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第二十六話 臨時パーティ

「こっちへ行こう。この方面はまだ探していない」

2人を仲間に加え、歩き出す。この場所から離れて再び〔探査(ソナー)〕を使うために移動するのだ。

「そうだ、君、僕たちが情報を出したんだから、君にも情報を出してほしいんだ。まさか、情報をただでもらえるなんて思ってないよね?」

 理にかなった発言だ。しかし、どれを話せばいい? こちらが出せる情報は、氾濫(オーバーフロー)との関連性、ノストルギア伯爵とのやり取りの内容程度しかない。前者については発言しても問題ないかもしれないが、後者について言及するのは良くないのではないか? この2人に何か言う事は、世間にそれを広める事と同じだ。この情報を流された伯爵はどうなる?


 俺が知る限りで、奴は、商人を無条件で信用していたことに気付き、動揺してひどく後悔している様子だった。それを鑑みると、奴は魔族に精神に作用する何かをされ、無条件に信用させられた、と想像できる。しかし、奴との会話からして、今の政治体制に不満を持ち、議会の平民代表に対しては敵意に近い感情を抱いているのは元からだろう。そのような奴が平民代表に刺客を送ったという事実は、奴自身の信頼を大きく損ねる。この国の政治に波紋を生む原因になりかねない。


 勇者一行はこの大陸中、多く国を旅するのだ。魔族との戦争もあって不安定な時期に、勇者一行の妨げになる訳ではない国の政治に問題が発生し得る真似はしたくない。国同士のパワーバランスが乱れれば、何が起こるか分からない。ここは数多くの「前世」の舞台の世界と違って国同士の戦争など簡単に起きる。そのような事態になる可能性は十分に考えられる。


【ペルシオ、話すの?】

【相手の言い分は理にかなっている。話すつもりだが、それは言及しても問題の無い、氾濫(オーバーフロー)についてだけだ】


「……少し前に、ディーズ丘陵で氾濫(オーバーフロー)があっただろう?」

「あった。かなり規模が大きかったらしいね。それがどうかしたの?」

「あの場に、魔族が居た」

「……えっ?」


 この付近に魔族が出現した事を公表するのは、世間を不安にさせる。だから情報が出回っていないのだろう。


「勿論、勇者一行が討伐した」

「へぇ……」

「この王都に居る集団も、その事を知っていたらしい。氾濫(オーバーフロー)を足掛かりに何かするつもりだったのだろう」


「……どこからそんな情報を仕入れたんだ? というか、そんな情報を得られるなら僕たちの話を聴く必要なんてないんじゃないのかい?」

「特殊なルートから情報を仕入れたんだ、それ故情報が偏っていてな」

 こう誤魔化しておこう。自分のフィールドワークによって得た情報だ、など口が裂けても言えない。



 そろそろ〔探査(ソナー)〕を使いたい。〔虚構(フィクション)〕は掛けておくが、もしそれでも魔法を使った事を看破られたら、ギルドマスターと模擬戦をした時のように、特殊なスキルだと言って誤魔化そう。


 魔力:3605/3795 → 3505/3795


……成果なし、と。


【そう言えば、女性の方、ペルシオと戦う前に、『前みたいに(・・・・・)加減を間違えて殺さないでね』と言ってませんでしたっけ?】

【……そう言っていた気がする。まるでこういう類の依頼を受けた事があるのかのような口ぶりだったな】

「2人は、以前に似たような依頼を受けた事があるのか?」

「?」

「俺との戦闘前に、アンタが『前みたいに(・・・・・)加減を間違えて殺さないでね』と言っていたのを思い出してな」

「あぁ……私たちは、こういう、人をターゲットにした依頼をよく受けるのよ」

 人をターゲットにした依頼、とは盗賊や山賊の討伐、賞金首の捕縛、殺害などの事だろうか? なるほど、対人特化の冒険者か。それなら、逃げ道を封じるあの戦い方にも納得が行く。


 ……対人特化? もしかしたら、この事について何か知っているかもしれない。

「パペットスティレットとパペットコマンダーを知っているか?」


 このような、精神操作をする類の品は、悪意のある人物と関わらないとお目にかかれないだろう。

「うーん……」

「銀色の剣身に紫の線が入った――」

「あぁ、思い出した! あの短剣と水晶玉か!」

何という幸運! 今まで、パペットコマンダーの形状が分からなかったから、如何にも禍々しい見た目をした同じ物体4つを探すしかなかった。無謀で、精度も低いやり方だ。ここでその形について知る事が出来れば、見間違いも見逃しも無くなる。

