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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第6章 夏空に煌めくは星々の魁光
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65話 あなたは話をしてくれますか?ーYES

「あぁ………いつ、どこで、何を間違えたんでしょうか………?」


「何もかもよねー。まず私より飲むしなおかつバカなリンを外に出すだなんて愚の骨頂よ?皆がちゃんと面倒見ないから………」


「酔いつぶれていたソルスにだけは言われたくないな。まぁ主なら大丈夫だろう。多分地獄でも元気にやれるだろうからな」


「酔っ払ったリンくんを放っておくのはすごく良くないという教訓は得ましたし、もう気にせず帰りません?」


こ、この人達と来たら………


「無責任!あまりにも無責任ですよ!ソルスさんはともかく、メリルさんとヨミさんにはシラフだった者としての責任があります!あのおバカなお師匠様をほっぽり出したという責任が!」


現在、水の都ベルネチアにて、お師匠様が嵐に吹き飛ばされた直後の大混乱の最中である。


「今回は珍しく私は悪くないもの!皆で何とかしてちょーだーい。私は飲み直してくるから……」


「させません!させませんよ!これ以上災いの種を増やしてどうするんですか!?」


あーもう、本当にこの人達と来たら………


「ふむ、まずは共鳴石で連絡を取ってみるか」


「おお、そういえばありましたね!すぐにお願いします!」


「ああ、分かった。だが、主曰く私が持つ共鳴石はいわゆる子機と言うやつで、主側の共鳴石もダイヤルを合わせないと繋がらないらしい。前回使ったのはかなり前だし、その間に変えてないといいのだが………」


と言ってヨミさんが共鳴石を起動させる。

だが……


「ダメだ、繋がらないな……」


「はぁ……そうですか………」


最後の望みも絶たれ、私たちは今、あの爆弾魔のような酔っ払いを大海原にリードも付けずに放ったような状況だ。


「あぁ………これは、ダメですね………」


さようなら楽しかった日々、さようならお師匠様………


私は一人、楽観的な皆のようにはなれず涙を流すのだった………



そして、三日程が経過した。



「ご馳走様でした……いや、すみませんね。助けて貰った上ご飯まで頂いちゃって………」


「いやいや、気にしないでくれたまえ。困った時はお互い様さ」


所変わってアーチェ島、シロウさんから色々な話を聴きながら美味しいご飯を頂いた俺は今後について決めかねていた。


彼の話によると、俺はもうこの島に漂着して三日も寝込んでいたらしい。となると、俺が漂流を始めてからは既に三日以上は確実に経過していることになる。これだけの日数があれば捜索が始まっていてもおかしくない………おかしくないよな?探してくれてるよな!?


………まぁ、そんなことを心配していてもキリがない。偶然とはいえ、こうして環境の良い島に一人で(一人で!!)来られたのだ。少しくらいあいつらのお守りは忘れて楽しんでもいいのでは無いかと思う自分もいるのだが、あいつらを放っておいたらどうなる事か………せっかく稼いだ夢のような大金が一晩で消えかねない。


「これだけしてもらった訳ですし、何かお返しさせてください。えっと……なんでも出来る訳じゃないですけど、何かして欲しい事とかありません?」


「そうだね、それじゃあ………」


少し迷うような素振りを見せた後、シロウさんは言った。


「私の………話し相手になってくれないか?」


「話し相手………ですか」


正直、もうちょっとなんかこう力仕事的なやつを予想していたのだが、そんなことでいいのか。


「あいにく、この島にはマトモに話もできない人間が多くてね………」


「あぁ、なるほど………」


心中お察しします……


彼の反応から太陽教徒の頭のおかしさがよくわかる。これ程人間のできた人が関わるのを避けようと言うのだ、もしかしたら俺でも耐えられんかもしれん………よく考えたら俺、その元締と生活してんのか。


「それじゃあ、この周辺を案内しようか。ここら辺は私の土地でね、一から色々作ったものだからちょっと変な作りになっているんだ」


………なんか長期スパンで滞在する事になってる気がするんだけど。


「あの……えっと、話し相手になるだけ……ですよね?」


「………朝昼晩のご飯にお風呂とトイレ付き、寝る時は先程の布団を使ってくれて構わない。そうだね、あまり長くても悪いし一週間くらいでどうかな?」


こうして俺は、新たに一週間のお仕事に就くことになった。環境は最高だが給料はゼロ、その代わり今回は一人である。


「………こりゃあ楽しい一週間になりそうだ」



俺の物らしき物は全て集めておいてくれたようで、財布や共鳴石、その他もろもろを返してくれた。


今の俺の姿は、真っ白の、まるで死装束のような、患者服のような服だった。びしょ濡れになった服は干してくれていた。カラッと晴れた空の下、物干し竿にかかったスバルを発見した。


「おぉ!スバルぅ、無くしたかと思ったよ………!」


躊躇なく被る。


(マスター、お久しぶりです。数日前は私の制止も聞かずよくもまぁあれだけの醜態を晒したものですが、まぁいいでしょう。何か記憶すべきことはありますか?)


いや、まだいいな。かなり衝撃的だったからちゃんと覚えてるし。


「やはりそれは君の帽子だったか。近くに浮いていたからもしやと思って拾っておいたのだが、良かった良かった」


周りを案内してくれているシロウさんが嬉しそうに微笑んだ。こうして微笑む姿はあまりに優しく、まるで孫を見守る祖父のようであった。


「そういえばシロウさん、ご家族とかいらっしゃらないんですか?奥さんとか……」


「………いたよ。昔ね」


「あ、すみません……」


「いや、いいんだ。これもどうせ話し相手である君には話そうと思っていたからね。続きはまた、少し後でいいかい?」


「……はい」


嫌な目だ……あの日々のことを否が応でも思い出してしまう。彼も、そうなのか………


「その帽子は………いや、いいか。次はトイレに案内しよう」


胸に燻る小さな、けれども真っ黒な気持ちを抑えこみ、先を行くシロウさんの後に従った。


いつまで……いつまで抱え続けるのだろうか。こんなにも重たく、辛く、苦しい思い出を。今でもまだ、あの瞬間が頭から離れない。何故、どうしてと叫びたくなる。


あの時感じたあの気持ちを一生忘れず生きていくのだろうか。


いや、俺はもうあの時の俺とは違う。次はあんな事は起こさせない。もう、もう二度と……


空を見上げると、突き抜けるような晴天がどこまでも青く俺たちを包み込んでいた。どこまでも続く青の中、たった一つの小さな雲を見て、俺は視線を地上に戻し、小走りでシロウの後を追うのだった。

どうも皆様お久しぶりです。今週から投稿を再開していこうと思います。それに伴い、お知らせがありますのでこの場をお借りしてお伝えさせていただきます。毎週月曜に「あなたは神を信じますか?」、木曜に「月と異世界と銃火器と」の更新を行っておりましたが、今後は完全不定期投稿にさせていただきます。

理由としては最近何かと忙しいので、決まった時間での投稿が難しいと言うのが大きな理由です。ですが、まとまった時間が取れる時はまとめて投稿していったりもしようと思っています。唐突な変更となりますが、何卒ご容赦ください。


それでは、今後とも私の作品達をよろしくお願い致します。

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