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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第7章 ミステリーオブラウンズ
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88話 あなたは尋問できますか?ーとりあえずカツ丼でも食っとけ

ってな訳で。


「これより尋問を開始する!」


「はぁ…………」


なんとも言い難い煮え切らない返事だけが部屋を木霊し、やがて人間の可聴域を超えた周波数へと発散していき、静寂が訪れる。


ただいまこの部屋にいるのは、俺と同じく被害者……ギルフォード・テスタロッサの部屋を訪れたとの証言を得られた人々である。クロノの計らいにより、騎士や警察みたいな人達とほぼ同列の捜査権限を手に入れた俺は、ひとまず話を聞くことから始めることにした。と言っても俺はイレーヌと一緒に椅子に腰掛けて、お兄さんが尋問するのを見ているだけなのだが。


まずは一人目、被害者と同じ国の貴族であり、やたら汗をかいている小太りのおっちゃん。ペドロ・ウィリアムズと名乗った彼は、被害者と元々繋がりがあったらしく、被害者を警護しているSPさんからも証言を得られている。もし彼が今回の殺人の犯人であると言うならば、私怨による殺害という線が濃厚だ。


「それではペドロさん、あなたが被害者の部屋を訪れた経緯、そしてそこでの出来事についてお聞かせ願えます?」


「え、えぇ……私は昨日、彼……ギルフォード様とお会いする約束をしていたのです。せっかく大舞台に来たのだし、この件で少しくらい権威を強めようということで話し合いをする予定だったのですが…………あ、いえ、悪巧みとかではありませんよ?」


にわかに焦り出すペドロさん。悪巧みだったんだろうなぁ…………


「ですから、特に何かあった訳ではありませんよ。強いて言えば、ギルフォード様は何かに怯えられていたご様子でした。脅迫状でも届いていたのでは?」


それは俺のせいである。


「なるほどなるほど、ありがとうございました。今回頂いた情報はこの度の事件を解決に導いてくれることでしょう。それでは次の方、どうぞ!」


お兄さんが手際よく容疑者を入れ替えてくれる。


次は二人目、ここルーセリア聖王国の司教を務めるという青年。カウセル・パルタゴンと名乗った彼は、会議の参加者の管理を行う業務を遂行するため被害者の部屋を訪れたとの事だ。彼の場合は部屋に入って軽く体の調子などを尋ねたくらいで長居はしていなかったとの証言がSPさんたちから得られている。


「それでは、一昨晩あなたが被害者の部屋を訪れた経緯と、そこで起きた事を話していただけますか?」


「はい、まず僕は神官に言い渡された業務をこなす為に、ゲストの皆様の健康状態を尋ねて回っていました。あ、この神官に言い渡された仕事というのが、皆様の健康や所在の管理などでして……」


その後幾つか尋ねたが、やはり返ってきたのは既に調べ終えていた内容ばかりだった。


「……と、こんな所です。そう長居もしていませんし、僕が疑われる謂れはないと思うんですが……」


俺だって無いよ。いや全然あったわ。


「なるほどなるほど、情報提供に感謝いたします。それでは次の方、どうぞ!」


お兄さんに促され、次の人が入室する。


三人目、つい先日被害者からの罵倒に耐えきったうちの可愛い妹に話しかけてくれた婦人。ノーラ・ユーステリアンヌと名乗った彼女は、俺を除いて最後に部屋に入った人だと言う。彼女も被害者と以前から関わりがあったらしく、軽く口論になったようだがその後特に異変のない被害者が、これまたSPさんによって確認されている。


ほとんどの証言がSPさんによるものだが、やはり一番近くにいたのだし当たり前だろう。…………でも俺が部屋に行った時は居なかったよな。何だか微妙なきな臭さを感じる。


「それでは、被害者の部屋を訪れた経緯とその後の状況について、知っている限りで構いませんのでお話頂けますか?」


「はい……まず、私は元々彼とは知己の仲で、私としてはあまり好ましい相手ではなかったのですが、何かと執着されていまして…………一昨晩も呼び出されたので行きはしましたが、いつものように言い寄ってくるので、今日という今日はと思って言い返した所、少しヒートアップしてしまって…………とは言え、手を出されることも無く、私が一方的に部屋を出る形で話は終わりました」


