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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第4章 命短し夢見よ乙女
34/85

33話 落ちるところまで堕ちていけ

爆発音。


あっちで爆発音。


こっちで爆発音。


と悲鳴。


「ギャアァァーーーーーーーーッッ!!??イヤァァァァァッッ!!」


「………もう反応しないことにしますね」


「それがいいと思う」


ただいま俺たちは、街の中で爆撃にあっていた。


爆撃というよりは砲撃のほうが近いだろうか。街の中のいたる所から大砲が現れバンバン打ってくる。


すぐに気づいたので物理結界を周囲に重ねがけしたのだが。


右で爆発音。


「ヒィヤァァァァッッッ?!!!??」


左で爆発音。


「ふゅあぁぁっっ!?!!」


「おい、ちょっと落ち着……」


爆発音。


「イィヤァァァァッッッ!!!??!?!!」


大砲から飛んでくる玉には、標的を確実に仕留める為だろう、爆発にも耐えうる純魔法石を加工して作られた刃物が入っていたのだ。


ウチの忍びは刃物が駄目なのでさっきから叫び声をあげまくっている。


「うぅっ………こわいよぉ………主ぃ…ユリア、助けて………」


もふもふの猫耳と尾をペタンとさせて涙目で(というか泣きながら)助けを求めるヨミ。

ぐっ………なんか胸に来る………


「お、お師匠様、何とかこの状況を打破出来ないのですか?なんかもうヨミさんが不憫で不憫で仕方がないのですが………」


「とは言ってもなぁ……この状況じゃ結界がないと俺でもヤバいし、大砲を破壊しようにもこれだけの数を破壊しようと思うとお前らへの被害が凄まじいし………」


「かっ、構わない主。早急にやってくれ」


さっきまで泣きわめいていたヨミが、慣れてきたのか少し顔を上げて言ってくる。


「ユリアも、いいか?」


「私は構いませんよ。魔法抵抗力もありますし」


魔法抵抗力……?


あっ、そうだ。


「『魔法結界』」


俺は魔法結界を生成し、ユリアとヨミをその中に閉じ込める。


「よし、お前ら出てくんなよ。『黒き雷霆ブラックサンダー』」


お菓子じゃないぞ?


風属性の上級魔法である『黒き雷霆』。その効果範囲は絶大で、俺レベルになると海の底で撃てば一分ほど海の底に空気を呼び込む事ができる。つまり蒸発する。


あくまでも仮定の世界での話ではあるが。


黒、というよりは紫電に近い物が全ての大砲に突き刺さり、四散させる。


いっちょあがりっと。


「おーい、もう出てきていいぞー」


「すまない、主。私が刃物に怯えてしまうばっかりに………」


「まぁ、気にすんなよ。俺だって苦手な物位あるしな」


「へぇ~、何が苦手なんですか?」


「そうだなぁ、マヨネーズとかマヨネーズとかマヨネーズとかかなぁ」


「好き嫌いは良くないぞ」


そうはいうが、苦手ってことは体がそれは生きていく上で障害になるって判断したという事であり、そんなもん食っちまった暁には物言わぬ躯になっていると思うんだよね。


まぁ、個人的な感想だが。


「ちょっと寄り道しすぎましたね。早く向かいましょう!」


「おう、そうだな」


未だになぜメリルが拐われたのかは分からないが、あいつがいる場所には古代兵器まであるんだ、魔力を辿っていけば会えるだろう。


そんな安易な考えを持って、魔力反応を探していた時だった。


「へっ?」


一体、誰の声だったのだろうか。


なんの前触れもなく地面に穴が空いた。


魔力を感じる事に集中してしまっていたため咄嗟に上がることも出来ず。


「「「あぁあぁぁああーーーーーっっ!?!?!?」」」


俺たちはそのまま重力に従い、真っ逆さまに地下へと落下していった。



俺が向かった先は、古代兵器を発掘した場所だ。



マテリア王国を追放された後、俺が作り上げた『生物の心を操る装置』を用いて再度国内に入り込むことに成功した。


マテリアの者達も竜の方に気を取られ、俺の魔法『アイテムボックス』の中までは捜索されなかったのだ。


ゴーグルのような見た目をしており、小さく軽いために持ち運びも容易。魔法を用いているので魔法抵抗力が異常に高い者には効かないが、それでも十分だ。


そうして、マテリア王国内を歩き回って次の拠点を探していた時。


俺は偶然ではあるが、その場に居合わせたのだ。


睡眠欲の魔女の、『血の覚醒』の瞬間に。


その時だ。俺がもう一度希望を抱いたのは。


全てを焼き尽くす、圧倒的なまでの破壊力。しかもそこにはマテリアが誇る三賢人が一人、『仙境のシュウ』いたというのに、奴はなんの手出しも出来なかった。


これが、これこそが頂点。力という力を盛り込んだ、人間の完成形。いや、超越者だ。


俺はその少女を手に入れたいと思った。何に代えてもいい。奴の力を手中に収め、なおかつ増大させることが出来れば………


そんな思いを抱き、俺は密やかに森の奥で生き続けていた。森の奥に住んでいた巨大な精霊を支配下に置いたりと着実に準備は進めていた。


チャンスは、完璧な形でやって来た。


偶然雨宿りに入った巨大な洞窟にて古代兵器を発見したのだ。


俺が願い続けた世界の統治がこれさえあれば現実となる。そう思えば、古代兵器の解析や、基地の建設なんてへでもなかった。


解析の結果、この古代兵器、否、魔砲は、膨大な魔力と引き換えに全世界に向けて眠りの波動を放つ能力を持つと分かった。しかも、放出されるのは魔法ではない新たな力。故に誰にも防御できない。

