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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第6章 夏空に煌めくは星々の魁光
66/85

63話 あなたは一体、何をしているのですか?ー………………

久しぶりに長いですよ!さっそくどうぞ!

燦々と煌めく陽光が水面に反射し、美しく輝く。優しい波が音を立てながら行ったり来たりを繰り返し、癒しの空間を演出していた。大魔海からは冷たい風が吹き、夏の暑さを和らげてくれる。


だがこの砂浜は今、きっとどこのどんな場所よりもホットなのだ。


そんな最高のビーチで人々が思い思いに海水浴を楽しむ中、一際輝いて見える集団がいた。


「あはははっ!私の特注水鉄砲の威力を味わいなさい!」


「ああっ!やりましたねソルス!えいっ!」


「ちょっ、メリル!?なぜ私に……」


「それそれぇー!!」


「ゆ、ユリアまで……!?主ぃ!助けてくれぇ!!」


玉のような美しい肌をこれでもかと露出させ、戯れる美少女たち。その細い指で海水を掬い、パシャパシャと浴びせ合う姿はまるで絵画のようですらあった。


だが。


そんな彼女らの美しさも、今この場だけでは至高の存在にはなれない。


なぜかって?そりゃあもちろん……


「俺が一番だからだぁぁぁぁぁ!!!!」


黒を基調としたフリフリのついた可愛らしい水着を着用した俺は、元から違う次元の造形物なのではないかと思えるほどの今の体の美貌を最大限に生かしきっていた。長い金髪は風にたなびいて美しく煌めき、鉄剣では傷すら付けられないすべすべの肌はむき出しになり、局部のみ守るなんとも頼りない布切れさえ外してしまえば、この世の全てさえ得られると感じることだろう。


「リンくん、あれだけ嫌がってたくせに随分楽しそうじゃないですか……」


いや、体感すると分かるわ。なぜ女子がその美しい肌をわざと白日の元に晒したいと考えるのか、それ即ち……


「注目されるの、めっちゃ気持ちいいぃぃぃ!!!」


そう、なんだかものすごく認められている感じがするのだ。この場にただ存在するだけで、無類の何かを得たような気分になれる。今この瞬間だけは、俺も可愛い女の子だ。異論は認めない。


「わぷっ!?ソルス!顔はやめぼがばぼ………」


皆にいじめられているヨミを見ていると、なんだか俺も参加したくなってきた。


「あ、主ぃ……助け……ひっ!?」


ニヤニヤと、未だかつて無いほどいやらしい笑みを浮かべながら、俺はヨミ付近へと飛び込んだ。


大魔海の水はしょっぱかった。



まだ塩の味がする。


ビーチパラソルと寝っ転がれる椅子を創造スキルで生成し、サングラスをかけて海辺のお店で買ったジュースを飲みながら海を満喫する。


そんな誰よりも海と夏を満喫している俺の元へ、世界一可愛い俺の弟子が走り寄ってきた。


「お師匠様お師匠様!!岩場に蟹さんが沢山います!どうやら爆弾の解除作業を行っているようなのですが……見に行きませんか?」


「何それ気になる」


いくら手にハサミがついてるからってこんな場所で爆弾の解除作業なんかしないで欲しいのだが、蟹がやっていると言われると気になる。


「あぁ、それはドカン蟹ね。体内に爆弾を生成できる器官があって、その爆弾は二分の一の確率で爆発するらしいの。それを解除出来るかどうか、命懸けのギャンブルを楽しんでるらしいわ」


「絶滅させるか」


「だ、ダメですよ!ただでさえ最近運が悪いドカン蟹が増えて絶滅危惧種になってるんですから……」


「やっぱり絶滅させた方がいいと思うんだけど」


あまりにも迷惑すぎる。ギャンブルは周囲に迷惑をかけない程度にして欲しいものだ。


「そんなことより、主!これから砂浜でビーチバレー大会が始まるらしいぞ!せっかくだし皆で出てみないか?」


ビーチバレーか……


もはや異世界感ゼロのイベントだが、俺が結界に閉じ込められている間に転生者達が伝えたのであろう。誰だか知らんがグッジョブである。


「びーちばれー……って何ですか?」


箱入り娘のユリアが不思議そうに首を傾げる。まぁ元お姫様だ、知らないのも無理は無いな。


「ビーチバレーは海辺で行うバレーボールのことです。砂浜の上で行うためかなり足場が悪く、通常のバレーとはまた違った楽しさがあるそうですよ。まぁ私はバレーもビーチバレーもやったことありませんが……」


そういえば俺も詳しいルールは知らないな。中学の授業で何度かやらされたが、力の加減が難しくすぐに場外へと飛んでしまうのだ。加えて低身長なので前までの筋力ではジャンプ力も足りなくてスパイクが打てず、苦手な競技の一つだったな……


