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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第6章 夏空に煌めくは星々の魁光
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72話 あなたは人を信じますか?ーNO

肌が裂け、肉が顕になったアクエリアスの体。だが、それはほんの一部に過ぎず、先の雄叫びも断末魔と呼べるようなものでは無かった。つまり、効果があるシロウの攻撃でもダメージはかなり少ないということだ。


「シロウさん、さっきのよりも高威力の技があったりしません?正直俺の攻撃は効かないと思った方が良さそうですし、物理攻撃くらいしかできませんよ」


戦いは始まったばかりだが、隠さずに言おう。俺は星獣を舐めていた。舐めすぎていた。それはもうベロ〇ンガかというくらいに。


魔法の無効化は先日経験済みだしなんとかなると思っていたが、思い返してみれば、俺はレイに魔力を供給していただけで、実際になにかした訳では無いのだった。せめて魔力を、あの魔力ならざる力に変換出来ればやりようはあるのだが……如何せん、その方法を知るのは俺の親友のみだ。俺の強みが半分消えたと考えていい。となるとトドメをさせるのはシロウだけだが……


「うん、まぁさっきのは普通に切っただけだから。でも、あの大きさにトドメをさせる一撃となると相当な溜めが必要だろうね」


いつの間にか岩の上から飛び降り、俺の側へと撤退していたシロウが答えを返す。傷を受けたことに動揺しているのか、暴れ狂うアクエリアスの体を避けつつ、作戦会議をする。


「相当な溜め……って、どれくらいですか?」


「んー、場合にもよるけど今なら30秒もあれば出るかな」


30秒か……それほどキツくは無いな。


その巨大な体をフルに活かした尾での攻撃を繰り出すアクエリアスの攻撃を殴り飛ばし、難なく回避したシロウと会話を続ける。


「分かりました。俺が今からアイツを止めますから、出来れば仕留めちゃってください」


「了解した。スズキくん、決して無茶だけはするなよ」


「大丈夫ですよ、死んでも死なない体ですから!」


「ふっ、そうだったね」


空中に巨大な魔法陣のようなものが浮かぶ。が、やはり魔力は全く感じられず、それでも喰らえばひとたまりもないことが分かる威力の水の弾丸がそこから放たれる。


無論、魔法で相殺し、こちらに被害は出させない。


「それじゃあスズキくん、今から30秒、頼んだよ」


「ええ、頼まれました!そいじゃあちょいと、足止めさせてもらいますか!」


その瞳に映る矮小な存在が余程気に入らないのか、巨大な尾を振り乱しながら水の弾丸を乱射するアクエリアス。


対する俺も大量の魔法陣を展開し、あらん限り(無限にあるけど)の魔力を注ぎ込んで大魔法を次々と放って相殺していく。尾の攻撃は無防備に喰らえば死ぬが、構えられれば俺の筋力の敵では無い。引っ掴んでぶん投げる。


それでも奴の鱗には一切の傷もつかない。だが、それでいい。あくまで俺は時間稼ぎ要員、今回はそこまで頑張らなくても良いのだ。


投げ飛ばしたとは言っても、やはり大きなからだであるので、せいぜい数百メートルといった所までしか飛ばず、すぐにこちらへ戻ってきては水の弾丸と尾での攻撃を繰り返す。…………やけにワンパターンだな。


この時、俺はかつて日本で愛したゲームたちのことを思い出していた。確かこういうボス的なのって、一回倒しただけでは終わらなかったような…………


「スズキくん、いけるよ!」


「はい!お願いします!」


俺の後を追い続けるアクエリアスを誘導し、シロウの目の前に到達したその瞬間。


俺は、今までに感じたことがないほどの悪寒を感じた気がした。いつもの柔らかな表情からはかけ離れた、シロウの顔に浮かぶ鬼気迫る表情は、まるで修羅をくぐりぬけてきたかのようである。そして、鞘に収められ、手をかけられている刀からは、今まで見てきた何よりも強く、そしてドス黒い欲望が滾っているように見えた。


