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第十三話 拭えぬ抵抗感

勇者一行の初魔族戦です

―――(メリア視点)―――


 魔族は、私たちとの距離が10メートルぐらいになると立ち止まった。

「おや、何か騒がしいと思えば、勇者ではありませんか! 初めまして、私、ハータマーズと申します」


 そういって魔族はお辞儀をした。執事がするような、すごく丁寧な礼だった。

「しかし、困りましたね。荒らすだけ荒らしてからすぐに逃げるつもりだったのですが……まさかこんなに早く勇者が来るとは。見つかってしまいました」

 彼はそういって苦笑した。戸惑う私たちを放って彼は話を進める。


「見つかってしまったのなら仕方がありません。私と戦うのでしょう?」

「そりゃそうだ、この氾濫(オーバーフロー)の元凶なんだからな!」ケイディンが答える。

「では、やりましょうか。エイ、フェイス、スリス、フュリス、彼女たちの息の根を止めなさい」


 名前を呼ばれたらしい4体の魔物がこっちに飛びかかってくる。名前への反応からして、右手前から左手前、右奥、左奥の順に名前がエイ、フェイス、スリス、フュリスだと思う。


 4体の魔物の種族はたぶん魔森狼エビルフォレストウルフ、弱めの上級種の魔物。


 全体的に黒くなった森狼(フォレストウルフ)で、能力も高くなっている。


 エイとフェイスは正面から来る。スリスとフュリスは私たちの後ろに回ろうとしてくる。


 右の2体を私が、左の2体をケイディンが受け持つ。


 2体に向かって〔炎弾(ファイアバレット)〕を放ち、避けたところを攻撃するつもり。狙うのは脚。

 「〔炎弾(ファイアバレット)〕!」


 魔力:349/349 → 339/349


 放たれた2つの〔炎弾(ファイアバレット)〕は魔物たちに避けられる。エイとスリスを近づけてまとめるため、魔物の外側をねらって放ったけど、ちゃんと狙い通りになったみたい。


