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資金調達

毎週土曜、日曜に更新します!!


 ワーウルフに案内して貰ったので、半日程でこの街『アルトス』に到着する事が出来た。

 入り口でワーウルフを解放してやったら、少し寂しそうにこっちを見ていたが、やがて森の中へと消えて行った。



 翌日。

 宿のベッドからおり、窓を開ける。

 雲一つない青空と気持ちの良い風が入ってきた。

 俺は部屋に備え付けの鏡を見た。

 そこには20代くらいの青年の姿が映っていた。


「ふむ」


 この街に着いて気付いたことだが、怪我を治すだけではなく、なんと若返っていたのだ。

 最適化、と神は言っていたが、この事か。

 どおりで体が軽いはずだ。

 神曰く、ここでの試練は過酷であるため、一番適した年齢で送り込まれるとの事だった。


「なかなか、いい感じだな」


 俺は体を軽く動かし、ここへ来るまでで調達した装備をアイテムボックスから取り出し装着した。

 異空間にあり、イメージして腕を伸ばすと取り出すことができる。


「これはなかなかに便利だな」


 ただあまり素早くできないのと、取り出す際に光が生じるので、戦闘中はあまり使わない方がいいだろうが......。

 そこで神の声が聞こえてきた。


「おはよう御座います!ってまたその装備でいくのですか?結構注目浴びてますけど......」

「珍しいだけだろう」


 俺は長い髪をオールバックにして、外へと出た。

 ガヤガヤと俺の周りがざわめく。

 辺りの冒険者は大抵がモンスターの素材を加工したゴテゴテした風貌にも関わらず、俺は傭兵時代の装備を模倣した、防弾チョッキ・手榴弾・サバイバルナイフとサイレンサー付ピストル等を装備。

 剣と魔法の世界で近代兵器を装備しているのだから目立つのも当然だろう。


「多分そのマスクが1番目立ってますよ......普通に怖いですもん」

「そうか?」


 今被っている赤外線付きガスマスクの事だろう。

 この街にくる途中、森で色々狩って作成してを繰り返していると、


「今、《武器庫》の練度が上がって《合成》の能力が追加されました。えーと、作った素材同士を相性が良ければ新たな装備が出来るそうです」


 そして俺は最初作った暗視ゴーグルと、森で倒した毒ガスを撒き散らしていたキノコの様な魔物の素材を手にとり、試してみたらこれが出来たのだ。


「ガス系も防げて暗闇でも対応できる優秀な装備だから問題ない」

「いえ、見た目に問題があります......」


 神の突っ込みを気にせず歩く。

 《作成》は幾分か魔力を消費するので、身体が徐々に怠くなってしまう。

 森では《作成》を繰り返していたので街に着いた時には大分身体が重くなっていたが、寝たら回復したし、薬を飲んでも回復するらしいので、そこまで問題にはならないだろう。

 特に行く当てもないので適当に散策していると、真正面から二人組が歩いてきた。

 そして二人はこちらの目の前まで来たところで止まった。

 どちらも自分より一回り以上大きく、一人は大剣を、もう一人はハンマーを背中に担いでいた。

 ハンマーを担いでいる男が鬱陶しそうに言った。


「おい、道をあけろ」


 腕組して見下し、こちらを威圧してきた。

 見るからに不機嫌そうな顔だ。

 居たなぁ、傭兵時代にもこんな奴。まるで......


「身の程を知らない新人みたいだな」

「!?てめぇ、俺が誰だか知らねぇのか!?」


 おっと、声に出てしまったていたようだ。

 あまり無駄な争いはしたくないのにな。

とりあえずは当たり障りのない答えしとくか......


