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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第7章 ミステリーオブラウンズ
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83話 あなたは戦いを愛していますか?ーYES

と、まあ色々あったわけだが。


「メリルさん、それどこにあったんですか?とても美味しそうです!」


「む、これですか。流石ユリエルはお目が高いですね。質より量のあの二人とは大違いです」


「おいメリル、人をブラックホールか何かみたいに言うのはやめてもらおうか。いくら私でも質は重要な要素だぞ」


「そうよメリルちゃん!私だって安酒で悪酔いするよりお高いお酒で気持ちよく酔いたいわよ!」


今日も今日とて晩御飯の時間だ。結局今日の会議は散々大乱闘する王たちを魔法で眠らせて事なきを得たのだが、乱闘に参加した全員がかなりの怪我をしていたのでソルスに治療させたり眠っている全員を壁に立てかけたりとかなり疲れる作業をしていたので俺もおなかがすいている。今日は腹いっぱい食べるとしよう。すると突然、俺の隣にいたアリアが俺の袖を引いた。


「おに…………お姉様、お父様が本当にすみません、いつもはあんな感じではないのですが、昨日の一言がかなり堪えているようで…………」


しおらしく、まるでいたずらをした子供のように頭を下げるアリア。なんていい子なの!?


「アリア、あなたは悪くないですわ。謝らないでちょうだい。悪いのはお父様なのですし、私たちは気にせずご飯をいただきましょう!」


そもそもこの件に関してはすぐブチギれたグレイに全面的に非がある。しかし、子供の前だというのに恥も外聞もなく殴りに行くのは、確かにいつもの彼らしくない動きではあった。


………………違和感、ね。俺は会議の前に聞いたヨミの言葉を思い出していた。既にこの中に怪盗、イレーヌ・ペルンが忍び込んでいるかもしれないという彼女の言葉は、半分正解、半分間違いといったところだろう。というかアイツ最近しっかり忍びっぽいことしてるよな。やはり刃物さえなければ有能な忍びであるだけに大きすぎる弱点があることが悔やまれる。


彼、もしくは彼女がどんな存在なのかは知らないが、もし俺のかわいい妹に手を出そうというのならば容赦はしない。この世界最強の力でもって打ち倒すのみである。


また一段と強く決意を固め、俺の言葉に笑顔で頷き返してくれたアリアとともに、夕食会場へと歩を進めるのだった。



「魔女殿、アリア、すまん!つい怒りが爆発してしまい…………」


部屋に戻ると、相も変らぬ水中部屋でグレイが見事な土下座をしていた。おお、これが一国の王の土下座…………グレイの引き締まった筋肉と相まって筋トレ中に見えないこともないが。


「全く、あんなに恥ずかしいことをするなんて思いもよりませんでしたよ!次回からは気を付けてください!」


アリアからしっかりお叱りを受けたグレイに既に俺が言うべき言葉はない。


「アリアの言う通りですわ。それにグレイ様もいつもと少し様子が違いましたもの。無理もありませんわ」


どうやら俺の言葉に引っかかるところでもあったのか、グレイが顔を上げ、問いかけてくる。


「いつもと様子が違う…………?魔女殿、それはどういうことだ?」


「どういうって…………アリアもいつもはこんな感じではないと話していましたし、私のイメージとも少し離れていましたわ。グレイ様って、いつももっと思慮深いイメージでしたのに…………まあユリアとアリアが絡めば別ですが、それは私の言えたことではありませんしね」


「うむ、言われてみれば、確かにストレスこそ溜まっておったが、あれほどの暴挙に出るのは我らしくない、か。まあ我も聖竜族であるから、らしくないとも言い切れぬがな」


「………………?どういうことですの?」


聖竜族であるから、とはまた意味深な言葉繰りをするものだ。真竜族の中で最も希少で、最も力強く、最も高い立場にある聖竜族はまだ属性を得ようというのだろうか?


「む、魔女殿にはまだ話していなかったか?」


「はい、ドラゴンスレイヤーが襲来したときに名前だけ出たくらいじゃないですか?」


ドラゴンスレイヤーが襲来したとき………………何か言っていたような気がするが思い出せない。


「そうか、それならば我が語るとしよう。聖竜族…………ひいては真竜族についての過去をな」


グレイは床から立ち上がりベッドへと腰を下ろそうとしたが、どうやら床の敷物のほうが気持ちよかったようで床へと座りなおした。


「話は今から千年前に遡る。これはまだ、真竜族が真竜族と呼ばれるようになる前の話だ。我々がまだ亜竜と区別されていなかった頃、我々は大きな変化を経験することとなる」



当時の世界は、歴代最強との呼び声高い勇者と、そしてこれまた歴代最強と恐れられた魔王軍がしのぎを削っていた。勇者パーティーが次々と魔王軍の魔獣を打ち取っていく中、対する魔王軍も多くの村や町、果てには国すらも攻め落とし、人間に大きな恐怖を与えていた。


この当時、竜とは世界最強の生物にして、神とすら対等だと考えられていた。その大いなる力は時には村を焼き、人を喰らい、魔獣も喰らい、時には雨を降らせ、緑を豊かにし、火山の噴火すら止めてしまうような良くも悪くも人々とともに生きる存在だった。


