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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第4章 命短し夢見よ乙女
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39話 命短し夢見よ乙女

どうも皆さんお久しぶりです。

ウルトラ不定期更新ですが見てくださる方には本当感謝感激雨あられって感じです。

まぁ今回も拙い文章ですが読んでって頂けると幸いです。コメントとかあると嬉しいなぁ…なんちゃって。

それでは前書きはこのくらいで。

過度な期待はせず、ゆるーっと行ってらっしゃい!

「………………」


「………………何をしている」


「いや、待ってくれヨミ殿!どうしてそんなに殺気を込めた目で私を睨むのです!?私はただこの部屋で好奇心のまま……いえ、騎士の直感に従い色々いじっていただけであって……」


私の魔力感知能力はかなり低い方ではあるが、これだけ近付けば流石に分かる。


「魔道具……と言うにはいささか語弊があるような……」


残存魔力だけでもかなりの量が残っていたが、魔力の供給が止まり、魔道具もどきから漏れ出す残存魔力の変換後の状態であろう物からは魔力が感じられなかった。

魔力を魔法では無い新たな力に変換する……

魔法でなければ魔法抵抗力では防げない……


なるほど、流石国で魔法の研究をしていた男、ここまでに達していたか……


他に大きな魔力反応も無いようだし、これが件の物で間違いないだろう。


問題は………


「王直属騎士団長……ウィスカーと言ったか……貴様、何をしている?」


「待ってくれヨミ殿!本当に私は何も知らないのです!勇者殿達とはぐれ、探して歩いている内にこの部屋に……その後はボタンを押してみたりしていただけなのです!」


「………なら本当に敵の手先ではないのだな?」


「そうですぞ!王と神々に誓って!」


「……そうか、ならいい」


とりあえず信用しておこう。


一先ず発見には成功した。主に伝えておかねば……



「『あの日の(アイスメモ)記憶(リー)』!」


動きを止めている睡眠欲の魔女の周囲に冷気が立ち込める。

異変の予兆だ。


その瞬間、氷がぶつかり合う轟音と共に、涙を流す少女を囲うように巨大な氷城が形成された。


「まだ足りねぇだろ!『創造』!」


氷の城壁に更に水をかける。

氷の冷気で水は凍りつき、美しき造形物は狂気を留める鉄壁の監獄となった。


「ふっ…………」


これでもまだ止まらない嫌な予感にため息を吐く。


「まぁ出てくるよなぁ……」


とてつもない爆発音と共に監獄は吹き飛び、中から魔女が歩み出てくる。


涙も乾いてしまった彼女は、いまや何があろうと止まることはないのだろうか。


(馬鹿野郎、それをさせない為に戦ってんだろ!しっかりしやがれ!)


元の自分とは天地の差ほどある端正な顔をパシンと叩いて気合いを入れる。


「激流か……」


魔力の動きを感知し、後ろへと跳び退く。


その直後に、俺が立っていた地面から噴水のように(威力は桁違いだが)水が吹き出す。


それと同時に周囲で爆発が起こる。


「『結界』」


危なかった、今のはギリギリだったぞ……


何とか凌いでいるが、いかんせん手数が多すぎる。


俺がいくら早く強い魔法を放てようと、この魔法防御を貫くには詠唱は必要だし、俺だって攻撃されたら痛い。このレベルだと防御に手数を割かなければならない。先手を譲ったのは悪手だったか……


と、考えている隙にも魔法は飛んでくる。

紫電が、黒炎が、土塊が、氷槍が、重圧が、俺の命を砕かんと次々に飛来する。

躱して、相殺して、破壊して、受け流して、何とか時間を稼がんと戦い続ける。


不意に、声が響いた。


『主!聞こえるか!』


間違いない、ヨミの声だ。


共鳴石が、遠く離れたヨミの声を俺へと伝える。

連絡が来たということは見つけたのだろう。


「見つけたか!よくやっ…『破壊』!」


危うく被弾直前だった氷塊を砕き割る。


『すまない、戦闘中か!?』


「いや、問題ない……でも簡潔によろしくぅっ!『破壊』『破壊』『破壊』ィ!!」


いくつも並列展開された魔法陣が死を放出する前に砕け散る。


『装置は発見した!だが使い方が分からん!』


そりゃそうか……俺が行ければ確実だが、睡眠欲の魔女を抑えておかねばそれにより何が起きるかは全くの未知数である。俺が動く訳にはいかない……


「なんでもいい、ボタンを押しちまえ!夢を見せる装置なんだから相当変なことしないと暴発したりしねぇだろ!?」


『い、いいのか主!?もし万が一があれば………』


信じてくれ。


『ッ!……痛いのは嫌だからな!』


「おう、任せとけ!」


会話に気を取られていたのだろう。俺の眼前には、色濃い死が迫っていた。全てを止める絶対零度が、何もかもを灰燼に帰す灼熱が、神の怒りの如き雷が、ゼロにして無限の暗黒が……過剰なまでの死が俺に迫る。


