25話 始めよう、終焉を
現在更新している第4章ですが、この先かなりシリアスシーンが増えます。それに従ってちょっとグロい表現なども増えることになるので、苦手な方はもっと面白い他作品にレッツラゴー!しましょう。それでは本編、どうぞ!
「遅刻遅刻ー!」
私は食パンを咥えたまま家を飛び出した。
少女漫画の主人公はトーストを咥えてるけど、あれどうやって食べてるんだろう?焼いてないほうが柔らかいし食べやすいよネ!
そんな疑問はさておいて、私は学校に向けてのダッシュに集中する。
遅刻も遅刻、大遅刻だ。なんてったって、家を出たのが始業3分前。3分で着く距離ではないのだが、そこは火事場の馬鹿力を信じよう。
にしても寒いなちくしょー!何なんだこの寒さは!まだ1月だぞ!あっ、1月が寒いのは当たり前か。
だがそれにしても寒い寒い。私の体は、ブルブルと震えていた。
このまま震え続けたら、分子の運動によってとんでもない熱が発生するのでは無かろうか?それなら温かくなっていーじゃん!私は人間が寒いときに震える真の理由を発見してしまったかも知れない………
ノーベル賞は俺のもんだぜー!
きっと誰か本当の理由を見つけている。
ノーベル賞が取れそうにないので、私は全力で走った。
「うおおぉぉぉっっっ!!4000万馬力じゃー!」
こう叫びながら走ったわけだが、馬力ってどんな意味だっけ?速そうだし、まぁなんでもいっか!
4000万馬力パワー(?)で私はなんとか学校近くまでたどり着いた。
後はここを曲がればっ……!
さっき少女漫画なんて思い出したのがいけなかったのだろうか。
「ガハゥッ!」
私はおよそJKとは思えないような声を上げながらぶっ倒れた。
いつつ………こんな時に私の目の前に現れるなんて、この紋所が目に入らんのか!入らんけど!だって持ってないし!
「おーい、水無ー?大丈夫か?」
………まさか、こんなことが現実にあろうとは!
私の目の前には超絶弩級のイケメンが立っていた。私のようなド陰キャとは違う、もはや神聖さすら感じるオーラを放ちながら私に手を差し伸べる。
先に言っておくが兄である。
朝比奈水有、私の2つ年上の兄だ。そのハイスペックさと、整いすぎた顔立ちから、同じ学年の女性(あんなケバい人たちを女の子とは呼びたくない)には「我らが神」とか呼ばれているらしい。クッ、私の中の混沌神メディラスが!
私は混沌神メディラス(という名の黒歴史へのトラウマ)をなんとか抑え込み、「ありがと」と言いながら手を取り立ち上がった。
「お兄ちゃん、どうしたの?なんの役にも立たないゴミカス陰キャの芋虫は置いて先に学校に行ってたんじゃないの?」
「こーら、そういうところが水無の良くない所だぞ?もっと自己評価を上げないと。な?」
な?と言われましても………。
まずあんたがそんなこと言うなと訂正したい。説得力の欠片も無いんですよ。
まあ、兄に長らく言われてきた事だ。そろそろ、私も自分に対する評価を改めてみても良いのかもしれない。
「うん、そ………」
この流れなら誰でも分かると思うが、私は「うん、そうだね」と言おうとしたのだ。こっからシリアスなんだから、こんな説明させないでくれます?
だが、私のセリフを兄が全て聞くことは無かった。
あの忌々しい男の顔と、あのナイフを忘れることはない。
「よくも千秋を誑かしたなぁっ!!」
兄の背後から走ってきた男が兄にぶつかったかと思うと。
兄から金属片が生えた。そして倒れた。その後も、男は何度も兄を滅多刺しにした。私なんて見えてないかのように。
「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも千秋をぉぉぉっっっ!!!!!!」
なにをしているんだこいつは?なにがしたいんだこいつは?なんなんだこいつは?なんで?なんで?どうしてこうなった?
わ た し の せ い ?
私は、意識を失った。
そして、たった一人の家族も失った。
◇
俺は、ボーッとしていた。特に何をするでもなく、ただボーッとしていた。
(マスター、私をガラスに当てないでください。日向が暖かいのは分かりますが、冬の窓ガラスは好きか嫌いかで聞かれたら結構嫌いな人に向ける視線と同じ位冷たいのです)
それは中々の冷たさだな。
「わかったよ……」
と呟き、俺は帽子を膝の上に移す。
(マスター、日向ぼっこは最高ですね)
おっ?よく分かってるじゃないか。
冬場は寒いし、特に気持ちいいよなー。
ガチャリとドアの開く音がする。皆が帰ってきたようだ。
「ただいまですー」
「ただいま帰りました!おー師匠様ー!コレを見てください!」
「なんだどうした何があった?」
この疑問文を3つも並べる高等テク、使っているのは俺位のもんだぜ……特に効果はないが。
そうそう、こないだ俺の手持ちのポ○モン(破創の魔女 レベル99のみ)をうらみつらみで半殺しにしてくれたユリアさんだが、あの後ぶっ倒れた俺を見て流石に言い過ぎたと思ったのか謝りに来た。しかも一度だけならなんでも言うことを聞かせられるというおまけ付きだ。
さーて、どんな中二発言禁止のお願いをしてやろうか………
そんなことはおいといて、えーっと?
「ユリアさん?これは一体……」
ユリアの手には、既視感を覚えるエグイ物体が。
おいおい、マジかよ………
「主、ただいま……コレは本当に食べられるものなのか?ユリアとメリルが食べられると言うし、安かったから買ってきたのだが……」
そう、あの忌々しき臓物の実だ。
「ヨミさん、言ったじゃないですか!コレは臓物の実といって、とても美味しいんですよ。是非皆で食べたいと思いまして!」
にこぱーっ!と輝くような笑みを浮かべるユリアさん。
うぅっ、まぶしい!
「確かに私も初めて見た時は驚きましたが、結構美味しかったですよ?」
「なんだ、メリルは食べたことあるのか」
というか良く食えたな。
「えぇ、実家で育てていたものですから……」
気のせいだろうか、心なしかメリルの顔が暗く見える。
メリルは時折こういった顔を見せることがある。それも思い返してみると、メリルの家族に関する話題が出た時が多いような……?
まぁ、詮索するのは良くないな。何か不安を抱えているのなら相談の一つくらいしてほしいものだが。
さて、思考を眼前のブツにシフトしよう。
「お師匠様、どうぞ!」
どうやら皮ごと行けるタイプの果物のようで、俺は躊躇しつつも心を決めて……
歯が刺さった部分から、赤い液体が溢れ出す。
瞬間。
俺の周囲を悪寒が襲った。
まだまだ続きますが、終焉が始まります。自分で言っといてなんですが、どういうことなんでしょう?