8話 あなたはドラゴンがお好きですか?―当たり前じゃないかお前ドラゴン舐めんなよこのやろうドラゴンが嫌いな男の子なんて存在しな………
新章突入です!ここからが本番だ…!まだまだ書きたいところはたくさんありますが、書きたかったうちの一つがこの章に詰まっているのでぜひ、楽しんで行って下さい!何度も言いますが素人の文章なので過度な期待はせずゆるーーっと読んで下さると嬉しいです!では、行ってらっしゃい!
「お前ら、準備はできてるか?!」
「当たり前じゃない、いつでも行けるわよ!」
「ま、待ってくれ主!私は服が一着しかないのだが!」
今さら過ぎるわ!
「リン君、枕を持って行っても良いですか?これじゃないと寝られないんです!」
「いつも俺達の背中でグッスリじゃないか」
準備万端な俺達に対して、ヨミもメリルも全く準備が整っていなかった。
「さっさと準備しろよ全く、俺たちを見習えよな。いつでも出発できるぜ?」
「昨日の夜から楽しみで寝られなかった二人に言われたくないですよ!………全く、たかが旅行、しかも仕事のついでだって言うのに何がそんなに楽しみなんですか………?」
今の俺は、夜通し起きていたため今も続く深夜テンションによって興奮値爆上がり状態であった。
「何がってお前真竜王国だぞ、真竜王国!楽しみに決まってんだろ!!」
◇
闇ギルドである黒の獣達を倒し、ギルド長を拷問している時にその知らせは舞い込んで来た。
俺たちの戦いの余波で周辺の村に被害が出たらしい。
しかもその被害額を俺に請求してくると来た。
すぐさま俺はギルドに直行し、直談判した。
「おい、どういうことだ!俺はできるだけ周辺に被害が出ないように戦ってたんだぞ!」
「ム?あんたが破創の魔女とやらか…」
見た目の割には毛量の多いおじちゃんが俺に話しかけてきた。
「あぁそうだ!一体全体なにが問題だったって言うんだよ!」
「何が…問題だっただと?!ワシらの街は全てが水に流されたんだぞ!普段は少ししか水の流れない川が雨も降ってないのに大氾濫を起こしたんだ!それが上流で戦っていたお前たち以外のせいだったとして!一体誰のせいだと言える?!」
水…?流された…?何か思い当たる節がある気がするが…。
「おいおいちょっと待ってくれよ…。俺たちゃ誰も水属性の魔法なんざ使ってねぇぞ?」
確か使ってないはずだ。
と、そこに俺の中で芽生えた不安要素が自らやって来た。
「魔女様!一体何があったの…で…すか…?」
そう、『水竜王』のトーレンさんである。
ま…まさか…そんなっ?!
だがまだ疑うのには早いだろう。念のために聞いておく。
「ト、トーレンさん?さっき戦ってた時に、魔法…使ったりしました…?」
『使っていない』という返事を期待しながら…!
「はい、使いましたけど…それが何か?」
まだだっ!まだ水属性の魔法とは決まってない!
「ちなみに…どんな魔法を?」
頼む!なんか他ので頼むっ!
「使ったのは確か…『水竜弾』…だったと思います!」
「その効果は?」
「水属性中級魔法の竜版で………」
やっぱりお前かーーーーっっっっ!!!!
水属性の中級魔法は『水弾』と呼ばれる。超高圧力をかけた水を相手に投げ攻撃するという魔法で、相手の体を貫通する程の威力を誇る。他の中級魔法と比べると殺傷能力の高い技だ。
高圧力のかけられた水は一定時間経つと元の体積に戻る。この魔法は投げる力も威力に関わってくるため、相当強く投げたのだろう。あの平原に川はないが、かなり強く投げれば届かないこともない。そして体積を取り戻した水は、一気に下流まで流れていく。
俺は膝から崩れ落ちた。
「すいませんでした…!俺たちが悪かったです…!全責任はトーレンさんにとらせますので…」
「ぼっ僕ですか?!一体何があったって言うんですか?!」
トーレンさんにも話をしてもらう。
「すいませんでした…!僕たちが悪かったです…!全責任は魔女様がとってくださいますので…」
しれっとなに言ってんだでめぇ!
「イケメンだからってなにしても許されると思うなよ!俺にそんなに金があるように見えるか?!」
熱くなってしまったせいで、俺はトーレンさんの胸ぐらを掴んでブチギレていた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ちょっとふざけただけですよ!それに魔女様はこれからお金持ちになるんだから良いじゃないですか!」
これからお金持ちに…?何の話だ?
被害にあった街のおじちゃんが話かけずらそうにしながらも話しかけてきた。
「そ…それで、どうするんだね?あんたが被害額を払ってくれるのかい?報酬を差し引いても数千万は下らんが…」
「はい、全部魔女様が払ってくれますよ」
おい、何勝手に決めてんだ!