ふと、眠気を感じる。


「それじゃあ皆、おやすみ」


その心地よいまどろみに身を任せ、俺は意識を手放した。



「─────────」


何度も。何度も聞いた声。その昔、私の全てであり、この今、私を叱責し続けるはずの声。


重いまぶたを無理やりこじ開ける。


何度も繰り返した悪夢の始まりは鮮明に覚えている。暖かく、だがそれでいて無機質なあの空間とは違う。優しく、愛に満ちた声の主を……私はこの目で見なければならない。

現実を…………直視しなければならない。


ここは夢であり現なのだ。


「お姉ちゃん、おはよう!」


もとより成長の遅い私よりさらに低い身長。大きく見開かれた純粋無垢な瞳。小さいながらも畑仕事を手伝っていたからか力強い腕。そして、短く切り揃えられた銀髪。


「ゲイ…………る………………」


駄目だ…………やはり耐えられない…………

私の両目からは次々に涙がこぼれ落ちていく。


「……泣かないで、お姉ちゃん。僕、お姉ちゃんのこと嫌いになったりしないよ」


「ど………して」


「………………」


「どうして…………?私が……私が、ゲイルと!お父さんを殺したのに!?私なんて…………私なんていなければこんな事には…………」


次から次へと涙が溢れる。

何度も見返したあの惨劇、私がいなければ……ただそれだけで起こらなかったはずのイレギュラー。ゲイルも、父も幸せに暮らしていかなければならない人達であったのに。


「……メリル」


低いながらもよく通る、声が聞こえる。


「………すまない」


「……………………」


「私があの日、終わらせられなかったばっかりに……」


……やめて


「僕だってあの日、畑に行かなければ……」


……………やめて


「メリ…」


「やめてよおぉぉ!!!!」


私は感情のままに叫ぶ。


「どうしてよ!?全部私のせいじゃない!どうして謝ったりするの!?私さえいなければ皆が傷つくことは無かったのに!!」


暴論だ。分かっている。


「どうして私なんか生まれてきたの!?近づいてくれる人達を傷つけるだけの欠陥品のくせに!!どうして私なんかのために大切な人を失わなくてはならないの!?もう沢山よ!!だから……だから……」


