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あなたは神を信じますか?  作者: 唸れ!爆殺号!
第2章 妹と弟子
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9話 あなたは天空を制せますか?━おう!オラワクワク○っぞ!

部屋の壁に映像が映し出される。


『さあ、今年も始まるぞ!真竜王国ドラゴニアでは強さが3番目くらいに大事!ということで、この国の最強を決める戦い!天空一武闘会開催だーー!!』


実況のお姉さんがマイクのような物を持って高らかに開催を宣言する。大会名がスゴい引っ掛かるが気にしないでおこう。


「「「オオオォォォォォッッッ!!!!」」」


うるせぇ。だがそれだけ観客がいると言うことだ、恥ずかしい所は見せられない。


「さぁて、いっちょやっちゃいますか!」


俺は控え室のドアを開け、会場へと歩いていく。


『行くぜ、Aブロック第一試合!破創の魔女ことスズキリンVS火竜のサラマン!』


俺には必ず勝たなければならない理由があるのだ…!



「リン!ヨミ!メリルちゃん!起きて起きて!王都が見えるわよ!」


んんっ………眠い…


「…あと3時間………」


「あと15分程でこの馬車は車庫に入れられますよ?ほら、魔女様!起きてください!ヨミさんも!メリルさんも!」


「「「ん………ふわぁ………」」」


やっと着いたか………


乗り物酔いが酷すぎたため寝ていくことにしたのだが、そのせいで眠たくなってしまった。


「…リン君が5人に見えます………」


「メリル…お前も4人いるぞ………」


「寝ぼけてないでシャキッとしなさい!ほらシャキッと!」


バシバシ背中を叩かれ、ようやく目を覚ます。


「いってぇ………」


「それくらい我慢しなさいよ。ほら見て!外!」


言われるままに外を見る。


「おおっ!あれお城だよな!良いなーお城!日本城もいいけど西洋風のお城も俺は好きだなぁ!」


見たことない程の大きなお城に目が覚める。


まだ4つの塔しか見えないが、その大きさから相当の規模であることが分かる。下手したら昔見た名古屋城の4、5倍はあるぞ………


「僕は日本城と言うものは分かりませんが、あのお城はとてもかっこいいですよね!」


おっ?よく分かってんじゃねぇか。


「トーレンさん、説明よろしく!」


「はい、任されました!あのお城は真竜王国ドラゴニア建国時に国民総出で造った、世界的に見ても大規模なお城です。城壁等は一切無く、人類との間に壁を造らず仲良くしていこう!という意味が込められているらしいです。4本の塔と中心の建物で形成されているため………」


トーレンさんはかなり詳しく知っているようで俺は話に聞き入っていたが、他の皆は早々に飽きてしまい耳を塞いでいた。


「――――――――なんです!どうですか?スゴいでしょう!」


うん、スゴい。スゴいけど…ね?