おじちゃんはそれで納得したようで、お友達を連れて帰っていった。
くそっ!追いかけるにももう遠い!ていうか足早すぎだろ!
トーレンさんが言った。
「と、言うわけで…立派な借金持ちになった魔女様に一つ提案があります」
こいつ…あたかも自分は関係ないみたいな顔して言いやがって…!
「我らの国、真竜王国ドラゴニアでは、最近宮廷魔術師団長であった方が退職されたのです。そこで!次の魔術師団長を魔女様にお願いしようと思いまして…」
フム、仕事の依頼か…。やっぱり一番大事なのは、
「給料は?」
「うっわ、仕事内容より先に給料聞くとかどんだけお金大好きなのよ…」
ソルスか全力で俺に引いていた。
いつの間にか俺の仲間たちもギルドに集まっていたようだ。
一応言っとくが、金がないのはお前らのせいだからな。
そして借金は、やっぱりいけ好かないこのイケメンのせいだ!
「月給が、街で一番の豪邸が買えるくらいの額です」
「決まりだ、行くぞ!」
俺は即答した。お金持ちになるってこういうことだったのか。
始まるぜ、俺の超ゴージャスでセレブな異世界生活が!
◇
2日後。
俺たちは家を出て、村に新しくできた駐車場もとい、駐馬場に向かう。
今回の旅は、真竜王国ドラゴニアの最西端に位置する水の都ベルネチアへ向かう、6時間程の馬車旅だ。
本来ならテレポートで一瞬なのだが、異世界での旅と言えばやっぱり馬車だなぁ、ということで今回は馬車旅になった。
ちょうどトーレンさんの乗ってきた馬車があったため、それに乗っていくことになった。
一度見に行ったが、王子やおっちゃんもその馬車で連れてきたらしくとても大きな馬車だった。
ちなみに王子とおっちゃんはテレポートで帰った。
駐馬場が見えてくる。
「魔女様ー!!皆さーーん!!こっちですよーー!」
トーレンさんが笑顔で手を振ってくる。
「皆さん遅かったじゃないですか、待ちくたびれましたよ!」
「トーレンさんもですか………」
メリルが呆れたように呟く。
悪かったな、遠足が待ち遠しくて寝れない子供みたいでよ!
そんなことは聞こえなかったようなトーレンさんは楽しそうに言ってくる。
「皆さん、馬に触ったことはありますか?なければどうぞ触ってみて下さい!」
馬たちは目がクリクリで、鼻をフコフコさせている。
触りたい………
俺が馬車馬に近づくと…
「ヒヒーン!!」
馬が急に暴れだす。
なんだ、こいつら。やけに俺にビビるな………?
「こ、こら!落ち着け!」
慌てて御者のおっちゃんが止めに来てくれたお陰で大事にはならなかった。
「す、すみません!うちの馬が…!!」
「大丈夫ですよ、誰にも怪我はないですから…」
………触りたかったなぁ。
俺がしょんぼりしているのを見てか、ヨミとメリルは触るのに遠慮していた。
「かっわいい~~~!!ってあれ?」
そんな空気も読まず、馬に触ろうとしたソルスのせいでまた馬が暴れだす。
「あぁぁぁっ?!すみません、すみませんうちの馬がぁっっ!!」
すみません、ホントにうちの女神がすみません…!
「そ、それでは皆さんそろそろ行きましょうか!」
ソルスまでしょんぼりし始めたのを見て、トーレンさんが出発を促す。
「そうだな、行くか…!」
俺の言葉を皮切りに全員が乗り込んでいく。
俺は乗り物に弱いので窓際にしてもらった。
俺の隣はメリルである。普通ならちょっとドキドキしちゃったりするシチュエーションなのだろうが、理由が「真ん中だとどっちに倒れても痛くないので眠りやすいんです!」なのでドキドキのしようもない。
その隣にソルス、俺の反対側にヨミ、その隣にトーレンさんという席順だ。
「それじゃあお客さん、出発しますよ!」
ピシッと馬が鞭打たれ、馬の鳴き声と共に馬車は動き出す。
真竜王国ドラゴニアへと向けて………。
◇
馬車は森の中を進んでいる。
「………目的地は遠いのか?主………ううっ」
「わ………分からっ………おえぇっ」
ダメだ、ヤバい、死ぬ…。
途中までは何度か街で止まり、休憩していたので平気だったのだが、最後の街からベルネチアまでが遠すぎた。
「魔女様、ヨミさん、大丈夫ですか?!もうちょっとで着きますから、それまで我慢して…」
ちくしょう、マイペースに眠るメリルが今日ばかりは羨ましい!