「あなたに壊して欲しかったのに………」



「前にも言ったが……それは出来ない相談だ」


「どうしてよ!?あなたならこの無駄に強靭な身体だって破壊できるでしょう!?どうしてそんな力を持ちながら私を苦しめるの!?もうあなたにしか……壊せないのに………」


「うっせぇ馬鹿野郎が!!」


「……っ」


ビクリとメリルが震える。俺が唐突に叫んだのに驚いたのだろうが、そんなことは気にせずぶちまける。


「お前さぁ……俺にもその気持ち、味わわせる気かよ」


「………ッ!」


「なぁ、メリル。俺はお前のその気持ち……寸分たりとも理解出来んわけじゃない。俺にだって人並みに誰かを思う心はあるんだよ。お前と……一緒だよ」


もう誰も……失わない、そう決めたのだから……


「……分かったような口をきかないでくださいよ」


「……分かってないとでも思うのかよ」


「当たり前じゃないですか、最強さん。何もかもその手に持てるあなたには……ぐぅっ!?」


抑えられなかった。


「……………悪い」


「この程度じゃ黙りませんよ、さっさと終わらせてください」


殴られた頬を擦りながらも立ち上がるメリルはなおも続ける。


「私があの日、どれだけ力を願ったか……どれだけ自分の無力を嘆いたか………そして私に与えられたのは私なんかには分不相応な力…………器の私が、足りなかったんですよ」


大切な者を守るため力を願い、その力で大切な者を帰らぬ人とした少女。


「私なんて生まれてきたのが間違いだったんですよ。何もかも足りてない、人の形をした空っぽの器。そして器から溢れ出す力……だから器を、破壊するしかない」


それは真性の悪。


魔獣と呼ばれるにふさわしい。


人にして人に非ず。


人畜無害な大罪人。


「そんなことはどうだっていい」


「なっ!?そんなことだなんて……」


「あのなぁメリル、俺は正直お前の事ほとんど知らないんだよ。お前あんまし話したくなさそうだったし」


「あ、当たり前でしょう!?こんなこと言いたくないじゃないですか!」


「でも、今言った。話してくれた、だろ?」


「ぐっ……」


「もうちょっと仲間を信頼しろよ、メリル。仲間なんだからな」


自分で言っていても訳の分からない理論だが、この場ではこう言うのが正解な気がした。


「お前のせいだぁ?知ったこっちゃねえ!知ってるかメリル、俺が昔住んでいた国には『連帯責任』って便利な言葉があってだな、1人のミスをチーム皆のせいにするんだ」


「…………??」


何言ってんだこいつ……とでも言いたげな目で見られても困る。


「お前の罪が500年分あろうが、俺たち5人なら1人頭100年だ。あとは勝手にお前のお父さんと弟くんも追加して俺の家族も勝手に入れて聖竜王国の知り合いも………」


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!私は誰にも…」


「迷惑はかけたくないってか?こちとらもう大迷惑被ってるよ!勝手に出ていきやがってよぉ!」


「…………………」


「俺たちは1人で生きてる訳じゃねぇ。無論、俺だってそうだ。とある教師がこんなことを言っていてだな?『人という字は2人の人が支えあって…』」


「………ぷっ」


「あぁっ!?お前今笑ったな!?せっかく俺がいい話的なのをしてやってんのに…」


「主……少しは自分の言葉で語ったらどうだ……?」


「うっせぇ!てかお前はいつからそこにいたんだよ!?」


「………大体聞いてた」


ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!クッソ恥ずかしい!!!!!!!


「まぁなんだ、メリル」


「………?」


「私だってお前の事はよく知らん。話したい時に話してくれればいいし、正直あんまり興味が無い」


「…………………………」


「あっ、勘違いするなよ!?興味が無いってのは今のありのままのメリルがいいという話であってだな!」


「はぁっ……はぁっ……やっと着きましたか……」


荒い息を吐きながら、ユリアがほふく前進でやってきた。


「あ、お師匠様、おんぶお願いします」


「もうムリ……死にたい」


「全く、今から死にたがりを説得するというのになんという体たらくですか……ヨミさんお願いします」


「あぁ、任せろ」


スっとユリアが軽く背負われる。


「良いですかメリルさん?私はメリルさんのこと大好きです。もちろん性的な意味ではないですよ?あくまでパーティーメンバーとしてです。私はお師匠様とヨミさんとあなたがいなければ心から笑えません」


「おいユリア、ソルスはいいのか?」


可哀想なソルス。帰ってきたらちょっとだけ優しくしてやろう。


「んんっ、き、聞こえませんね。それでですよメリルさん。たとえどんな罪業をあなたが積んでいようが、あなたは私の大切な人の内の1人なのです。何があっても失いたくありません。それだけは覚えておいてください」


もうメリルの目から、涙はこぼれていない。


「………はぁ……………分かりましたよ」


「恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……」


「こらお師匠様!さっさと立ち上がってください!お師匠様が〆なくてどうするんですか!?」


ユリアにボロくそ言われて何とか立ち上がる。


「ああ、あぁ分かった…………その……なんだよ。ちょっと待ってくれ」


「ええ、いくらでも待ちましょう」


どうしよう、俺こんな時何を言えばいいの?笑えばいいとは思わないんだけど……


チラッとユリアを見る。グッと親指を立てられた。いや無理だって。


クッソ、どうすれば……


あっ、そうだ。1番大切な事聞いてないじゃん。


「お前はどうしたい?」


「…………えっ?」


てっきり強引に連れ返されるとでも思っていたのだろう。メリルが間の抜けた声を出す。


「結局この先はお前の選択次第だからな。だから、お前がやりたい事を選んでくれ」


例え俺たちが帰ってきて欲しくとも、その行動にメリルの意思が伴わないのなら意味は無い。

また繰り返されるだけだ。


「私は………」


少しの……躊躇を孕んで。


「家に帰りたいです。私たちの、家に!」



夢。


それは誰しもが胸に抱き、虚空に見る幻想。


彼女の夢はこうして伝えられた訳であるが、果たしてこれで終わるのだろうか?


彼女の夢が自らの死であったことは未だ変わらぬ事実であり、長年睨み続けた幻想はそう容易く変わるものでは無い。


いやいや、ただの可能性の話さ。


不吉な言葉ではあるが、それは具体性と絶対にないと言い切れるだけの根拠がないからこその不安、不吉な感じであるのだ。


「さぁさぁ、彼ら彼女らはこうしてまた日常へと帰り着くのだが………」


「まだまだお話は続くよ。彼女らがその短な命の中で、己の未来を夢見る限りね」


ん?私は誰かって?


……世の中には知らなくてもいいことがあるのだよ。例えば………物語の作者が隠した、今後大きな意味を持つ壮大な伏線の真相とかね。





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