しかし、そんな竜族の中に、今までにない力を持つ竜が生まれた。


双子の兄として生まれたその竜は人の言葉を理解し、それを竜族に教えた。こうして竜族は人間の言葉を会得した。もちろんそれを良しとせず離れていったはぐれものたちもいた。それが現在の亜竜である。こうして言葉を覚えた竜族は、最初に言葉を会得した竜を王と崇め、そんな彼は名を得るべきだと考えた。あまたの竜たちが習得した人の言葉を使って名前を考え、最終的に採用された名が『ファイツ』であった。その語源は『闘争』。彼は人の言葉を習得できるほどの知性を持ちながらも、竜族としての闘争本能がずば抜けて優れ、また表面に露出している異端児でもあった。それゆえこの名を名付けられたのだが………………この後、彼はその名の通り、闘争に明け暮れる日々を過ごすことになる。


「君が『聖竜王・ファイツ』だね。相当のバトルジャンキーだと聞いてるよ。もしよかったら、僕らと一緒に魔王を倒しに行かないかい?あいつら、強いくせに逃げ足も速いからいつも倒しきれなくてさ。君の強さがあれば、きっと奴らもひとたまりもないはずだ。君は闘争本能を満たせる、僕らは魔王を倒せる…………どう?WIN-WINじゃない?」


こんな命知らずな提案をしたのは当時の勇者だった。この当時は、最強の勇者、最強の魔王、そして最強の竜がそろった、歴史的に見ても何らかのターニングポイントとなったに違いない年である。そして勇者とともに旅をしたメンバーも、破創の魔女一行に集った化け物たちを除けば歴代最高クラスの強者がそろったとてつもない時代であり、そしてファイツにとって最高の時代であったに違いない。それもまた、今を除けば、だが。


ファイツはこの提案を受け入れた。傲岸不遜な勇者やその仲間たちとは非常に気が合った。最強の勇者、最強の賢者、最強の聖女、最強の騎士………………そして、最強の竜。彼らはこの後、いくつもの激闘をともに乗り越え、ついには魔王を打倒する。そして物語は終幕と相成るはずだった。


はずだったのに。


「勇者よ」


「ん?どうしたんだいファイツ?」


「我はまだ戦い足りぬ。お前が我をバトルジャンキーと呼んだ理由を覚えているのならば、そして我が名のその源を覚えているならば、分かるであろう?」


「………………なるほどね。それで君は究極何をしたいんだい?返答次第では………………僕は君を二度と仲間と呼ぶことはできない」


「………………全てを倒したい。生きとし生ける、全宇宙の存在という存在を打ち負かし、我が力の最果てを確かめたい。………………もちろん、お前たちもな」


こうして、ファイツは人類最強に喧嘩を売った。


そして、伝説にその名を刻む。


「最強の勇者たるこの僕をもってして………………『倒せない』なんてね。君は僕の想像をはるかに超える強さだったよ。………………それじゃあ、また会おう」


「フハハハハハ!!!!!愉悦!これが我が最後………………否!始まりのための小休止か!勇者よ、お前たちと過ごした時はかけがえのない経験であったぞ!さらばだ、短命なヒトの子よ!『千年後』にまた会おうではないか!!フハハハハハハハハハハ!!!!!!」



「このようにして、初代聖竜王にして、最も賢く最も強い竜は彼の双子の弟の体に封印されてこのお話はおしまいです。まあなんというか、私にはよく分からないことが多いんですけれどね」


「ま、待てアリア、なぜいつの間にか語り部が我でなくなっているのだ!?」


俺ですら気づかぬ間に語り部役を奪われていたグレイが悲鳴を上げる。俺も怖い。この子もしかしてすごい才能の持ち主なんじゃ………………


「って、ちょっと待って頂戴アリア………………『千年後』って、もしかして………………」


「ああ、はい。今年ですね」


………………もしかしなくてもクソデカフラグじゃなかろうか。十中八九そうとしか思えないが。


「ですがお兄様、そう気にすることでもありませんよ。この千年間、特に何もなく平和に過ぎましたし、ファイツの強がりだった可能性も否定できませんからね」


ああやめてアリア!お前までフラグ建築士にならなくてもいいから!


「それに、ファイツにかけられた封印は、当時の勇者パーティーに在籍していた今までで最高峰の………………もちろん、お兄様を除けばですが、魔法の使い手だったそうですし、その封印もとんでもない強度だったはずです。千年ぽっちで破れるようなものでは………………」


アリアが尚もクソデカフラグを田植えの如く立て続ける中、不意にかすかな魔力を感じる。


「誰ですの!?」


唐突に声を上げた俺に驚いたのかアリアが飛び上がる。かわいい。その隣でグレイも飛び跳ねる。かわいくない。


魔力を感じたのは………………外か!


水の中を駆け、窓を開け放つ。もちろん部屋の水があふれてくる…………なんてことはなく、そして誰もいなかった。まあいるほうが怖いわな。ここ七階だし。歩けるようなスペースどころか、浮きでもしなければ存在すらしていられない場所だ。


思い違い………………そう片付けるのは簡単だ。いくら俺の鋭敏な魔力感知とはいえたまには誤作動を起こすのだと、そう断じるのは至極簡単だ。


俺たちの部屋の窓のすぐ下、真っ白で美しい聖ケトラコル城の城壁に、封筒が突き刺さってさえいなければ。

どうも、お久しぶりです。唸れ!爆殺号!と申す者です。最近忙しくて全く執筆できていませんでした。いや、言い訳ですね、すみませんでした。というわけでまあ何とかしてこの話を書き上げた次第でありますが…………『月と異世界と銃火器と』の更新にはまた長らく時間がかかりそうですので、先に謝罪しておきます。すみませんでした…………

さて、話は変わってスーパー感謝タイムです。つい先日(かなり先日)ブクマを一件いただきました!本当にありがとうございます………………!励みになります!

またまた長くなりましたが、本日はこれくらいで。それではまた、次回の更新でお会いしましょう…………


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