7話 あなたは戦いを求めていますか?―できれば平穏に暮らしたい………
ゴブリン退治から2日後のこと。
クエストの報酬で買った物を使い、俺は魔法薬の調合をしていた(もちろんほとんど食費用等に取ってある)。
「主ー、どこだー?ここか?いやここか?それともこっちか?!」
ヨミは一人で随分と楽しそうだ。
まぁいくらヨミとは言えど流石にこの部屋を見つけることは不可能だ。ここには大量の危ない薬品や、少量しか在庫のない貴重な薬草があったりするため、魔法的な結界を張って俺以外が入れないようにしてある。
「リーン!ここー?…あっ、いた」
はっ?
「おいちょっと待て!何でお前ここに入ってこられたんだ?!」
まぁまぁ強めに張った結界なのに!!
「そんなの知らないわよ。まぁあれじゃない?私、レベル高いし。ねぇねぇ、なぁにこれ?なんか蒸発させた方が良い気がしてきたから蒸発させちゃうわね?」
「やめろ!なにしようとしてんだ!それは大衆浴場の女風呂に潜入するための透明化薬………あっ」
「あんたって時々バカ出すわよね。『蒸発』」
あぁぁぁぁぁっっ!!!!俺のっ!俺の夢の魔法薬がーーっ!!
俺は膝から崩れ落ちた。
「うぅっ…こんなのって………あんまりだ…」
「全く…なんてもん作ってんのよ。作るんならもっと美味しいお酒とか、美味しいお酒とか、美味しいお酒とかにしなさいよ」
俺は男のロマンを追い求め続けただけなのに!!
「ちくしょう…許すまじ、俺たちの夢の敵!『フレア』!」
俺はソルスに向かって炎属性の中級魔法であるフレアを放った。
「フッ…ねぇあんた、私の正体を忘れちゃったのなら思い出させてあげようか?そう!私は清廉にして、気高く麗しいと評判の太陽の女神ソルス様よ?!炎属性の魔法が効くわけないでしょっ!」
ソルスの言葉通り俺の魔法がレジストされてしまった。
「どこで評判になっているんだ?そんな大嘘。俺が脅しと言う名の修正をしてきてやるよ」
「そりゃあ、もうね?………私の信者とか私の信者とか私の信者とかの間でよ!」
お前は世界にも嫌われているのか…
軽く同情してしまったので今日は許してやることにした。
「まぁ、もう許してやるよ。また作るし」
「言わなくても分かってると思うけど見つけ次第叩き割って蒸発させちゃうからね」
ちくしょう!
「それで?何の用だったんだ?」
「うん、それが…なんかね?さっきから何回もピンポン鳴ってるから怖くて…見たことないおっさんが立ってるのよ」
見たことないおっさん?なんだろう…こいつらのストーカーとかだろうか?こいつら、見た目だけは良いしな…
俺はソルスとともに部屋から出ると、玄関にむかった。
「はーい、どちら様ですかー………」
「久しぶりだな、魔女殿。ん?どうなされたのだ?」
そこにはマテリア王国王直属騎士団団長の何とかさんと………
「フム、貴様が破創の魔女とやらか…」
こいつは…結界を出て間もない俺でも知っている超有名人…
「私はマテリア王国第一王子、パーバートだ!」
◇
「団長さん…どういう事ですか…」
俺の様子を見ておっちゃんは状況を把握したようだ。
団長…!実は有能だったんじゃねぇか…!ずっと心の中で、おっちゃんって呼んでてゴメンな!やめないけど!
