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第十八話 信用と不信

―――(メリア視点)―――


 ディッセルを出てから1日が経った。ケイディンが作ったスープを飲んで、テントを片付けて出発する。若いんだから、食事は必ず3食欠かさずにとりなさい、とはフィルディータ王国軍の補給科長、アスピーダ・シノディアさんの言。彼女は盾とメイスを使った戦闘が得意で、ケイディンに戦い方を教えていた。盾も武器として使っているところは見たことがないけど……


「そう言えば、ケイディンが料理上手だって知ったときは結構びっくりしたなぁ」

「人は見かけによらないもんだ。ま、アスピーダさんが教えてくれた部分が大きいんだがな。補給科長様様だぜ」

「私も教えてもらえば良かったな……」


 山の中を進んで行く。魔物も、種類は増えたけどどれもあんまり強くない。陽が落ち始めて少し、4時ぐらいの頃、王都レカニンに着いた。


「身分を証明できるものの提示をお願いします」

私たちは各々の冒険者ギルドカードを門番に見せる。

「はい、間違いなく勇者様ですね。ようこそ、王都レカニンへ」


 周りをぐるりと見回す。流石王都、人と活気に溢れている。フィルディータ王国王都と同じだ。


「貴女方が勇者様御一行ですね?」

 整った身なりをした男に話しかけられた。男の口調や雰囲気は丁寧さがにじみ出ている。たぶん彼は貴族の使用人なんだろう。


「……はい、そうですが……?」

「初めまして。私はノストルギア伯爵家の使用人でございます。貴女方をノストルギア伯爵邸にご招待いたします。王都で活動するにも、仮の宿となる場所が必要でしょう。是非、伯爵邸をお使いください。良ければ、ご案内いたしましょうか?」


 ノストルギア伯爵が活動のための仮の拠点となってくれるらしい。雑に言うと、タダで泊まれる宿がある、ということだ。断る理由なんてどこにもない。


「えぇ、よろしくお願いします」

「承知いたしました。では、ついてきてください」

 そう言うと、彼は歩きだす。私たちはそれに続いていく。



「ここが、ノストルギア伯爵邸になります」

目の前には、きらびやかな屋敷。高貴さがただよっていて、貴族らしい。勇者と分かって王城で暮らすようになって、この雰囲気には慣れたけど、6年前なら間違いなくガチガチに緊張して動けなかったと思う。


「勇者様御一行がいらっしゃった。ノストルギア伯爵様に連絡してくれ」

「了解いたしました」

門番はそういって、屋敷に走って入っていく。

使用人がまた進み始めたので、それに続いて私たちも進む。


 屋敷の中は輝いていた。色んな芸術品が飾られている。

「ここで、少々お待ちください」

応接間のような場所に案内された。メイドが茶を用意して、お辞儀をしてから部屋を出ていった。


しばらくして、

「初めまして、勇者様御一行。私はアナビオス・ノストルギア。此度は我が屋敷にお越しくださり、ありがとうございます」


 やせているとまではいかないけれど、まあまあ線の細い男が出てきた。朗らかな感じの人で、悪い人じゃなさそう。


「私は勇者のメリアです」

「俺はケイディン、守護者です」

「賢者のソイフォルと申します」

「私は聖者のアギサと申します」

「王都にいらっしゃったのは、やはり聖剣のためですか?」

「そうです。明日、聖剣を抜きに行くつもりです」

「しかし、氾濫(オーバーフロー)がありましたからね……。どうぞ、しっかり休んでいってください」


 しばらく世間話をした。私たちは外国の情勢や政治、文化について王城で学んでいたけれど、王都から出ることがほとんどなかったから、アナビオスさんから聞ける外国の話はすごく面白かった。


「伯爵様、晩餐会の準備が整いました」

「そうか、ご苦労。では、勇者様御一行、食堂に向かいましょうか」

私たちは彼について応接間から出て、食堂へ向かう。


―――(ペルシオ視点)―――


 勇者一行の後を追って、王都に入る。彼女たちは誰かの後についていき、豪邸に入っていった。貴族の屋敷であるのは間違いないが、どの貴族の物なのかが分からない。場所は覚えた。王都の中央にある王城、議事堂の東。議事堂から数えて4つ目の屋敷。


