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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第3章 日常とは至福の時のことである
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20話 あなたは愛機を信じますか?ーあたりまえだ!(です!でしょう!)

カタカタと軽い振動を感じる。きっと道が舗装されていないのが原因だろう。


だがそんなことを気にも留められないほど、俺は感動していた。


ペダルに足を乗せ、力強く漕ぐ。すると、車体と俺は風を切って進む。いつものように自分の足で走るのも良いが、いかんせん速すぎる。周りの景色など堪能する暇もないのだ。


俺は500年振りに愛機の爆殺号を乗り回していた。



「んぁ………」


またしてもベッドから落下した状態で目を覚ます。


ガチャリとドアが開き、ユリアが入って来る。


「お師匠様、朝ですよ。一緒にトマトの様子を見に行きましょう!」


俺が意味不明な格好で寝ていることに、遂に反応するのをやめたユリア。「先に行ってますからね!」と残して出ていった。


「ん………んーっ」


のそのそとベッドから出て、伸びをする。大きなあくびをし、寝間着のまま出ていく。


下に降りると、まだ誰も起きて来ていなかった。


「お師匠様ー!真っ赤なトマトが生ってます、鋏を持ってきてください!」


「おーう」


俺は玄関の扉を開けて、外に出る。そこには巨大な世界樹が………もうない。


大きくなりすぎたあのトマトは、破壊スキルで切り倒した。もう一度種を植えて、魔法薬を使わずに育てたら普通のトマトが生った。


あの魔法薬はもう二度と使わないようにしよう。


世界樹にも、成長しきらなかった普通のトマトが生っていたのでスタッフ(ほとんどヨミと俺)が美味しく頂きました。


切り倒した世界樹は、俺が破壊スキルで加工しドラゴニアや近隣住民に無償で提供した。だが、それでもまだ半分近く残っているため処分に困っている。今は新しく開発した魔法、『物置部屋(アナザーワールド)』に収納してある。物置部屋は、分かりやすく言うなら四次元ポッケが一番近い。闇の上級魔法に位置する『ブラックホール』と、風の中級魔法の『繋がる世界(ワールドコネクト)』を、創造スキルで複合したものである。


ブラックホールは以前使ったため説明は省く。


繋がる世界は文字通り、意識と意識を繋げる魔法である。主に俺の作った共鳴石電話と大差ないのだが、この魔法は普通は使えない。だって俺が開発したんだから。しかも、酷い欠点があり、習得している者同士じゃないと会話できない。まあ使い道があって良かった。


要するに、ブラックホールで産み出した亜空間とこの世界を繋がる世界で繋げる魔法である。


そんなことを考えながら目の前を見やる。


………通常サイズのトマトを見て安心する自分が嫌だ。それもこれも全部あの駄女神のせいなのだが、当の本人は未だにベッドの中だ。


いっそ叩き起こして来ようか、と思案する俺にユリアが呼び掛ける。


「ほらほら、お師匠様!これです」


ユリアが指差す先には、真っ赤に熟した美味そうなトマトが。


「えい」


鋏でぷつんと茎を切り落とす。破壊スキルを使うと、寝起きなので全て切り落としてしまう。ちなみに実体験である。あのときはユリアにぶっ殺されるところだった。


ユリアが一番懸命にトマトの世話をしているため、今後は気を付けねば。次も同じやらかしをしたら、俺の体は木っ端微塵だ。まあ復活するのだが。


「ユリア、最近は魔法の修行ばっかりで体術はさっぱりだったな。今日は体動かそうぜ」


最近、食べてばかりで動く機会もなかったので罪悪感からそう切り出してみた。いや、俺は太らないんだけどさ。


「それは良いですね!最近は魔法を撃つだけで物足りなかったのです。体力も低下しているでしょうし」


ユリアは乗り気のようだ。


「体を動かす、と言っても具体的には何をするのですか?」


そう、そこが問題だ。まず俺は体を本格的に鍛えたりといった経験はないのだ。ただ、一度だけテレビでジムを見たことがある。よし、この中から選ぼう!


でっかいバーベルを持ち上げるやつや、ランニングマシン、エアロバイクなどが紹介されていた。なにぶん、古い記憶なのであまり詳しくは思い出せない。


ん、まてよ?エアロバイク?