 まとめた魔物に向かって〔聖剣〕で魔力を込めた剣を振るう。


 剣は魔物たちの前脚を切り落とす。まだ片前脚が残っているけど、かなり動き辛くなったはず。


 魔力:339/349 → 309/349


「〔雷牙(エレキタスク)〕!」

 そこにソイフォルの魔法。が、片前脚を失ったはずの魔物たちは難なく回避してしまった。

「〔雷弾(エレキバレット)〕!」


 魔力:309/349 → 299/349


 予想外のことに慌てながらも追撃する。痺れてくれれば簡単に倒せるはず。


 流石に片脚を失ったまま避け続けるのはきついみたいで、魔物たちは〔雷弾(エレキバレット)〕に当たった。


 痺れた魔物たちに〔聖剣〕で切りかかろうとしたところで、嫌な感じ、殺気、を感じた。


 とっさに後ろに跳びのくと、目の前を爪が通り過ぎる。


 ちょうど首を切り落とす軌道だった。


「殺気を出しすぎましたかね……」

 そういって不気味に笑うのは、ハータマーズだった。

「完全に私のこと、忘れていましたね」


 そうだ。4vs4じゃない。4vs5なんだ。


 魔物は痺れから復活して、いつでも飛び出せるよう構えていた。


「行きますよっ!」

 その声と共にハータマーズとエイ、スリスが一斉に攻撃してくる。


 3体を1人で受け持つのはきつい。〔聖剣〕で剣に魔力を強めに込めて光の刃を放ってから後ろに引く。


 魔力:299/349 → 249/349


 光の刃は簡単に避けられるけど、距離はとれた。ケイディンもそれに合わせて後退する。


 「〔風弾(ウィンドバレット)〕!」

ソイフォルが仕掛ける起点を作る。〔魔法改造〕で完全に透明になった〔風弾(ウィンドバレット)〕が飛んで行く。


 私にも見えないけど、ソイフォルが私たちにも当たるような魔法を放って何も言わないことは有り得ないから、そのまま動かず構える。


 「不発ですか?」

 ハータマーズが嘲るような笑顔になる。直後、ハータマーズたちが切り傷を負う。

 「なっ……」

 予想外のことに驚いている彼らに向かって、アギサが〔浄化(ピュリフ)〕を放つ。


 更にダメージを受けた彼らに、私とケイディンが切りかかる。


 避けようとするけど、〔浄化(ピュリフ)〕をくらった直後の魔族や、邪悪なものは動きが鈍る。


 私は〔聖剣〕で剣に魔力をこめ、横にないだ。


 魔力:249/349 → 219/349


<経験値を入手しました>


 エイとスリスを切った後、そのまま勢いで一回転して、ハータマーズに向かって縦に剣を振り下ろす。


 ケイディンは、一番左にいるフュリスの頭に斧を叩きつけ、その斧を上から盾で殴って頭を完全に切り落とす。


 フュリスを倒した後、すぐに隣にいたフェイスを盾で敵をすくい上げるように殴って宙に浮かせたところに、下から斧で切り上げる。


 ハータマーズは腹に十字の傷が刻まれ、血を噴き出した。



 魔族の血も、赤かった。


 手が震える。返り血を浴びて、体が赤く染まる。


 ハータマーズの爪がくる。彼の腹は真っ赤に染まり、口からも血が溢れている。しかしそれでも、彼の目は鋭く輝いていた。爪の攻撃はひどく単純でまっすぐにくる。


 その腕を切り落とすのは簡単。



 でも……私は切れない。



 彼は人だ。同じ人だ。だって、赤い血が流れていたから。


 私は人に刃を向けていた。人を殺すなんて、やっぱり、私にはできない。


「……ぅぁっ……」

 私は後ろに下がる。でも、彼は死ぬつもりで攻撃したんだろう。彼の体は前に倒れ、それに合わせて爪も前へ前へと進んでいく。



 ああ、きっとこの爪は私を貫くんだ。



 爪を呆然と見つめていると、ハータマーズは横に跳んだ。跳んだというよりは、はねとばされた。


<経験値を入手しました>

<Lvが上がりました>

<スキルのLvが上がりました>

<適正職のLvが上がりました>

<条件を達成しました。新魔法が習得可能になりました>


 盾ではねとばされた魔族を追いかけ、斧と盾を叩きつけた体勢のまま、ケイディンがこちらを心配そうな目で見ている。

「おい、大丈夫か?」

「大丈夫、大丈夫……」

私はそう答えながら、顔についた血をぬぐう。手がまだ震えていて、うまくぬぐえない。周りから見れば、顔に血がまだら模様についているように見えるだろう。


 視界に、ハータマーズの死体が映った。

「ひっ……!」

「……全然大丈夫じゃねえじゃねえか。ソイフォル、メリアは今は戦えなさそうだ。メリア、お前は戦わなくていいから俺たちについて来い」


「うん……」

 私は震えたまま歩き出す。みんなは私に合わせ、ゆっくり町へ戻っていく。


 途中で何体か魔物にあったけど、問題なく倒していた。


 町に戻る頃には震えは収まっていた。私が魔物を一気になぎ払うときに使った〔聖剣〕の光の刃は他の冒険者たちからよく見えていたみたいで、英雄扱いされた。更にはギルドマスターから直接お礼をもらい、他の冒険者たちからも感謝された。


「度重なる戦闘で疲れているから、一度休ませて欲しい」

 ソイフォルはそういって私たちを連れて宿に戻る。


 冒険者ギルドからでる時、ギルドマスターから、

「後で魔物の死体を持って来てくれ!買い取らせてもらうぞ!」

 と言われた。魔王討伐の旅をする以上、確かにお金は必要になる。〔亜空間倉庫(インベントリ)〕には魔物の死体がたくさん入っているし、後で換金してもらおう。


 宿に戻る。

「少し休んだら、僕の部屋に集まって」

そういってソイフォルは部屋に戻る。


 部屋に着いた後、アギサが

「冒険者ギルドに行って来ますね」

といった。

「どうして?」

「冒険者たちの治療をしようと思いまして」

「そういうことね。行ってらっしゃい」


 アギサはしばらくして帰ってきた。それから少しして、ソイフォルたちの部屋に集まる。


 ソイフォルが口を開く。

「メリア、落ち着いたか?」

「うん」

「やっぱり、まだ魔族は切れないか」

「魔族も人だから……」

「あいつらと人間(ヒューマン)を一緒にするな。あいつらは魔物だ」

「……」

「メリア、今回はケイディンがカバーに入ったからよかったけど、それが無ければ死んでいた。人っぽいからどうのこうのと言ってられないんだ。殺さなきゃ殺される。そういう物なんだ」

「……そう。ごめんね、みんな。迷惑かけちゃって」


 空気が重くなる。ソイフォルの言い分は正しい。でも、人を斬ることへの抵抗感はぬぐえない。


 「そうだ、ステータスはどうなったんだ?」

 沈黙を破ったのは、ケイディン。話を切り替えて周りの重い空気を取り払ってくれたことに感謝しながら、互いのステータスを確認する。

「〔ステータス〕」

――――――――――――――――――――――――

名前:メリア

種族:人間(ヒューマン)♀ Lv:29 → 32

職業:冒険者 ランク:S

適正職:勇者Lv:4 → 5

体力:437/437 → 356/467 魔力:331/331 → 225/358

攻撃力:132 → 165

魔法攻撃力:125 → 158

防御力:118 → 148

魔法防御力:109 → 139

素早さ:147 → 178

器用さ:135 → 166

スキル:〔鑑定〕Lv:3 〔剣術〕Lv:8 → 9 〔魔力操作〕Lv:3 〔聖剣〕Lv:2 → 3 〔手加減〕Lv:5

魔法:〔亜空間倉庫(インベントリ)〕 〔炎弾(ファイアバレット)〕 〔水弾(アクアバレット)〕 〔雷弾(エレキバレット)〕 〔岩弾(ロックバレット)〕 〔風弾(ウィンドバレット)〕 〔氷弾(アイスバレット)〕 〔光弾(ライトバレット)〕 〔聖なる一筋の光(ホ-リーレイ)