「知らんな。そんなでかいハンマーを担いで、鍛冶屋か何かか?」

「ころやろう......!!」


俺の返答に何故か更にヒートアップされた。


「おい、もうあまり時間がないぜ」


 一触即発の所で大剣の男が諫めた。

 そしてこちらを見て、


「お前も長生きしたいなら相手は選ぶこったな」

「ご高説どうも」

「てめえの顔覚えたからな。次会うときは覚悟しとけよ」


 そして二人組は脇を通り、苛立ちをまき散らすように周りを威嚇しながらズカズカと歩いて行った。


「なんだあいつら?」

「何事もなくてよかったですよぅ。挑発せずに最初から道を譲ればいいのに......」

「挑発?よく分からんが、どちらにせよ大した問題にはならん」

「もしかしてあれ素なんですか!?」


 余計たち悪い方です~、とぶうぶう言う神。

 俺はそれを無視して少し伸びをしながら今後の予定を考えた。


「まずはもう少し資金が必要だな」

「えっ、でも森での余った素材を売ったのでかなり資金も出来たんじゃないですか?」

「まだ余裕が欲しい。最初は色々と物入りになるだろうしな」


 そして俺は何か金になる事はないか探してみることにした。

 色々な店に聞き込みをし、まずは情報を集める。すると、広場の方で今日大きなイベントが開かれる事が分かった。

 場所を聞いて、向かうと確かに広場に人だかりが出来ていた。

 すると輪の中心から、


『さあ、聞いてくれ!!あと少しで締め切りだが、もう1人は飛び入り参加okだぜ!大金を手にしたい奴は是非参加してくれ!!』


 とスピーカーの様な大声が聞こえてきたので、俺はそれを聞いてズカズカと人だかりへと歩いていった。周りの人が何故か道を空けてくれたので、そのまま司会の男の所まですんなり着き、声をかけた。


「幾らだ?」

「はい?」

「賞金は幾らかと聞いている」

「あ、ああ。金貨20枚だ」


 司会の男は少し驚きながらも答えてくれた。

 俺は神に向かって「これは高いのか?」と頭の中で問いかけた。


「はい、十分過ぎる程高いと思いますよ!ですが、あまりにも高すぎる様なのでちょっと気になりますので、もう少し考えて参加した方が......」

「分かった。俺も出してくれ」

「えぇ......」

「お、おお、もちろん構わねえが、大丈夫かよ。見た事もねえ顔だが、参加者はネームドの奴らだぜ?」


 親指で他の三人を指す。

 司会の説明によると、2mの背丈にそれと同じ位のハンマーを背負ったのがジニー、同じくでかい大剣を背負っているのがカルロ、デカイツバの付いた帽子を被り、魔導服を着ているのがティアらしい。


「ネームド?」

「戦闘の功績によってギルドから称号を貰えるんだよ。それがある奴らがネームドと呼ばれる。そして今回は全員がネームドだ。つまりこの辺の魔物なんて瞬殺出来るほどの実力者だ。その分今回賞金は高めだけど、下手すりゃあ死ぬぜ?」

「問題ない、内二人は会ったことあるしな」

「は?」


 司会はよく分かっていないようだった。

 そりゃそうだろう、大剣とハンマーの男はさっき街であった奴らだからな。

 司会は俺が即答したのを聞き、面白そうにニヤリと笑い、更に声を張り上げて周りに言った。


『さあ!役者は出揃った‼︎今回は賞金が高額だぜ!しかも出場者はあの潰し屋ジニーに両断カルロ、魔弾のティアの三巴かと思ったが......なんと‼︎』


 そして大袈裟な手振りでこちらを示し、


『見た事もない姿のルーキーが急遽参戦だぁ‼︎このネームドの三人に対して一体どう戦うのか!?大穴を当てるならこの人に賭けるのをオススメするぜ!』


 その瞬間、誰がそんな奴に掛けるかよ!と笑いが起こった。

 オッズを見ると他が2倍で俺が10倍となっていた。

 悪くないな。

 俺は司会の男に金貨が入った袋ごと渡した。


「全て俺に賭ける」

「......マジかよ、クレイジーだぜあんた」


 司会はあっけに取られていたが、俺は気にせずに、会場である森の入り口へと歩いていった。


「ええ!?全財産をかけたんですか!?負けたらどうするんですか!ちょっと!?」

「勝てばいい」

「貴方って人は......はぁ」


 神の疲れた様な声をいつもの通り無視していると、会場の森への入り口へと着いた。

 そして司会から参加者にそれぞれ札が配られた。


『さあ、ここがステージだ!全員まずは別々の方向からスタートして森へと入り、各それぞれに配られた東西南北が描かれた札をとりあい、全て揃ってここまで持ってきた奴が勝ちだ!殺しは禁止だが、それ以外は何でもOK、優秀な回復術師を数人待機させてるから、安心して怪我してきな!!』


