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毎週、土曜、日曜に更新します!

執筆の励みになりますので、是非感想を聞かせてくださいね(*'▽')


ー3ヶ月後ー



「ヒャッハー!!」


トウセンが木の上からナイフを2本同時に投擲し、それが大人を一回り大きくした様な二体のホブゴブリンの頭を貫き地面に刺さる。そこに着地した瞬間、別のホブゴブリン2体が棍棒を振り上げ襲ってきた。


「グア!!」


それをトウセンは地面に手をつき足を広げて回転して、2体の棍棒が振り下ろされる前に蹴り飛ばした。そのまま手に力を入れて飛び上がり、体を捻り同時に拾ったナイフを二体の眉間へ投擲した。

血しぶきをあげながら砂埃を立てて倒れるホブゴブリン達。


「よっし!!終了だ!!」


ガッツポーズを決めるトウセン。トリッキーな動きとそれを可能にする身体能力の高さ。敵に動きを読ませない意表を突いた戦闘を得意とする。



ーーーーーーー

「ガオオ!!」

「強そうな顔ね」


真っ赤な鬼の様な風貌をしているレッドオーガが襲ってきた。

クルルは自分の顔ほどある拳をひらりと飛び上がり躱し、それと同時に両手の指にはめたナイフでその腕を切り刻んだ。

たまらずもう片方の腕で空中にいるのクルルを掴んでこようとするのを、その腕を利用して手をつき再度飛び上がり、レッドオーガの後ろへと回り込んだ。

そしてクルルは背をむけながら、背中へ回した両手のナイフを一閃する。

着地するのと同時にレッドオーガの首が飛び血しぶきがあがった。


「はい終了。残念だけど今の私にはその程度じゃ触れられないわよ」


クルル。

カウンターや身軽さを利用した超近距離戦を得意とする。

その中でも特に空中での戦闘に長けている。


ーーーーーー

「グギャァ」

「グギャギャ」


カルラが周りを見渡すと、5体のリザードマンに囲まれていた。

トカゲを人型にしたような魔物で、殺した冒険者から奪った装備を身に着けている。

知識を持ち、連携ができる厄介な中級の魔物だ。これを複数同時に戦闘する場合、上級クラスの魔物と匹敵するとも言われている。

カルラはおもむろに空を見上げた。

青空が広がっており、真っ白な雲が所々にある。とても気持ちのいい日だ。

......さて、と。

俺は脱力した様にナイフを持った両手を下げた。

中級の魔物が5体、しかも囲まれ逃げ道はない。

死ぬには十分すぎる理由だろう。


「グギャア!!」

「3か月前の俺だったらな」


飛び掛かってきた5体のリザードマンにタイミングを合わせて、体を駒の様に回転させた。

パシュン、と風切り音がした後、俺は回転を止め、両手のナイフをクロスして外にはじく様に血をはらった。

すると一瞬リザードマンの動きがスローになった後、パシュン、と細切れになりボトボトと落ちた。


「終了だ」


そう呟くカルラ。

戦闘技術は他の二人より抜きんでており、冷静な判断ができ頭も切れる。

様々な状況に対応できると思われる。



三人の様子を確認した後、ダイはあらかじめ伝えていた集合場所へと先に向かった。


ーーーーーー


「西クリア。トウセンそちらは?」

「南もクリアだぜ。クルル、そっちはどうだ」

「北もクリアよ」


 リーダーに渡された通信機で連絡を取り合い、三人は約束していた集合場所へ集まった。

 そしてカルラは目の前のガスマスクをして座っている男へと声をかけた。隣には杖にもたれかかってヘトヘトになっている少女がいる。

 この男にこの森で数え切れないほど殺されかけて2ヶ月半。

男の奇襲で瀕死にされ回復してもらい、休む間もなく魔物と戦闘。野営をし、仮眠をして魔物を倒す。そして再度奇襲を受け、瀕死の重傷を治してもらいまた魔物と戦う。

まさに地獄のループだった。

 そして最後の試練は残りの半月で森の方角全ての魔物の殲滅だったのだ。


「リーダー、こちら側全員制圧完了しました」

「上出来だ。俺も東を制圧するのに7日はかかった」


 聞くまでもない、相変わらず格の違いを思い知らされる。

 だが、自分達も、最初の頃とは比べ物にならない程の力を手に入れる事が出来た。

 その代わり、2度と味わいたくない苦痛と引き換えだったが。


「う~、皆生きていて良かったよぉ」


 イヴは相変わらずぐすぐす泣いている。

 この少女も見た目にそぐわず、かなり高度な回復魔法を使う事が出来るので、何回瀕死の所を助けてもらったのか分からない。

まあ、内9割はリーダーにやられた分だが。

 いきなり現れて、最初は怪しかったが、今では信頼出来る仲間の一人だ。


「それでは、最後の試練だ」

「っ!!?」


 その言葉に全員が即座に身構える。

 リーダーはついてこいと言って歩き出した。

 全員が一気に緊張の糸を張り、その後をついていく。

 そうして着いたのは3か月ぶりの自分達のアジトで、それもかなりアップグレードされていた。

 ボロボロの廃屋だった所が綺麗にされ、防壁や鉄線が張り巡らされている。そのことに驚きながらも、リーダーの事だから即死級のトラップを仕掛けているかもしれないと、全員が細心の注意を払いながら、促されるまま奥に進むとそこには......


