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第十七話 6年分の説教

以前の内容の変更をしました。

特に第十六話は大きく変化したので、ご注意を。

 夜が明けた。魔力は全快。現在は宿に忍び込んで戻っている。

【ペルシオ、魔物を組み敷いて魔力を奪うの……効率がいいのは分かるけど、見ていて怖いよ】

【なっ……オロクロス! それをペルシオに言うのは酷いでしょう!】

【傍から見て気味が悪いのは、俺も分かっている。しかし、あれが一番やりやすい。目をつむってくれ】

 他の効率的な魔力回復方法の模索をすべきだろうか……



 朝食をとって、メリアたちの動向を調べる。メリアに渡したペンダントの魔力によると、冒険者ギルドに向かわずそのまま町から出ようとしている。デピス王国王都に向かうようだ。


 俺も距離を開けて、後から行……いや、それはまずい。2日前に、この町の門番にはルイード教の人間が混ざっていることが判明している。四六時中門番をしているはずは無いが、万が一俺の存在が気付かれてしまえば……。


 町を囲う壁を飛び越えて行く事にしよう。勿論、念には念を入れ、本気で隠形する。


 魔力:3795/3795 → 3725/3795


【たかが町を出るだけで警戒し過ぎじゃない?】

【警戒のし過ぎなどあるものか。バレたら間違いなく面倒事になるだろう。不要なリスクは1つ1つ丁寧に潰さねばならない】

【ですがペルシオ、そんなに警戒していてはいつか倒れてしまいますよ】


 壁の上に到着した。ここから飛び降りる。


【俺は〔不休体質〕を持っているから肉体的に疲れづらいし、魔力は他の魔物から奪う。倒れるはずがない】

【精神的な問題です!】


 無事着地。音は〔虚構(フィクション)〕で消した。


 魔力:3725/3795 → 3655/3795


<スキルのLvが上がりました>


【……それで倒れるほど脆い心は持っていない】

【そんなはずはありません。もっと自分の事をちゃんと顧みて下さい。普段の戦い方だってそうです。自分の防御について何も考えていないじゃないですか。敵の攻撃は全て、攻撃の足掛かりとしか考えていないのでしょう?】


 スクロアルマが説教でもするかのように捲し立てた。俺が攻撃を避け損ねる時、スクロアルマもダメージを受ける。6年分のその鬱憤が溜まっていたのか?


 ダメージを装備者の代わりに受けることは、服や防具にとって存在意義ではあるものの、良い事ではないはずだ。そもそもダメージを負わない事が最良に決まっている。


【ペルシオは、もっと己の事を大切にして下さい!】

 今更だろう。俺は自分の事を大切にしている。中途半端な所で死んでしまったら、ミリアを守り切れないからだ。


【普段から俺はそうしているではないか。どうして今更そういう事を?】

【あー、これは……重症だね……。スクロアルマ、治すのには時間がかかりそうだよ】

 オロクロスが悲しげで重々しい声色でスクロアルマに言う。


【「治す」? 一体何を?】

【何で聞こえて……!? あ、そっか。身体と魂を繋ぐ魔力が同じだから受け取れちゃうのか……】

【オロクロス、時間はあります。私たちで、ペルシオを元に戻しますよ】


 その会話に内心疑問を呈しながら、歩みを進める。既に町からは大分離れ、小規模な山を登っている。この山は越えるのにおおよそ2日かかるといわれている。この山を越えた先に、デピス王国王都レカニンがある。


 レカニンは周りを小規模な山に囲われている。山があるため魔物の分布は若干変化し、ディーズ丘陵の魔物に加えて蜥蜴(リザード)系、蜘蛛(スパイダー)系の魔物が出現するらしい。


 人や馬車が通るための道は整備されている。接敵にも容易に反応できるため、普通はこの道の上を通って移動する。勇者一行に気付かれない様、隠形したまま移動するのはいつもの事。


 勇者一行は何度か魔物に接敵しているが、難なく撃破している。戦い方は、ソイフォルが魔術で足止めをしてメリアとケイディンが撃破する、というもの。アギサは見たところ回復や補助に徹しているようだ。


 王都までただひたすら歩くのは余りにも退屈だ。俺は敢えて道から外れ森の中に入る。魔物をいくつか狩るつもりだ。


【ペルシオ、あっちに魔物がいますよ!】

 スクロアルマが興奮した様子で言う。


 確かに、彼が示した方向に(ウルフ)が居た。


 言語化されてはいないものの、彼の興奮が指数関数的に増していくのが〔念話〕で伝わる。


 オロクロスを(ウルフ)の首に突き刺し、返り血がスクロアルマにかかると、

【美味い! これは病みつきになりますね!】

【そ、そうか。良かったな……】

 無間狩人(イモータルブッチャー)の魂を付与した時の予想とは僅かに異なるが、その影響はこの形で顕れたようだ。〔血浴〕の為に血を吸わせる必要があるから、血を嫌うよりかはこちらの方が良いのかもしれない。


