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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第4章 命短し夢見よ乙女
32/86

31話 あなたはここにいてもいいのですか?ー…………

久し振りな気がします。なので皆さん、お久しぶりです。人は一人では生きていけないというお話です。皆さんも家族は大切にしましょう。

「お前は何故ここにいるのだ?」


うるさい。


「お前にそんな幸せを受ける権利があると本気で考えているのか?」


うるさいうるさい。


「お前はここにいてもいいと本気で思っているのか?」


うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい………………



私は、酷い眠気に襲われた。


「帰るか」


「あっ、いえ…私はもう少し残ります。リン君は先に帰っていてください」


そう毎回、彼の世話になるわけにはいかない。


これは、私の問題なのだから。



「じゃあなに?君は実は男だって訳かい?」


「だからそうだって言ってんだろ……」


赤い髪の毛の男(コイツもイケメンだ死ね)と黒髪の少年がゲラゲラと笑い転げている。


なんだコイツラは、人の苦労も知らないで……


「ブハハハハハハッッ!!!まじかよお前!太陽教徒でもないのに、頭のおかしい事を言い出したから何かと思えば!転生した時に別の身体に精神を移し替えられたってか!?ブヒャヒャヒャッッ!!!」


「ブッコロ」


「ちょ、紅助!笑いすぎだって!いくらリンの経歴が面白いからって………ププッ、アハハハハ!!!」


本当に何なんだコイツラは。


現在俺たちは、廃屋のある一室で話をしていた。俺たちだけの秘密の話をしたいと言って、団長やヨミ、ユリアたちには他の部屋に移ってもらっている。


もちろん俺はコイツらが転生してきた日本人だということが分かっていたのでこの場を設けたのだが、コイツらは俺が日本人であることに気づいていなかったらしい。


まぁ、この体だと仕方ないっちゃ仕方ないのだが。


「なぁ水有、コイツら叩き潰してもいいか?」


「やめてあげてくれると助かるかな………」


苦笑を返してくる水有。


勇者の中では水有が一番マトモなようだ。他は嫌いだ。もちろん水有もイケメンなので嫌いだ。その中ではマシってだけであって……


「まぁ何だ、これからは一緒に戦うことになるんだし。よろしく頼む」


俺は水有に手を差し出す。


「あぁ、よろしく」


水有はイケメンスマイルを返しながら俺の手をとった。


………やっぱりいけ好かねぇ。




――――それから、皆を巻き込み作戦会議を始めることになった。


そもそも、俺たちは来たばかりで殆ど情報がない。今の所何がどうしてどうなっているのか、気になるところだ。


「それじゃあ作戦会議を始めるよ。まず、現場を離れていたウィスカーさんに報告だ。古代兵器、睡眠欲の魔砲を発見しました」


「ほ、本当か勇者殿!それならばすぐに破壊を………」


「いえ、それは出来ません」


?何故だろうか、見つけたのならチャッチャと破壊してしまえばいいものを。


「要因は2つあります。その1つ目が、守衛が誰一人としていないことです」


「いや、誰もいないんなら突っ込んじゃえばいいだろ?」


ウンウンとヨミが頷く。


「甘ぇな魔女様、ブフッ!……いやすまん、そんな目で睨むなよ」


「そうだよリン。守りを固めていないってことは、絶対に突破されないって自信があるからでしょ?そんな危険なところにヒョコヒョコ入っていったら蜂の巣どころか髪の毛一本残らないよ」


……そうか?


「なら施設ごと破壊しちゃえばいいんじゃないか?いくら罠があるっていっても、効果範囲はたかがしれてるだろ?」


「そんなことしたら中の人が全員死んじゃうじゃんか!もう1つの要因として、中に女の子が囚われてるってのがあるんだよ」


女の子……まさか?