「止まりな、お前ら!」
「ねぇねぇ、なんか敵襲っぽいわよ?」
「敵………襲………ダメだ、吐くわ」
「やめて下さい!吐くなら外で…!」
俺は外に飛び出し、木々に肥料を撒き散らす。
―――ふぅーっ、スッキリした…
襲撃を仕掛けてきたのは五人組の男達だ。
「おいお前ら!いーい馬車に乗ってんな~!ちょっとお金と女を恵んでくれよ!!」
一番デブイ奴が叫ぶ。よしこいつをデブと呼ぼう。
一番デブイ奴をデブと呼ぶことにした。よろしくね、デブ!
斧を持ったヒョロイのはヒョロで、小さいのはチビ、後は特に特徴がないし、その他でいいや。
ヒョロ以外も物騒な武器を携えている。
いつの間にか出てきていたソルスが負けじと言い返す。
「ほーぉ………あんたたち、私たちに勝てるとでも思ってるの?仮にも女神であるところのこの私を襲ったのだから、相応の覚悟はしときなさいよ…?」
デブが叫ぶ。
「おいお前ら!あの痛い女以外を拐うぞ!」
「「「おう!!」」」
「なーーーんでよーー!!!この中だったら私が一番可愛いでしょ?!ねぇ!ちょっと!何で目を反らすのよ!!」
ソルスがトーレンさんの首を絞めながら叫ぶ。
「ちょっ、くっ苦しっ………!」
やめろ!それ以上はホントに死んじゃうって!!
こいつらはいわゆる山賊という奴だろう。山賊…初めて見るな。
「ふーっ、落ち着いた…。よしっ、主!私が殺ってくる!」
馬車から飛び出しながらヨミが叫ぶが…
「刃物持ってる」
「いやぁぁぁぁぁ、やっぱりムリッ!!」
そうなるよな…。
飛び出してきた時はカッコ良かったのに…。
全く、俺が殺るしかないか………。
「行くぞ、お前ら!」
突っ込む気満々だったデブが叫ぶ。
だが…
右にズレて突進、一人目撃破。左に軽く腕を振り、もう一人も気絶させる。三人目、四人目はヤンキー漫画とかで良くある、二人の頭を持ち上げてぶつけて倒す奴をやってみたかったのでそれで倒した。もちろん他の奴らだと俺の身長が足りないのでチビとその他Aである。
返事は帰ってこなかった。
それもそのはず、みーんなデブの隣にまで詰めよった俺によって倒されてしまったんだから。
デブの顔が青ざめる。
「な、何だ!何をした!!」
問いかけには答えず、俺はデブに話しかける。
ニーーッコリと微笑みながら。
「死にたい?」
「うわあぁぁっっっっ!!!!」
デブは仲間も連れずに逃げていく。
ふえーーっ、倒した倒したーっと。
ソルスが俺に軽蔑の眼差しを向けながら言った。
「あんたって本当に人の心を落っことして来ちゃったんじゃないの?そうじゃなければあんな顔であんなこと言えないわよ…」
「落っことしてきてねえっての!!あれだよ、脅しってヤツだよ!ああすれば逃げてってくれるだろ?!恐怖で足を洗うかも知れないし!」
ふーんとだけ言い残し、ソルスは馬車に乗り込む。
俺も続いて馬車に乗り込んだ。
痛い痛い、そんな目で見ないで!
馬車の中は目的地まで微妙な雰囲気であった。
◇
「皆さん、見えましたよ!真竜王国ドラゴニア、水の都ベルネチアが!」
やっと着いたか………
気まずい雰囲気を乗りきった安堵から、ため息が漏れる。
俺は窓から、外の景色を見る。
綺麗な街だ。
さすがに水上都市、とは行かなかったが街の真ん中に川が流れており、そこから街中に水路が引かれている。
住民は竜族と人間が半々くらいで他の都市に比べると人間が多いらしい。
真ん中の川で街が二つに区切られており、東側が住宅街、西側が観光客用になっているとトーレンさんが教えてくれた。
御者のおっちゃんとトーレンさんが出ていき、守衛の人たちに客人だと話しているのが聞こえた。守衛の人が、最近は物騒だと話していたのは聞かなかったことにした。ちなみに守衛の人も竜族らしい。
馬車は東側の住宅街の方に入っていく。
「今日は屋敷に宿泊して頂いて、明日のお昼頃に王都に出発、という予定になってます。今日はもう遅いですし、ゆっくり休んで下さい」
もう日も沈みますし、とトーレンさんに言われたのでそうすることにした。
ソルスが、今すぐご飯食べないと死ぬ、とか言い出したのでお屋敷では大慌てで夕食の調理中らしい。
街では色々な商売が行われているようで、いかがわしいお店とかもあった。だが、もうそんなところに行く元気もないので今回は諦めるか…。
次回は絶対に行こう。