「なるほどなるほど、情報が届いていなかった…と言うわけですな?」
「まぁ…そういうことですかね………」
王子は金髪碧眼で豪華すぎる洋服を着ており、頭には小さな王冠を載せていた。歳は俺より少し下…位だろう。
王子は珍しい物を見るように俺の家を見回し、俺に話しかけて来た。
「おい、魔女」
「はい、どうなされましたか王子」
急に話しかけられたにしては良い対応だったと思う。
「魔女鍋はどこにあるのだ?それに普通の家だな…魔女は洞窟とかに住んでいるのではなかったのか?」
「いえいえ王子、最近の魔女は便利な街中に住むのでございます」
「な…なんだと?!ということは勇者殿が言っていた話は嘘だと言うのか?!」
見れば分かるだろ大嘘だよ大嘘。現に俺やメリルがこうして街中に住んでいるのが何よりの証拠である。他の魔女は知らんけど…
「すまない、魔女殿。少し良いか?」
「はい、どうしました?」
おっちゃんが話しかけて来た。
「実は…」
すると突然、おっちゃんの影に隠れて見えなかった男性がニョッと出てきた。
「あなたがこの結界を破壊された破創の魔女様ですか?!うわー、お会いできて光栄です!私、真竜王国ドラゴニアの五竜大臣の一人、水竜王トーレンと申します、今後どうぞよろしくお願いします!」
と超早口で話しきり、握手を求めて来た。
男性は綺麗な水色の髪を腰辺りまで伸ばしており、瞳の色もまるで髪に合わせたように澄んだ水色のイケメンである。俺は自分がモテないのでイケメンが嫌いなのだが、この人からはイケメン特有の見下した感じがなくて好意が持てる。
「ど、どうも…」
つい、流れで握手してしまったが今後とも、とか言ってなかったか?というか真竜王国…?聞いたことのない国だが真竜王国というくらいだ、ドラゴンでも奉っているのかも知れない。
「それで、団長さんと…トーレンさんでしたか、一体どんなご用件で?」
「実はですな…先日御会いした時に、我々はギルドの視察の他にもう一つの用事があったのです。それが村長に今回の件を伝える事だったのですが、ギルドで村長はいないと聞かされましてな…。実質魔女殿が村長のようなものだとギルドの受付嬢が言っていたのでその旨の手紙を送っておいたのですが…」
いやいや、そうじゃなくて…。
俺は今回の用件について聞いただけなのだが、おっちゃんは根が良い人なのか懇切丁寧に最初から話してくれた。
「それで今回の用件なのですが、この村を挟んで北に真竜王国ドラゴニアという国がありまして、ドラゴニアとの貿易を始めよう、という話になったのです」
ほうほう、なるほろなるほろ。つまりこういう事らしい。
マテリア王国は真竜王国ドラゴニアと貿易をしたい。
そしてトーレン氏が来ている事からもドラゴニアも貿易には賛成している、ということが分かる。
そこでこの村だ、ちょうど結界村はこの二つの国の中間に当たる。となればこの村を活用しない手はない。つまり…
「おい、ウィスカー!そんなに長ったらしい説明をする必要はないだろう?魔女よ!この村はマテリア王国に併合させてもらう!そしてこれから始まるドラゴニアとの貿易のため、商人たちが休憩出来るような村にしようと思っている。もちろん少し税は取ることになるがギルドも我が国の管轄内になる、少しは給料も上がるだろう。どうだ、賛成してくれるな?」
おっちゃんの説明より長いやんけ…
だが悪い話ではない。給料が上がるとか、給料が上がるとか、給料も上がるとか小さいながらに良く考えている。
「私は是非賛成させていただきたいのですが、やはり村全体の問題となってくるので私一人で決定してしまう訳には…」
「そうか…そうだな、民の意見は政治にとって何より大切だ。では…」
王子が「どうするか」と言おうした、その瞬間、それは大音量で村中に鳴り響いた。
『緊急クエスト!緊急クエスト!東より大量の魔獣の群れが襲来!その数およそっ………2000!!』
◇
2000体の魔獣の群れ、普通ならそんなことはありえない。
通常、魔獣たちは一匹、一家族、一つの群れ、希少モンスターであれば一族全員で暮らす、というのが世間一般での常識だ。
「2000?!何かの間違いじゃないですか?!」
誰よりも早くショックから立ち直ったトーレンさんが驚きを隠しきれない表情でこちらを見てくる。
「ちょっと待ってください。『魔力感知』」
『魔力感知』スキルは秀でた魔法使いや高魔力の持ち主のみが使えるレアスキルだ。
高魔力の持ち主ならばある程度の魔力量なら、スキルを使わずとも正確に感知することができる。
だが流石に2000ともなると、全てを正確に感知するのは俺でもキツイ。そこで『魔力感知』スキルの出番だ。
魔力をより正確に感知することができるためこういう時に役に立つ。
「なるほど…団長さん、トーレンさん、今現在動かせる兵力はどの程度ですか?」
「え、えぇ…最大限動かしたとしても数十人が良いところです」
確かに相手は2000体近い。動かせるのが数十人ぽっちなら俺が出たほうが早い。
「すみません、ちょっと行ってきま…」
「お待ち下さい、魔女様。僕が行ってきますよ」
トーレンさん?!戦えるの?!
