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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第5章 ドリーム・ロボット・パニック
44/86

43話 旧神代(ビフォー)

先週投稿できなくてすみませんでした。

翌朝。


「はーい、皆準備は出来たかしら?そろそろ出発の時間だったはずよ!」


天気は快晴、出発には絶好の旅日和であるが、こんな日はコイツがやたらと元気なので俺の心の中は大雨状態である。


「お師匠様、おはようございます!……えっと、あの後はしっかり寝られましたか……?」


「おう、何とかな…………」


あの後とはもちろんあの後である。思い出したくないので読者の皆さんにはぜひ42話を読んでいただきたい。


「ほ、本当に大丈夫なのか?大分顔色が悪いようだが……」


ヨミが不安そうに覗き込んでくる。

俺の顔色、そんなに酷いか……


「ま、まぁ今回は馬車旅なのでしょう?それなら車内で寝て行くことも出来ますし……」


どうせ自分も寝るつもりだろうメリルがそんな事を言……


「ちょっと待て、馬車旅?そんなのいつ決めたんだ?皆俺が乗り物に弱いの知ってるだろ!?」


そう、俺はかなり乗り物に弱い。この世界にはまだ酔い止め薬などありゃしないので、俺は一生乗り物酔いと生きて行かなければならないのだが……


「なんだよお前ら俺を殺す気か!?昨晩も心の傷が大きすぎて1時間も寝れてねぇんだぞ!?」


いやいやと駄々をこねる子供のように暴れる俺を見て、メリルがため息を吐く。


「そういえばまだリン君には言ってませんでしたね。今回乗る馬車は、馬車は馬車でも最先端のものです。最近の研究で見つかった新たな魔力回路により、物質の浮遊を風の魔法を使わず行えるようになったそうで、その技術を用いた馬車はなんと少しだけ宙に浮いているため振動がほとんどないんです!」


なるほど、乗り物酔いとはつまるところ三半規管の不調だ。普段であれば起こらないような平衡感覚の乱れによって生じるものである。

………流石我らがマテリア王国、どんな時でも想像の1歩先を行く。


それならば俺も心配は無い。前回の馬車の旅は散々だったからな………今回こそ楽しませてもらおうか!


「よし、分かった。それじゃあ行くとするか!マテリア王国王都!魔導の都、アテリネへ!」



魔導の都・アテリネ。


由緒正しきマテリアの血統が代々王族として君臨し、民と共に魔法を高めてきたここマテリア王国のほぼ中心に位置しているその都市は、魔道具や魔導機械に溢れていると言う。生活や仕事の中にもそれらの存在は深く根付いており、人々の助けとなっている。

一魔道具士としてはぜひ行ってみたかった場所なので、期せずしてテンションが上がってしまう。


「魔女殿!出立にはちょうど良い程の好天ですな!」


荷物をまとめて家の前に出てきたところで、団長さん達がやってきた。


「あら、完璧なタイミングね!流石私だわ!」


どうやら迎えに来てくれたらしい。

団長さんは今日はいつもとは違い軽装だ。重厚な鎧は外され、薄手の服を数枚重ねた貴族着のようなものを着ている。それに対し転移魔法使いさんは、昨日と変わらず騎士団の紋章があしらわれたローブを着ている。


「む?どうなされましたかな?」


「い、いえ。今日は鎧ではないんだなぁと……」


「はは、そういえば鎧を脱いだところを見せるのは初めてでしたな。馬車の中であのような鎧を着ていては皆様のお邪魔になってしまいますから、このように騎士団の正装に着替えてきたのです」


なるほど、王直属騎士団は国の精鋭だ。貴族のような高待遇を受けていても不思議では無い。


それで……


「あー、えっと……転移魔法使いさんは……」


「本日は馬車旅と言うことで私はお荷物ですが、私に出来ることならなんでもお申し付けください!」


「セリナよ、なんなら一足先に戻っていても良かったのだぞ?」


「あ、えー……あーっと……」


その瞬間、俺の脳内にとある記憶が浮かび上がった。

前世で散々読み耽った漫画達。その中にはいつだって、男性を愛する少女の姿があった。パッとしなくても、強くなんてなくても、男を一途に愛する少女たちの姿が!


