会敵
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俺は屋根から屋根を飛び越えながら直進的に目的地へと向かっていた。幾つか足場を踏み抜いてしまったが、気にせずに走り抜ける。
屋根が途切れ、一旦地面に着地して数分程走っていると、建物が見えてきた。それらは2階から3階位の構造になっており、近くに来るとコンクリートの様な質感で、元は白色だったであろう壁はくすんで灰色の様になっている。所々にひびが入り、植物のツタがそこをなぞるようにはっていた。
左右に同じ様子の建物が連なっており、大分傾いた夕日がその影をかたどっている。俺はその中央を歩いていった。
すると、少し前方に4人の倒れている人影が見えた。
近寄ってみるとカルラ達がまとまって倒れていた、というよりここに集められたって所だろう。
全員が所々火傷や、切り傷があり、新調した服もボロボロになっていた。
「息は......してるな」
イヴは、恐らく魔力切れだろう。一番損傷は少ないが、恐らくカルラ、クルル、トウセンの治療で魔力が枯渇したのだろうな。
俺が育てたこいつらをここまでにするとは......やはり、奴らか?
そして、辺りを見渡し、言った。
「出てこい」
そして周りを見渡すと、スッと建物の2階に人影が現れた。
その男は、手すりに腕を置き、こちらを見た。
「確かに、こいつらの言っていた通り、なかなか出来そうだな!熱い戦いを期待しても良さそうだ!」
少し焼けた肌に赤の長髪を後ろで三つ編みにしている男が、楽しそうに笑みを浮かべながらこちらを見ていた。
真っ赤なジッポの様な物を持っており、その蓋を指で弾いて開け閉めしている。蓋を開ける度にキィーンという金属のこ気味いい音が辺りに響いた。
「俺はレッドコア、『火党』の炎楽だ!よろしく頼む!」
炎楽は両手を広げて声を張り上げて言った。
こいつが、レッドコア......?
「相変わらず暑っ苦しいわねぇ。そんな事より値打ち物があるかどうかよ」
赤髪の男の後ろから、ひょっこりと現れたのは金髪をツインテールにしている少女だった。
黒と赤の短いスカートにフード付きの黒色に金の刺繍がされているパーカーの様な服を着ている。
ナイフを持っているが、それは少し特殊で、束が金色で刃が銀色に輝いていた。そして青い宝石が刃の真ん中にはめ込まれている。
少女は何故か不機嫌そうに唇を尖らし、それを撫でていた。
「どうした!?何も手に入らなくて機嫌が悪いのか!?やはりあの三人が持ってた真黒な珍しいナイフを奪えばよかったんじゃないか?」
「だーかーらー、『シルビア』製ならまだしも......『テレシア』製よ、あれ。しかも純度がかなり高い......本当に驚きだけど、完成間近よ、あれ。全く、あの年齢で何十人殺ったんだか」
「流石に目利きだな!俺にはさっぱり分からんぞ!」
「はぁ、もういいわ。それよりも」
女がようやくこちらを向き、細い腕を組んで強気な目で見据えてくる。そして自身の煌びやかなナイフに視線を戻し、束から刃先をうっとり眺めながら指でなぞりつつ、言った。
「アタシはレッドコア『金泉花』のクローネよ。あなたは、値打ち物、持ってるの?」
「俺はダイだ。値打ち物は知らんが、それより、そんな悠長に突っ立っていていいのか?」
「え?」
コロコロ。
何かが足元を転がる音がして少女は下に目を向ける。
そこには長細い鉄の塊の様なものが転がってきて、ちょうど少女足に当たって止まった。
「なに、これ?」
直後、辺りに光が走ったかと思うと、ドォォン!!それは、大爆発した。
熱風と手榴弾の破片が辺りを襲う。
「九一式手榴弾。なかなかの年代物だが使い勝手は悪くない。気に入ってくれたかどうかは知らんがな......」
ボロボロになって倒れている4人に視線を向ける。
すると、ピクリとカルラが動いたのが見えたので、近くに歩み寄り、膝をついて顔を近づけると、途切れ途切れの声で言
「すま、ない、リーダー......ゴホ、ゴホ。やつら2人、急に現れて、襲い掛かってきた。俺達4人で抵抗したが、まるで、歯が、立たなかった......奴ら、化け物だ」
カルラが一番酷いケガだった。肩は黒く焼け焦げ、打撲、切り傷が数か所見当たった。恐らく他の奴らを庇いつつ戦ったのであろう。だが、ボロボロの体を肘でなんとか支え少しだけ浮かせてこちらを見てきた。
悔しさからだろう、唇を噛みしめそこから血が流れていた。
「すまない......」
「ふん。自惚れるな。別にお前らがやられたところで問題はない」
目線を下げ、俯いているカルラに俺はそう言って立ち上がった。
カルラに背中を向け、
「強者との実践程役に立つことはない。いい勉強させてもらったと思え」
そう、言い放った。
そしてゆっくりとレッドコアの奴らが居た方へ歩き出し、「だが」と言葉を続ける。
「お前らに手を出したという事は、この俺に対して手を出してきたのと同じだ。だから......」
俺は横を向いて言った。
「後は任せろ」
「......リーダー...」
カルラはそれを聞いて安心したのか、再度気を失った。
本来一番動ける状態ではないのに、気力だけで体を動かしたのはこいつなりの意地だろう。
「ふん、まだまだ伸びしろがありそうだな」
軽い口調とは裏腹に、徐々に自分が殺気立っていくのを感じる。
どうせさっきの奴らはこの程度では死んではいないだろう。いや、この程度で死なれては困る。そう考えていると、何かどす黒いオーラが身を纏う、いや、身体から滲みでてくるような感覚がする。
だがそんな事は関係ない。俺は左手を広げゴキッと鳴らし、俺はゆっくりと右手に持ったガスマスクを顔へと持っていき、小さく呟いた。
「奴らには、それ相応の後悔をさせてやる」
皆殺しだ。
小さくそう呟き、そしてマスクを静かに被った。