「水晶玉の形状について、詳しく教えてくれ」

「ホントに綺麗な球。紫色の線が表面にはしっていて気持ち悪いけど」

「なるほど、助かった」

そのようなものは今までどの建物にも無かったはずだ。見逃しは無かったと見て良いだろう。


「でも、何で急にそんな事を?」

「まさか、集団がそれを持っているとか?」


 これは誤魔化さない。どうせ魔族の集団のアジトに行けば真偽は判る。

「可能性はかなり高い」

「めんどくさいな……そういうの持ってる人は倒しづらいんだよ」

「……何故?」

「だって、操られたら大変だろう?」

 確かにそうだ。あの暗殺者4人が持っていた分のパペットスティレットは〔異次元保管庫(アイテムボックス)〕に集めたが、集団が持っている数がその4振りだけとは限らない。



 それから数回、〔探査(ソナー)〕を使ったが成果は無かった。


虚構(フィクション)〕、〔探査(ソナー)〕……。頼む、そろそろ見つかってくれ……


 魔力:2740/3795 → 2640/3795


 ……良し!


 現在午後9時、遂に見つけた。パペットコマンダーは発見出来なかったが、50メートル南に2人の人影があるのが分かる。目深に被ったフードと、それに隠された角。外套の色は分からない、これは〔探査(ソナー)〕の仕様故だから仕方ない。


 今のところピーキット以外の魔族を見ていないから分からないが、魔族に角のない奴は居るのだろうか?


「この奥に2人、怪しい奴らが居る」

「確かに、奥に2人、普通とは違う気配がするけど……」

「どうする? 俺は脅迫してさっさと案内してもらおうと考えているのだが」

「アッシュはおいておいて、何で貴方も分かったの?」

「そういう能力だ、としか言いようが無い」

「僕と同じスキルを持ってるってこと? でも〔警戒〕ってずっと気配に敏感になるんじゃ無かったっけ。何で僕たちが近づいた時気づかなかったんだい?」

「……俺が持っているのは任意のタイミングで辺り一帯の気配を感知するスキルだ」

スキルは世の中に幾万とある。その全てを把握している人はそうそう居ない。


 気配を消し、奴らが見える所まで移動して、〔慧眼〕。間違いがあってはならないから、〔慧眼〕から見える〔ステータス〕から確証を得たい。

――――――――――――――――――――――――

名前:フロット

種族:下級魔人(レッサーデーモン)♂ Lv:25

職業:穿山軍団所属諜報隊員

適正職:密偵Lv:3(斥候Lv:13)

体力:411/411 魔力:940/940

攻撃力:116

魔法攻撃力:213

防御力:84

魔法防御力:78

素早さ:201

器用さ:211

スキル:〔短剣術〕Lv:4 〔隠密〕Lv:1(〔忍び歩き〕Lv:11) 〔隠蔽〕Lv:9 〔魔力操作〕Lv:2 〔罠察知〕Lv:5 〔爪術〕Lv:4

魔法:〔(アクア)〕〔(アイス)

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

名前:フリョータン

種族:下級魔人(レッサーデーモン)♀ Lv:26

職業:穿山軍団所属諜報隊員

適正職:密偵Lv:3(斥候Lv:13)

体力:425/425 魔力:960/960

攻撃力:123

魔法攻撃力:225

防御力:89

魔法防御力:80

素早さ:211

器用さ:222

スキル:〔短剣術〕Lv:4 〔隠密〕Lv:1(〔忍び歩き〕Lv:11) 〔隠蔽〕Lv:9 〔魔力操作〕Lv:2 〔罠察知〕Lv:5 〔爪術〕Lv:4

魔法:〔(ウィンド)

――――――――――――――――――――――――

 やはり魔族だ。それも、穿山軍団所属の。穿山とは東の四天王の二つ名だ。弓矢で山に大穴を開けた、という武勇伝が由来だと言われている。


「あの人たちだね?」

「間違い無い。俺は奥にまわる。2人はこちらから攻撃してくれ」


 さっさとやるぞ。この件を早く終わらせて、メリアたちが危機に陥る前に追い付くのだ。

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