「ちょっと長いな…あと名前は?」


「あっ、言ってなかったですか?お城の名前は聖竜城です。いつか名前を水竜城にしてやりた…いえ、なんでもないです」


おい、お前、おい。狙ってんじゃねぇか。


「なんでそんな目でこっちを見るんですか!なんでもないですって!なんでもないですから!」



真竜王国ドラゴニア、王都。人口およそ千万人。


そのうちのほとんどが竜族であるらしい。


その中心に建つ巨大な建造物、聖竜城。


今、その前に俺たちは立っていた。


近くで見ると本当にでかい。


「主、ソルス、メリル。私を真ん中にして歩いてくれないか?」


道の脇にたくさんの兵士たちが槍だのなんだのを持って並んでいるからだろう。


「分かったよ………」


「全く…しょうがないわね!借り一つだからね」


恩着せがましいやつだな………


「ううっ…わ、分かった………」


「ダメですよソルスさん、そんなイジワルしちゃ!」


「ええーっ?今度一緒にボードゲームしてほしかったんですけど…」


「そ、それくらいなら貸しなんか無くてもしてやるぞ?」


ヨミがかわいそうな人を見るような目でソルスを見る。


俺も泣きそうだ。


仲間たちは応接間に案内されて行ったのでここでお別れだ。


俺だけが他の部屋に案内される。


「聖竜王様!破創の魔女様がいらっしゃいました!」


ここは…謁見の間…というやつだろうか。


玉座には、金髪碧眼で30代くらいの、現役バリバリで冒険者をやれそうな男性が座っていた。


その隣で二人の少女がこちらを見ている。


少女たちも金髪碧眼で、腰辺りまで伸びる綺麗な髪を持つ、超絶美少女だった。歳は13歳くらいだろう。そして、二人ともが全く同じ容姿をしていた。


「よく来てくれたな破創の魔女殿。噂に違わぬ美貌をお持ちだが、実は男であるというのは本当か?」


出会い頭にとんでもないことを聞いてくるものだが、やっぱり気になるよね………そうなんですー実は男の子なんですよはいー、はどうやって敬語にすれば良いんだろうか?


「はい、実は私男でして…接しづらいかも知れませんがそこは慣れて頂くということで…」


「フム…そうか。分かった。だが思っていたより温厚な方で安心したぞ。おっと、名乗るのを忘れておったな。我が名は聖竜王グレイである。気軽にグレイと呼ぶといい。早速だが本題に入ろう。頼みたい仕事の内容は聞いておるか?」


そういえば…詳しくは聞いてないな…


「新しい宮廷魔術師団長を頼みたい、というのは聞いてますけど…」


「全く…トーレンめ………いや、すまない。こちらの話だ。実はその話なのだがな?宮廷魔術師団長は必要がなくなったのだ」


「へ?」


へ?


「トーレンに伝えておいたのだが、案の定忘れていたようだ。本当に頼みたかった仕事は他にある。もちろん給料は変わらん」


よかったー採用前から解雇とかじゃ無くて…!しかも先に給料を教えてくれていることから、俺(俺たち)の生活が苦しいことも知ってくれているらしい。決して俺ががめつい訳ではない。


「本当に頼みたかった仕事というのはな…」



「私、姉のユリアと申します。魔女様、どうぞよろしくお願いいたします!」


「わ、私は妹のアリアと申します。…よ、よろしくお願いしますっ!」


「いえいえ、こちらこそ。王女様方に魔法を教えられるなんて、身に余る光栄です」


そう、王女様の家庭教師である。


「自己紹介は済んだか?ユリア、アリア。だが魔女殿。まだ採用と決まった訳ではないぞ」


ねぇなんで?なんで毎回そんな怖いこと言うの?


「あの結界村の結界を破ったと聞いたが、やはりにわかには信じがたいのだよ。そこで…」


「そこで…?」


続きを促す。


「魔女殿に、明日から開催される天空一武闘会に参加してもらう。そこで優秀な成績、まぁ具体的には3位以内に入れば採用としよう。どうだ?もちろん出てくれるな?」


天空一武闘会………か○はめ波撃てないと負けちゃうかな?


「当たり前じゃないですか、絶対に優勝して見せますよ!」


「うむ、良い心意気だ。今晩は我が城でゆっくりと休むが良い。外出したい時は部屋に待機させている侍女に告げてからで頼む」


「はい!」


俺は一礼して謁見の間から出ていく。


さーて、この後なにしよっかなー?と考えていると、唐突に腕を掴まれ引っ張られる。


誰だ、と思い振り向くとそこには王女様(どっちか分からん)がいた。


「フフッ、ビックリしました?」


花が開くような笑顔を向けられドキッとする。


「ビ、ビックリしましたよ…どうされたのですか?王女様」


「王女様ではなくユリア、と呼んでください!もちろん敬語も不要です」


そんなことしたら不敬罪で死刑になったりしないだろうか…まだ俺は家庭教師として採用すらされていない、いわば素性の知れないお客さまといった感じだ。


というかお姉ちゃんの方だったのね…


「そ、それでは…ユ、ユリア?何の用だ?」


ちょっと恥ずかしいな…初対面の女の子を下の名前で呼ぶとかあんまり無かったし…


仲間たちは、そういうムードもへったくれもないようなやつらなので特に何も思わないが。


「魔女様なら、きっと天空一武闘会も余裕で優勝してしまうでしょう?ですから今の内に色々習っておこうと思いまして!」


なるほどなるほど、つまり早く俺に魔法やその他を習いたいと。


かわいいじゃねぇか。よーし、お兄さん頑張っちゃおっかなー!


