41話 あなたはロボがお好きですか?─男児たるもの、童心忘るるべからず(YESYES超YES)
皆様、初めまして。またはお久しぶりです。唸れ、爆殺号!と申す者です。最近忙しくて続きが書けていませんでしたが、ようやっと新章突入でございます。
今回はウルトラスーパーロボロボして行きたいと思っておりますので、どうぞ皆様の素晴らしい想像力からカッケーロボを生み出しちゃってください。
それでは本編、ゆるーっと行ってらっしゃい!
今日の俺は、この世界に来てから……いや、生まれてこの方感じたことの無い程の興奮に包まれていた。
多くの人々……この国、マテリア王国の住人の内の半数以上がこの青空の下に集まり、彼らの登場を今か今かと心待ちにしている。
この集団の特異な点は、なんとその場に男性しかいないということである。どこを見ても男、男、男、オカマ………やはりニューカマーも男の子の本能には抗えなかったようだ。
俺はこの場で唯一の女体として存在していたが、やはり逸る心は男の子なのだ。
それはさておき………
今この場にはマテリア王国の住人の半数以上がいると言ったが、なんと今、誰一人として言葉を、物音を発していない。
とてつもない数の人間が集まりながらも、完全な静寂を保つその様は傍から見ると狂気の集団のように映るであろう。
だが俺たちの目に狂気はない。
あるのはただ、高鳴り、これから起こる事への止むことなき興奮の嵐が俺たちの胸中に巻き起こっている。
キーーーーーーーン
拡声魔道具の起動音が場の静寂を打ち破る。
「………ようこそ、我らがマテリア王国の紳士たち。いや、夢と希望を忘れぬ男児達よ!」
壇上にメガネのおっちゃんが現れる。
紹介しておくと、彼の名はロッツォ。マテリア王国一の解説紳士であり、導入・幕引きの天才と呼ばれる男。
実は、隣国真竜王国ドラゴニアの解説お姉さんであるところのニアお姉さんとバッチバチのライバル関係にあるらしい。
話は会場に戻る。
「私は、忘れていない。あの日友と語り合った夢を……そして、この世界の全ての男の子の夢を!」
会場はただ歓喜に震えている。一言も発されない、発せられない。
「待った、待った、待ち続けた!そして今ようやく!私たちの夢は、実現される!」
「うおおおおぉ…………あれ?」
1人やらかしたようだが気にも止まらない。
早く………早く先を………!!
「同志たちよ!私たちの夢を実現へと導いた男の名を、深く魂に刻み込め!」
来るぞ!!!
「最新鋭の特殊軍事用魔導モデル開発者であり、此度偉業を成し遂げた男!ユーリ・エヴァンの登場だぁぁぁぁぁ!!!!!」
「「「「「「「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」」」
解説しよう!特殊軍事用魔導モデルとは!
まあその名の通り、特殊軍事作戦にのみ使われてきたという魔法能力を飛躍的に向上させる魔道具の一種であり、主に全身を包むスーツのような形状である。
だが奴は、実現して見せた!
特殊軍事用魔導モデルの飛躍的な改良に成功し、男の子の夢であるアレを作りあげたのである……!
そう………アレを!!!
ブゥン………
途端、会場に溢れる重低音。
「……来る!」
それは、その巨体からは想像できない程のスピードで、はるか地の底より俺たちの前に姿を見せた。
鈍く太陽の光を反射するその白銀の装甲、淡く光る魔力回路、その背には美しきミスリルの翼………
そう、ちょっと分かりにくいがアレである。
「巨大ロボ、来たあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
◇
時は少し前に遡る。
以前、メリルが唐突な家出を敢行し一悶着あったが、それも過去の話、今では雪も深く積もるほどの季節になった。
その間特に何も無く、俺たちは平和な日常を享受していた。
そして今俺は、俺の部屋にてとあることを行っていたのだが………
「おーい主!どこにいるのだ!?ここか?こっちか?いや、ここだ!いない!どこだ!」
なんかデジャブを感じるがまぁいいだろう。
「リンー?またここー?あ、いた」
なんかすごいデジャブを感じるがまぁいいだろう。
「太陽も空高く上がってるって言うのにあんたは部屋にひきこもって何してるの?久々の晴れなんだから雪合戦でもしましょうよ」
