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第十四話 初めての仲間(無機物)

今回はコメディ回のようなもの。コメディ部分はこんな感じになります。

―――(ペルシオ視点)―――


 冒険者ギルドに入る。中には勇者一行が居るので、勿論気配は消す。

「勇者御一行、この町を救ってくれて、ありがとう。おかげで多くの住民と冒険者たちの命が守られた」

 ギルドマスターらしき人物が勇者一行に礼を述べている。


 その後、勇者一行はしばらく冒険者たちに絡まれてから、

「度重なる戦闘で疲れているから、一度休ませて欲しい」

といって、ギルドから出ていった。


 本当に疲れている部分もあるだろうが、ミリアの顔色が悪いことから、何かあったのだろう。魔族関連だろうか……



 多くの冒険者が氾濫(オーバーフロー)鎮圧のことで騒ぎ立てている中、魔物の死体の換金をしている人もいた。


 俺は現在王猪(キングボア)という超大物の死体を持っているので、俺がそれを狩ったことが公になろうものなら、ルイード教から不審がられ、聖騎士団……もとい暴力団を送り込まれかねない。


 面倒事は避けておきたい。といっても、王猪(キングボア)の死体は〔死霊使役(ネクロマンシー)〕の研究素材として消費するには貴重過ぎる上、〔異次元保管庫(アイテムボックス)〕の肥やしにするのは勿体無いから、売るほか無い。人が全くいない時間、深夜に売って、職員には口止めをすればいい。今は金が要る。リターンのため、多少のリスクは容認すべきだ。


 冒険者ギルドから出て、宿に戻る。深夜になるまで時間を潰す。


 その間、調べたいものがある。魂と〔付喪術(ソウルマジック)〕についてだ。


 〔異次元保管庫(アイテムボックス)〕から「暴れ猪(アングリーボア)の魂」を取り出す。形状は間違いなく、いわゆる人魂。手では掴めず、手のひらの上でふよふよと浮かんでいる。


「〔慧眼〕」

――――――――――――――――――――――――

暴れ猪(アングリーボア)の魂...暴れ猪(アングリーボア)の体に接続されていた魂。


自我:80%(〔精神攻撃(マインドショック)〕で破壊可能)

憑代:無し

魂格:Cランク

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

自我...魂が所有している記憶、思考の癖等、自我を形成する物。これが0%になると虚無の魂へと変質する。これが存在する魂同士で魂合成を行うと魂が変質する。変質先は不明。


憑代...魂に接続された物体。魂は憑代の記憶を吸収する。


魂格...魂の格。E~Sランクの順に格が高くなる。これが高いほど憑代も強力になる。憑代の格と魂の格があまりにもかけ離れていると、その憑代と魂との接続が切れる事がある。