俺はユリアに連れられ、王城内の一室へと入っていく。そこには…


「お、お姉さま?そ…その、どうして魔女様を?」


妹ちゃんがいた。まだ正式に採用されていない俺を連れてきたことに驚いているようだ。


「アリア、魔女様の魔力を感じ取れないの?これほどの魔力があれば天空一武闘会なんて、会場ごと吹き飛ばせてしまうにちがいないわ!」


しない…そんなことしないよ………


「た、確かにすごい魔力ですが…まだ採用と決まった訳ではありませんし、それに今の魔女様はお仕事ではなくお客さまとしてここにいるのですから、今日の所はゆっくりとお休みになって頂いた方が良いのではないですか?」


良かった…!嫌われていたのではなく、純粋に俺のことを心配してくれていたらしい。


「いえいえ、アリア様。私はもとよりあなた方の師となるべく馳せ参じたのです。それがどうしてゆっくり休んでいられましょう」


「そ、そうですか…魔女様のご迷惑でないのなら、どうか魔法について、そしてそれ以外にもご教授頂けませんか?」


「ええ、喜んで!良ければ錬金術や薬学なんかも嗜んでおりますので………」


ガチャリと、ドアが開く。



「困りますなぁ、そんなことをされては」


俺より少し年上くらいのまたしてもいけ好かないイケメンだ。竜族はイケメンとイケおじと、美少女と美女しかいないのか…?


「下賎な人間なんぞに、地竜王であるところのこの私の仕事を取られる訳には行きません。それに、こんな野卑な生物と関わった暁にはユリア様とアリア様が毒されてしまうに違いありません」


なんだよこいつ。好き勝手言ってくれちゃってまぁ…


温厚なこの俺でもさすがにイラッとしちゃったよー?


「エルデ様!この方はお客様ですよ!今すぐ謝って…」


ユリアが怒ってくれるが、俺は口に人差し指を当て止める。そしてユリアに向かって微笑んで見せる。


ユリアの顔が真っ青になったのはしょうがないだろう。


「なるほどなるほど、エルデ様…と言いましたか?」


見せてやろうじゃないか………


「あぁ、そうだ。命が惜しければ今すぐその汚い体を私の視界から消すことだ。さもなくばもれなくお前の体が真っ二つになるだろう。」


そろそろ我慢の限界だ。


「うっせえばーか!そんなに言うならかかってこいや!それともお得意の錬金術でも見せてくれるんですかねー?!ま、俺には敵わないでしょうけど!プークスクス!!」


ユリアも、アリアも、そしてあれだけ怒っていたエルデでさえも唖然とした顔になる。


だが、いち早くエルデが何を言われたのかに気付く。


「この…!汚らわしい人間風情が………!『アースラン…』」


王城の床を貫き、先の尖った巨大な土塊が部屋ごと全てを貫く………!


なんてことは起こさせない。


「『破壊』」


俺の言葉と共に、エルデが発動しかけていた魔法の魔方陣が、パンッと音を立てて砕け散る。


「なっ…!なっ………?!」


「魔方陣の系統からして、土属性魔法、『土槍』の竜版ってとこか?悪いが発動させてあげないよ。破壊スキルで魔方陣を破壊させてもらった」


「ま、魔方陣を破壊?!」


驚くアリア。そりゃそうだ。


通常、魔法の発動をキャンセルさせたい場合は、相手の魔方陣の生成を強制的(殺す、又は魔方陣の維持が出来ない状態にする)にストップさせるか、ごく稀に持つ者がいる『却下』スキルを使うしかない。


だが俺には破壊スキルがある。


このスキルは大体なんでも破壊できるため、もちろん魔方陣も破壊できるって寸法だ。


といった説明をしてやる。


「本当に魔女様はすごい方なのですね!それでは…エルデ様。大人しく負けを認めて………」


「まだだ!そもそも私は錬金術、薬学が専門だ!私の不得手な魔法で勝ったからと言って調子に乗るな!」


三下丸出しのセリフだが、まだ折れていないというのなら…


「いいぜ………」


ボッコボコにしちゃおう!


