にでも驚いているのではないか?」


「…………そこに私のあまりの神々しさに驚いてるってケースは」


「ない」


「…………」


「ないな」


二度も言わなくていいんじゃないかしら。


「まぁ許可さえ取れればこっちの物です。ありがとうございました!」


鼻息荒くメリルちゃんが頭を下げる。


その横ではユリアちゃんが何度も謝っていた。別に謝ることなんてないと思うのだけれど……


「ユリアが正しい」


ヨミちゃんはどうしてこう私と意見が食い違うのかしら。



「どうしたんだいオリアナ、別に今回は隠れてた訳でもないんだし、普通にお話してあげればよかったのに」


「うん…………いや、そういうんじゃないのよ。なんか……類は友を呼ぶって、最初に言った人はすごいと思うわ」


「きっと近くにあんな感じの人たちがいたんだろうね………」


少女たちが去っていき、二人だけが廊下に残っている。ほかの貴族たちは、パーティーに参加していたり、恐れて部屋に籠ったりと対応はまちまちだ。かく言う僕たちはこうして暇を持て余してるわけだけど。


「しかし……すごいメンツだねぇ」


「真竜族の王女に、睡眠欲の魔女、すごい魔力の神官……いえ、あれは神と言っても差支えがないわね。もう一人の獣人の子は魔力がほとんど感じられなかったけど」


「それはそれでステルス性能が高そうでいいじゃない。あの子、忍びみたいだし」


「忍びって確か……獣人の国に召し抱えられてた唯一の人間のことじゃなかったかしら?」


「いや、個人を指す言葉じゃなくて、どうやら役職らしいよ」


三勇者たちから聞きかじった忍者情報が役に立つ時が来るとは思ってもみなかったが、今日のオリアナとの会話の種にはなりそうだった。忍びの彼女には感謝だな。


「…………あの中の一人でも敵に回ったら、勝てるかい?」


「無理ね。王女様なら、練度によっては何とかなりそうだけど、あの破創の魔女の弟子なんでしょ?どうせ馬鹿みたいに強いわよ。あの忍びの子も、魔力はないけど尋常じゃない所作だったわ。多分一捻りで負けちゃうわね」


「ははっ、そりゃ心強い人達が仲間になったものだ。これも僕らの可愛い息子の仁徳のなせる技かな?」


「間違いないわね!」


親バカ共の親バカ話はこの後二人だけで一時間ほど続いたそうだ。



「さて、それじゃあまずは現場検証と聞き込みですね。二手に別れましょうか」


我らが探偵団の知力担当、メリルちゃんがサクッと指揮を執ってくれる。流石ね。


「現場検証は既に何度も行われているようだぞ?聞き込みに集中した方が良いのではないか?」


確かに、二度手間は良くないものね。


「素人の視点からしか得られない情報があるかもしれませんよ?ふふふ……私、ずっと憧れてたんです!現場に落ちてる白い粉を舐めて、『これは……』ってやるのに!」


それ以上は色んな意味でやめて欲しいわね。とある意味では命が危ないから。ユリアちゃんは筋金入りの箱入り娘だから、たまにポンになっちゃうのよね。そこも可愛いところではあるんだけど。


「ソルスからなにか意見はありますか?……というか、ここで意見を出しとかないと今後ソルスが役立つのは犯人が闇系統の魔獣や魔物だった時くらいですが」


中々な言い種ね。


「私は私でこの探偵団の神聖さ担当だから、ここにいるだけで役割を果たしてるの。私の清く明るいオーラを見ていたら、犯人は自ずと私に罪を告解したくなるはずよ」


「探偵団に神聖さが必要でしょうか……?」


やめてユリアちゃん、正論は時に神を殺すわ。


「そもそもそれなら既に怪盗がソルスに自白していてもおかしくないと言うことになるぞ」


やめてヨミちゃん、正論は…………揚げ足をとってもいいなら既に怪盗はリンによって自白してるわね。


「まぁいいわ、私としてはなんか…………右の廊下とかが怪しいわね。それとなく邪悪なオーラを感じるわ。爆薬でも落ちてるのかしら」


一瞬ユリアちゃんに視線が集まる。しかし当の本人はポカンとした顔でこちらを見つめてきたので、気まずくなってしまった。


「と、とりあえず行ってみましょうか!どうせやる事は決まってませんし!」


「ちょ、なんですか?なんで同時にこっちを向いたんですか!?」


騒がしいユリアちゃんを置いて、私たちは廊下を歩き始めた。


しばらく何の変哲もない廊下が続いたが……


「おや、これはなんでしょう?」


どうやらメリルちゃんが何かを見つけたようだ。


「おや、これは……見たことがありませんね。もしかしたら本当に爆薬かも…………」


肩越しに覗き込むと、見覚えのある小さな丸い玉を摘んでいた。


「あら、これ神器ね。神格が宿ってるわ」


しかし私の言葉を受けたメリルちゃんは可哀想なものを見る目でこちらを向く。


「こんなところに神器なんて落ちているわけがないでしょう、多方魔力を込めたら爆発するタイプの爆弾ですね。魔力を吸われてる感覚がありますし」


私がこの世界に転生する日本人にあげた物だから間違いなく神器なんですけど……


確か、外付けの魔力器官としての役割を果たす、サブの魔力貯蔵装置だったはず。事前に魔力を貯めておくことで、本来体内か、魔石位にしか貯め込めない魔力を、大量に貯蔵することが可能な代物である。