だが、前の体と特に変わらない現在の身長でも、今のカンストステータスなら余裕でカバー出来る。


パスを繋げるのは無理でも、ボールが届きさえすれば必殺の一撃を放てる最強のスパイクマンとしてなら……


「よし、やるか!」


「あら、珍しくリンがやる気じゃない!それじゃ、ここは私も一肌脱いじゃおうかしら?」


ソルスと共に準備体操を始める俺を見て、メリルとユリアも賛同の意を示す。


「規定人数より多いですが、交代で出場すれば問題ありませんね。良い機会ですし、是非参加していきましょう!」


「わあぁ……ビーチバレー、とっても楽しみです!」


大金を手に入れ、夏の海を満喫し、周囲の注目の的となり、美少女たちを眺めながら夏の思い出作りまで出来るなんてな……少々上手く行きすぎな気もするが、こういった機会は少ない。楽しめる内に楽しんでおかねば。


「よし、行くか!」


「「「「おおー!!!」」」」


皆の掛け声が空高く響き渡った。



『さぁ、今年もやってきたぜ!ベルネチアリゾート主催、ベルネチアに夏が来た!最高にホットなビーチバレー大会!開幕だぁぁ!!!』


「「「「「「「おおぉぉぉぉ!!!」」」」」」」


砂浜にいる全ての人間が雄叫びをあげる。


『実況は、皆大好きドラゴニアの解説お姉さん、ニアにお任せあれ、だぜ!』


毎度おなじみ、大会と来たらどこからともなく現れる神出鬼没のニアお姉さんが実況を務めてくれるようだ。あの人一体どこに住んでるんだろうか。


『ルールは簡単、二人一組のチームを組んで、ビーチバレーを行ってもらうぜ!ボールを落としさえしなければなんでもありの三点先取制だ!今回の大会もあの人が参加してるって聞いたんだけど……あっ、破創の魔女!こっち来て欲しいんだぜー!』


何やらニアお姉さんに呼び出されてしまった。特に断る理由もないので傍に向かう。


『久しぶりなんだぜ、破創の魔女!今回の大会にも出るって聞いたんだけど、君が出ちまったらつまらないんじゃないか?』


なぜか大観衆の前でニアお姉さんと対話する形になってしまったのだが……まぁ実の所、このままビーチバレー大会に出たとして、圧勝してしまうのは目に見えていた。


「別につまらないって訳じゃないけど、確かに普通にビーチバレーをしたとして負けるビジョンが見えないもんなぁ……って言ったって、ビーチバレー大会なんだから仕方ないんじゃないですか?」


『いやいや実はね破創の魔女、この大会、より面白くなるなら私が自由にルール改変していいことになってるんだよ!というわけで提案なんだけど……』


俺の耳元でコソコソと計画を囁くニアお姉さん。


「おおっ、そりゃ面白そうですけど……なんか大丈夫なんですかね、安全面とか……」


『安全なんて気にしてたらこの世界で生き抜いていけないぜ!よし、決まりだな!それじゃあ会場の皆、新ルール……というか新ビーチバレー大会のレギュレーションを発表するぜ!』



「お前らぁぁ、ぜってえ勝つぞぉぉぉぉぉ!!!!!!!」


「「「「「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」」」」」」」」」


ものすごい熱気だ。共通の敵を相手にしたビーチ中の人々が目をぎらつかせ、たった五人を相手にしようとしていた。


そう、俺たちである。


「なんでこんなことになってんのよぉぉぉぉぉ!!!!今頃楽しくビーチバレーしてるはずだったのに!あんたのせいだからね!?リン、あんただけは絶対許さないんだからああああああ!!!!!」


「ソルス、あきらめたほうが身のためですよ。もう後戻りはできません。そして私の発育について散々言ってくれた方々は皆殺しにします」


「主、相手は一般市民だが、今回ばかりは本気でかからないときつそうだぞ?さすがにこの人数で返されたらこちらが先に消耗しきってしまうのは目に見えている。あまりよくないのだろうが、スパイクで何人か吹き飛ばす勢いじゃないと………」


「お師匠様、私もメリルさん同様数人吹き飛ばしたい方がいるのですが………いいですか?撃っちゃっていいですか?」


………俺だって、こんなことになるとは思ってもみなかったのだ。


まさか、俺達対ビーチ中の人間という戦いがこんな形だとは思わなかった。せめて場外にも数人助っ人を配置するぐらいに考えていたが、まさか全員一気にぶっこんでくるとは………それにニアお姉さんが散々煽ったせいで会場の人々の殺気がすごいことになっている。下手すれば本当に殺されそうな勢いだ。


「ちょ、これは流石に無理があると思うんですけど………?」


『それじゃあ行くぜ、ベルネチアビーチの総力をあげて、最強に打ち勝て!レディ………」


「ま、待ってって!マジで!待っ………」


『ファイッ!!!!』


その後、ビーチのお客さんたちにぼろくそ言われてブチギレたメリルとユリアが魔法をぶっ放して、勝手に場外に逃げだしたソルスのお世話になる人が出たり、なんとか相手の猛攻を一人でしのいでいたヨミが顔面にボールをくらい気絶したり、最後に残った俺がめちゃくちゃにされたりといろいろあったが、ビーチバレー大会は無事(?)に幕を閉じたのだった………