「ついてこい、下賎な…いや、魔女よ………」


俺の方を振り向いて何故か言い直すエルデ。なぜだろうか?俺はきっと、とっても笑顔だったはずなのに。



「ここが我が実験室だ。どうだ?素晴らしいであろう?」


確かに周囲にはきれいな魔力が満ちており、錬金術を行うには最適な環境ではあるが………


「洞窟じゃん」


「当たり前であろう。我ら地竜は貴様ら人間と違い、より大地の恩恵が受けられる場所で生存できるのだ。そんな最適な環境を捨て置く手はないだろうが」


そんなことはどうでもいいので、早速室内を物色する。


へぇー、中々良いもん揃えてんなぁ。


と、一つのポーションに目を留める。


「それに目をつけるとは、野卑な人間にしては能があるようだな。それが何か分かるか?まぁ見て分かるような物でもないが…」


「『鑑定』っと」


フムフム、なるほど?


これは魔法瓶か。なんと上級の回復魔法を封じ込めてあるようだ。


「き、貴様は鑑定スキルも使えるのか…。まあいい。それでは勝負と行こう。勝負内容は正に!その魔法瓶を作ってもらう!ほれ、これが設計図だ」


「『絶対記憶』いや、いらん。なに?つまり俺がこれを作って、お前の魔法瓶より性能が良ければ良いってこと?」


それなら必勝法を思い付いちゃったんですけど。


「ああ、そういうことだ。だが設計図がいらないとはどういう………」


「『創造』…はい、出来たよ?」


「はぁ?………はぁ?」


だから出来たって………。そんな間抜けな顔されると笑っちゃいそうなんですけど………


「だから出来たって…」


「い、いやいや!そんな訳ないだろう。この私でも製作に一年を要した代物だぞ?!………で、出来てる………?!」


「24時間しかもたんけどな」


「なんだ、偽物か…時間制限があると嘘をついているだけだろう?」


んなわきゃねぇだろ、目ぇくさってんじゃねぇのか?


「ほら、手だせ」


そんなに疑うのなら実証してやろうじゃねぇか………べ、別にほんとに出来てるかどうか不安な訳じゃないんだからね!


「な、何をする気だ!なぜか嫌な予感がするぞ!」


チッ、バレたか。腕でもへし折ってやろうと思ったのに…


「まあいい…それじゃあ………」


そこで勢い良くドアが開く。


「エルデ様っ!怪我人が…」


「ほれっ」


瓶の中身をぶちまける。


「ああっ!貴様、何をして………」


飛び込んできた男は、背負っていた怪我人を見て絶句する。


「怪我が…全部治ってる?」


足を片方失っていた男の傷が全て塞がり、新しい足まで生えてきた。


「ううっ、ここは…?」


ほれ、どんなもんだい!


胸を反らし、ドヤ顔でエルデの方を向いて言ってやる。


「どうですか?誇り高き地竜さん?しっかり治りますけど?」


エルデはドサッと崩れ落ちた。



と言うわけで今に至る。


「「魔女様ー!頑張って下さいねー!」」


ユリアも、アリアも応援してくれている。


俺の仲間たちと言ったら………


「ぎぃやああああああ!!!なんでこんなに大きな刃物があああああ!!!!!!」


闘技場に6体ある、巨大な竜族の象の持つ剣にビビっている。


「リン君!頑張って下さいねー!負ける気がしませんけどー!」


………俺のパーティーの唯一の良心が俺を奮い立たせてくれる。


「リン!何がなんでも勝ちなさい!そうすれば私は億万長者よ!!」


億万長者になるのはお前じゃなくて俺だがな。


『現在世界中で噂になっている結界村の結界破り!正にそれを成し遂げた男!………女?まぁどっちゃでも構わんぜ!強けりゃオッケイ!この大会で優勝すれば王女様の家庭教師に任命されるらしいぜ!そして、そんな女………男?の相手は前大会準優勝者のサラマン!前回の大会では、圧倒的な火力で並みいる強豪達を打ち負かして来たサラマン!今回は優勝できるのか?!』