「お師匠様?」


いつまでたっても黙りこくる俺に焦れたのかユリアが問い掛けてくる。


なぁに。


「ちょっといいこと、思い付いただけだ」


そう俺が返した時の、ユリアの「なに言ってんだこいつ」みたいな顔は一生忘れない。


お師匠様、傷つきました。



「いやー!いやよ!なんでこの寒い中外に出なきゃいけないのよ!日も指してない曇り空が見えないの!?きっと雪が降る予兆よ!」


「まだ12月に入ったばかりだぞ」


冷静にヨミがツッコむ。


この世界でも、月と日にちで通じると知った時はありがたかった。きっと、千年以上前の転生してきた日本人のお陰だ。ファンタジー感皆無なのは多目にみてやろう。


この地域では年末近くにならないと雪は降らない。というかコイツ、仮にも太陽の女神なのに天気も分からないのか。


「なんだって良いわよ。とにかく、私は行かないからね!」


「ソルスさんがいないと私………寂しいです」


シュンとうなだれるユリアを見て、流石の誇大広告女神も心を揺さぶられたらしい。


オロオロしながら。


「ユ、ユリアちゃん………そ、そうねー、あれだわ。運動したいって言うなら、レースが出来れば楽しいんじゃないかと思うの。体も温まるし……」


チラチラとこちらを見るソルス。なんかレースできる競技にしろ、というせめてもの要求らしい。


「なら丁度良かった。今日は自転車レースしようぜ」


俺はここで、最高の思い付きを話した。



『と言うわけで本日は!結界村ジテンシャレースを行うぜ!実況は皆さんお馴染みの!真竜王国ドラゴニアのニアお姉さんでお送りするぜ!』


呼んでもないのに勝手に来たニアお姉さんが、マイクのような魔道具を片手に持ち、高らかに開会を宣言する。


「「「「おぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!」」」」


気づけばスタート位置である広場は人で一杯となっていた。結界が破壊された時より人が多い。


「はーい、チケット売り場はこちらですよー!」


なんか見世物にされてるんだが。


広場を見渡すと、今がチャンスだとばかりに商人が大儲けしていた。


いいんだけどね?


『はいはーい!それでは選手の皆さん!自己紹介をどうぞだぜっ!』


「スズキリンだ。破創の魔女たぁこの俺よ!」


「「「「「おおぉぉぉぉっっっっ!!!!」」」」」


俺の名乗りに会場が沸く。せっかく来てくれたんだ、楽しんで帰って貰おう。これでこの村が潤えば、恩返しにもなるだろうし。


「この私こそ、清廉潔白にして崇高なる美しさを持つとの噂高い、太陽の女神ソルスよ!さぁ、そこのあなた!是非太陽教に入信を……」


「「「「「……………………………」」」」」


「おい」


「ち、違うわよ。悪いのは私じゃないわ!」


仕方ない、放っておくか。


『そ、それじゃあ次は猫耳のお姉ちゃん!自己紹介をどうぞだぜっ!』


「私はヨミだ。主………破創の魔女の忍びをしている。だが、勝負となれば話は別だ。全力で勝ちにいくぞ!そしてこれはどうやって動かすんだ?」


「おい」


さっき教えたのに!


(マスターは物を教えるのには不向きです)


唐突に帽子になじられた。酷い!俺だって頑張ってユリアに魔法教えたりしてるのに!


(ユリアとマスターとの適性が高かったに過ぎません)


イラッとしたので叩いてやった。俺の頭が痛かった。


「ええと、私はメリ……スー………うーん…ムニャムニャ」


『メリル選手棄権!』


村の人にメリルが連れていかれる。


会場では大爆笑が巻き起こっており、残された俺たちはとっても恥ずかしい。


「わ、私はユリアです!そのっ、よろしくお願いします!」


凄い勢いで会釈しまくるユリアに暖かい視線が向けられる。流石は俺の弟子、超可愛い。


ちなみに、皆の自転車は俺が創造スキルで出した。というかなんで今まで創れるということに気付かなかったのだろう。


『さてさてさーて!棄権者は出ましたがこのまま続行!さあ皆さん準備はいいかな?良くなくてもよーいドンだぜっ!』


戦いの火蓋は今、切って落とされた。



『おぉーっとヨミ選手、スタートから動き出さないー!』


ヨミは本気で俺が教えたことを忘れているらしい。


(だから言ったじゃないですか)


うるせぇ!


と言うわけで、参加者は五人から三人にまで減った。


『現在トップを争うのはリンとソルスだ!両者激しい抜き合いを繰り広げているぜ!』


何故か変な意味に聞こえるのは俺だけだろうか。


全力でペダルを漕ぎ、横を走るソルスから離れようとするのだが、コイツもレベル98の猛者だ。そう簡単には抜かせない。


「あははははっっっ!!!どうしたんですか破創の魔女様?ちっとも追い抜けてませんけど?プークスクス!私が勝ったら洗濯当番は代わってもらうからね!」


くそっ、返事をしている余裕もねぇ。実は俺は、レベルの割に低いステータスがある。それが体力と防御力なのである。きっと地球で鍛えていなかったのが原因だろう。俺は荒い息を吐きながらなんとか、ソルスに抜かれなかった。


元々、村を一周したらゴールというルールだったため、ゴールはもう目の前だ。


俺は自分に残された僅かな体力を振り絞って、ペダルを漕ぐ。


村の外の広い草原のゴールへと突っ走った。


ゴールへと辿り着く。


「うぉぉぉぉっっっ!!」


瞬間、感じ慣れたあの感覚。


「『スプリーム・ドラゴニア』!」


は?


理不尽な暴力が、ゴール前の俺たちを吹き飛ばす。もちろん後方に。爆発にソルスも巻き込まれ、目を回している。


後ろから、呑気に鼻歌を歌いながら走るユリアの姿が。


俺は体力の限界で動けない。


『なんと!優勝争いを繰り広げたリンとソルスを追い抜き!優勝したのはユリア様だー!』


嬉しそうにニコニコしているユリア。


この瞬間、会場はひとつになった。


「「「「「「反則だろ!」」」」」」


「てへぺろっ」


そう言って舌をだすユリアは、めちゃめちゃ可愛かったとだけ記しておこう。









いやぁ気づけば20話でした。作者の投稿スピードが遅いせいで20話投稿するのに半年以上かかってしまいました。ですが、ここまで付き合って下さった皆さん!ご新規の皆さん!皆さんがこの小説を読んでくださることが何よりの原動力です!これからも応援よろしくお願いします!感想で自分の好きなキャラクターなど教えてくださると嬉しいです。

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