そう、これは絶対に壊してはならないものだ!何よりも尊いものだ!壊させてたまるかぁ!


「そ、そういえば昨日メリルと話してたけどまだ話が途中じゃなかったか!?その続きが聞きたいんだよな!な!」


無理やりな理由付けだったが、転移魔法使いさん(セリナさんと言うのか)は俺の意図を察してくれたらしい。


「は、はい!魔女様の言う通りで!まだ教わりきれていない魔法があるのです!」


「ふむ、そうであったか。この機会を逃さず貪欲に上を目指すその姿勢、まさに騎士のあるべき姿だ。私も見習わねばな……」


「そ、そんな…………」


よし、これで世界の平和は守られた!


「いつまでやってるんですか……早く行きますよ!」


ユリアちゃん怖い!



「えーっと…………もしかしなくてもこの馬車って…………」


「も、申し訳ありません!先日の事件の際ソルス殿はいらっしゃらなかったので……!か、完全に忘れておりました……」


そう、この馬車は6人乗りだった。


「一応荷車には座れる場所がありますが、今回貴重品の運搬が目的では無いため魔法がかかっていないのです。つまり、めちゃくちゃ揺れます」


そうなると俺が乗ることは難しそうだ。

誰かに乗ってもらうしかないが……


「もちろん私はそんな所になんて乗らないわ!この私が乗るんだから、荷車なんて真っ暗な所はごめんよ!」


「あ、あの……私も乗り物酔いが酷いのだが…………」


そういえばヨミもかなり乗り物に弱かったな。


「となると、俺とヨミ以外の誰かに荷車に行ってもらう必要があるんだが……」


「わ、私が参りましょう。ソルス殿を忘れていた私に責任があります」


「い、いけません団長!ここは私が!」


いかん!推しカプが離れ離れに!?


「ま、待ってください!セリナさんはまだメリルに聞きたいことがあるんでしょう!?それに団長さんにも話を聞きたいし、ここはやっぱりソルスを……」


「はぁー?なんで私が行かなくちゃなんないのよ!それにさっきの条件ならユリアちゃんだって荷車でもいいじゃない」


「え、えっと……私が行きましょうか?」


「ダメだユリア、こいつは甘やかすととことん調子に乗る。いいかお前ら、ここは公平にジャンケンだ!俺もヨミも参加する!というか全員強制参加だ!」


「ちょ、主!?私もか!?」


たとえ推しカプが離れ離れになりそうだとしても、隣で巨乳が揺れていようと、男にはやらなきゃいけない時がある!


それは!可愛い女の子が理不尽な目にあっている時だ!


「おら皆手ぇ出せ!最初はグー!ジャーンケーン…………」



「ふぅ、それでは大魔導博覧会について詳しく説明いたしましょう。この催しは王子によって考案されたと言いましたが、実は大魔導博覧会は数百年前までは頻繁に行われていたのです。その時期はちょうど世界大戦が起きた時期であり、それ以降その伝統は廃れ、風化していたのですが……」


「このような形で復活したと言うわけです。なのでできる限り文献などから当時の様子を再現し、世界平和の象徴としての役割も担っています」


なるほどなるほど、俺は結界村に囚われていた為この世界の歴史についてはあまり詳しくないが、元は伝統ある祭事だったようだ。

いや、というか今まで歴史に関係してくる敵もかなり出てきたのだ、そろそろ勉強しておかないと後々面倒なのでは?