 大きなテーブルに、ご馳走と酒が所狭しと並んでいたのだった。


 状況が呑み込めずポカーンとしている全員の方を向いて、リーダーは言った。


「訓練ご苦労だった。それでは、最後の試練だ。生きる為には食って飲むことも大切な事だ。俺の故郷では米一粒残すのも良しとはしなかった」


 リーダー、ダイは久しぶりにガスマスクを外した。

そして真面目な顔をして言った。


「これは仲間全員でやらねばいけない試練なのでな、俺も参加する。もちろん、お前もな」


 ぐしゃぐしゃとイヴの頭を撫でる。

 イブは「はわぁ~」とご馳走を前に目を輝かせて、涎を垂らしていた。


「うぅ、3ヶ月ぶりのまともなご飯なんだよ......」


 他の皆ももう限界のようだった。

そんな全員を見渡して、酒がなみなみと入ったジョッキを片手にダイは言った。


「それじゃあお前ら。これで最後だ、遠慮はいらん。気合い入れて食い尽くしてやれ」


 俺の号令と同時にガコンとジョッキがあたり、楽しそうな喧騒と共に、夜は更けていった。


ーーーーー



 深夜、料理は食い尽くされ、それぞれが酔い潰れてそこら辺で寝ていた。

 俺は外に出て夜風に当たる。

 地球で見た様な綺麗な星空が広がっており、頬に当たる風が冷たく心地よかった。

 これで現段階では充分過ぎる程のチームが出来た。俺は順調に進行していく計画と、これからの計画を頭の中で整理していた。


「この世界で()()()()、か。様々な能力を持つ人がいるこの世界、未知な事が多すぎる。チームで動くにしても事がまだ大きくなりそうな気がするな」


 これは飲んでいる時にカルラに聞いた話だが、驚くべき事にこの大陸にも傭兵組織があるらしい。主に冒険者が人員の補給や、高レベルのダンジョン、依頼を受ける際の一時的な戦力増強に使われる様だ。大小様々な組織があるらしいが、その中でも特に強大な組織、『ビックサム』『レイクロード』『レッドコア』という『3大傭兵組織』があるという。


 まずは最大級の規模を誇るビックサム。

 この組織の強みは1000人を超える圧倒的な数と命令に忠実な忠誠心である。

  その堅実で数による多様で安定した仕事は商人や冒険者の信頼も厚い。


 次にレイクロード。

 ここは規模としては三つの勢力の中で中堅の様な立ち位置にある。非常に冷血、冷酷な人種が集まっており、数こそ500人とビックサムに少し及ばないが、その分、目的の為には手段を選ばない手法が、利益を何より優先する人種に好まれている。


 そして最後にレッドコア。

 内容はあまり分かっておらず、なんと50人にも満たない程の人数で構成されており、構成員のそれぞれの能力タイプによって、組織の中で幾つかのチームとして分かれているとの噂だ。


「50人だと?それにその情報の少なさ......気になるな」


俺のいた戦場でも、個々の強さが物をいう時もあるが、それでもやはり数は力に直結する。

人が多いというのはそれだけ分担もできればやれることの幅が広がるからだ。

それが数だけ見れば小規模の組織にも関わらず、3大組織とやらに並べて数えられるという事にはそれなりの理由があるはずだ。


「でもレッドコアはあまり気にする必要はないのかもな」

「何故だ?」


カルラはジョッキの酒を飲みほし、肩をすくめて言った。


「この情報の少なさで、しかも50人以下って話だぜ?数だけでも他の二つの傭兵組織と比べても十分の一以下の規模だ。普通に考えれば噂で存在しない可能性の方が高いだろ?実際、これは旅の詩人の作り話っていう噂もあるしな」

「......そうかもしれんな」


俺はカルラとの会話を思い出しながら考えた。

確かに普通に考えれば存在する可能性はかなり低いだろう。


「レッドコア、か」


 俺はあの掴みどころのない男を思い出した。

またあの情報屋の男がいたら聞いてみるか。

そして俺はアジトへ戻り、大の字で寝ているイヴに布をかけてやってから、部屋の隅で静かに眠りについた。

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