準優勝って大体負けフラグだよね。


「おうおう、お嬢ちゃん!あんたみたいな弱っちそうな奴がこの大会で勝ち進んで行けると思うなよ!」


ひげ面のサラマンが酔っ払った親戚のおじさんみたいなノリで絡んでくる。


「だーれがお嬢ちゃんだてめぇ、ぶちのめされたいんかああん!」


サラマンは一瞬間の抜けた顔を見せるが………


「はははっ!いいねえお嬢ちゃん!存分に俺の炎を味わうといいぜ!」 


だから誰がお嬢ちゃんだこの野郎。


ちょっと頭に来たので…


「一発かましますか!」


『それじゃー両者準備はオッケイ?良くなくても始めちゃうよー!レディー、ファイ………』


開始の合図をいい終える前に全て片付いた。


『………ト………?ちょっ、ちょっと待ってよ!なんでもうサラマンが倒れてんのさ!』


「準優勝したとか言うからもうちょいやれるかと思ってたのになー。残念だよ、ほんとにー!」


腹部に突きを一発入れただけなのだが一撃で気絶してしまったらしい。


「なにこれ楽勝やん!」


『しょ、勝者!破創の魔女、スズキリン!』


「「「「「うおおおおおおっっっ!!!」」」」」


会場は予想だにしなかった結果に大いに沸いている。


「おいおい、どう考えてもあり得ないだろ今の。あいつ不正してんじゃねえのか?」


「不正ってどんなことするんだよ。この大会は事前に強化魔法を使おうが、魔法薬を飲もうがなんでもありだろ?サラマンだって魔法薬を使ってんだから、あいつの方が強いってことだろ!」


こんな声が聞こえてきたら、もう俺は止まらない。


『それじゃー魔女さん、次の試合は他の奴だから次のあんたの試合まで自由にしててくれて構わないぜ!』


サラマンが救護所に運ばれて行ったのを確認し、俺もついていく。


「えーっと…魔女さん?なんでついてくるんですか?」


救護員の人に尋ねられるが、気にせず創造スキルを使い、魔法瓶を作る。


「悪い、どいてくれ。これで治るから」


「そ、そんなことを言われましても!安全なものと確認してからでないと!」


「だーいじょぶだーいじょぶ。これはエルデが作ったやつだから」


「エルデ様の魔法薬?!なぜあなたがそれを…それなら構いませんが…」


俺とエルデの信用の差よ。まあいいんだけどね?


魔法瓶の蓋を外し、魔法薬をかける。


みるみる内に怪我が治る。


「な、なんて効き目の速さだ…!前よりも効果が上がっている…」


「それじゃ」


俺は手をヒラヒラと振りながら観客席へと向かった。



「リン君!ここでーす!ここ、ここ!」


やっと見つけた………


この闘技場はとにかく広い。しかも人も多いため、余計に見つけづらかった。


「全く………あんたは手加減って物を知らないんじゃないの?もうちょっと自分の持つ力を理解しときなさいよ………」


くそっ!なんかこいつに言われると腹立つ!


「うるせぇなぁ、準優勝者とか言うからもうちょい強いもんだとばかり思ってたんだよ。大体あれで準優勝って負ける気がしないんだが」


「ふふっ、確かに一瞬で勝負がついてしまってましたね。これはもう、優勝間違いなしなんじゃないですか?」


今の所負ける要素はひとつもない。これはあれだな、もう俺最強名乗っていいかもな。


「この大会で優勝したら俺、世界最強を名乗ることにするよ」


するとソルスが盛大に吹き出す。


「プーッ!世界最強って!あんたそれ恥ずかしくないの?!もしかしてまだ14歳なんですか?!」


うるせぇ、誰が中二病患者だ。


「実際そうなんだから仕方ないだろ?お前だって俺に勝てない訳だし」


「ううっ、そんなことはどうでもいいから早くここを出よう………」


今日も刃物に怯えるヨミには悪いが………


「今日で大会を終わらせちゃうらしくてな?夜まで続くらし………」


「ああああああああああああ!!!!!!!聞こえない、聞こえなーーーーい!!もう嫌だこんなとこ!私は帰るからな!」


とプリプリしながら帰ってしまった。………あいつ、帰る途中で刃物に怯えて襲いかかったりしないかな………


「あら?ヨミ、行っちゃったわね。悪いけど私、あの子についてくわ。きっと刃物に怯えて誰かに襲いかかっちゃうと思うの」


「お前がついていくと余計面倒が増えそうな気がするんだが………まぁいいか、頼んだぞソルス」


「まっかしときなさい!それに私はいつでもどこでも面倒を生成できるような欠陥生物じゃないんだから!ちゃんとお留守番してたらドラゴニア名物のドラゴニア饅頭奢りなさいよ!」