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

名前:ケイディン

種族:人間(ヒューマン)♂ Lv:30 → 33

職業:冒険者 ランク:S

適正職:守護者Lv:3 → 4

体力:657/657 → 671/717 魔力:154/154 → 160

攻撃力:193 → 238

魔法攻撃力:50 → 53

防御力:247 → 292

魔法防御力:197 → 227

素早さ:91 → 97

器用さ:110 → 125

スキル:〔鑑定〕Lv:2 〔盾術〕Lv:8 〔斧術〕Lv:7 → 8 〔魔力操作〕Lv:1 〔攻撃集中〕Lv:5 〔要塞〕Lv:3 → 4

魔法:〔亜空間倉庫(インベントリ)

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

名前:アギサ

種族:人間(ヒューマン)♀ Lv:25 → 30

職業:冒険者 ランク:S

適正職:聖者Lv:3 → 4

体力:232/232 → 265/272 魔力:357/357 → 57/408

攻撃力:72 → 92

魔法攻撃力:100 → 155

防御力:74 → 94

魔法防御力:103 → 160

素早さ:167 → 242

器用さ:117 → 167

スキル:〔鑑定〕Lv:3 〔棒術〕Lv:6 → 7 〔魔力操作〕Lv:3 → 4 〔祈り〕Lv:3

魔法:〔亜空間倉庫(インベントリ)〕 〔水弾(アクアバレット)〕 〔風弾(ウィンドバレット)〕 〔光弾(ライトバレット)〕 〔治癒(ヒール)〕 〔自然治癒(リジェネ)〕 〔浄化(ピュリフ)

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

名前:ソイフォル

種族:人間(ヒューマン)♂ Lv:29 → 32

職業:冒険者 ランク:S

適正職:賢者Lv:3 → 4

体力:269/269 → 293/293 魔力:570/570 → 28/608

攻撃力:80 → 92

魔法攻撃力:442 → 487

防御力:78 → 90

魔法防御力:123 → 156

素早さ:144 → 189

器用さ:137 → 167

スキル:〔鑑定〕Lv:3 〔棒術〕Lv:7 〔魔力操作〕Lv:5 〔魔法改造〕Lv:3 → 4

魔法:〔亜空間倉庫(インベントリ)〕 〔索敵(サーチ)〕 〔炎弾(ファイアバレット)〕 〔水弾(アクアバレット)〕 〔雷弾(エレキバレット)〕 〔岩弾(ロックバレット)〕 〔風弾(ウィンドバレット)〕 〔氷弾(アイスバレット)〕 〔光弾(ライトバレット)〕 〔闇弾(ダークバレット)〕 〔炎牙(ファイアタスク)〕 〔水牙(アクアタスク)〕 〔雷牙(エレキタスク)〕 〔岩牙(ロックタスク)〕 〔風牙(ウィンドタスク)〕 〔氷牙(アイスタスク)〕 〔光牙(ライトタスク)〕 〔闇牙(ダークタスク)〕 〔魔力砲(マナブラスター)

――――――――――――――――――――――――

「アギサ、どうしてこんなにLvが上がっているんだ?」

氾濫(オーバーフロー)中とその後、冒険者たちの治療をしていましたので」

「あぁ、そういうことか」


「やっぱり、魔族が絡んでいたね……でも、どうして魔族はここで氾濫(オーバーフロー)を起こそうとしたんだろう?」

「四天王がいるところからここは少し遠いからな……」

「考えても仕方ないな。まあ、後でギルドマスターに連絡するよ。一応、魔族については気を付けておこう」


「今日はもう休むか。明日はデピス王国の王都に向かおう。僕はギルドに魔族のことを報告しに行ってくる」

「おやすみ」

そういって私たちは部屋に戻る。


 床についた後も、脳裏には赤い血を噴き出しながらも私を殺そうとしたハータマーズの様子が焼き付いていた。

<魔法の種類について>

魔術...魔法陣を描いて魔力を通し、詠唱をすることで現象の召喚を行う魔法。魔法使い系の適正職を持つ者が主に使う。これは魔術を使用する際に使う魔法陣を魔力を使って空中に描くのが魔法使い系の適正職を持つ者にしかできないからである。何かの物に魔法陣を描いた物は「魔道具」と呼ばれ、これは魔法使い系の適正職を持っていなくても使える。


邪法...魔力で物を覆ったり魔力を結晶化させたりして様々なことに応用する魔法。魔力を物に纏わせ、圧縮することで結晶化する。現在、その技術は失われており、邪法についての研究はほとんど進んでいない


聖魔法...魔術の光魔法の上位版のような性能を持つ。ただし、魔術のように魔法陣を使った魔法ではなく、意識を対象に集中させて詠唱することで使用できる。魔法陣を使用しない、何の痕跡も見られず、詠唱を引き金に現象が発生する点で魔物が使用する魔法と似通っており、原始的な魔法の派生ではないかと言われている。


なお、魔物、亜人が使用する魔法(原始的な魔法)は、音声による詠唱と、特定の行動による詠唱のいずれかによって引き起こされる。

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