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第二十四話 徒労……?

 路地裏を歩きつつ、〔虚構(フィクション)〕で隠蔽した〔探査(ソナー)〕で魔族を探す。


 王都の路地裏は、王都の大通りとはまるで違う。大通りの喧騒がまるで画面越しに聞こえるような空間だ。空気は何処か冷たく、人の到来を拒絶している。


その中、その端の方を、なるべく自然に見えるように歩いているのが俺だ。もっとも、注意して探さなければ誰も気配を消した俺に気付く事は無いだろうが。


虚構(フィクション)〕を掛けて、〔探査(ソナー)〕……


 魔力:265/3795 → 165/3795


【直に魔力が底をつくというのに……一切の成果なし……】

強いて挙げるなら、〔隠蔽〕と〔隠密〕のLvが上がった程度。現在、おそらく王都の路地裏の内3分の1の捜索が完了した所だ。


【仕方ない……魔物から魔力を奪ってくるぞ……】

【はーい】

現在、太陽の位置からして恐らく午後1時。前回は、自分の魔力が全快するまで3~4時間かかった。王都全体の路地裏の捜索を終える頃には、日が昇っている事だろう。そこまで時間をかけて徒労に終わる、という事態だけは起こらないで欲しい。


 王都の冒険者ギルドに入る。ディッセルの冒険者ギルドの2倍以上もの敷地があり、2倍以上もの数の冒険者の姿が見える。掲示板の方に向かい、魔物の討伐系の依頼を探す。


小鬼(ゴブリン)の集落の制圧及び殲滅」「中級魔物の魔石の納品」「蜘蛛(スパイダー)系魔物の糸の納品」「破城猪(デストラクティブボア)の討伐」……。どれにしようか。報酬がそれなりに高く、ここから近い距離で済ませられる依頼……。


 蜥蜴(リザード)系魔物の脳の納品」が妥当か。依頼内容は、

下級蜥蜴(レッサーリザード)蜥蜴(リザード)の死体から取った損傷の無い脳をそれぞれ4つずつ納品

・報酬は銀貨12枚

だ。脳に限らず、魔物の内臓は道具、錬金術の材料、魔物の研究等幅広く利用される。一般に、蜥蜴(リザード)系の魔物は皮膚が固く、打撃武器で頭を殴って討伐する事が定石とされている。そうなれば当然脳も損傷し、さっき挙げた用途には使えなくなってしまう。そのため、蜥蜴(リザード)系の魔物の脳は供給不足に陥りやすく、この様な依頼が出されるのだろう。報酬についてだが、「ディーズ丘陵の魔物の討伐」に比べれば少し軽くなる。しかし、これは魔力回復のついでにこなす依頼だ。そのついで(・・・)で銀貨12枚ももらえるのだからありがたい事だ。


依頼の受諾を済ませて、ギルド受付から離れようとした時に、尋ねたいと思ったことが1つ。

「ギルド受付の職員の中に、ルイード教信者は居るか? 居るのなら、その人のシフトを教えて欲しい。」

 ルイード教信者からの扱いには慣れているが、鉢合わせたら面倒なのは変わらない。出来れば避けたいところだが……

「すみません……国柄、自分がどの宗教に入信しているかがあまり気にされないので、誰がルイード教の信者なのかはちょっと……」

 確かにこの国なら、自分が何を信仰しているかについての情報は軽く流されそうだ。流石に魔族を信仰する宗教、ティマブレイタ教はこのご時世印象が悪いだろうが。

「そうか、無理を言ってすまなかった」



 目的の狩場についてから数分が経った頃。

「……居た……」

下級蜥蜴(レッサーリザード)だ。ヤモリを数倍に大きくしたような見た目で、その表面は鱗に覆いつくされている。単独で行動している個体なら、取り付きやすい。両腕で奴の胴を掴み、反撃されないよう脚で尻尾を押さえて上にのしかかる。ここで奴は俺の存在に気付く。しかし、取り付いてしまえばこちらのもの。尻尾を押さえられてしまえば、自分の頭上に対してコイツは何も出来ない。大人しく魔力を吸われてくれ。


 魔力:172/3795 → 272/3795


 尻尾から受けていた抵抗力が静まった、おそらく気絶したのだろう。後は仕留めるだけ。仰向けに転がし心臓の辺りを貫く。


<経験値を入手しました>

<Lvが上がりました>


 死体は〔異次元保管庫(アイテムボックス)〕に放り込む。次だ。


 2体の放浪狼(ワンダーウルフ)を発見。この大陸の大抵の狩場でコイツを見ない事は無い。本当に何処にでも居る奴だ。依頼外の魔物なら、倒し方は自由。両手で1体ずつ首を乱暴に掴み上げ、走る勢いのまま近くの樹に叩きつける。


<新スキル〔体術〕を習得しました>


 右手の方は脳震盪を起こしたのかぐったりしている。左手の方はまだ暴れているので、もう一度に叩きつける。


【ペルシオ、ストレス溜まってる?】

【まさか。魔物は頑丈だから、脳を揺らすならこれぐらい勢いが無くては】


 魔力:280/3795 → 440/3795


 魔力は吸い切った。折角首を握っているのだ、これを折って仕留め………られない。力が足りなくて折れなかった。片手で掴んでいるのだから、当然と言えば当然だ。

 大人しく地面に置いてからオロクロスを突き立てる事にする。


<経験値を入手しました>

<経験値を入手しました>


【おっ、Lvが上がった】

【上がりましたね】

 彼らのLvが上がったらしい。これでLv:8だったか?


 そういえば、さっき、何かスキルを習得していたような……。ステータスを開くと、それらしきものを発見した。〔慧眼〕で調べておこうか。

――――――――――――――――――――――――

<スキル>

〔体術〕...武器を使用しない、殴る蹴る等の徒手戦闘の技術を表すスキル。スキル所持者の鍛練の成果を示すと共に、微弱ながら体術に関連する身体的動作を補助する効果を持つ。

――――――――――――――――――――――――

 ここ数日、魔力回復のため魔物に対してよく組み付いている。それが体術であると認識されたらしい。これから長い間一切〔体術〕を使わなければ、このスキルは消滅するだろう。スキルとはそういうものだ。鍛練をしなければ技術は衰えていく。



 ようやく魔力が全快し、依頼も完了した。現在午後4時。捜索を再開する。


 〔虚構(フィクション)〕をかけて、〔探査(ソナー)〕。


 魔力:3795/3795 → 3695/3795


 同時に周囲の情報が入って来る。複数の建物の中の情報もほぼ正確に入って来るが、怪しい物は無く、魔族らしき人影も無い。外れだ。


 しばらく移動して、同じように邪法を使う。索敵範囲が被ると魔力の無駄だ。


【どうだった?】

【駄目だった……】



 それから、索敵しては成果なし、索敵しては成果なし、を何回も繰り返した。おそらく、路地裏の約半分の範囲を探し終えたただろう。


虚構(フィクション)〕、〔探査(ソナー)〕……


魔力:3695/3795 → 3595/3795


 建物の中には何も怪しいところは無い。また外れだ。ただ……俺の真後ろに2人、人影があるのは何故だ?


 咄嗟に振り返ろうとするが、それより速く、1人が俺の肩を軽く掴み、

「君、こんなところで何やってんのさ? 怪しい雰囲気がプンプンするよ~」

と一言。柔らかい印象を与える笑顔の、その視線が俺を射貫いていた。

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