「おい」


 司会が説明している途中にジニーとカルロが近づいてきた。

 そしてジニーがニヤリとして言った。


「思ったよりすぐ会えたな。悪いがお前にはトラウマになる程の恐怖を植え付けてやるから覚悟しとけよ」

「まあ、今回の優勝は俺がもらうけどな。棄権するなら今のうちだぞ?」


 ジニーも余裕な表情だが、カルロも相当自信があるようだ。

 話している感じ、二人は知り合いみたいだが、今回はたまたま同じイベントにかち合ったみたいだな。


「............」

「おい、俺たちがネームドと分かってビビっちまって声もだねえか。まぁ話にならねえこいつは置いといて、カルロ、お前もぶっ潰してやるから覚悟しとけよ」

「はっ。かかってきやがれ」


 二人はいうだけ言ってスタート位置へと戻っていった。


「ほんとに大丈夫なんですか?物凄く目の敵にされてますよ?」


 怯えるように言う神。

こいつ、神のくせになかなかの心配性だな。


「まあ、奴らも言うだけあってなかなかの手練れたちだろうな。実力は前世で俺が戦った奴らの中でもトップクラスだろうよ」

「ええ!?それじゃもしかしたら負けちゃうかもしれないじゃないですか!!」

「まあ始まってみれば分かる」


 ようやく司会の説明が終了し、参加者全員を見た。

 そして手を上に掲げて叫んだ。


『それじゃ、スタートだ!』



 その瞬間、参加者が一斉に森へと入る!!


 ......俺を除いて。

 そして司会に聞く。


「おい」

「な、なんだよ?棄権か?」

「回復術師はどこまで治せるんだ?」

「そりゃ、階級にもよるが、今回は派手に出来る様にB級を四人も準備したから腕や足が吹き飛んでも死ななけりゃ治せると思うぜ?」

「そうか......それは......楽でいいな」

「?......ヒッ!!!」


 そう言う俺の顔を見た瞬間、怯えた様に司会者は尻餅を付いた。

 そして俺も静かに薄暗い森へと入っていった。


 ーーそれから1時間も経たないくらいだった。

 他の参加者3名が瀕死で運ばれたのは。

 直してもらった後も錯乱した状態で、大会後、こううなされていたらしい。


「や、奴は人間じゃない......気付いたら腕を撃たれていて、次は足、そして俺の両手が......うぅ。」

「気づいたら後ろに居たんだ。振り向いた時は居なかったのに......大剣を握ろうとしたら手の指が全て無かったんだ。視線を前に戻すと()()()()ナイフが首に......」

「ほ、他が、狙われている時に呪文を唱えて終わり、だったはずなのに......遠くから目が合って、瞬間、身体が動かなくなって......あぁぁ」


 イベント終了後、回復術士が治療に追われていた。ようやく落ち着いた頃に、賞金を受けとる際に司会が教えてくれたのだ。

 俺は金貨20枚が入った袋と掛け金分で一杯になった袋を両手に分けて持った。


「ふむ、これでも抑えたはずだったのだが......あれでも少しだけやり過ぎた様だな」


 なまじ身体能力を強化してくれている分、加減が難しい。


「少しじゃありませんよぉ、普通にやり過ぎです…...。というかいくらこの世界に合わせて身体能力が上がったとしても強くなり過ぎじゃないですか?」


 神は俺が戦って血飛沫が上がる度に、ずっと悲鳴を上げていたが今は落ちついたようだ。

 賞金と賭けで勝った大金を手に入れれて少し気分が良かったので、説明してやる事にした。


「簡単な話だ。俺は前世は訓練時代に受けた()()()()()()で動きが衰えてた。それでここに転生してその後遺症も治った分、更に動ける様になっただけだ」

「え、嘘......。という事は前世は後遺症があって死神と言われるほど強かったって事ですか?......あなた、本当に人間なのですか?」

「俺はただの傭兵だ」


 そうして俺は悠々と会場を後にしたのだった。

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[良い点] 面白いです。 今後の展開が気になります。 そして読みやすかったです。 まとめて読む派なのでまた時間あけてから来ますね。 [気になる点] 3点リーダーが一つのところと二つのところがあり、表現…
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