……なんだ、これ。


レイ・シリウスが持つ「魔力を魔力ならざる力に変換する機構」から出てくる力ともまた違う、星獣を殺しうる力………


俺にはまだ、その力が何なのか、よく分からなかった。だが、一つだけ。


俺はこの力を、かつて奮ったことがあるような気がした。



「星獣……懐かしいわね」


「ああ、そうだね。君はよく小型の星獣に追い回されて泣いていたっけ」


「ちょっと、記憶の捏造はやめてちょうだい!第一この私が星獣程度に遅れをとるわけが無いでしょ!?」


「『可愛くて攻撃できない〜!』って泣きながら助けを求めてきたのもいい思い出だよね」


「だからそんなことしてないってば!」


「はいはい、照れ隠し照れ隠し〜」


「も〜!!!!」


どこまでも白が続く空間の中、たった二つの、色を放つ存在があった。どうやら痴話喧嘩でもしているらしい。


「よう、久しぶりだな」


「ん?あぁ、君か。今度は一体どうしたんだい?」


地面と呼んでいいのかすらよく分からない白の上に腰掛ける青年がこちらを振り向く。


「あれ、久しぶり……ってことは、私たちのこと覚えてるの?」


「そりゃあそうだよ。ここに来る度説明するのも面倒だからって、ここから出る時だけ記憶が消えるようにしただろう?」


「さぁ……そうだっけ?」


あいも変わらず俺にそっくりな容姿の少女だ。まぁこの頭の悪そうなところを除けば、だが。


「ねぇ、今とんでもなく不敬なこと考えてない?私、一応創世の女神なんですけど」


どうやらバレていたらしい。そんなに顔に出やすいだろうか。


「それにしても、まさか本当に全部忘れてるとは思わなかったぜ。レイに、ユウ……で合ってるよな?」


「ええ、正解よ!それで、今日はまた急にどうしたのよ。今はあのでっかいのと戦ってる最中なんじゃないの?」


「俺だって知らねえよ。気づいたらここに来ててさ」


「なるほど、まぁ十中八九星獣に関係することだろうね」


あれ、こいつら外のことも知ってるのか。ちょっと待て、だとしたら今までの生活は全部見られてたってこと!?それなかなかにプライバシーの侵害じゃないですか!?


「なんだかものすごく心外な妄想をされてる気がするんだが……まあいいや。星獣についてなら僕たち……もとい僕は専門だからね。このタイミングでここに来たのも何かの縁だ。聞きたいことがあれば遠慮なく聞いてくれ」


「聞きたいこと、かぁ……」


そういえば、今外はどうなってるんだ?確か俺がアクエリアスを誘導し、シロウさんが抜刀して……


あぁ、あの力に充てられて倒れたのか。


「じゃあ一つ質問いい?星獣のことっていうか、その対極に位置する人なんだけど……」


「星狩のことかい?それなら尚更僕に聞いて正解だね」


「正解って?」


「それはもちろん、僕もまた、その星狩だからね」


えぇ…………


「あら、思った以上に薄い反応ね?もっと驚くかと思ってたのに」


既にこの状況に飽きを感じ始めているのか、床に寝そべって足をパタパタさせるレイに突っ込まれる。しかし、前にも言ったが、俺は既に分かっていることに対して驚けないのだ。


まぁ、予想はしてた。じゃなきゃこの状況でここに来る意味がなくなってしまう。ここまで壮大な設定なら、今までに何らかの関わりがあったはずとは思っていたが、ここか………よりにもよって、というやつである。