「お嬢様方、少しよろしいかな?」


「「「ひゃわぁぁぁ!?!?」」」


皆でメリルちゃんの手元を覗き込んでいたら、不意に後ろから声をかけられビビり三人衆が見事にビビった。もちろん私、ヨミちゃん、ユリアちゃんの三人である。


驚き振り向いた場所に立っていたのは、これでもかと言うくらいに白いもじゃ髭を蓄えたおじさんだった。なんか名前を呼んではいけないあの人に恐れられてそうな見た目である。


「私はマイルドン・スラスター、この国を統治している者なのだが……破創の魔女のお仲間と言うのは、貴女方で間違いないかな?」


「は、はぁ……」


「それは良かった……む、それは面白いものを見つけられましたな」


マイルドンと名乗ったおじさんもメリルちゃんの摘んでいる物を覗き込む。


「面白いもの?爆弾とかではないのですか?」


人の話を鵜呑みにしないのは良いけど、ここまで信じられないとさすがに傷つくわね。


「ほっほっほ!そのような危険なものではないぞ。それはかつて、二代前の勇者と共に魔王を打ち倒した賢者様の残した神器と言われておる」


「………………」


メリルちゃんが凄い顔をして固まっている。メリルちゃん、女の子がそんな顔するものじゃないわよ?


「じ、じゃあなんでこんな所に落ちてるんですか!?神器なんて貴重な物をそこら辺にポイするなんて、悪魔でもしませんよ!?」


恥ずかしさからか顔を真っ赤にしながら喚くメリルちゃん。しかし対するマイルドンは楽しそうに笑いながら、もっさもさの髭を弄っている。


「魔力を貯蔵できるという性質上、こうして人の集まる時にそこら辺に置いておくと人が発する魔力を吸収してくれるのだ。魔力を放置しておくと、少々気持ち悪くなったりするだろう?」


悠然と返すマイルドンとは対照的に、メリルちゃんはわなわなと体を震わせていた。


「め、メリルちゃん?間違いなんて誰にでもあるじゃない!あんまり気にしない方が……」


「う、うわぁぁぁ!まさかソルスに、しかも魔法についての知識で負けるだなんて…………一生の不覚です!じ、じゃあこれは知ってますか!?魔族の中には魔法とは異なる体系で発展した、研究者の間では呪いと呼ばれる未解明の魔法のようなものがあり、そのうちの一つにはこの神器のようなものもあって…………」


「ちょ、メリルちゃん!?落ち着いて…………あっ、待って!ヨミちゃん!ユリアちゃん!置いてかないでぇぇぇ!!!」


こうして暴走したメリルちゃんを止めるのに小一時間かかった。


マイルドンはずっとオロオロしていた。何しに来たのよあんた、事態をややこしくしただけだったじゃない。



「お、落ち着かれたかな?」


「はい、すみませんでした…………」


メリルちゃんの綺麗な土下座が決まった。家の子は軽々しく土下座し過ぎだと思うの。


「改めて……今から事件を調査してくれるのだな?ならば少し、私の頼みを聞いて欲しいのだが……」


「構いませんが……リンくんたちが既に調査を開始しているはずですよね?どうして私たちに……」


当然の疑問がユリアちゃんから発される。


「そこが問題なのだ。何を隠そう、頼みというのがあの怪盗についてでな……奴の企みが何か、まだ分かっておらん。傍に破創の魔女がいる間は奴も動けんだろうが、その破創の魔女が今や殺人の疑いをかけられた容疑者、私の立場からそのような依頼をする訳にはいかんのだ」


「そこで私たちに……という訳か。良いだろう、一度は不覚を取ったが、今度は私たちがやつのしっぽを掴む番だな!」


最近良いところなしのヨミちゃんが張り切っているが、ユリアちゃんはあまり乗り気ではなかった。


「なんでしょう、何か凄く嫌な予感がするんですよね。こう……なんと言うか、今後敵に回りそうな予感が……」


「なら尚更調べてみるべきじゃないかしら?敵を知れば何とやらって言うし」


「それはただ知っただけですね。知って対策を建ててなんぼです。私も賛成ですよ。あの怪盗は底が見えませんし、目的も分からないとなると不確定要素が多すぎますからね」


と、言うわけで。


「ユリアには悪いですが、そっち方面から調査を進めていきましょう。さぁ、権力と労力を存分に無駄遣いした暇つぶしを始めますよ!」


三人の雄叫びが、廊下に木霊した。



どうも、お久しぶりです。唸れ!爆殺号!と申す者です。二ヶ月ぶりですか……いやすいません、ほんとすいません、私はあまり設定を書き留めておくタイプではないのですが、今回珍しくいくつか記憶が飛んでしまい練り直しを強要されたもので、かなり時間がかかってしまいました。言い訳ですね、すみませんでした。

それはそれとして、いつの間にか本作のPVも11500を超えていました。ありがたいことですわ……相も変わらず投稿ペースはゴミカスですが、ちまちま進めていきますのでどうぞお付き合い下さい。お話の構成的に、300話完結くらいになりそうです。あと何年かかるねん……それではまた、次回の更新でお会いしましょう…………


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