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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第7章 ミステリーオブラウンズ
88/91

84話 あなたは異常を感じますか?ーYES

「どうですか、お兄様?何か不審な点などはありましたか?」


「いいえ、どこをとってもただの封筒と手紙以上の代物ではありませんわ。となると壁に突き刺さっていたのが一番の疑問点ですが………………そこはまあやろうと思ってできないことでもないと思いますし、気にするほどのことでもないと思いますわ」


そう、全くもっておかしいところはない。あまりにもおかしいタイミングでこれを発見したこと以外は。現在俺たちは、先ほど見つけた、城壁に突き刺さっていた封筒を検分している。爆弾的な類であることを懸念しての行動だったが心配しすぎだったようだ。だからと言ってこの不安はぬぐえたものではないが。


「問題はこれが、明らかにイレーヌ・ペルンの手によるものであること、ですわね」


アリアに聞いた所によれば、かの怪盗は大の変装上手だとか。もしかしなくても、俺の変装が見破られている可能性が高い。もしこの封筒が何かしらの罠だったら………………いや、さっき魔法的要素はないと調べたばかりじゃないか、恐れることはない。俺は封筒の封を開き、中身を読み上げた。


「えーと、『ごきげんよう、真竜王国ドラゴニアよりいらっしゃった皆様。この度は皆様方に折り入ってお願い申し上げたいことがあります』………………捨ててもいいかしら」


「待て待て魔女殿、まだ切り捨てるには早すぎるぞ!せめてもう少し内容を教えてくれ!」


えー、めんどくさい………………こういう明らかなフラグは関係を持たないことが肝要だってのに。


「………………分かりました。『現在私は、美しいものを守るために日夜活動を行っております。今回私が狙いを定めたのは、この世界で最も美しい女性です』………………不味いですわ、本当にユリアかアリアの線が浮上してきましたわよ」


「え、えへへ………………」


「笑って居る場合かアリア!お前の身が狙われておるのかもしれんのだぞ!さぁ、魔女殿、続きを!早く!」


最も美しい女性というのが琴線に触れたのだろう、顔を真っ赤にして照れ笑いを浮かべるアリアと対照的に、不安が実現しかけて青ざめるグレイの姿はまるで正反対だった。二人並んで座って俺の話を聞いていたので余計に対比が際立って見える。


「何々?『それに差し当たって、一つ忠告をさせていただきます。私は既に、そちら側についての情報をある程度掴ませていただいております。もしもの場合、私から行動を起こさなくてもよいように、私のお願いを聞いてくださることをお祈りしています。それでは【破創の魔女】様、明後日の零時ちょうどにお会いしましょう』………………」


「………………これって、つまり」


先ほどとは打って変わった青ざめた顔で、アリアがつぶやく。俺も多分、似たような表情をしていることだろう。


もしこのことをバラされたらどうなるのだろうか。虚偽の申告によりルーセリア聖王国からの非難は免れないだろう。飯時に話した別の国々の貴婦人や青年たちからはどんな目で見られるのだろうか?


とはいえ、逆にもっと楽観的に考える自分がいるのもまた事実。虚偽の申告くらいでどうこうなるようなことはないだろうと。たとえ別人だと思って会話していようが、彼女たちの社交辞令は誰に投げかけても等しい言葉だろうと。


だがしかし、未知のリスクという、とんでもなく危険な弱みを握られていることには変わりない。………………イレーヌ・ペルン、これほどとは。


「まあ落ち着け魔女殿。たとえバレたところで我の親バカが事の発端だ。軽い笑い話程度で済ませられるだろうさ。………………そういえばマイルはどこに行ったのだ?今朝から見ていないが………………」


「まあグレイ様は寝てましたものね………………マイルさんなら『今日はソルス様達と一緒に探検してきます!』といって今朝からどこかに行きましたわよ」


「たしか夕食の席でも見なかった気がしますが、何をしているのでしょうか?」


小首をかしげるアリアも最高に可愛らしいが、確かに違和感を感じる。いくら何でも夕食も忘れて探検しているわけでもあるまいに………………


「仕方ありませんわね、私の仲間たちに聞いてきますわ」


「ああ、すまんな魔女殿。それでは私は晩飯にするとしよう」


「それじゃあ私はお兄様についていきますね!行きましょう、お兄様!」


それにしてもしばらく会わない内に成長したものだ。以前はあんなに恥ずかしがりやだったアリアが弾けるような笑顔を見せてくれる日が来るとは思ってもみなかった。


「ええ、行きましょうか!」



「マイル?ああ、メイド長ちゃんのこと?途中まで一緒に探検してたんだけど、『私のお嬢様レーダーが激しく反応しているわ!』って叫んでどっか行ってからは見てないわね」


「ええ、ソルスさんの言う通りです。でも何度か見かけはしましたよ?夕食の会場でも見ましたし」


「あら、そうでした?これはうっかりしてましたわね………………」


「………………ねえリン、なんでユリアちゃんの話聞いてから返事したの?そんなに私のことが信じられないっていうわけ!?」


「ええ」


怒り狂ってとんでもない魔法を紡ぎ始めたソルスを制止するのにかなりのエネルギーを浪費したが、マイルがしっかりいたということが分かって一安心だ。ちなみにこの間、メリルは一人寝息を立て続けていた。