「じゃあ、アイツ……アクエリアスの倒し方を教えてくれ」


「アクエリアス……黄道十二使か。あれはまた厄介な相手だよ……君も運がないね」


世界を作った、いわば人類最強にここまで言わしめるとは………どんどん嫌な予感が加速していく。


「そうだね、まぁまず君一人じゃ倒せないだろう」


「それは分かってるよ。魔法も効かないし、破壊スキルも創造スキルも………ってあれ、ユウは星狩だったのに破壊スキルじゃ倒せないの?」


「いいところに気がついたわね!」


うわ、また出しゃばってきやがった。説明下手くそなんだから引っ込んでればいいのに。


「何よ、不満そうね。私だって元は星獣と起源を同じくする旧神代の神なんですけど!」


「はいはい分かった分かった……」


適当になだめて落ち着かせる。コイツもコイツでホントめんどくさいな……


「ふん!分かればいいのよ!……コホン、じゃあまずは星獣について説明していこうかしら。あんたも既にわかってると思うけど、星獣ってのは旧神代に封印された獣神たちの眷属よ。獣神の力が半端ないだけあってその眷属の力も凄まじくてね。力量で言えば私たちの一段下くらいかしら。そりゃもう面倒臭いのよ」


まあここら辺も既知の情報だな。そんだけ強ければ魔法が通らないのは納得がいくが……


「問題はユウくんの方ね。魔法ってのは本来神が人に与えた、一つの祝福みたいなものなんだけど、中には自分で発現しちゃった人もいたのよね。そのうちの一人がユウくんなわけ。神に与えられた奇蹟じゃなくて、自ら生み出した、正に奇跡なだけあって、その力はもうとんでもないものだったわ。まあ私には劣るけどね!」


ドヤ!


ドヤ!ドヤ!


ドヤ!ド……


ドヤっていたレイがユウに引っぱたかれた。


「引っぱたくよ」


「引っぱたいてから言わないでよ!も〜、話の途中だったのに……」


むしろ積極的に話の腰を折りに来ていた気がするのは気の所為だろうか。もう、神に期待しないのが正解な気がしてきた。


「やはりレイに説明なんて高度なことさせるべきじゃないね。僕が代わるよ」


「あっ、ちょっと!まだとちゅ……」


「そして、僕が発現させたのが、君の持つ破壊スキルだったわけだ。君も気づいていると思うけど、破壊スキルはあくまでも魔法だ。これは星獣相手に使える力じゃない。僕らの技術を得て、新時代の星狩として生きているシロウくんを見たから分かると思うけど、僕らは魔法では無い力を振るっている」


今まで幾度か見てきた、魔力ならざる力。その正体が、ついに明かされるというのか………


「それじゃあリン、一つ質問だ」


ええっ!?


………………………


せっかく驚く準備をしていたのに、まさかここで焦らされるとは思わなかった。別にふざけている訳では無いが、こうでもしてないと話が突拍子も無さすぎて着いていけないのだ。


ユウが再び口を開く。


「君は、人が望むなら、なんでも出来ると思うかい?」


………難しいな。


昔、『人間が想像しうるものは全て実現しうることである』という言葉を聞いたことがあるが、これに則れば、答えはYESなのだろう。しかし、そんなことが有り得るのか?否、許されるのか(あってもいいのか)


………俺は、沈黙を選んだ。


「………これを君に問うのは、少し酷だったね。それに、現実はもっと残酷だ。答えは、YESだよ」


「…………」


「人は、望めばその全てを手にすることが出来る。もちろん、星獣を打倒す力だってね。そして、その力を手にするには、何者にも負けない、強い欲望が必要だ。本来生物が持ちうる三大欲求を全て満たした人間のみが持つ、底なしの欲望の内の一つを、誰よりも求めなければならないのさ」


「話が見えないな」


「なに、簡単なことだよ。ちょっと欲望を剥き出しにするだけさ。とは言っても、星狩の技術はそれとも違って少し特殊で、作りは君の親友が作った魔力を変換する装置に近い。一朝一夕で手に入れられるような力じゃないし、今の君には必要ないだろう」


