6話 ほらほら、あなたはこんなのが怖いんですか?―ギィヤァァァァァッッッ!!!
久しぶりですみません!私情で連載を休止してしまい、楽しみにしてくださっていたかたには謝っても謝りきれません!
ですがこれから連載を続けていくつもりですのでどうぞ続きをお楽しみに!
「ただまー」
「お帰りー!ねー、晩御飯はまだ?もうお腹がすいてすごい寒い部屋にあったチーズ食べてるけど…ねぇあんた、その子誰?」
一つずつにしてくれ…というか、
「おい、お前そのチーズどこにあったんだ?入ってすぐの棚の上にあるチーズはもうダメなやつだぞ?」
ソルスは思いっきりチーズを吐き出した。
「ごほっ、げほっ………おぇーー!あんたなんてもんこのわたしに食べさせてんのよ!気高くも尊い太陽の女神であるところのこのわたしが死んだとなれば、この世界が滅びるどころじゃ済まないんだから!」
「お前が死のうが世界は平和に回って行くよ」
それに俺が食べさせたわけでもねぇだろ。
「それでリン君、そちらの方はどちら様なのですか?」
と、メリルが話しかけて来てくれたので、話題を変えることにする。
「ああ、こいつは…」
「私はヨミ、本日より主の忍びになった者だ。あなた方が主のパーティーメンバーか?これから世話になる、よろしく頼む」
結界を破壊してから2度めの完璧な挨拶、俺は泣いてしまおうかと思った。
「ヨミさんですか、よろしくお願いします!私はメリルといいます」
「もっと気軽な感じに呼んでくれて構わないぞ?メリル…よい名前だな。私もそう呼ばせてもらおう」
ヨミとメリルはすぐに打ち解けたようだ。
「ねぇあんたきいてんの?!普通あんなとこに食べられない物おかないでしょ?!」
俺に掴みかかりながら叫ぶソルス。
「うるっせぇなあ!!置いといて気付いたらダメになってたんだよ!それにどう考えても勝手に食ったお前が悪いだろうが!」
「な…何よ!そうよ勝手に食べたわよ!でもあんなとこに食べられないチーズ置いとくあんたも悪いでしょ?!」
俺の記憶力が死んでるのは平常運転だからな!
って誰の記憶力が死んでるだってこのアマーッ!!
「「はぁ…はぁっ………」」
「リン君もソルスさんも落ち着いて下さい!私は二人とも悪いと思います!さぁごめんなさいをしてください!」
一昨日から一度もキレていないメリルが珍しく怒っているようだ。
いつも怒らない人がキレるというのは迫力がすごく、俺もソルスも素直に謝った。
「「………ごめんなさい」」
するとメリルは満足したようで…
「はい、これで仲直りですね」
「お、おぅ………」
「え、えぇ………」
俺もソルスも納得はしていなかったがメリルの目が恐かったのでこれ以上言うのは止めておいた。
まぁ一段落着いたことだし飯にするか…
「よし、ご飯にしようか」
「「「い、要らないっ………!!!」」」
三人は外に全速力で走って出ていった。
◇
翌日
「おいお前ら、クエスト行くぞー」
「いやよ!」
今日も、人を困らせることにかけては無類の才能を発揮する駄女神だ。
今、俺はギルドから帰って来たところだ。簡単で、しかも報酬の高いクエストを見つけたのでこいつらを呼びに来たのだが…
「クエストか…私にとっては初めてのクエストだな…」
こいつ、クエスト行ったことなかったんだな…
少し不安そうにするヨミに声をかけてやる。
「ヨミ、大丈夫だ。そう心配することはないぞ?あいつが嫌がってんのは、昨日受けたクエストで、食人植物に消化されかけたのがトラウマになってるだけだから」
「リン君…慰めになってな………スー…スー………」
お前のもツッコミになりきってないと言ってやりたい。
「主、メリルは何かの病気なのか?急に眠ってしまったが…」
見慣れていない(というか正体を知らない)ヨミはメリルが急に眠ったので驚いているようだ。
「あぁ、慣れれば特に気にならないよ。それに病気でもないから安心しろ。あいつはそういうやつなんだと納得してしまえばそれまでだ」
メリルに起きろーと声をかけてやる。
「どうせまたあの森に行くんでしょ?!いやよ!私は絶対に行かないからね!」
往生際まで悪い駄女神に言ってやる。