「なんかお前、変なところで子供っぽいよな」
「だって太陽教の教典の1ページ目には『汝何時までも童心を忘れることなかれ』ってあるんだから。私が忘れちゃ元も子もないじゃない」
「太陽教ってもっと狂った集団なのかと思ってたけど案外まともなこと書いてあんだな」
てっきりもっと酷いことが書かれていると思い込んでいたが、少しは見直してもいいのかもしれない。
「ちょっと、私の可愛い子供たちに対してそんな言い種はないんじゃないの?こないだ大変だった時にいなかったのは散々謝ったじゃない。ごめんなさいって言われたらいいよって返すのが世の中の常識でしょう?」
大変だった時と言うのはもちろんメリルの家出騒動のことである。あの時こいつがいれば、俺は死んでいただろうが、メリルを止めるのも楽だったろうし、勇者たちもあれほどの深手を負うことはなかっただろう。
「ごめんで済むんなら警察は要らないんだぞ。それにお前、普段役に立たないんだから大事な時くらい活躍しろよ」
「あぁーっ!言ってくれたわねこのロリコン!私だって普段役に立ってるじゃない!洗濯物が綺麗でおひさまの良い匂いなのは誰のお陰だと思ってんのよ!」
普段のメリルやユリアに対しての態度を思い返すと何も言い返せないのが腹が立つ。だが、そういえば洗濯物はこいつが当番の時はパリッと乾いている。今度から洗濯物はソルスの仕事に決定だな。
「うっせえなぁ!今ちょうどやりたい事があるんだからどっか行ってくれよ!」
「そうよ、それを聞きに来たんじゃない!で、何してるの?」
おっと、聞いてくれたか……
何してるのと言われたら、答えてあげるが世の情けってな。
「あぁ、実はさっきまでとあるものを作っててな。そろそろ冷えた頃だろうし具合を見ようと思ってたんだ。お前も見てくれよ。『物置部屋』」
俺がつぶやくと同時に、空間に小さな断裂が走り、ここでは無いどこかへと繋がる。俺が勝手に物置にしているこの異空間には、ここには置ききれない薬草や大きな魔道具、そしてまだまだなくなりそうにない世界樹などが収納されている。
上半身ごと中に入り込み、お目当てのものを取り出した。
「あら、これって日本刀じゃない。あんたそんなものも作れたのねぇ〜」
俺の手からひょいっと刀を取り上げると、何やら渋い顔で見つめ出した。
日本人なら当然……と言いたい所だが、平凡な一高校生であり、危険な刃物等には一切縁のない生活を送っていた俺にそんな知識はない。
最近村の鍛冶屋に教わったものだ。かく言う彼も村の外の鍛冶屋に聞いたと言っていたので、おおかた俺より後にやってきた日本人によって伝えられたのだろう。
にしてもだ。
鈍く光を跳ね返す美しい刀身を見ると、我ながら聞いただけでよくここまで作れたな……と思う。
まだ鍔や持ち手部分は手をつけていないが、薄く長い刀身はどんなものでも斬り裂けそうである。
「あぁーーっ!!」
おもむろにソルスが叫ぶ。
「なんだどうした何があった!?」
慌てふためく俺だったが、対するソルスはぷるぷると震えるのみで、その続きを話してくれない。
「おい、どうしたんだよ。何があったんだ?」
「こ、これ……」
俺の打った刀がどうかしたのだろうか。
「これ、神格が宿ってるわ………」
「あ?神格…?」
何やら聞き馴染みの無い言葉が飛び出してきたが……
「そうよ神格よ!あんたが打ったこの刀、神器になっちゃってるのよ!」
えっと……?つまり………
「どういうことだってばよ……」
「だーかーらー!あんたが打ったこの刀は、本来神が鍛造することでしか得られない神格を持ってるってこと!この刀、かなり上位の神格が宿っちゃってるわね……どうしたものかしら」
いや、分からん。
「つまりどういうことなんだ?俺は神器なんて作れるようになった覚えはねぇぞ?」
「そんなこと私に聞かれても知らないわよ。普通こんなことはありえないんだから……まぁいいけど。鍛造神の面目が潰れようが私には関係ないしね!ヘパリーゼには悪いけど、私はこの件については見なかったことにするわ」
「お、おう」
というか鍛造神ヘパリーゼって名前なのか。なんだか酷く聞き馴染みがある気がするが、まぁいいか。
そんなこんなあり、俺は何故か神器が作れるようになったようだ。原理が分からないので作ろうと思って作れないのが難点だが、謎多き俺の身体にさらに1つ謎が増えたところでもうそう変わらないのである。