【〔血浴〕の効果は?】

【これぐらいの量ではまだ変化はないみたいです。それと、私のLvが上がりましたね】

【僕のも上がった】

【敵を倒して経験値を得るのはそちらも同じか】


 次に発見したのは狩り猪(ハンターボア)3体の群れ。2体を素早く仕留めて〔異次元保管庫(アイテムボックス)〕で回収する。

【オロクロス、〔仕込み棘〕を試してみてくれ】

【生き物か物が当たらないと使えないみたい……】


 踏むと槍が突き出る罠を模した能力なのだろうか。


【罠らしいスキルだ。俺が狩り猪(ハンターボア)にお前を突き立てるから、それに合わせて発動してくれ】

【はーい】

 俺は狩り猪(ハンターボア)の横腹にオロクロスを突き立てる。

【今だ! やれ!】

【それっ!】

 その掛け声と同時、狩り猪(ハンターボア)のもがき方が荒くなった。オロクロスを引き抜こうとすると、少し抵抗を感じる。が、それを無視して無理矢理引き抜く。


 ブチブチ、という音と共に、オロクロスから出た棘に貫かれた内臓や筋肉、その他の組織が溢れ出る。棘の長さはオロクロスの刃渡りと同じくらい、太さは親指ほどの棘がオロクロスの刃から10本でている。


<経験値を入手しました>


【思ったより短いな……】

狩り猪(ハンターボア)から無数の棘が突き出る様子を想像していたのだが。

【……今はこれが限界】

【棘の形状を変えられるか?】

棘の形を複雑にできれば、より大きいダメージを与えられる。

【それも無理】

【使い続けてスキルのLvを上げよう。Lvが上がったら教えてくれ】


 その後も、オロクロスとスクロアルマのスキルのLv上げとスクロアルマの浴血欲求のために暫く魔物を狩り続けた。勇者一行から離れすぎないようにして、オプロト大森林の時のように魔族による襲撃が無いか〔探査(ソナー)〕で確認していたが、結局魔族は来なかった。


 日が暮れる少し前から、勇者一行は野営の準備を始めた。テントを建て、夕食の準備をしている。〔亜空間倉庫(インベントリ)〕のおかげで、夕食は粗末なものにはならないようだ。周りで野営をしている冒険者は、干し肉を齧りながら彼女たちに羨望の眼差しを向けている。彼女たちの栄養失調の心配は不要か。料理はケイディンが担当しているらしい。


 アイツは料理もできるのか。人を守る(タンク)職、料理もできる、おまけに整った顔立ちと来た。いかにも女性人気が高そうである。


 俺は〔不休体質〕があるためこのまま歩き続けて勇者一行より先に王都に入ることも可能だ。しかし、俺が離れている間に魔族に襲撃されると困る。セーアを出てすぐの時の、あの事例があるから、油断ならない。


 勇者一行が野営しているところからあまり離れないようにしながら、短剣術の訓練と魔物狩りをする。魔族と戦う可能性は零ではない為、魔力は温存する。



 暫く魔物を狩り続けて、

【〔仕込み棘〕のLvが上がった! 棘はもうちょっと長く多く出せるようになって、形も少しだけ変えられるみたい!】

【〔血浴〕もLvが上がりました。私がより衝撃に強くなり、丈夫さも増すようです】

彼らのスキルのLvが上がったらしい。


【では、オロクロス。俺が想像した通りの形状の棘を生やしてくれ】

 俺はオロクロスに棘のイメージを送る。念話は無線連絡、というよりスマートフォンに近い。言語だけでなく、記憶や脳内で描いたイメージも送ることができるようだ。

【返しのついた棘、って感じ? それが規則的に並んでる……この形状って、もしかしてソードブレイカー?】

【そうだ。ソードブレイカーを、お前が〔仕込み棘〕で再現し易いよう少し派生させたものだ】


 手頃な魔物を探す。蜘蛛(スパイダー)が居た。蜘蛛をそのまま大きくしたような奴だ。

【俺がお前をアイツに突き刺すから、お前はソードブレイカーの形の棘を生やしてくれ】

【はーい】

返事を確認してから俺は蜘蛛(スパイダー)の背中にオロクロスを突き立てる。

【今だ、やれ!】

 ザシュ、という音がした。それを合図に引き抜くと、外骨格と肉を断つ音を出しながら、オロクロスは蜘蛛(スパイダー)の組織を引きずり出した。


<経験値を入手しました>


 オロクロスについた肉を取り払う。多少形状が不安定で、返しが無いものもあるが、おおよそイメージ通りのソードブレイカーになっている。


【大分できているな。一晩練習すればものにできるぞ。ん……? もしや、これは……】

 試したい事ができた。樹にオロクロスの棘を生やした部分を当て、手前に引く。


 樹に切れ目が入った。棘は何本か欠けてしまったが、これは、鋸としても使える。

【便利だな……。より頑強になれば破壊工作にも使えるか……? Lvが上がり次第、他の事も試してみよう】


 魔物から魔力を奪いながら、〔探査(ソナー)〕で魔族やその他強力な存在がいないか探し続ける。それと並行して、キノコや薬草等の回収もする。ギルドで売れば小遣い程度にはなるからだ。高品質、或いは希少なモノはより高く買い取って貰える事もある。


 もっとも、小規模な山の頂近くとは言え、街道沿いの森にそれほど価値あるものは存在しないと思うが。

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