「大丈夫だよ、あの森に行くわけじゃないから。通るけど…」
「そうなの?まぁ通るだけなら…」
よし、ソルスも折れたようだ。
「決まりでいいな?行くぞお前ら!さっさと準備してこい!」
―2時間後―
「いやーーっ!!だから嫌って言ったのッ………」
何でこいつはいつも食人植物に追いかけられるのだろうか。
森は地獄と化していた。
数十匹にも及ぶ食人植物に追いかけられていたソルスがついに食われ、取り合いが始まったのだ。
仕方ない…助けてやるか………
「主!私に任せろ!」
俺の後ろにいたはずのヨミが俺の視認速度ギリギリにまで迫る超スピードで飛び出していった。
「グギャッ…!」
「ギャウッ………!」
食人植物たちの断末魔が聞こえる度、ヨミの小刀が閃く。
おい…ソルスのこと切ってねぇよな………
そんなことを考えている数秒の内に食人植物たちは殲滅されてしまった。
「やるなー、ヨミ………」
「うぅっ………ふわぁぁぁぁぁっっ!!!!ヨミちゃん!ヨミちゃーーーーん!!!!」
俺の労いの言葉を遮って、ヌルヌルベトベト…もといソルスがヨミに飛びついた。
「うわっ!ソルスッ、ベトベトするぞっ!!」
食人植物の体液でヌルヌルベトベトのソルスに抱きつかれたヨミが涙目になっていた。
「…ふわぁぁ………うーん…おはようございます………」
「おう…おはよう………」
こいつ、こんな状況でも寝られるなんて………思っていたより大物なのかもしれない。
そんなことより…
「迷っちゃった☆(テヘペロVer.)」
「ふわぁぁ…うわぁぁぁぁぁっ!!」
「主!ソルスを何とかしてくれ!」
………うるせぇ。
「お前らちょっと静かにしろ!こういう時の最終手段だ!」
最終手段。そう、あれである。
「ピィィィィィィィィッッッ!!!」
「リン君、どうしたのですか?急に指笛なんて吹いて?」
唐突に指笛を吹き出した俺を変質者を見るような目で見るメリル。やめろっ…そんな目で俺を見るなっ!
「まあ見てなって………ほら、来るぞ…」
青く広がる大空にあいつの声が響き渡る。
「キョェェェェェェェッッッ!!!」
三人はあいつを見て固まった。そりゃそうだ、あんなデカイ魔鳥はそうそういない。
スズメは地響きを上げながら着陸する。
「スズメッ!この前助けてもらったばかりだがもう一度頼めないか?」
俺が話しかけるとスズメはフルフルと首を横にふった。
「主っ!主っ!なんだこの大きな鳥は!こんなサイズの鳥は見たことないぞ!」
ヨミが興奮して話しかけて来るが、今はそれどころではない。
「プーックスクス!ねぇあんたスズメって!ねぇスズメって!もうちょっとマシな名前は無かったの?!アハハハハハッッ!!」
俺のネーミングセンスが死んでるのは平常運転だからな!って誰のネーミングセンスが死んでるだって?!
「うるせぇ、うるせぇ!今それどころじゃねぇんだよ!スズメッ!どうしたんだ?何かあったのか?」
「キョエッ…」
スズメが小さく一鳴きすると、スズメの羽からスズメの雛が一匹出てきた。
なるほど…子供ができたのか…
「それで…お前はどっかに行っちゃうのか…?」
「アハハハハッ!アハハハハハハハッッ!!マジでッ!マジで笑いが止まんないですけどーっ!!アハハハハハハハッッ!!………」
こいつ本当に空気読まねぇな。
俺に向かってスズメは羽を一枚差しのべて来た。
「素晴らしい毛並みだ…布団にしたら温かそうだな………」
お前は鬼かっ!!
俺は迷わず羽の先をつかんだ。フワフワで温かい…
「うぅっ………感動のお別れですねっ………」
メリル…お前だけが俺の仲間の中でまともなやつだよ………
「スズメ…また、会えるよな…」
「キョエッッッ!!」
ブンブンと頷くスズメ。羽の中に雛が戻っていく。
スズメが力強く羽ばたく。あいつが向かう先は、ここではないどこか。
「スズメーーッッ!!今度会うときには奥さんにも会わせてくれよなーーッッ!!」
「うぅっ…うわぁぁぁぁぁっ!!スズメさんっ!シュジュメさーーんっっ!!」
「アハハハハハハハハッッ!!アハハハハハハハハッッ!!」
いつまで笑ってんだてめぇ!