ドラゴニア饅頭って………観光地だからって饅頭売ればいいって訳じゃねえぞ………


「分かった分かった。その代わり俺にも一つくれよ」


「ドラゴニア饅頭ですか…私にも一つください!是非食べてみたいです!」


「分かったわ!でも一個ずつだけだからねー!」


とケチな返答を返しながらソルスは走っていった。


「皆行っちゃいましたけど…リン君、頑張ってくださいね!応援してますから!」


「おう、任せろ!」



盛り上がった大会も、あと一戦を残すのみとなった。


無論、俺は試合相手全員をワンパンしてきた。何ならワンパン○ンを名乗ってもいいかもしれん………


思いの外早く試合が進んでいったため、夜中まで続くことはないが空が暗くなってくる時間にはなってしまった。


先に帰ったあいつらのことは不安ではあるが、なんとかなっていると信じよう。


『さぁさぁ!今大会、最後の試合となるこの勝負!対戦カードは皆さん分かりきっているとは思うが紹介させてもらうぜ!』


「「「「うおおおぉぉぉぉっっっ!!!!」」」」


最終試合ということで会場の盛り上がりはMAXだ。


一部は多分叫びたいだけの奴だろう。


『それではまずはAブロックの覇者!破創の魔女スズキリン!全試合で相手を一撃でリングに沈めてきた男!……女?だからどっちでもいいって言ってんだろ!』


いいわけねぇだろ、おい。俺は正真正銘見た目は女、中身は男。その名も迷探偵コ○ンくんやぞ。違うけど。


『そして!Cブロックを制し、Dブロックを制したリストルを打ち破った男、エレメル!竜族ではないため、全属性の魔法が使えるぞ!今までに見せた最強の技は水属性上級魔法の『大海の逆鱗』だ!まだまだ秘められた力があるとアタシは思うぜっ!』


俺の対戦相手は人間のエレメルだ。フードを被っており、顔はよく見えないが魔力はそこそこだ(メリルの半分くらい)。上級魔法まで使えるなら魔法で戦ってあげようかな………


「君が最後の相手か………女の子と戦うのは好きじゃないんだけどな…」


「安心しろ、女の子じゃないから」


最近、もうめんどくさいし戻らなくてもいいかなーなんて考え始めたのは俺だけの秘密だ。


だって全然魔王出てこないんだもん。


「へ?女の子じゃないの?………ってことはまさか?!」


「安心しろ、太陽教徒でもないから」


「良かった………もう二度とあれと関わるのは御免だからね」


ソルス…お前の信者嫌われすぎだろ………


『さぁ両者挨拶は済んだかな?それでは位置についてー………レディー………ファイト!』


「速攻で行かせてもらうよ!『フレア』!」


中級魔法を詠唱無しで使えるらしい。詠唱無しだと素早く魔法を発動させることができるが、若干威力が落ちる。


ということは………


「時間稼ぎか………」


「よく分かったね、中級魔法を打たれて微動だにしない人なんて始めて見たよ!でももう遅いよね…」


飛んできたフレアを一薙して消し飛ばす。


エレメルは驚愕に目を見開くが詠唱はやめない。


「『精霊召喚』フフッ、僕の勝ちだよ。出ておいで!風の上級精霊!」


「ヒュルルルーーーンッッッ!!」


出てきたのはスズメの2倍ほどの大きさの鳥だった。だが、実体は無く、魔力で自らを形作っているようだ。


「ヒュルルルーーーンッッッ!!」


高らかに鳴き声を響かせながら、会場上空を縦横無尽に飛び回る。


「やっぱり驚くよね、隙ありっ!『大海の逆鱗』!」


突如会場の地面から水が吹き出し、何かを形作っていく。


それは数秒と経たない間に完成し、立派な、これぞ海神!と思わせるような形になった。右手に大きな槍を持ち、威厳たっぷりにこちらを見下ろすその姿は、どっかのアホ女神とは比べ物にならないくらい、神っていた。