「んっ、んっ、ぷはぁーっ!お姉さんお替りー!」


「あっ、私のもおねがーい!」


「リンくん!どうして私はお酒を飲んじゃいけないんですか!?ユリアならまだわかりますが、私はもう十六です!もうすぐ十七になるんですよ!?」


毎度よく懲りずに酒を飲もうとするものだ。俺はその最大の理由を示すため、ふっ、と鼻で笑い飛ばした。


魔方陣の展開を始めたメリルをト―レンさんやヨミが取り押さえる姿を見ていると無性に楽しい気分になってきた。


「だーっはっはっは!!!羽交い絞めにされてやんのー!!」


「殺す」


「魔女様、本当にやめてください!このお屋敷が吹っ飛びかねませんから!」


必死に俺を止めようとするト―レンさんすら面白く見えてくるのだから不思議なものだ。


現在、俺たちは夏の海を満喫した後、ト―レンさんのお屋敷で昨日の戦勝パーティーを開いていた。既に俺とソルスだけで一リットルほどの瓶を二十本近く開けているため、かなり酔っぱらっていることは自覚している。


外からは酔っていてもわかるほど激しい風雨が吹き荒れ、雷鳴が室内まで響いていた。お祭り騒ぎの俺たちすら凌駕するほどの轟音で吹き荒れる嵐を止ませたい衝動が沸き上がる。


「お師匠様、流石に飲みすぎでは?ほら、お水ですよ」


流石は俺の愛弟子、かわいいだけじゃなくて気も利く良い子だなんて。ならば思う存分甘えてしまおう。今この時だけは、何をしても許される気がしていた。もちろん、酔っているからだろう。


「ユリアぁ、飲ませてほしいなぁ」


「え、えぇ!?ちょっと、どうしたんですか!?いつもはここまでひどく酔ったりしないのに………」


実は俺、最近は仕事で忙しく、金もなかったので、酒を飲むのはかなり久しぶりだったりするため、アルコール耐性が著しく下がっていた。この異常な泥酔具合にそのような因果関係が存在していたことを、この時は誰も知らなかった。


「あーん」


「じ、じ、自分で飲んで下さあああああい!!!!!」


頬を赤く染め、熱っぽい視線を向けてくるいつもと違う俺を見て、ユリアは逃げ出してしまった。コップはご丁寧にも机の上に置かれていたので飲み干した。せっかくのユリアに甘えるチャンスを逃してしまったことで先ほどから感じていたあの衝動が抑えがたくなってきた。


そして、タイミング悪くその時がやってきた。


「と、ト―レン様ぁぁ!!大変です!この嵐の元凶が風の精霊………とかよりもひどい状況になってますが………」


「ちょ、今手が離せないから!悪いけど何とかしといて………」


何とかメリルを抑え込むト―レンさんが何とか部下に指示を出す。だが、決して今の破創の魔女には聞かせてはいけない情報がわたってしまった。


「その嵐ぃ、俺が何とかすりゅー!」


俺は、ひどく酔っぱらっていた。



あの人は一体何を考えているのだろうか。まったくもって理解に苦しむが、彼がそう決めた以上、神であってもその決定は覆せないだろう。


今、私の師匠は吹き荒れる暴風雨の中、その元凶たる風の精霊王を討たんとしていた。風の精霊王は風という自然現象の概念とともに生まれた最古の精霊であり、同時に風属性生命体の中で最強の力を誇る名実ともに神と呼べる存在である。そんな存在を打ち倒すと叫び、屋敷を出たのが数刻前のこと。


流石に付き合えないと判断した私はまだ皆とともにト―レンさんの屋敷にいた。


………先ほどは逃げ出してしまったが、やはり水くらい飲ませてあげてもよかっただろうか。でもでも、さっきのお師匠様はいつもと違った。まるで私より弱っちい、頼りなくてかわいらしい、そんな存在に見えたのだ。ひどく庇護欲がそそられたが、それ以上にいつもより、その、少しえっちなお師匠様に見とれてしまったのだ。はだけた服、熱っぽい視線、とろけた瞳………彼は男性だとわかっているのだが、やはりどうしても視覚的情報で理解してしまうのは避けられない。


たった少し、小さな後悔を感じた気がした。


………後悔だなんて、あれが最後の会話でもあるまいに。


小さくため息を吐いた。まったく、彼はいつも私の悩みの種だ。その分、私の幸せでもあるのだけれど………


って、何考えてるの私!?


恥ずかしい思考を振り払うように頭を振る。


その瞬間、声が聞こえた気がした。まるで絶叫するような………叫び声だった。


そして、そのすぐあと、お屋敷の扉が大きな音を立てて開かれた。入ってきたのは先ほどお師匠様についていったト―レンさんの部下たちで………あれ、お師匠様の姿が見えないが、どうしたのだろうか。


そして、私はこの後の彼らの言葉に度肝を抜かれることとなる。


「ほ、報告します!えっと、その、破創の魔女様のことなのですが………」


彼らの顔は蒼白で、何かとんでもないものでも見たようだ。いったい何が………


「飛ばされました。大魔海の、遥か彼方に………」


起こったのか………え?


「え?」


………………何してるんですか、お師匠様。

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