つまるところ、俺が今手に入れられる力は無い、という訳だ。それにしても、前半はやけに俺の癇に障るような内容ばかりだったな………今回のことにどう関わってくるのかもよく分からないし。


「で、結局俺はどうすればいいんだ?」


「どうしようもないさ。星狩の技術も何も無い君はアクエリアスに致命傷を与えることは出来ない。まぁシロウくんに託すしか無いね。頑張って助けてあげなよ」


なんだコイツ。今日はやけに俺を煽るような発言ばかり繰り返すな………俺になにか恨みでもあるのだろうか。前回はああも平和的な出会いだったし警戒していなかったが、この状況じゃ俺に敵意があるとすら取れてしまう。


ユウに対する疑念を募らせていると、不意に白い世界が崩壊を始めた。


「おい、もう終わりかよ!?というかよく考えたらここで聞いたこと全部忘れちまうじゃねえか!」


「「あっ」」


シンクロ率百%だった。


「クソ!嫌なとこを刺激するだけ刺激しやがって!次来たらぶっ飛ばしてやるからなぁぁぁぁぁ!!!!!」


崩壊する世界に足を取られ、どこまでも続く白に落ちていきながら、俺は怒りの限り叫ぶのだった。



「らしくないじゃない?ユウくんがあんな言い方するなんて。『まだ人の心は捨てちゃいない』ってのは嘘だったわけ?」


既に破創の魔女が消えた空間に、レイの声が響く。どんな楽器にもたどり着けそうにない至上の音楽を奏でる声帯を震わせて発したのは、愛する人への非難であった。


対するユウは口の端をゆがめると、苦笑した。


「僕だってあんな言い方、好んでしたいとは思わないさ。ただ、ちょっと不安なことがあってね…………」


「不安なこと?」


コテンと首を倒し、分からないと意思表示する。それもまた、仕方のないことだろう。旧神代の最高傑作と呼ばれる女神の辞書に、ちっぽけな人の心など載っているはずがあるまい。彼女の中にあるのは、この広い宇宙そのものなのだから。


「………うん。彼は、目を背けすぎている。向き合うべき過去とも向き合えないで、いつまで最強でいられるか、僕は心配だよ」


「そう?私はそこまで心配してないけど。あの子ならきっとやれるはずよ!だって私たちの選んだ子だもの!」


「そう、過度な期待を背負わせるべきじゃないよ。人ってのは案外、弱っちい生き物なんだからさ……………」


音も、風もない空間を、ただ静寂だけが駆けていく。今日も今日とて、ここはどこまでも真っ白なのだった。

はじめましての方ははじめまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。どうも、唸れ!爆殺号!と申します者です。今回私がまたしても(もはやいつものことですが)ここに出張ってきたのにも二つほど理由がございまして、私この度、なろう専用としてのTwitter(X)アカウントを開設いたしました!名前はもちろん「唸れ!爆殺号!」とさせていただいております。先日開設にあたって活動報告のほうでもお知らせいたしましたが、やはり私が一番自我を出しているここでも紹介させていただくことにしました。そもそもここを読んでいる人がいるのかは甚だ疑問に思っているところではありますが、「筆者のことなどどうでもいいわ!」という方が読み飛ばせるのもいいところですよねあとがきって。よかったらフォローしてやってください。質問等気軽にいただければお答えしますよ!

そして二つ目。かれこれ三年以上続いているこの作品になりますが、この度二件のブクマと一件の10点評価をいただき、ついに総合評価が50ポイントに到達いたしました!イェイ!本当にありがとうございます。更新速度はゴミカスですが、この作品の続きを読みたいと思ってくださる皆様のため、今後も誠心誠意執筆にいそしんでいきたいと思います。

さて、というわけで、以上がお知らせとなります。

クソ長後書きで大変失礼いたしました…………それではまた、次回の更新(「あなたは神を信じますか?」か「月と異世界と銃火器と」のどちらを更新するかは未定です)でお会いしましょう。

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