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

魂合成...魂同士を融合させる操作の事。憑代を持つ魂は憑代を持たない魂とのみ合成できる。


魂...魔物の体に必ず、魔力で接続されているもの。長い年月の経過、または偶然により物体が魂を持つこともある。生物の精神の正体はこれであるとも言われている。

――――――――――――――――――――――――

 間違い無い。これが、魂だ。生けるもの全てが必ず持っている、意思、記憶、感情のありか。


 実験的に虚無の魂を作成してみよう。今手に持っている暴れ猪(アングリーボア)の魂から虚無の魂を作る。


 〔精神攻撃(マインドショック)〕を自我が0%になるまで使い続ける。


 魔力:3720/3720 → 3420/3720


 5回か……微妙な回数だ。一定量の情報を叩き込むと勝手に繋がりが途切れてしまうのが問題だから、これを克服すれば魔力の消費を抑えられるのだが……


「〔慧眼〕」

――――――――――――――――――――――――

虚無の魂...自我も憑代もない魂。


自我:0%

憑代:無し

魂格:Cランク

――――――――――――――――――――――――

 これを別の暴れ猪(アングリーボア)の魂と合成する。


 魂同士を魔力で結び付け、無理矢理引き寄せる。


 これは簡易的かつ強引な手段だ。本来は特殊な道具を用いて行うのだが、生憎それは持っていない。これで上手くいかなければ別の方法を考案するつもりだ。


 魂同士が近づくにつれ、反発力が強くなり、つなぐ魔力が引き裂かれていく。そのたびに魔力を補強する。格闘すること5分。やっと魂は完全に融合した。


 魔力:3420/3720 → 3020/3720


 「〔慧眼〕」

――――――――――――――――――――――――

暴れ猪(アングリーボア)の魂...暴れ猪(アングリーボア)の体に接続されていた魂。


自我:90%(〔精神攻撃(マインドショック)〕で破壊可能)

憑代:無し

魂格:Bランク

――――――――――――――――――――――――


 今度は暴れ猪(アングリーボア)の魂同士で合成する。


 魂の反発力はこちらの方が強かった。自我があることと関係がるのかもしれない。


魔力:3020/3720 → 2420/3720


できた魂は、

――――――――――――――――――――――――

破城猪(デストラクティブボア)の魂...破城猪(デストラクティブボア)の体に接続されていた魂。


自我:30%(〔精神攻撃(マインドショック)〕で破壊可能)

憑代:無し

魂格:Bランク

――――――――――――――――――――――――

 (ボア)系上級種の魂。突進の破壊力が高いことから、このように名付けられた魔物だ。


 違う系統の魔物の魂を合成したらどうなる? Dランクの森狼(フォレストウルフ)の魂とCランクの小鬼戦士(ゴブリンウォーリアー)の魂で実験を行う。


 魔力:2420/3720 → 1620/3720


 できたのは

――――――――――――――――――――――――

盗賊(人間(ヒューマン))の魂...人間(ヒューマン)の盗賊の体に接続されていた魂。


自我:25%(〔精神攻撃(マインドショック)〕で破壊可能)

憑代:無し

魂格:Cランク

――――――――――――――――――――――――

 何と人間の魂。肩に倫理的問題がのしかかるも、俺はそれを無視した。


 〔死霊術(ネクロマンシー)〕や〔精神攻撃(マインドショック)〕がある時点で、倫理の一線を越えてしまっているのは明らかだ。倫理について論じるだけ無駄というもの。



 そろそろ、俺の装備に付与するための魂を作ろう。折角だから、良い魂を付与してやりたい。


 破城猪(デストラクティブボア)の魂と暗殺蛇(アサシンサーペント)の魂を合成する。暗殺蛇(アサシンサーペント)の魂の格はBランクだ。反発力はかなり強い。合成に20分はかかった。


 魔力:1620/3720 → 420/3720


 汗を拭う。集中が切れると魂の合成に失敗しそうで、気が抜けない。本当に、この方法で合っているのだろうか……


「〔慧眼〕」

――――――――――――――――――――――――

刺突罠(アンブッシュソーン)の魂...刺突罠(アンブッシュソーン)の体に接続されていた魂。


自我:45%(〔精神攻撃(マインドショック)〕で破壊可能)

憑代:無し

魂格:Aランク

――――――――――――――――――――――――

 Aランクの魂ができた。これを付与しよう。刺突罠(アンブッシュソーン)にも魂があることに驚きだ。どの本にも罠の一種としか書かれていなかったが……


 魔力が底をつきかけている。これからまだ魂の付与をするつもりなので、これでは全く足りないだろう。町の外の魔物から魔力を奪ってくるとしよう。


 〔隠蔽〕と〔隠密〕をかけて町からでる。氾濫(オーバーフロー)直後に狩りにでる冒険者は普通いない。氾濫(オーバーフロー)鎮圧で疲れているはずだからだ。

 俺はディーズ丘陵ではなく、オプロト大森林に向かう。ディーズ丘陵の魔物は、氾濫(オーバーフロー)鎮圧の際に大量に狩られたため、数が減っているからだ。


 現在午後5時。日が沈みかけて森の中はかなり暗くなる。俺は森の奥へ進み、魔物から魔力を奪い続ける。


 3時間後、魔力が全回復したのを確認してから宿にこっそり戻る。さあ、魂の付与を始めよう。


 まず、この短剣に刺突罠(アンブッシュソーン)の魂を付与する。やり方は魂の合成と同じ。憑代となる物体と魂を魔力で繋いで、無理矢理引き寄せる。魂の合成よりは抵抗が少ないか……?