「ふふ、どうやら懸念事項が一つ消えたみたいですね。それじゃあお姉様、そろそろ寝ましょうか。明日も早いことですし、また今日のようなことがあるとも限りませんからね」


それもそうだ。それにまだ時間があるとはいえ、イレーヌ・ペルンの件もある。睡眠はしっかりとっておくべきだろう。


「それでは皆様、また明日………………」


と別れの挨拶をしようとした俺の手をユリアが掴む。


「待ってください、お師匠様。今私たちはあるカードゲームをしていたのですが、何度やってもソルスさんに勝てないのです………………」


「主、私からも頼む。先ほどから何度やっても勝てない上に、煽りにあおってくるソルスがあまりにもウザ過ぎるのだ………………!」


なるほど、要するにソルスが鬱陶しいからサクッと倒してほしいということか。


「分かりましたわ!この私に任せておきなさい!で、なんのゲームをしているんですの?」


「あら、あんたもやるの?いいわ、あんたを完膚なきまでに叩き潰して日ごろの不遜な態度を改めさせてやるわ!具体的には一週間今の姿で私のメイドとして働いてもらうわ!もちろん命令は絶対よ!」


「いや、ですから罰ゲームを決める前に内容を………………まあいいですわ、それで、ソルスが負けたときはいかがなさいますの?」


「ふふん、私が負けたら、さっき転んだ子の怪我を治してあげたときにもらったこのお高いお酒をあげるわ!」


なんと、あの酒狂いのソルスが酒を賭けの対象にするとは………………それほどこのゲームに自信があるのだろう。


「で、結局ゲームの内容は?何をするんですの?」


「よくぞ聞いてくれたわね!このゲームは私が考案したの!ルールは至極簡単、1から15の数字が書かれた四セットのカード…………つまり60枚ね。この中から五枚カードを引いて、そのうちの一枚を場に出すの!それで数字が大きかったほうが勝ちよ!これを三回繰り返して、勝利した回数が多いほうが勝ちよ。どう?おバカなあんたでも分かりやすい簡単なルールでしょ?」


最後の一言に対して無数の反論が浮かび上がるが飲み込む。確かに簡単だ。だがそれではあまりに運ゲーが過ぎないか?最初に引いたカード次第ですべて決まってしまうのでは………………


「あぁ、大丈夫よ。そういうのも考慮して、あまりにひどい手札の場合は相手に見せてから一回までならカードの交換が可能よ。交換したカードは除外されるわ。それと、互いにカードを出す前に一度だけ相手に質問ができるわ」


「それって………………」


「あんたが言いそうな事なんか容易に想像がつくけど、もちろん相手の持つカードの数字を直接聞く質問はだめよ。まったく、五百年たっても変わらないんだから………………」


「五百年………………」とアリアがつぶやく。そういえばソルスについてはまだ誰も本当に女神であることを信じてないんだったな。というか先ほどからソルスに思考を読まれすぎている気がするのだが………………


「当たり前でしょ、トレーススキル使ってるんだから………………」


ん?トレーススキルだって?それは確か神職者が神の教えへと近づくために習得し、教祖に使うためのスキルだったはずだ。確かこのスキルは………………


「あなた、思考を読んでましたのね………………」


「あったりまえじゃ………………え?あれ?声に出てた?」


「ええ、思いっきり」


ソルスの顔から一気に自身の色が消え失せ、蒼白になっていく。


「ちょ、ま、待って頂戴!運よ!私すごく運が悪いのよ!?だからこうでもしないと勝てないじゃない!え、何その笑顔………………あれ、ヨミちゃん?ユリアちゃん………………?」


「『破壊』」


「お師匠様、もしソルスさんが敗北した暁にはもっと厳しい罰ゲームを追加しましょう」


「そうだな、それがいい。何しろズルして勝っていたくせにあれだけ煽り散らかしてきたのだからな!」


ヨミとユリアの声とひきつった笑顔が恐ろしい。これ、もし俺負けたら殺されちゃわない?だが、それはそれとしても、ソルスには一度完膚なきまでの分からせが必要だとは常々感じていたし、これもいい機会だ、なんとしてでも勝ってお仕置きせねば。




結局俺に負けたソルスが、ヨミとユリアに散々くすぐられ倒した。普段偉ぶっているソルスが助けを求めてくるのを無視しながら眺めた景色は最高だったとだけ伝えておこう。

どうも、お久しぶりです。唸れ!爆殺号!と申す者です。またしても更新に一月かかりましたがどうかお許しください………………次はもっと早くお会いできることを祈っております。それではまた、次回の更新でお会いしましょう………………

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