「おい隼人、その女の子の特徴を教えてくれ」


「ど、どうしたのさ。そんなに寄らなくても教えてあげるよ。えっとね、長い銀髪で中学生くらいかな?見た目はそんなだけど、僕の鑑定スキルで見たところ実年齢は16歳だね。あと……」


この時点でほぼ確定なのだが、まだ情報があるらしい。


「あと……?」


「その子、睡眠欲の魔女なんだよね」


その途端、俺の視界が暗転した。



「おはよう、お父さん。ご飯できてますよ?」


「あぁ、ありがとう。今日も朝からすまない。お前たちにばかりやらせてしまって……」


在りし日の思い出。こんなやり取りを毎朝繰り返した。


玄関のドアが勢いよく開かれる音。


「ただいま!お父さんおはよう!見て見てお姉ちゃん!でっかい臓物の実だよ!キモイね!」


「うふふ、そうね。ゲイルも朝からお疲れ様。ほら、朝ごはんできてるわよ」


「わーい、お姉ちゃんのご飯は世界一美味しいもんね!僕が専属の味見係になったげる!」


「どうせ食べたいだけでしょ?」


「えへへ、バレた?」


家族の笑い声が響く。私は強欲なのだろうか。ただ、こんな日々が続けばいいと思っていただけなのに。



「ただいま、おや?ゲイルはどこに?」


「ゲイルなら畑に向かいましたよ?なんでも、最近動物の足跡が周りに残ってるから捕まえて鍋にするんだーって」


「ふふっ、そうか。あいつは逞しいな。父親としては嬉しい限りだ」


「ええ、そうですね」


こんな風に笑っていた。このあと、何が起こるかも知らないで。



「いくらなんでも遅すぎやしないか?メリル、すまないがゲイルの様子を見てきてやってくれないか?」


「そうですね、もう夕飯の時間だというのに……ちょっと見てきますね」


小さな時から、ゲイルは必ず夕食の時間には帰ってきた。こんな時間まで帰ってこないなんてどう考えてもおかしいのだ。


私は一抹の不安を抱えながら、森を少し行ったところにある畑へと走った。



そこには地獄があった。


「お姉ちゃん!お父さん!誰か!助けてー!」


畑から声が聞こえた。もちろんゲイルの声だ。


「ゲイル、どこなの!?ゲイル!」


「お姉ちゃん!」


畑のすぐ側だった。森の中にある畑なので周りには沢山の茂みがある。その茂みの内の一つにゲイルはいた。



罠にかかった子供の白狼と、その親と共に。


「は、白狼!?どうしてこんなところに……」


そうか。足跡というのは白狼達のものだったのだ。そして、運悪く観察していたゲイルは親に見つかってしまった。


私は体がすくんで動けなかった。私も多少の魔法が使えるが、父ほどではないし、氷の大精霊の眷属である白狼に敵うわけがなかった。


白狼は今にもゲイルに飛びかかろうとしている。

ゲイルは魔法も一切使えない。父を呼びに行っては間に合わない。


対抗できる手段が、なかった。


「お、お姉…ちゃ」


ゲイルが私に向かって手を伸ばす。


そしてその瞬間。白狼が跳ぶ。目の前の獲物を狩るため。


私は何も出来ない自分と、不条理な世界に対する激しい怒りを感じた。その怒りの業火は私の中で無限に燃え盛り、私の中の何かを焼き切った。



睡眠欲の魔女が、目を覚ました。



その後のことは覚えていない。


はずだった。


だが、映像は続いていく。


意識を失った私が、知りもしない上級魔法を唱えて森を焼き尽くしていく。


「ゲイル!メリル!何ごと……だ…………」


父は私を見て言葉を失う。


「そうか……目覚めてしまったのか………」


父は知っていたかのような口ぶりで話す。まるで、全部分かっていたかのように。


「目覚めてしまったら止めてあげてくれ、とは言われたが。これは無理だ。父親としても、魔道士としても」


そう言って膝をつく父。


ゲイルに飛びかかろうとしていた白狼は、私から放たれる絶望的な程の魔力を感じて動きを止める。


白狼は子供を罠ごと咥えて逃げ去っていく。


だが、そんな白狼をもう一人の私は見逃さなかった。


魔法が飛ぶ。消える。


対象を破壊し尽くしたもう一人の私は。その対象を。



私の家族へと変えた。