まぁ良く考えてみればイケメンが強いのは世界の道理だ。トーレンさんもそこそこ戦えるのかもしれない。
「おぉ!トーレン殿が出てくれれば安心ですな!」
やめろ!敗北フラグを立てるな!
「トーレンさん、期待しちゃいますけど大丈夫ですか?」
するとトーレンさんは爽やかに微笑んだ。
「えぇ、なんてったって水竜王ですからね!魔女様には及ばずとも、数を減らすくらいならできるでしょう!」
へ?
「水竜王?何ですかそれ?」
「魔女殿、ご存知で無かったのですか?」
知ってる訳ねぇだろーが、俺は最近結界から出た常識知らずのアンポンタンやぞ。
って誰がアンポンタンだ!、
おっちゃんの話を要約するとこうだ。
真竜王国ドラゴニアは竜族が暮らしている国らしい。
しかも、人の姿をしてだ。
竜族ならそのままの方がカッコいいのにと言ってみたら、
「実は私たち真竜族は竜の本来の姿には戻れないんですよ。いつの頃からかこの姿で暮らし始め、そしてこの体の便利さに気付き元の姿に戻らなくなり、戻り方を忘れました」
と言われてしまった。
くそっ、竜族も残念枠だったか………
竜族には六種類の種族があるらしく、特徴別に火竜族、水竜族、地竜族、風竜族、闇竜族、そして数が少なく、竜族の中でも強い力を誇る聖竜族が国を統治しているらしい。
「じゃあトーレンさんはドラゴンで、めっちゃ強いって事ですか?」
「はい、そうなりますね!まぁ魔女様には及びませんけど…」
照れた用に頬をかくトーレン氏はどんな女の子でも落とせそうだった。
ちくしょう!俺もこんな顔に生まれたかった!
「おい!お前たち、いつまで話し込んでいる!早く行くぞ!村の者たちは今日から我が国の民なのだ…!絶対に守ってやらねば…!」
おおっ!王子様ったらカッコイーイ!
「そうですね、行きましょう王子!さぁ戦場に向かう皆さん私の近くに集まって下さい!」
俺は大声で叫び、皆を集める。見ると、今まで空気だった俺の仲間たちも寄ってきていた。
「やっと私の本来の力を見せられる時が来たのね!あんたたち!期待しなさい!女神であるところのこの私が見守っててあげるから!」
おい、やめろ!しれっと女神とかいってんじゃねぇ!
だがテンションの高まった兵士さんたちには聞こえなかったらしい。
おっちゃんが叫ぶ。
「お前たち!必ず生きて帰るぞ!!!」
「「「オオオォォォォッッ!!」」」
兵隊さんたちの雄叫びに追従するように俺も叫ぶ。
「行きますよっ!『テレポート』」
◇
村から数キロ離れた平原。川が流れていないので近くに人は住んでいない。
所々背の高い草が生い茂っているため視界は悪い。
だがそれでもあの軍団を視認することは可能だった。
「なるほど、数の暴力か」
さっきまで元気だった兵隊さんたちも流石にこれを見てしまっては突っ込む勇気は湧かないだろう。
「トーレンさん、もしかしてワンパンできちゃったりします?」
念のためトーレンさんに聞いてみる。
「わ…んぱん?何の事かは分かりませんが、これはあれですね。だぶん勝てませんよ」
早々に諦めとる!さっきまでの自信はどこに落としてきたんだよ!俺の家か?!取ってきてやろうか?!
