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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第7章 ミステリーオブラウンズ
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86話 あなたは犯人を見つけられますか?ーNo

午前四時三十二分、遺体発見

午前四時五十分、現場の保存が完了

午前五時三十分、既に事件は聖ケトラコル城内の人々に広まってしまっており、有事の際の厳戒態勢に移行したため隠蔽は不可能と判断。全来賓に事情を告げ、今後犯人が見つかるまでの間、一切の外出を禁じる旨を伝達

午前六時ちょうど、聖ケトラコル城内の全員を大ホールに召集、点呼により、被害者を除く入城者全員の所在、無事を確認


現場状況

第一発見者、真竜王国ドラゴニアのユリア姫の証言によれば、彼女がドアを開けたとき、カギは掛かっていなかったとのこと。鍵開けの魔法どころか部屋の周囲からは魔力痕跡が検出できず、鍵開けが可能なツールも持っていなかったため、彼女の言葉に嘘はないと判断。

被害者は部屋の中心で倒れており、目立った外傷は見られなかった。その他外見的異常は見られず、死亡時刻の特定は困難を極める。

室内は多少荒れているものの、彼の付き人によると普段から雑な性格だったようで考慮する必要性は低いと思われる。             


総合的に判断すると、今現在最も有力な容疑者は………………


ユリア姫だ。        


◇                                                        


「何かの間違いですわ!」                                         


聖ケトラコル城の大ホール、黒く光るアレと女神が天井で優雅にダンスを踊る中、俺は周囲から冷たい視線を浴びせられていた。                                                 


「お、落ち着いてください!まだそうと決まったわけでもありませんし、状況証拠から見たら他に疑いようがないというか…………」


「火に油ですわ!私は何もしていません!」                                    


俺の必死の弁解も空しく大ホールを木霊するだけにとどまり、誰一人口を開かない。まあ仕方ないと言えば仕方ないか。今の俺が置かれている状況は最悪だ。どこをどう取っても俺が一番怪しい。それに……………


「あの子って確か……………」


「ええ、一昨日の晩にあの男性と揉めていらっしゃった……………」


殺された相手があのおっさんだったことがさらに疑いに拍車をかけている。何しろ実際に恨みもある相手なのだ、加えて俺があの時間にあの近辺にいた理由も一昨日の腹いせなのだから、疑われても仕方ない。


絶望的な状況にため息を抑えきれない。なんとか疑いを晴らさねば……………否、それより容疑者候補を増やす方が手っ取り早いか?


ふと、思い出す。


「私、真犯人に心当たりがありますわ」


「ちょ、お姉様!?急に何を言い出して……………」


アリアが驚き引き止めにかかるが、今回に関しては感情に任せた暴走ではない。アリアに穏やかな微笑みを返し、立ち上がる。


「皆様、少しお聞きください……………つい先日、このルーセリア聖王国宛てに、怪盗からの予告状が届いていたことをご存じですか?」


突然の話題の転換に戸惑っているのか数人がざわつき始める。


「うむ、その件は既に我々の方からも全国に向けて触れ回っておるからの」


昨年戦ったサタンクロスの数百倍はサンタクロースにそっくりなマイルドンが、髭を撫でつけながら返事をしてくれる。ちなみにちょっとくらい援護射撃をくれると思っていたグレイさんは俺の横で死んだ魚のような目でぶつぶつ呟いている。まあ実の娘(今は俺だが)が殺人犯扱いされればこうなっても仕方ないとは思う。


「実は私、既に奴の変装を見抜いているのですわ。もしここに怪盗がいて、その噂にたがわぬ能力を持っているのだとすれば……………私以外にも犯行は可能ではありませんこと?」                       


まず必要なのは、選択肢を増やすことだ。

集団の同調圧力とは恐ろしいもので、このまま放っておけば、一切後ろめたいことのない、清廉潔白なこの俺が犯人として捕らえられるだろう。ドラゴニアのメンツやその他もろもろを考慮するとそれだけはどうしても避けたい。


そして、この会議中で最も後ろめたく、最も頼れる存在がいない者………………同調圧力が向きやすい場所こそが、怪盗イレーヌ・ペルンその人である。


「確かにそうだが…………しっかし嬢ちゃん、それは今まで誰にも見破れなかった奴の変装を見破ったってことか?それが正しいと示せるだけの根拠を持って?」


つい先日の会議でマイルドンにダル絡みをしていたくたびれたおっさんみたいな人が助け舟を出してくれる。偉いぞおっさん!ほめて遣わそう!


「ええ。少なくとも、今この場にいる誰が偽物なのかは分かっていますわ。そうと言えるだけの根拠をもって、ね」


俺の自信ありげな態度に、周囲のざわつきが大きくなっていく。


「ユリエル、ああ言ってますがどう思いますか?なんだか結構嫌な予感がするのですが」


「全くもって同感です、メリルさん」


「ねえマイルちゃん、私お腹すいてきたんですけど。なんか持ってないかしら?」


「わ、私は何も…………何分急な招集でしたし………………」


「ソルス、先日いただいた団子なら残っているが食べるか?」


アイツらは今日も今日とて好き勝手しているようだ。もう少し危地に陥ってる仲間に抱く感情とかないのだろうか。ないんだろうなぁ………………


ま、今ここには、俺の仲間は『三人』しかいないのだが。


「そこまで言うのであれば………………説明してみよ、ドラゴニアの姫君。我らこの世界を束ねる者が、其方を審判するとしよう」


初日から一番まともな人がいい感じの舞台を整えてくれた。あの人乱闘してるとき以外本当にまともだったな………………このカスみたいな世界には珍しいタイプの人種だ。国宝として保存すべきだろう。