(話を聞くと後々敵になりそうで嫌なのではなかったのですか)


う、まぁそうなんだけども……


「そういえば魔導機械らしき物の実験もするって言ってましたけど……」


「あぁ、その事でしたらちょうど今説明しようと思っていた所です。実はですな魔女殿、王都にあるダンジョンの最奥にて、恐らく旧神代(ビフォー)の遺物であろう魔導機械が……」


「ちょ、旧神代の魔導機械ですって!?」


「うおお!?びっくりしたわ!」


ジャンケンで惨敗し、惨めにも荷車に乗せられている女神様(笑)が大声で叫ぶ。


「ちょ、ちょっと落ち着けよ。そもそも旧神代ってなんなんだよ?俺にも分かるよう教えてくれよ」


一応荷車は客車に連結されており、会話は出来る位の距離ではある。なんだか重要そうなワードだし、聞いておいて損は無いだろう。


「全く、そういえばあんたは常識知らずのアンポンタンだったわね。良いわ、このソルス様が直々に教えてあげるわよ!感謝しなさいな!」


「あー、やっぱいいかも」


「待ちなさいよ聞きなさいよちゃんと話すから聞いてよー!!」


「ぬぁっ!?荷車で暴れんなよ!分かったって!分かったから!」


「じゃ、始めるわよ?」



はるか昔。


神々によって時間、空間、物質、そして輪廻転生のシステムが構築され、宇宙はほぼ現在と変わらぬ状態になっていた。


そんな中、ある神はとある星に二足で歩行し、独自の言語を用いて意思疎通する奇妙な生物を見つけた。


彼らは神々の御姿に酷似したその肉体を上手く扱いきれず、他の動物達と同等、またはそれ以下の存在として暮らしていた。


ある神はこの奇妙で自分たちによく似た生物に興味を持ち、方々に散っていた神々を呼び集め、皆でここに暮らすことにした。


突然の神々の来訪、その星の奇妙な生物は『人間』と名付けられ、神の知恵を授かり、その星の生物の頂点となった。


だが、彼らをよく思わぬ神もいた。人間によって迫害される獣達によく似た姿を持つ獣神達だ。


獣神は人間を毛嫌いし、その溢れる御力で消し去ろうとしたが、他の神々によって止められ、獣神達は封印されてしまった。


こうして人間と神々は共に暮らしていくことになるのだが………



「あとは、あんたも知ってるあの昔話の通りよ。あれ、実話なの」


「そ、ソルス殿……?その話はマテリアでもかなりの重臣しか知らぬ世界の最重要機密事項なのですが……」


「ほーん、あれ実話だったのか。あれ、じゃあ1回人類滅

んでんの?」


「んー、まぁそういう事ね。神々も滅んでるわ。要するに、あの昔話の中で世界が滅ぶまでの事を旧神代(ビフォー)と呼ぶの」


なるほどなるほど、なんか国家機密とか聞こえた気がするが、放置でいいだろう。


「ちょ、ソルス殿?少しお話が………」


「あ、リン!外見て!マッハ蝶が縄張り争いしてるわよ!」


おお、なんと言うか……


「ドラゴン〇ールみたいだ」


「ちょっと!別作品の、しかも超有名所なんて出しちゃダメよ!著作権侵害で訴えられるわ!」


「いや、ここ異世界だし……ッ!?」


途端、俺の体を激痛が襲う。


「……あ、うぐっ…………!」


「お師匠様?お師匠様……!!しっかりしてください!」


急に横に倒れ込んでしまったのでユリアにぶつかったようだ。


「ご、ごめん……大丈夫……だから」


「どう見ても大丈夫じゃないですよ!ど、どうしましょう!!」


「一旦馬車を停めましょう。御者殿!停めてくれ!」


俺を心配する声が聞こえる気がする。

だが、今は痛みでそれどころでは無い。


「ぐぅ……はあっ!?はっ……はっ……」


ダメだ、意識が…………


(マスター、精神への干渉を確認しました。対処しますか?)


た、頼む……


(実行……失敗しました)


ど、うい……う事だ………


(干渉が強すぎます。私の力では対処出来ません)


まじ……か………………


次第に痛みも感じなくなってきた。ヤバい、これマズイ。()()()……()()()……!


(マスター、応答願います。マス……応答………す。マ………………応……………………)



───あ、成功したみたいね。


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