◇
スズメの協力が得られなかったことで大幅に時間をロスしてしまったが、何とか森を抜けた。
「ねぇ、なんか今さらな気もするけど結局クエストの内容って何なの?悪魔討伐とかなら私に任せて頂戴!」
おいおいこの世界には悪魔もいんのか…
俺たちは森を抜け、広い草原を歩いている。俺の家の周りとは違い、所々背の高い草が生い茂っている光景が見られた。
そういえばまだ内容は話してなかったし今のうちに教えとくか。
「今日のクエストは…」
俺が話し出した瞬間、草むらから今日の相手が飛び出してきた。
「グギャッ!グギェッ!」
「グルウッ!グラウッ!」
それは俺のお腹辺りまでの身長しかなく、緑色の体色で、頭部に一本の角をはやした小鬼のようなモンスターだ。
こいつのことは、やっていたゲームがポケ◯ンと妖◯ウォッチ位の俺でも知っている超メジャーモンスター…
「なるほど、確かに簡単な仕事ですね」
そして雑魚の象徴、ゴブリンである。
数頭の群れで現れた奴らは錆びた剣を振り回し襲い掛かってきた。
あれっ?なんか一匹だけ目の色………
「ああああぁぁぁぁぁっっ!!!!イヤだッ!主!剣先がこっち向いてるっ!」
と、ソルスではなくヨミが叫んで俺に飛びついて来た。
ん?怖い?
は?いやゴブリンの剣ダヨ?当たったって擦り傷程度の傷しかできないヨ?
「ふぇぇっ…怖い…怖いよ主ぃぃ…」
しかもそのまま泣き出した。
「ちょっ、ちょっとヨミちゃん?!どうしたの?!」
ゴブリンを殴り飛ばしたソルスが驚き話しかけてくる。
そういえば昨日取り押さえた時…
『小さな頃からクソジジイもとい師匠に…』
とかうんたら言ってたっけ…つまりこいつは…
「ふぇぇぇ…主っ…主ぃ…」
かわいいなこいつ………
「ほれほれ落ち着けって…」
つまりこいつは…
「先端恐怖症か…」
解説しよう!
先端恐怖症とは!先端恐怖症である!(詳しくは知らん)
尖った物が怖いってやつだった気がする。
となると、なぜこいつは小刀を使って戦えていたんだ?
そうこうしているうちにゴブリンは片付いたようだ。
「ヨミ、リン君、終わりましたよ…どうしたんですか?」
つまり、そう言うことだ。
コイツモダメナヤツヤン。
◇
「主には昨日も話したのだが…」
忘れちゃーった☆
手を会わせながらテヘペロッ!とやってみたがジト目で睨まれただけだった。
せめて…せめてソルスに笑われたかった………
ちなみにメリルは俺の背中で絶賛睡眠中だ。
ソルスはゴブリンの死体のそばでピカピカ光っている。
おいおい、何であいつ発光してんだよ………
「まぁ私は剣や斧など、尖った物は見るだけで駄目だ」
おいちょっと待て。
「じゃあ何でお前、ソルスが食われた時に小刀使って戦えてたんだよ。見るだけで駄目ならそれもできないハズだろ?」
「ふふっ、それは日々の鍛練の成果というやつだ。具体的には視界に小刀を入れないように戦うことができるのだ!」
だいぶ自慢げにしているが、つまり相手が刃物を持っていればヨミは何の戦力にもならないと言うことだろう。
俺はヨミに最大級の嘲りの視線を向けながらこうしてやった。
「フッ」
「おい、主!今鼻で笑ったな?!ちょっ、待て!逃げるな!」
今日のクエスト、成功。
クエスト内容 結界のそばで通行人を襲うゴブリンの討伐
モンスター情報 ゴブリン
最弱のモンスターとの呼び声高く雑魚鬼とも呼ばれる。緑色の体色をしており、背丈は1mと言った所。
角を一本生やしており基本的に群れで生活する。
上位種にハイゴブリンがおりハイゴブリンは小鬼とも呼ばれる。駆け出し冒険者にとっては厄介な相手である。
クエスト報酬 発見体数6匹とのこと
全滅させれば5万リア、全滅させられなければ倒した体数×5000リア。定住地からの追い出しに成功で2000リア。