 道行く人、王都に住んでいそうな、平民に声をかける。

「すまない、そこの人、あの立派な屋敷は誰の物なのか、教えてはくれないか? 何分最近ここに来たばかりでな、この国の事が全く分からないのだ」

「へぇ、外国から来たのね。あの屋敷はね、ノストルギア伯爵邸よ」

「ノストルギア伯爵?」

 聞いた事が無い。議会の代表らの名前は有名で広まっているのだから、おそらく議会の代表ではないだろう。

「ここから西の、ノストルギアを領地とする貴族様よ」

「そうか。伯爵ともあれば、あの家の規模も納得がいく。教えてくれて感謝する」

「王都を楽しんでね」

「あぁ、そうしよう」



 この貴族にメリアは任せられるか? 民間の宿で、勇者一行が自ら選んだならまだしも、貴族の使用人が待ち構えていて、そのまま屋敷まで案内だと? 王家から依頼されたという可能性もあるが……、信頼はできない。


 俺は近くの暗い路地裏に入る。そして、〔虚構(フィクション)〕と〔探査(ソナー)〕。ノストルギア伯爵邸周辺に意識を集中させる。万が一の際に突入できるように内部構造と人の配置を調べ上げる。


 魔力:3795/3795 → 3695/3795


 地下に、何か居る。数人の人間。近くには短剣、体をすっぽり隠せる布。まるで暗殺者のようだ。屋敷に居る戦力が護衛でなく暗殺者とは、きな臭い。一体、何故? 


 彼らの行動を監視しよう。勇者が起きている内は大きく動く事は無いだろうが……



 日が沈んでからかなり経った。メリアのペンダントの魔力に動きはない、おそらく眠ったのだろう。〔探査(ソナー)〕によれば、彼らが丁度今動き出した。


 屋敷の裏にある地下への入り口、そこから出てきたようだ。隠形しながら、彼らに近寄る。


 〔探査(ソナー)〕が示した通りの場所に奴らは居た。隠密行動しているようだが、〔探査(ソナー)〕の前では無力だ。


 奴らは屋敷の外に出た。勇者一行に関わらないようだ。


 では、何処へ行く? 彼女たちに関わらない以上、こちらが手出しする理由が無い。しかし、彼らが動いているのは、この夜に誰かを殺す為だろう。一体、誰を殺すつもりなのか。彼らを追えば、ノストルギア伯爵とこの国について、更なる情報を得られるかもしれない。


【……ペルシオの索敵についていけない……】

【私もです】

【それはすまなかった。俺が得た情報はすぐに〔念話〕で伝えよう】

 今までずっと1人で活動していたから、その時と同じように行動してしまう。意思疎通が可能な仲間が居ることを念頭に置いておこう。


 奴らはなるべく路地裏など、人目の無いところを選んで移動して行く。奴らが西へ移動し、辿り着いた場所は、ある屋敷。確か、議会の平民代表が居るのだったか。平民代表が居る屋敷に侵入しようとする暗殺者、ターゲットは間違いなく平民代表だろう。


 どうしたものか。別に俺はこのまま暗殺者たちの仕事を観戦していても良いのだが……。否、良くないな。平民代表が死ぬと王都に混乱が訪れるのは間違いない。そのうち、ノストルギア伯爵からの刺客である事も判明し得るだろう。そうすると、勇者一行が事情聴取という形で足止めをくらう事は十分に考えられる。そうなる以上、俺が奴らの行動を阻止しない訳にはいかない。


【コイツ等はメリアに不利益をもたらす。野放しにはしないぞ】


 俺は、後ろから急接近して、1人の首を手刀で叩いて気絶させる……つもりだったのだが、トン、と情けない音を出すだけに終わった。弱めにやり過ぎた。


「イテッ……」

 声を出された。不味い、さっさと無力化しなければ。


 残りは、なるべく強く叩くことを意識して首に手刀を当てていく。


<経験値を入手しました>

<適正職のLvが上がりました>


 少し手間取ったが、これで4人、全員無力化完了。さて、ここでは場所が悪い。森に移動しよう。話はそれからだ。


【コイツ等を森へ連れていく。そこで情報を得るぞ】

【誘拐だね】


 〔空間歪曲(ワープ)〕により生み出された裂け目は、俺と奴らを吞み込んで消える。行き先は近くの森のなるべく奥深く、人目の無い、静かなところだ。

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