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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第7章 ミステリーオブラウンズ
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76話 あなたは代わりになれますか?ーま、まあ、多分…………?

「おはよう、主。もう昼だが。そういえばポストに手紙が届いていたぞ」


朝から(昼から)ユリアさんのスプリーム・ドラゴニアをぶっぱなした際の轟音で目を覚ました俺がこの日最初に見たのは、昼食の準備をしているヨミとソルスだった。最近どうも眠くて困る。これも肥満のせいだろうか?


「………手紙?誰から?」


「まだ中は見ていないぞ。一応主宛だったし、下手に触らない方がいいレベルの装飾だったからな」


………もしかして。


「手紙ってこれの事?なんか見覚えがあると思ったら、前アリアちゃんが送ってきてくれたのと同じじゃない。えっと、中身は………」


「何勝手に開けてんだよ」


今日も変わらず自分勝手なソルス。もういつものことなのであまり気にならない。だが、ソルスの手にしている封筒には確かに見覚えがある。前回アリアが手紙をくれたのはいつだったかあまり覚えていないが、すんごい豪奢な封筒だったのでそれだけはよく覚えていた。


「えーと、何々?『拝啓 お兄様、つい最近もベルネチアでご活躍なされたと聞きました。連日連夜、世界中に影響を与え続けるお兄様の名前が聞けてうれしく思っております。お仲間の皆様、ならびにお姉様もかわりないようで…………』あら、私たちのことも書いてあるじゃない!」


嬉しそうに笑うソルスにこんなことを言うのは酷なので言わないが、間違いなくバカにされてるぞ。まあアリアのことなので苦笑気味に手紙を書いていたくらいであるのは容易に想像がつくが。


自分を見つけて満足したのか、はたまた飽きたのか、「お昼の準備の途中だったから」と結局俺に手紙を押し付けていったソルスが厨房に向かうのを見送り、手紙に視線を戻す。


『話は変わりますが、実は一つお兄様にお願いしたいことがあるのです………………』


お、これまた珍しいな。以前ドラゴニアの王都にいたときは自分の願いなんて口に出すような子ではなかったのに。どうやら、俺たちとの交流は彼女に小さな変化をもたらしていたらしい。あの子も年頃の女の子だし、少しくらい我儘なくらいがちょうどいいだろう。よい傾向である。


『既にお兄様もご存じのことと思いますが、先日魔王の復活が確認されました。それに伴い、諸国のトップが集まる世界会議が……………』


は?


ちょっと待ってちょっと待って。





「は?」



「待て!絶対にやめたほうがいい!悪いことは言わないから、ここはいったん抑えて………………」


「抑えてられるかあ!!ついに魔王の野郎が復活したんだぞ!!!俺に殺させろおおおおお!!!!!」


結界村の草原内にある小高い丘の上、破創の魔女宅前では暴動が起きていた。


何を隠そう、俺が五百年間待ち続けた魔王が復活したというのである。正直魔王復活が何を意味するのかとか何をもって復活とするのかとかよく分かっていないが、復活というからには魔王としてこの世界のどこかにはいるのだろう。…………ベル姉の言葉やその他もろもろから警戒してはいたが、まさか俺のあずかり知らぬところで勝手に復活していたとは。許せん。


「ただいま帰りまし………何してるんですか?」


玄関を出たところでヨミに引き止められていた俺を見て、ユリアを背負ったメリルが困惑の表情を見せる。


「メリル!ちょうどいいところに来た、主を抑えるのを手伝ってくれ!」


「抑えるって、これまたなぜですか?」


「魔王が復活したらしいんだよ!俺があいつを倒せば元に戻れるんだあああああ!!!!」


俺の絶叫を涼しい顔で受け流し、何かを思い出すようなそぶりを見せるとメリル。


「そういえばそんなことも言ってましたね…………まあリンくんの素顔も気になりますが、相手方だってバカではないでしょう、これだけ名前の売れているリンくんへの対策は万全とみて間違いないはずです。今はまだ、できても軽い調査くらいが関の山ですね」