「機会を頂き、ありがとうございますわ。それでは、単刀直入に行きましょう」


相も変わらず真っ白なこの建物の中で、天井の黒いテカテカを除けば、この場でトップクラスの黒に向かって、歩を進める。俺が一歩一歩踏みしめるたび、周囲のざわつきは大きくなる。まぁ、当たり前だろう。


俺が歩みを止めた場所には………………俺の仲間たちがいる。


「えっと………………ど、どういうこと、ですか?」


珍しくメリルが狼狽える。ソルスは俺の話など聞いていないかのように先ほどもらった団子をほおばっている。ユリアは狼狽えるメリルにつられるように不安そうな顔をしている。


ただ一人、ヨミだけは涼しい顔をして笑っていた。


「ヨミ………………あなたなんでしょう?」


俺の言葉に、ソルスが団子を吹き出した。なんだ、一応話は聞いてたのか。しかし、ヨミはヨミで相変わらず笑顔を崩さない。


「ふっ…………雇い主殿、私が怪盗だと?もしも本気で言っているのであれば、まずは自分の頭を疑ったほうが………………」


「そういう体はもういいですわ。あなたは既に、私の正体も見抜いているのでしょう?なら、いったんおあいこということにしておきません?」


会場のほとんどの人間にとって理解不能なことばかりが並べ立てられていく。今の彼らにとって、俺の言葉が何を意味するかなど全くもって予想できないことであろうが、目の前で俺の仲間に化ける怪盗にとっては至極明白だろう。


「分かりません?私の正体を明かしてもいいから、あなたも観念しなさい、と言っていますのよ」


俺の言葉を受け、ヨミの表情が少し歪む。それはまるで、ずっとほしかったおもちゃを手に入れた、恍惚とした子供の様で………………


「ならばもう、その言葉遣いも不要なのでは?『破創の魔女』様」


今まで放っていた、いつものヨミの声とは全く違う、低めでハスキーな女性の声が応答する。


その変貌具合と、言葉の内容が、更に会場のざわつきをヒートアップさせた。


「ええっ!?ヨミちゃんじゃなかったの!?」


「全く気付きませんでした………………」


流石にそれはどうなのと言いたいのは山々だが、家の仲間は基本的にこんな感じなので期待はしていなかった。


「おい、破創の魔女って………………」


「『結界村の結界崩し』かよ!?なんでこんなところに!?」


「そういえばドラゴニアと縁があるって聞いたことが………………」


なぜか想定より俺への驚きが多いな?まあいいか。


ヨミの周囲にいた人々は距離を取り、俺と彼女との間に空間ができる。ヨミ…………いや、イレーヌ・ペルンの下へと近づき、一番大切なことを尋ねる。


「ヨミをどこにやった?今すぐ返してもらおうか」


お、何気なく口調が元に戻った。やはり俺はこうでなくては。


対するイレーヌ・ペルンは、小さな破裂音とともに変装を解除し、本来の姿へと戻った。長いミルク色の髪、同じくミルク色を基調としたスーツを赤いネクタイで締めている。そしてなんといっても目立つのが、猫耳のついた、目元を隠す白いマスクだ。常時ニヤニヤしているように見えるが、目元あたりが見えないので何とも言えない。身長は高めで、今の俺より数センチほど高い。


「ご安心を。ヨミさんには一切の手出しをしておりません。少し眠っていただき…………ここに収納していただけですので」


彼女が指を鳴らすと同時に扉が現れ、開かれた先は光に満ちていた。そして、中からヨミをのせた台車がひとりでに転がり出てきた。


「なるほどなるほど、ユリア殿………………いや、破創の魔女殿。其方の推理、見事であった。これで怪盗による被害は未然に防げたことになるが………………結局殺人事件の方はどうなのかね?」


マイルドンが尚も髭をなでながら聞いてくるのに対して、俺はヨミを介抱しながらではあるが、会場に向けて大ハッタリを放つ。


「そんなもの、彼女がやったに決まっているでしょう!」


ビシィッ、と俺の指がイレーヌの方に向けられるのに呼応して、周囲の人々の視線が彼女に集まる。彼女は小さくため息を吐き、観念したかのように………………


「私ではありません」





………………えぇ。


ハッタリ大失敗!

どうも皆さんお久しぶりです。唸れ!爆殺号!と申す者です。いやぁ、時がたつのは早いもので、前回更新から一か月以上が経過してしまいましたね………………いつもいつもすみません。

とまあ恒例の謝罪はこのくらいにしておいて、色々ご報告を。先日ブクマを一件いただき、ついに総合ポイントが60に到達しました!いえい!!本当にありがとうございます………………!そしてそして、なんと総合PVが一万間近!ようやく大台に乗れそうです!それもこれも皆様の応援あってこそです。いつも私の小説を読んでくださりありがとうございます………………!え?ありがたく思うより早く更新しろって?………………それは難しい相談ですね。

さてさて、かれこれ三年半以上書き続けてますが、構想としてはまだ半分も終わっておりませんこの作品。まだまだ味のするガムですので、どうか賞味期限も消費期限も気にせず、歯の健康だけは守っていただければなと思います。何の話だ?

と、いうわけで戯言はこれくらいにしておいて。また次回の更新でお会いしましょう………………

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