 魔力:3795/3795 → 3295/3795


 5分で魂の付与は完了した。


 短剣の見た目は大きく変化した。全体的に色は黒くなり、刃に光沢がなくなった。柄の部分にはくぼみができて、握りやすくなった。順手持ちと逆手持ちもできる。

「〔慧眼〕」

――――――――――――――――――――――――

アサシンダガー(付喪)...暗殺に特化した両刃の短剣。刃に光沢が無く、闇に紛れやすい。


名前:

種族:付喪 Lv:1

魂:刺突罠(アンブッシュソーン)の魂(Aランク)

鋭利さ:40

硬度:100

スキル:〔仕込み棘〕Lv:1 〔念話〕Lv:1(MAX)

――――――――――――――――――――――――

 Lv……? スキル……? 付喪になると、このようなものまで付与されるのか……。



 最早ただの武器ではなく、生物だ。


【もしもし、聞こえてる?】

 どこからともなく子供の声がした。10代前半の子供の声だ。中性的な声である為、性別は不明。


【短剣だよ、手に持ってる短剣】

 この短剣が話しているのか。しかし、一体どうやって……?


【『どうやって喋ってるんだ?』って顔してるね。教えてあげよう。これは〔念話〕だよ】


「そうか、〔念話〕はこのような感じなのか。脳に直接語り掛けるような……」


【僕と話すのに別に声に出さなくてもいいよ。〔念話〕を使って】

「〔念話〕はまだ習得していない」

【一度〔念話〕を受けた人は簡単に使えるようになるはずだよ。頭でわかってなくても、体が覚えちゃうからね。相手に伝えたいことを頭の中で念じて、魔力に乗せて送るだけ。ほら、やってみて!】


「簡単そうに言ってくれるな……」

 言われた通りに試す。

【……コ……う、カ?】

【うーん、ぎこちないし、とぎれとぎれだけど……、まあ、できてるんじゃない?】


<新スキルを習得しました>


【そうだ! 僕に名前を付けてよ!】

【名、前か……】

 少し思案する。


 この短剣は俺が物事を成し遂げるのに必要な物だ。それから考えて、「完遂」を意味するエルリ語の言葉、「オロクロス」はどうだろう。エルリ語とは、主にフィルディータ王国やデピス王国などの、大陸南部で使われる言語だ。


【オロクロス。お前ノ、名はオロクロス。こレで、どうだ?】

【オロクロス……うん! すごくいい名前! 因みに意味は?】


 喜んでくれて何よりだ。


【完遂という意味を、込めた。お前は俺が、物事を成し遂げるときに必要なものダからだ】

【かっこいい……すごくいい名前! 僕の名前はオロクロス! 僕はオロクロスだ! これからもよろしくね、ペルシオ!】

【あぁ、よろしく】


 俺の相棒であった短剣は、意思疎通ができる旅の仲間へとランクアップした。……無機物のままだが。

<言語について>

 この小説の舞台となる世界では、共通言語(英語に近い)があり、それとは別に地域ごとに異なる言語があります。ペルシオたちが居る大陸は、南と北で言語が分かれていて、南側(フィルディータ王国などがあるところ)はギリシャ語に近い言語、北側はドイツ語に近い言語になっています。このため人名はそれらの言語に基づいたものになります。魔物、物の名前は共通言語で名付けられます。このルールは世界共通。

 現実でいうところの、生物に学名を付けるのには必ずラテン語を使うのと同じ感じです。

因みに魔王たちが居る大陸の言語はアイスランド語に近いです。


 今回、ペルシオは短剣にギリシャ語に近い言語で名前をつけましたが、彼が大陸の北側出身だったら、ドイツ語に近い言語で名付けていました。

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