これが神話の世界かと、俺は恐れを感じると共に大きな喜びを感じていた。


だが、壁もあった。膨大な魔力である。普通の人間では一生かけても放ちきれない程の魔力を用いなければならないのだ。


そんな問題も睡眠欲の魔女のお陰で解決した。ヤツが結界村とやらにいることを調べ上げ、不安と恐怖を煽ることで捕縛に成功した。


なんという奇跡、全ての巡り合わせが俺を王とせんと働いているようだった。


俺たちの常識を遥かに超越した存在が、魔砲から伸びたケーブルに縛り付けられている。あのケーブルから魔力を吸い取っていくのだ。だが、あのケーブルは体内の魔力を吸い取る事は出来ないので、血の暴走を促して表面に魔力を生成させねばならない。


「お目覚めかね、魔女よ。……おやおや、よほど酷い夢を見たようだ。素晴らしく破壊的で破滅的な悪夢でも見たような顔をしているぞ」


実年齢より幼く見えるその可愛らしい顔を、涙と唾液とでぐしゃぐしゃにしている目の前の少女。


否、魔力の源泉、とでも呼ぶ方が俺たちの関係上正しいか。


「ええ………そうです、ね。悪夢……ですか、よく言いますね。これは現実、私…が起こした、本当にあった事です。それに、この現実を見せている、のは………あなたでしょう」


キッと鋭い眼光で睨みつけてくる。その姿に、俺は思わず昔の自分を重ねてしまった。


「悪夢………か。魔女よ、お前はどう思う。この理不尽極まりない、欠陥だらけで穴だらけなこの世界を。不条理と差別と偏見に満ち、均衡などとっくの昔に崩れ去っているこの世界を」


一度、問うてみたかった。力を持った、本来上にいる者の考えを。思いを。俺とは違う世界に住むはずの彼らは一体、何を考えているのか。


「………それはそれは、まさしく悪夢、ですね。何もかも滅茶苦茶で、秩序もへったくれもありゃしないとは。一体何処のお話ですかね」


俺は虚をつかれた。こいつは、何を言っているのか。


自分の意志とは関係なく、大きすぎる力をその身に宿して生まれ、それ故に全てを失った少女。

お前は、違うと言うのか?


「何度も言った通り、私がいるのは現実です。私のような欠陥も、あなたのような穴もありますが、この世界は保たれていますよ。私の人生とあなたの人生は、同じようで別物です。でなければ、私だって世界を壊そうとしていたはずです。私が願うのは自身の崩壊。世界を道連れになんてしませんよ。未練がましいったらありゃしないです。私はこの世界、とっても素敵だと思いますよ。だって………」


数拍おいて。


()()がいたじゃないですか」


涙を流しながらも、ニッコリと微笑んで見せた。


………嫌な感覚だ。


目の前に、越えられない壁があると自覚すること。切り拓く者たるこの俺が、どう足掻いても拓けない境地。


「………もう、いないだろう」


吐き捨てるようにそう言う。こんなことをしている自分に腹が立って仕方がない。


なぜ俺はあんなことを言ったのか。


今、俺は何をしたいのだろう。




声が、聞こえた。




上からだった。



気付いたら置いて行かれていた。


「勇者殿ー!魔女殿ー!」


大声で呼びかけて見るが返事はない。


作戦会議中に意識が落ち、目を覚ませば街の中にいた。


見たことのないほど高い建物が立ち並び、年に一度の『大霊祭』で賑わう王都さえも霞んで見えるであろう程の眩さであった。


よびかけるのは止めずに、先に進んで見る。


爆発音。


咄嗟に反応はしたが間に合わず、私は地下へと落下していった。



―――落ちた先には、何やら大きな魔導具が。ボタンとモニターが幾つも並んでおり、どうやらモニターはさっきの街を映しているようだ。


一つのモニターには魔女殿達の姿もある。


どうやら無事だったようだ。


だが、それより気になることがある。


このボタンはなんだろうか?


………押すべきなのか?


「迷ったら実行に移すべしと、マテリア王国騎士の書の、騎士戒第一項にも記されておるしな」


私はボタンを1つ選びポチッと押す。


ボタンを注視していた私は、魔女殿たちが穴に呑まれ地下へと落下していった事に気付いていなかった。






新作は只今制作に励んでいます。いつか出ますいつか。もう片方?ちょっと待ってくださいね……

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