第十五話 2人目の仲間(無機物)
コメディ部分は極稀に、唐突に。
次はこのフード付きの外套だ。6年前に親が俺に餞別として与えたもの。今では袖が腕の長さに対して短くなってしまったので、袖に腕は通さず、マントのように羽織って使っている。
ディッセルに着いてから洗浄したのだが、完全には血の汚れが落ちず、元々茶色だったのが少し赤黒くなっている。6年使い続けたせいでボロボロになっているのも相まって、呪いの装備だと言われたら納得してしまいそうな見た目になっている。
付与する魂を作る。目標はAランクの魂を作ること。
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小鬼射手の魂...小鬼射手の体に接続されていた魂。
自我:70%(〔精神攻撃〕で破壊可能)
憑代:無し
魂格:Cランク
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と
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彷徨樹の魂...彷徨樹の体に接続されていた魂。
自我:80%(〔精神攻撃〕で破壊可能)
憑代:無し
魂格:Cランク
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を合成する。
彷徨樹の魂は、おそらく〔雷雨霰〕を乱射している時に攻撃に巻き込まれて入手したのだろう。彷徨樹を斬り殺した覚えはない。
魔力:3295/3795 → 2995/3795
反発力はそれほど強くはなかった。できた魂は
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屍狩人の魂...屍狩人の体に接続されていた魂。
自我:55%(〔精神攻撃〕で破壊可能)
憑代:無し
魂格:Bランク
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となった。屍狩人は狩人の動腐肉体だ。動腐肉体なのに弓と短剣を扱える知能を持ち、軽業師のような動きで敵を翻弄する魔物。いつかそのアクロバットな移動技術は盗みたいと思っている。
これとさっき虚無の魂とあわせてBランクにした暴れ猪の魂とを合成する。
魔力:2995/3795 → 1895/3795
Bランクの魂同士の合成はかなり反発力が大きい。中々魔力を持っていかれた。
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無間狩人の魂...無間狩人の体に接続されていた魂。
自我:23%(〔精神攻撃〕で破壊可能)
憑代:無し
魂格:Aランク
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完成したのはこの魂。無間狩人は屍人の魔物の一種で、ひたすら生物を探しては殺しまわる好戦的な魔物だ。
これを付与する。……魔物の性質は、付喪にした後の自我に影響するのだろうか?
【オロクロス、お前、罠の類ハ好きか?】
【もちろん! 魔物が通りそうなところに仕掛けておけば、いつの間にか仕留められちゃうんだよ。それって、ラクだし、かっこいいじゃん?】
刺突罠の魂を与えたオロクロスが罠を好んでいるなら、無間狩人の魂を与えたこの外套はどうなるのだろうか? 常時戦闘意欲を剥き出しにするような戦闘狂にならなければ良いが……
外套と無間狩人の魂を魔力で結び付けて融合させる。
魔力:1895/3795 → 1395/3795
オロクロスをつくった時より多くの魔力が必要だったが、何とか工程を完了させた。
茶色かった外套は少し赤が混じった黒色になったが、ボロボロ生地の端はそのままだった。大きさはかなり変化した。フードは顔をすっぽり隠せるように、外套の裾は膝下までを覆うように。袖も長くなり、かつてのように着て使えるようになった。
「〔慧眼〕」
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戦鬼の外套(付喪)...戦場に現れては無差別に殺戮をし、いつの間にか消えるとされる、戦鬼と呼ばれる集団が身に付けている外套。かなり頑丈で、その防御力は金属鎧にも劣らない。
名前:
種族:付喪 Lv:1
魂:無間狩人の魂(Aランク)
丈夫さ:80
衝撃吸収:50
スキル:〔血浴〕Lv:1 〔念話〕Lv:1(MAX)
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【聞こえておりますか、ペルシオ】
オロクロスは子供らしい声であったが、こちらの声は、武士の家に生まれた大人しい青少年、というとしっくりくるような声だ。声に気品、礼儀正しさが混ざっている。
【あぁ、聞こえているぞ】
【私にも、名前を付けていただけますか?】
【そうだな……】
【暗躍、という意味でスクロアルマはどうだ】
【おぉ! ありがたく頂戴いたします!】
反応は良好。名前を気に入ってもらえたようだ。
【君はスクロアルマっていう名前をもらったんだね! 改めてよろしく、スクロアルマ】
【こちらこそよろしくお願いします、オロクロス】
6年間共に戦い続けた相棒と遂に意思疎通ができるようになるとは……
名前が決まったところで、彼らに訊きたいことがある。
【お前たちのスキルはどういうものなんだ?】
【〔慧眼〕使えばいいのに】
【スキルを使うのはお前たちだから、お前たちがスキルをどう認識しているのか知りたい。それに、敵でもないのに〔慧眼〕で相手のことを探るのは倫理的に推奨されないのだろう?】
【あぁ、そういうこと】
【僕のスキル、〔仕込み棘〕は、自分の体ならどこからでも棘を生やせる能力】
【私の〔血浴〕は付着した血を吸収して私自身を強化するスキルです。この強化は半永久的に続くようです。また強化効果の中には、装着者、つまりペルシオの身体を強化する作用のものもあるようです】
【〔仕込み棘〕と〔血浴〕か……】
【お前たちにもLvがあるということは、現時点でかなり強いのに、ここからまだ強くなるのだろう?】
【たぶんね】
【それは楽しみだ。2人のLv上げも計画しなければな】
現在、大体午後9時ぐらいだろうか? どの魂を組み合わせるかについて流石に悩みすぎたか。午後12時頃になったら冒険者ギルドに向かうとしよう。それまでは彼らとしばらく会話する。俺と共に居た6年間、彼らは俺に干渉できなかった。初めてその手段を手に入れたから、嬉しくて堪らないのだろう。俺とて、その感情は同じだ。
夜も更けてきた。そろそろ頃合いだろう。
【そろそろか。王猪を売りに行くぞ】
【はーい】
【わかりました】
【このことがルイード教の奴らにバレないといいねー】
【縁起でもないことを言わないでくれ……】
夜の町に出る。日中この町の間を飛び交っていた人の声はなくなり、不気味といえるほどだった。しかし、冒険者ギルドからは明かりが漏れ、パサリ、パサリと紙がこすれる音が微かに聞こえる。
ギルドの中には職員以外全く人がおらず、俺を見たギルド受付は怪訝な顔をしていた。夜更けに1人でやって来る冒険者。黒に血が混ざったような色の外套を身に付けている。これで不審に思わない方がおかしい。しかし、受付はすぐに営業スマイルになり
「何かご用ですか?」
という。
「魔物の死体の買い取りを頼む」
受付が怪訝な顔をする。
「わかりました。こちらへ」
「あぁ、それと、ギルドマスターを立ち会わせてもらえるか」
「!?」
「ギルドマスターに伝えなくてはならない事がある」
「……わかりました。ギルドマスターを証拠提示所に呼んで」
受付は困惑しながらも、俺を証拠提示所に案内する。
口語らしくため口で話すのがオロクロス、
敬語で話すのがスクロアルマ、
です。