ふむ……だからこの人はあのおっさんに詳しかったのか。言うなれば天敵みたいなもんだし、調べた上で拒絶する道を選んだのだろう。まぁあのおっさんを好める人間がこの世にいるかと言われれば、例えどれだけ地位が高かろうが居ないと思うが。


と、ここでイレーヌが口を開く。


「ノーラさん、あなたの年齢はお幾つですか?」


「へ?」


唐突な質問に、間の抜けた声が漏れる。


しかしすぐに顔を赤くしながらも、


「24歳です……」


と答えを返した。うーん、確かに人前であれだけ気の抜けた声が出ると恥ずかしいよね。


「イレーヌさん、あまり個人的なことは聞かない方がいいですよ?……それでは、情報提供に感謝いたします。この情報は事件の解決に大いに役立つことでしょう。自室に戻っていただいて結構ですよ」


…………尋問終わり!?


あまり目新しい情報が手に入らなかったどころか、それ以外にも何一つ気づけなかったぞ…………


仕方ない、とりあえず今得た情報を整理してみるか。それにある程度の情報を得たところで、いくつかの疑問が生まれた。そもそも情報が足りなすぎるという事とか。被害者の死因、俺が部屋を訪れた際に鍵が空いていたことや、SPさんがいなかったこと、そして、殺害方法に至るまで、何もかも分かっていない。


「ダメですわね…………とりあえずカツ丼でも食べます?」


「遠慮しておきます」


監視対象として、大人しく俺と一緒に尋問を見ていたイレーヌにキッパリと断られる。宗教の勧誘でもあるまいに、そんな強く断らなくても…………


ちょっと傷つきながら、監視のお兄さんに貰ったメモ帳に情報をまとめていく。数ページ埋まったことを鑑みるに、とりあえずの進展はあったと言っていいだろう。


「そういえば、私あっさりと見逃されましたけど良かったんですか?」


不意にイレーヌが口を挟む。


「だって…………ねぇ?」


監視のお兄さんの方を向くと、うんうんと頷きながら同意を示してくれた。


「なんかそういう所にこだわりありそうですもんねこの人」


「美学がなんたら……って言ってそうだよな」


なんと言うか、怪盗ってそういうイメージがある。自らの美学のために宝を集め、美学に則って保管するため盗み出す…………ほら、ぽいでしょ?


「ふ、ふむ、そうですか…………なるほど、それは私を真っ当だと評価してくれている……ということですか?」


「いや盗人なんだから真っ当ではないと思うぞ」


「右に同じです」


「…………」


拗ねたのか、そっぽを向いて口を聞かなくなったイレーヌ。猫のマスクも相まってヨミっぽく見える気がする。だからヨミに化けたのだろうか?


「魔女様、尋問も済んだことですしもう一度現場を見に行きません?話を聞いた上で見てみれば新しい発見があるかもですし」


うーん、確かにこのまま考え込んでいたとしても何かが分かるとは思えない。一旦見に行くのもありかもな。


そんなこんなで、俺たちはもう一度現場へと向かうことにした。犯人は現場に戻ると言うけれど、断じて俺は犯人ではないぞ!



「相も変わらず……ですわね」


「もうツッコミませんよ?」


好きにしてくれ、もう自分でも口調が制御出来ねえんだ。


被害者の部屋へと舞い戻ってきたはいいものの、やはり何の変哲もない部屋が広がるのみ。部屋の真ん中に人型の白線が引かれているだけで、先程と何ら変化はない。


「それにしても本当になんの証拠も残ってませんよね。ここまで来ると、むしろそれ自体が証拠なんじゃないですか?」


「どういうことです?」


「なんと言うか、ここまで入念に証拠を残してないってことは、それだけ準備をする期間があったってことだったりすると思うんです。そういう事実では無いけど、可能性が高いと考えられる仮説から考えていくのもいいんじゃないかなって」