だがこの返事は予想できていたものだったので大して気にしていない。
相手の軍勢およそ2000。その内人間100名ほど。
残りのほとんどは魔獣であった。
空から、陸から大量の魔獣の軍勢がこちらに押し寄せてくる。俺でもこんな馬鹿げた力を持っていなければ卒倒してしまうレベルだ。
魔獣の中にはゴブリン、コボルトといった雑魚モンスターから、ワイバーンやナーガ、オーガなどの強力なモンスターまでそろっていた。
魔獣の軍勢がすぐ近くまで迫ってきた。
そこで俺はある違和感に気付く。全ての魔獣の目が赤いのだ。
「『調教』スキル持ちですな…それにしてもこんなにたくさんの『調教』スキル持ちを集めたものです。こんなことが出きるなら、相手は相当大きな………!まさか…?!」
おっちゃんが丁寧に説明してくれたが、続きが気になる。
まさか?何?!続きを早くプリーズ!!
そんなことをしている間に魔獣の軍勢が俺たちの目の前まで来て…止まった。
一番前を飛ぶワイバーンに乗った男の仕業のようだ。
だって一番強そうだし。
「おい!お前ら聞こえるか!」
「聞こえるよー」
「よし、ならいい!俺たちはこの村を襲撃に来た!さっさと白旗を上げろ!」
「何でー?」
俺は大声で叫ぶ。
なんかバカみたいな会話だが、これはこの村を何の労力も使わずに守りきる唯一の方法だ。だからそんな目で俺たちを見るな!
「おい!そこの金髪の女以外の奴ら!そんな目で俺たちを見るな!」
すると急におっちゃんが叫んだ。
「貴様ら!もしや闇ギルドの者かっ!!」
「闇ギルド?」
なんじゃそりゃ。
「ああそうとも。俺たちは闇ギルド、『黒の獣達』だ!ギルドメンバー全員が調教スキル持ちなのさ!そしてこの俺が!ギルド長にして、黒の獣達最強の男!
ブ………」
「総員、突撃!!」
おっちゃんが突撃命令を出した。
兵隊さんたちは空を飛ぶモンスターに対しては有効な攻撃が出来ないようで、地上のモンスターや人間達をボッコボコにしていた。
前線にいるのはゴブリンやコボルトなどの雑魚モンスターなので兵隊さんたちでも余裕だろう。
俺はさっきから気になっていた事を聞いてみた。
「トーレンさん、闇ギルドって何ですか?」
「闇ギルドって言うのはですね、冒険者ギルドとは違い、お偉いさんの暗殺とか、何か色々悪いことをしてる人たちの集まりみたいな感じですね。システムは冒険者ギルドの物とほぼ変わらないらしいですよ?」
なるほど…闇ギルドか。フェアリー◯イルと同じような感じかな?
すると黒の獣達最強の男が怒鳴ってきた。
「おい!お前ら!聖騎士が不意打ちとか恥ずかしいと思わないのか!」
知らんよそんなもん。
すると王子が答える。
「何の予告も無しにこの村を襲ったお前たちが言うか!一体この村に何の用だ!ここはもう私の村だ!誰一人として貴様らなんぞにやらんぞ!」
「そうだ、まだ用件を言っていなかったな…分かった教えてやろう、我らの用件を。…貴様を誘拐しに来たのだ、王子!」
身代金目的なのか?ならこの村を襲撃する必要などない気がするが…
「何っ?!つまり私の体が目的と言うことか?!」
「ん?うん、多分そういうことだ!!なんか語弊があるような気がするがそういうことだ!!」
奇遇だな、俺もそんな気がするぜ…
俺たちのそんな予想は的中してしまったようだ。
「はぁっ…はぁっ!!わ、私はあんな男どもに辱しめを受けるのか…!う…受けるならやはり女性からの方が良かったが…分かった!やってみろ!だが、私の心までは折れると思うなよ!!」
「お…王子!!昔はあんなに小さかった王子がこんなに立派になられて…!!王子!そんな目にはあわせませんぞ。私が必ず守りきって見せます!!」
王子のセリフの後半しか聞いてなかったようなおっちゃんのセリフにソルスがツッコんだ。
「いやただの変態じゃない」
そんな話をしている間に兵隊さんたちはあらかたやられてしまったようだ。
仕方ねぇ………出来ることならあまり目立ちたくなかったが。
「ソルス!怪我人の治療はお前に任せた!」
「オッケイ、まっかせときなさい!怪我人0でこの戦い、終わらせてあげるわ!」
ソルスの頼もしいセリフを聞いて俺は安心する。
「メリル、トーレンさん!二人は魔法で空中の敵をお願いします!ヨミ!後ろの方の敵は刃物を持ってない!任せるぞ!」
「はいっ!頑張ります!」
「は…刃物を持っていないなら私でも…!」
「水竜王の力!とくと味わって頂くとしましょうか!」
だから死亡フラグを立てんなって言ってんだろ!このイケメンが!