馬車は住宅街をゆっくりと進んでいき、気づけばもう屋敷の前だった。
「おっきな建物ですねー、何人住んでいるんですか?」
メリルがトーレンさんに問いかける。
「屋敷に住んでいるのは僕と使用人の皆さんだけですよ。自分の部屋や大広間以外にも色々必要な部屋を造っていったら、これだけ大きくなったそうです」
そう、メリルの感想が全てである。
本当………
「でかいなぁ………」
俺の家が丸々10軒ぐらい入りそうだ。
「皆さん、どうぞ中へ!夕食もしっかり準備してありますよ!」
俺たちは中へ入っていく。
「「「トーレン様、お帰りなさいませ!」」」
たくさんのメイドさんたちに挨拶をされる。
おいおい、女の子ばっかしじゃねぇか。これだからイケメンってのは全く………
一瞬、たった一瞬だが寒気を感じた。
………いや、きっと気のせいだな。
「リン!早くしなさい!とんでもないご馳走よ!」
全く、食い意地のはった女神だな………
「うまうま、うまうま………んくっ、主っ!これを食べてみろ!私はもう明日死んでも良いかも知れない…」
そんなに旨いのか…?普段俺の料理スキルを惜しみ無く使った料理を食べているコイツらがいうのだ、きっと旨いのだろう。
「いただきます………っ!!旨い!なんだこれ?!」
見た目は蟹のようなのだが味も蟹だ。だが、普通の蟹ではない。
「ふふん、美味しいでしょうそうでしょう?!何せベルネチアで捕れた新鮮な呪Y蟹ですからね!」
何が呪で何がYなのかは全くわからないが旨いのでどうでも良い。
「んっ…んっ…んくっ…ぷはぁーーっ!」
「おいソルス、なに飲んでんだ?」
「ふふーん、やっぱ気になっちゃう?気になっちゃうわよね?」
良いから早く教えろよ。軽く『威圧』スキルを使いながら続きを促す。
『威圧』スキルはその名の通り相手を威圧するスキルである。相手の魔力防御より自分の保有魔力が高い場合にしか使えないが、相手がビビる。以上。
「わ、分かったわよ!これはねなんと1000年物の黒ワインよ!」
1000年物ってなんや、1000年物って…さすがに腐ってんだろ…
「黒ワインってなんだ?あと1000年物って腐ってんじゃねぇのか?」
ソルスはチッチッチッと指を振る。やめろよ、屋内で技をランダム発動させるなよ…
「全く、あんたは異世界を舐めすぎよ?1000年持つお酒は少ないけど500年くらいなら余裕で持つわよ?あと、黒ワインは私も分かんないわ!」
ドヤ顔をするな!わからないくせに!
◇
「水の都、と来たら行くのは!」
温泉ですよね。
俺たちは街の温泉へと向かっている。なんとあの屋敷の風呂は温泉を引いていないらしい。
「観光客用の方に行けばたくさん温泉を引いているお店がありますから!」と首を締めながらトーレンさんを問い詰めたら言うので向かうことにしたのだ。
「おっ風呂、おっ風呂、おっ風ー呂ー♪」
「どうしたんですか、リン君?やけに上機嫌ですね」
メリルが少し不機嫌そうにしながら聞いてきた。
「温泉だぞ?温泉!世界で一番癒される場所だぞ?そりゃ機嫌も良くなるだろ!」
そう、俺はお風呂が大好きだ。決して女の子の裸が見れるから、とかではなく純粋に温泉が好きなのだ。
暖簾をかき揚げ中に入る。
料金を払っていると女性陣は女風呂に入るので先に入っていった。
そして俺は今葛藤していた。
そう、
「男風呂、女風呂、男風呂、女風呂………!」
俺、どっちに入れば良いんだ…!
見た目は女、中身は男、その名も破創の魔女リン!なのでどっちに入れば良いのか…!
でも男風呂に入ってしまえばさすがに見た目があれなので捕まってしまうだろう。かといって、俺が女風呂に入れば仲間たちに殺される。
うーーむ、どうすれば………!
そして、まっすぐ前を見る。
おぉ…!これなら…!
俺は迷わず、混浴と書かれた暖簾を吹っ飛ばさんばかりの威力でかき揚げ入っていった。
日本に居たときには混浴を見たことが無かったため、ないと心の中で決めつけていたようだ。
やっぱ異世界って素晴らしいな!
体を流し、お風呂へと向かう。
そこに、一人の男がいた。
銀髪、赤目で40代くらいのおっさんだ。しかも渋イケおじだ。
別にイケおじなら許せるな…。
「フーッ………」
ゆっくりと湯船に浸かる。もちろんあそこやあそこは隠してある。
するとイケおじは立ち上がり出ていった。
「また会うことになるだろう」
と、言い残して。