これが、真実。これこそが私の知らなかったその後の出来事。気付いたときには全てが消えていたあの日。


私は目を覚ました。


荒い呼吸。汗が体中から吹き出している。涙も涎も垂れまくり、その姿は何よりも醜かった。


夢だ、これは夢だ。見ているんじゃない、見せられている。悪夢と悪夢を組み合わせたさらなる悪夢。確かにこれを見せられれば、私はもう一度ああなるかもしれなかった。


機械に縛り付けられた私は、もう何度も悪夢を見せられていた。眠っては見て眠っては見て。もう見たくないと何度も願うのに、体は睡眠を欲する。


「ハッ…ハッ…ハッ………ううっ……」


言い表せないほど複雑に入り組んだ思いが湧いてくる。言葉に出来ない思いは、ただ涙として流れていく。


でも、私はああはならない。もう二度とあんな風になりたくない。何もかも、目に入るものを全て焼き尽くす。あんなのは人間じゃない、化け物だ。


「わ……たし、は……人間、なん……です。皆、が。皆が……言ってくれた………」


強くて優しい彼。お馬鹿だけど皆を想っている彼女。小さく明るい彼女。大きいのにかわいい彼女。


皆、私と一緒にいてくれた。私を、人間として接してくれた。


だから、負けるわけにはいかない。私が負けたら世界が終わる。


もしかしたら、彼だけは……いや、彼女も彼女も生き残るかもしれない。ただ、私を許してはくれないだろう。


皆に迷惑をかけたくない。


ただその一心で私は耐える。


強い眠気が私を襲う。


私はまた、夢を見る。



お姉ちゃんを、助けて。



「メ……リル………」


「あっ!お師匠様が目を覚ましました!お師匠様、おはようございます」


俺は目を覚ました。


「主、ようやく起きたか。ほら、早くしろ。もう皆集まっているぞ」


「いや、待ってくれ。俺、夢を見たんだよ」


それもかなり重い内容の。


「分かっている、ほら早く」


分かっている?どういうことだ?


俺はヨミとユリアに手を引かれ、いつの間にか移されていた別の部屋から会議をしていた部屋へと連れて行かれた。


「あ、リン。おっはよー」


「おはよう、じゃねぇよ。ちょっと行ってこなきゃ……」


「焦るのも分かるが一旦落ち着いてくれ。彼女は君達の仲間で、名をメリルと言うんだね?そして睡眠欲の魔女でさっきの夢の女の子」


さっきの夢……まさか!?


「今の所、ここにいる全員が同じ夢を見ている。さぁ、君の夢の話を聞かせてくれ」



――――俺は全てを話した。


「なるほど、君は少しだけ違う夢を見たようだ」


「へっ?どこが違うんだ?」


「私達は『お姉ちゃんを、助けて』なんて言われてないんです」


「つまり、それはゲイルから主へのメッセージ…なのではないか?」


ほほう?だがなんで俺だけなのか。普通助けを求めるなら勇者達のほうが適任じゃないのか?


「きっとゲイル君は君達の記憶を見たのだろう。霊体は、怨霊にならない限り目には見えないが、人の記憶を見ることが出来るらしいからね」


なるほどな。


「というか、メリルは本当は凄いやつだったという事だろう?主やユリアは知っていたのか?それならなぜ私に教えてくれなかったのだ。確かになんの脈絡もなく眠ったりするが、私は全く気づかなかったぞ。まぁ、三欲の魔女なんて知らなかったということもあるが……」


家の世間知らずは放っておこう。


「メリルさんの過去。勝手に見てしまいましたね。メリルさん、あまり話したくなさそうだったので触れないできましたが………」


「それに関しちゃ仕方ないだろ。不可抗力ってやつだ。それよりも………」


「あぁ、この事件に彼女が関与している可能性が跳ね上がったな。ただ、捕らえているわけではないだろう。儀式の生贄だのなんだのに使うつもりかもしれない」


「事態は急を要する、って訳だね」


「そういうこった。それじゃあ……」


そう、もう。


「行くしかねぇだろ」









明日も出します!多分このくらいの時間に出るので是非見に来てやってください。

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