「さぁ、どうする?棄権する?もう君に勝ち目は無いよ!」


いやいやこの程度でイキってるんですか?せめて上級魔法を乱発できるメリル程度になってからにしたほうがいいと思うなーなんて言わない。なぜなら………


「うおおおおっっっ!!!!すげー!めっちゃ風の精霊だ!めっちゃ海の神だー!」


ファンタジー展開に興奮していたから。


「あ。あのー………」


「ああ、ごめん。君のこと忘れてたわ」


「「「「「「おいっっっ!!!!!!!!!」」」」」」


会場全体からツッコまれた。


「ごめんごめん、そんじゃ行くよー!『ファイア』」


「ファイアだって?そんな点火魔法で何をしようって………」


以前言っただろう。俺の初級魔法は、魔法陣の限界まで魔力を詰め込むと村一つ吹き飛ばせる、と。


もちろん魔力は抑えてある。会場が吹き飛ばない程度に。


ゴオオオオオオオッッッッッッ


上級魔法一つと上級精霊一匹に向けられるにはあまりに大きな爆炎が迫っていく。


エレメルは口をパクパクさせて座りこんでいる。フードが取れているので顔が見えたがやっぱりイケメンだった。


仕方ない、イケメンは嫌いだけどファンタジー展開を見せて貰ったってことで助けてやるか。


俺はシュパッと走り込み、スチャッと背負って逃げた。自分の放った爆炎から。


指示を出されなくなった海神もどきと精霊は為す術なく炎の中に消えていった。


『しょ、勝者!破創の魔女、スズキリン!よって!今大会優勝者は!スズキリンだーーー!!!!!』


俺はエレメルを投げ捨て、会場の観客に向けて手を振る。


「すげぇぞあいつ!初出場でホントに優勝しちまいやがった!」


「ホントにすげーな!まぁでも、どうせ次で落ちるんだろ?」


次?俺は優勝したはずなのだが………


『さあさあそれではっ!優勝しちゃった魔女さんには!EXステージへの挑戦権が与えられるぜっ!』


EXステージ?なんだそ………


れ、と思った瞬間。


「はっはっはっ!まさかこの強者揃いの今回の大会を全試合一撃で制するとは!しかも最後はあんな大魔法を見せてくれたな!」


玉座に座るグレイさんが会場全体に響き渡る大声で叫ぶ。


………大魔法って、いやいや火属性の初級魔法なんですが。


「その姿とまだ見ぬ魔女殿の全力に敬意を払い………」


ああ、EXステージって………


「我が直々に相手をしよう!」


そういうことか。



派手派手なマントを脱ぎ捨て、闘技場内に飛び降りる。


「魔女殿、御手柔らかに頼むぞ。我らが力で竜族の頂点に君臨しているとなれば誰にも負ける訳にはいかなくてな」


と、言われても………


「いやいやホントにいいんですか?王様をぶん殴ったりしたら捕まりません?俺」


通常なら死刑もあり得るだろう。だが、あっちから挑んで来てるのだ。再起不能とかにならなければ、正当防衛ってことでなんとか………


「フハハハッ!構わん構わんむしろ全力で来てほしいところだ」


「全力を出したら世界が滅びますよ?」


いやマジで。


「フム、何だか本当にそんな気がしてくるな………やはり本気を出すのはやめてもらおうか………」


賢い王様でリンさんは安心しました。


「お父様ー!魔女様ー!二人共頑張って下さいねー!」


「が、頑張って下さーーーーい!!!!!」


や、やめてよ、そんな応援されたら本気出したくなっちゃうじゃん!


『それじゃあもう早速始めて行っちゃうぜ!今年度の天空一武闘会の覇者!破創の魔女スズキリンVS我らが王様!聖竜王グレイの勝負だ!レディー………ファイッ!』














おーそーくなーりーまーしーたー!色々あって遅くなりましたが、ようやく第二章第二話が完成しました。

お待ちになって頂いた皆様(何度も言うけどいるのかな………?)!本当にすみませんでした!次は頑張って早めに投稿したいと思います!

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