珍しく眠っているユリアをソファに寝かせるメリルの言葉はもっともだった。反論の余地もない。


「それはそうだけど…………一応俺世界最強だし、ワンチャンあったりしない?」


俺も抵抗を諦め、ヨミに室内に戻される。


「しないだろうな。伝え聞く話でも、五百年前も千年前も強力な結界が張られていて侵入できない状態だったとあるし、今回もまあ間違いなく結界が張られているだろう。特に今回は結界村の結界を超えていてもおかしくないぞ」


冷静に考えれば考えるほど二人の話に反論できる気がしない。確かに魔王サイドに立ってみれば、俺の存在は何より恐ろしいはずだ。いの一番に対策されるだろう。


「さっきからうるさいんですけど!もうお昼ご飯できたから手洗ってきなさい!」


ちくしょう、もう俺の味方はいねえのかよ!せめてソルスくらいは、神なんだし魔王討伐に意欲的な反応を見せるべきだろ!


だなんて思いつつも何か言える空気でもなく、諦めて食卓に着いた。


ソルスの作った昼飯は結構おいしかった。



「で、結局さっきの手紙はどういう内容だったの?なんだか厄介ごとの香りがするから途中で読むのやめたけど」


流石一級フラグ建築士のソルスさん、今日も息をするようにフラグをおったてていく。ほかでもないアリアからの手紙なので邪険に扱えないのも災いして、もう避けようがないところまで来ているというのに、よくもまあこのタイミングでフラグっぽいことばかり言えるものだ。こいつ小説家にでもなったほうがいいのではなかろうか。


「ふむ、魔王復活に伴って世界的な会議が開かれるそうだ。会場は………ルーセリア聖王国だ。どうやらそこに主を招待しているようだ。私達の同伴も既に許可を得ているとあるぞ」


「でもそんな所にわざわざ俺たちを招待する必要あるか?どうせ誰かやらかすことは目に見えてるし、アリアがそれに気づけないとも思えねえけど……………」


「ふむ、それがどうやらユリアの国外追放処置は国外に知らせていないらしく、出席を求められているのでその代わりを主にしてほしい、と書いてあるな」


「代わりってなんですか代わりって!?私ここにいるんですが!?」


昼飯のお陰か、魔力切れも回復してきて元気になってきたユリアが悲鳴を上げる。それもそうだろう。俺だって上げたい。


「代わりってどういうことだ?普通に俺同伴ならユリアもドラゴニアに帰れるって処置だったハズだろ?」


「そこまでは書いていないが、大方警護でも頼みたいのではないか?世界中の上位層の人間が集まるとなれば外からも中からも狙われやすいだろうからな」


こいつ、仲間になってから初めてといってもいいほどにまともに忍者みたいなこと言ってやがる。


「それなら私でいいじゃないですか!レベルが上がったおかげかステータスも跳ね上がりましたし、今なら並みの相手には遅れは取りませんよ!」


「並み以上の相手が来たらどうするんですか………………もし屋内で襲われたらスプリーム・ドラゴニアは使えませんし、ドラゴンフォースで対処できなければ詰みですよ?」


「うっ…………それは、そうですが………………」


「それならそれで最初から警護を頼めばいいだろうに。ユリアのことだって説明すれば済む話だし…………アリアとグレイさんのことだし何かしらの考えはあると思うし普通に行くけどさ」


ちょっとどころかかなり怪しい話だが、世界会議ともなればかなりの情報が集まるだろうし乗らない手はない。それにユリアの久しぶりに家族に会える機会だ、奪うわけにもいくまい。


「そうでしょうか?リンくんをいいように使って裏で愛娘とイチャイチャしたいとか考えてそうな気がしますが…………」


おっとメリルさん酷い言い様ですね。まああの人のことだしあながち間違ってなさそうな気もするが。


「何にせよ行かないわけにはいきませんね!お父様を問い詰めに!」


「言っとくけどそれ本題じゃないからな」


一抹の不安を抱えながらも世界会議への参加を決定した今の俺たちを、全世界を揺るがしかねない大事件が待ち受けていることは知る由も無いのだった。


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