俺の問いかけに、少々自慢げにお兄さんが答える。


ほう…………つまり、事実だけでなく、仮説を立てて検証していく、という訳だ。ならば、例えば想像しやすいところでいえば被害者が殺されるに至った経緯だ。彼は生前悪い噂がついてまわっていたようだし、事実クズだった。となるとやはり、怨恨が一番犯行動機としての可能性が高いだろう。


そう考えると、やはり元々関係の無かったカウセルさんは除外しても良さそうだ。


残るはペドロさんとノーラさんだが、この二人から絞るには、また新たな仮説を立てる必要があるな……


「ふと思ったのですが」


チョロチョロと現場を見て回っていたイレーヌが口を開く。


「この白線が被害者の倒れていた位置だとすると、幾つか辻褄の合わない部分がありませんか?」


「と言うと?」


「例えば……ここ」


白線の内側を指差す。そこには特に何の変哲もない深紅のカーペットがあるのみだが……


「ここ、かなり小さいですが、他と色が違います。おそらく少量の血液でしょう」


はぇー、全く気付かなかった。


むむ、確かに……酸化してどす黒くなってるから余計同化して見えるな。


「でもどうしてこんなところに血液が?被害者は出血していませんでしたし、誰かが争った訳でもないのに……」


「お兄さん、被害者には一切の傷が無かったんですよね?」


「は、はい。僕も確認してるので間違いないです」


なるほどなるほど、となるとまた新たな情報が増えたということだ。


「イレーヌ、これがいつ頃ここに付着したかとか分かったりするか?」


「そこまでは……それこそ魔女様なら鑑定スキルくらい使えるのでは?」


おっと、その手があったか。


それでは早速……


「『鑑定』」


俺の言葉に反応し、鑑定スキルが発動する。


「ふむ、これは……ほぅ…………」


「どうです?何か分かりました?」


カーペットの上でしゃがみ込む俺をイレーヌが覗き込む。そこに映った俺はきっと、全てを理解した超越者のように見えたであろう。


「…………何も分からないという事が分かった」


「……………………」


「そ、そんな顔で見ないでくださいます!?私の鑑定スキルだってそこまで万能じゃないんだよ!」


俺の視界に表示された情報は、『Unknownの血液(酸化、乾燥)』と言う至極見たまんまの物だった。むしろ後ろのカーペットの情報の方が多かったくらいだ。


しかし、逆にそのカーペットからは分かったことがある。


「このカーペット、取り外し可能な上頻繁に洗われてたみたいですわ。それに特殊な素材で出来てるらしくて、血液のシミも洗い流せるとかいう優れものみたいだ。つまりこの血液は最近付いたものとみて間違いないな」


「それだけ分かってれば十分じゃないですか!?」


お兄さんからの至極真っ当なツッコミが入る。いやまあそうなんだけど。


「普段の鑑定スキルさんの活躍ぶりからは想像のできない情報の薄さだったから……」


「鑑定スキルなんて、普通はそんな物ですよ。あなたのは次元が違います」


イレーヌが嘆息しながら呟く。そんなもんかぁ。


「うーん、新しい発見はこれくらいか。とりあえず、今日はここまでだな。晩飯食うか」


「今更ですけど私も頂いちゃっていいんですか?」


「いいんじゃないですかね?犯罪者だからって独房とかに入れても逃げ出しそうですし、近くにいてもらった方が見張りやすいですから許可も降りるでしょう」


イレーヌとお兄さんが大ホールに向けて歩を進めるのを後ろから見ながら、俺は何かを忘れているような気がしていた。


何か、見落としているような。取りこぼしているような。


そんな気が。

どうも、ウルトラお久しぶりです。唸れ!爆殺号!と申す者です。本当にウルトラお久しぶりですね……最近忙しかったもので。

そんな忙しい中でもこの作品を読んでいただけていたようで、ブクマ1件頂きました……感謝!

次回はできる限り早く更新したいですね……

それでは、また次回の更新でお会いしましょう…………

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