これで邪魔されずに済む。
俺は敵陣のど真ん中に突っ込み、兵士達を拾い上げていく。
目の前のオーガが殴りかかってくる。オーガはゴブリンの上位互換であるハイゴブリンのさらに上位互換で、普通の冒険者であれば走って逃げ出すような相手だ。だが俺にとってはただの雑魚だ。
軽く避けてほんの少しの力で股間を蹴りあげる。
このオーガは雄だったようで股間に走る痛みによって卒倒してしまった。
そして最後の一人を拾い上げる。
よしっ、これで全員っと。
全員拾い上げたしソルスの所に置いてこよっと。
その瞬間、俺の前に黒い巨体が落下してきた。
うおっ?!
「グハッ?!ちくしょうっ!何だお前!どうして空を飛ぶワイバーンにポコポコ魔法を当てられるんだ?!」
メリルがワイバーンを落としたようだ。
「まぁ伊達に世界に恐れられている訳ではな………スーッ………スーッ…」
メリルが急に寝るのはいつもの事なので今さら怒る気力も湧かない。
あれだけいたモンスターたちも大分片付いてきた。
というか地上にはもうモンスターもいない。俺の仲間…なかなか役に立ったな………
「くそっ!お前ら、撤退だ!こんな化け物に敵うかっ!ちくしょう………こんな話聞いてねぇぞ!!」
なるほど、ただ王子を誘拐するために襲撃したわけではないようだ。
ボスやその他ワイバーンたちは逃げていく。
逃がさねぇよ。話も聞きたいし。
だが殺すわけにはいかない…おっ、そうだ!
「『ブラックホール』」
闇属性上級魔法、ブラックホール。通常なら発動した瞬間全てを飲み込み、えげつない重力で物質を塵も残さず消滅させるが、細かく調整しているため中の亜空間に捕らえるだけである。
巨大な闇が空に出現する。
「うわあぁぁっっっっ!!!!」
ワイバーンだろうと闇ギルドのメンバーだろうと俺の…いや、俺たちの前では無力であった。
◇
「で?裏に誰がいるんだ?答えてくれなきゃぶっ殺しちゃうぞ?」
「チッ!化け物め…!」
現在位置、俺の家。怪我人は村の宿のベッドに寝かしてある。
この場にいるのは俺、ソルス、メリル、ヨミ、おっちゃん、王子、トーレンさん。そして黒の獣達の最強さんである。
「俺たちは闇ギルドだからな、仕事が舞い込んで来たんだよ。しかも成功すれば一生遊んで暮らせるような報酬付きでな」
なるほど、その仕事と言うのがこの村の襲撃だったわけだ。
「内容は簡単だ。村に襲撃して王子もろとも皆殺しにしろって話だったんだ。でも王子を拐って身代金を要求した方がもっと稼げるだろ?しかも絶世の美女つきだ」
「おい、誰の事か言ってみろ。大丈夫、怒んないから、ね?」
「そりゃあもうそこの全身オレンジの姉ちゃんとか、黒髪のボインな姉ちゃんとかあと…あんたとか」
俺は最強さんをぶん殴った。
「ハガッ………アガガッッッ!!」
顎がイカれてしまったようだが、命があるだけありがたいと思ってほしい。
「おいお前!言っとくがな!俺は男だ!お、と、こ!!」
ソルスに顎を治してもらった最強さんは言った。
「なに言ってんだあんた」
俺はもう一発ぶん殴った。
「フム、まぁ一件落着と言うことですかな?」
なんか府に落ちねぇ!!
「魔女様、大変です!」
ギルドの受付嬢が家に飛び込んできた。
「一体どうしたってんだ………」
受付嬢はとんでもないことを叫ぶ。
「先程の闇ギルドとの戦いで近くの町に被害が出たらしくっ!その被害額の請求が!魔女様に!」
くそったれがーーーッッッッッッッッ!!!!!!