今日も今日とて、平和な1日であった。
◇
ピンポーン
そこそこ広めの我が家にチャイム音が鳴り響く。
「おー師匠様!来客ですよー!!お師匠様ー!!」
ドンドンバタバタとよくもまぁ朝からこれ程動けるものだ。
「うーん…一昨日来やがれって言っといてー」
「そんなこと言いませんからね!早く起きないと部屋ごと消し飛ばしますよ!!」
それは困る。というかユリアのスプリーム・ドラゴニアをブッパなされた日にはこの家ごと吹き飛ぶ。
「はいはい分かったよ……」
俺は仕方なくぬくぬくのお布団に別れを告げ、タンスから適当に着替えを引っ張り出す。
「……めんどいからこれでいいや」
我らがマテリア王国の王都からはるばるこの結界村までやってきたと言う商人から買った、どう見てもジャージにしか見えない服を寝巻きの上に羽織り、やはりどう見てもジャージにしか見えない長ズボンに履き替え、玄関へと向かった。
ピンポーン…ピンポーン
こらこら、そう何度も押すなよ……
「はーいどちらさ……って……団長さんじゃないすか………」
「な、なんですかな魔女殿。そんな目で私を見ないでいただきたい……」
扉の先には、毎度おなじみマテリア王国王直属騎士団団長のウィスカー殿が立っておられた。
……これはまたもや、厄介事の匂いである。
だが、一応俺もこの国の住人。『面倒事はもういいんだよ、帰って!ほら帰って!』と言えば、不敬罪に問われて国を追われる可能性もあるのだ。すごーく、ものすごーく言いたいが、ここは我慢だスズキリン!大人の対応をするんだ!
「……寒いでしょうし、一旦上がっていかれます……?」
「ふむ、それはありがたい。今回は私と転送魔法使いしか居りませんし、場所は取らないでしょう。お言葉に甘えて上がらせていただきますぞ」
やはりこういうマトモな所は好感が持てるんだよな。だが、どうしても厄介事の運び人に見えてしまう……
帰らせてぇ……
◇
「ウィスカーさん、お久しぶりです!こちら粗茶ですが……」
「おお、メリル殿!お元気そうでなによりですぞ!」
「はい、皆さんのおかげです」
あの一件以来、メリルは唐突に眠りに落ちる頻度が確実に減り、睡眠時間も減ってきた。とはいえ、まだ1日1回は唐突に眠ってしまうのだが……
メリル曰く、血の縛りから脱却したとの事だ。まぁなんであれ、メリルは今は毎日楽しそうに過ごしてくれている。ならば俺が過度に踏み込む必要は無いだろう。
「うむ、温かなお茶が身に染みますな……ところで魔女殿、ヨミ殿とソルス殿は……?」
「あぁ、あいつらなら今はいませんよ。最近食費がすごいのでクエストを受けに行かせてるんです」
そう、最近酷いのだ。ソルスは元から食っちゃ寝駄女神だったし、ヨミは食欲旺盛すぎる。『あれだけの胸があるのにまだ栄養を摂るつもりですか……』とメリルが呟いていたほどだ。
「なるほどなるほど、つまり魔女殿、今この家は経済的に苦しんでいる状況なのですな?」
ゲッ、不味い!
「実は今回、ある事をお願いしたくやってきた次第でして……」
「いやぁ、今はちょっと無理かなぁ!最近寒いしなぁ!あんまり外には出たくないなぁ!!」
「魔女殿、魔導機械に興味はありませぬか?」
「いやぁ紫外線はお肌の大敵今なんて?」
最近(500年前)は男性でも美容に気を使う人も増えてきており、俺もそろそろ気をつけてみようかなーって今なんて?
「魔導機械、それ即ち、魔法陣の形をした魔力回路に膨大な魔力を流し込むことによって、擬似的な魔法の発生、継続を行い、労働力等の肩代わりを行ってくれる非常に便利な技術です」
「そ、それってつまり……」
「ええ、ロボです」
まさか、異世界でこの単語が聞けるとは思わなかった。ガ○ダム、エ○ァンゲリオン、果ては特撮ヒーローの合体ロボまで。人それぞれに思い浮かべるロボがいるだろう。そんな男児の夢が!今この異世界で現実になろうと言うのか!!!
「興味あります、聞かせてくださいその話。内容によってはいやよらなくても乗ります乗らせてください」
「うむうむ、やはり魔女殿も男児なのですなぁ。私もその話を聞いた時は胸の高鳴りが抑えられませんでしたよ」
おお、こんなところに俺のブラザーがいたとは!
「さぁ、聞かせてください。ロボの話を!」
我ら男児の、決して消えない夢の話を!
実は1章、4章の章名を変更させていただきました。突然で申し訳ありません。




