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第十二話 黒幕

サブタイトルは変更するかもしれません

―――(メリア視点)―――


 私たちが氾濫(オーバーフロー)に気づいたのは、狩りを始めてからしばらくたった時のこと。


「……?」

ケイディンが立ち止まった。


「どうしたの?」

「あっちに魔物……明らかにおかしい数がいる」

 それを聞いて、ソイフォルが〔魔法改造〕で一方向への索敵に特化させた〔索敵魔法(サーチ)〕を発動する。

「本当だ……この数、氾濫(オーバーフロー)だ。しかも、かなり大きい……」

「えっ!?」

「本当ですか?ならば早く冒険者ギルドに戻って伝えなければ……!」


 私たちは走って町に戻り、冒険者ギルドに駆け込むと同時、

氾濫(オーバーフロー)が起きる!」と叫ぶ。ギルド内がざわついた。

「本当ですか!? 今すぐ、ギルドマスターを呼んで!」

「はい!」


 少しして、

氾濫(オーバーフロー)だと!?」

大声と共にがっしりした体型の男が飛び出してくる。服装はギルド職員のものだけど、顔に刻まれた傷とその目から、かなりの数の戦場を経験しているのはすぐに分かった。


「勇者御一行、氾濫(オーバーフロー)はどこの方から来る?」

「ディーズ丘陵の北側から。しかも、かなり規模が大きいです」

「情報に間違いは?」

「〔索敵魔法(サーチ)〕で調べた情報です。間違いはないはずです」

「そうか……町の警鐘を鳴らせ! 非常事態だ! 住民を建物内に避難させろ! 宿にいる冒険者はここに連れてこい!」

 みんなが一斉に動き出した。20分後、ギルドにはたくさんの冒険者が集まっていた。その数、およそ50人。


「お前ら、よく聞け!」

「現在、ディーズ丘陵の北側で氾濫(オーバーフロー)の発生を確認した! お前らには鎮圧に協力してもらう!殺した魔物は後で持って来い。色をつけて買い取らせてもらうぞ!」

「オオォ!」

「これより氾濫(オーバーフロー)の鎮圧を開始する! 北から来る魔物共を殲滅しろ!」

「オオォォ!」


 空気が割れそうなほどの気迫のまm、冒険者たちがギルドから飛び出していく。

「よし、僕らも行こうか」

私たちはディーズ丘陵の平原に向かった。


 平原に着くと、魔物はここから十分見える位置まで進んでいた。既に戦い始めている冒険者もいる。


 私たちも魔物の群れに向かって進む。最初に見つけたのは小鬼戦士(ゴブリンウォーリアー)4体と小鬼射手(ゴブリンスナイパー)2体、小鬼魔術師(ゴブリンメイジ)3体の群れ。


 アギサが〔祈り〕を使ってから私とケイディンが突っ込む。小鬼戦士(ゴブリンウォーリアー)を2体まとめて横なぎに切り捨てる。


<経験値を入手しました>


 その間にソイフォルの〔雷弾(エレキバレット)〕が残りの魔物をしびれさせる。ケイディンは盾を鈍器のように使い、斧との二刀流で戦っていた。


 しびれた魔物を仕留めて、群れを全滅させる。


<経験値を入手しました>


 倒した魔物は、邪魔にならないよう、〔亜空間倉庫(インベントリ)〕に入れていく。


 次にあったのは狩猟猪(ハンターボア)5体の群れ。


 魔物たちが私たちの周りを取り囲もうとするのに合わせて、私とケイディンが足止めする。


 私は剣を牙にそえて受け流し、ケイディンも同じように盾を牙に当てて受け流していた。そ


 こに、ソイフォルが〔氷弾(アイスバレット)〕を放つ。


 地面に当たった〔氷弾(アイスバレット)〕は、氷の矢じりを生み出して、辺り一帯にまき散らす。


 それらは魔物たちに刺さって、息の根をとめた。


<経験値を入手しました>


 その後も魔物を倒し続けた。私とケイディンが前に出て、攻める。ソイフォルが足止めと補助、援護。アギサが回復と時々戦闘。


 これの繰り返し。奥に進むほど魔物は増えてきた。


 前方に特化させた〔索敵魔法(サーチ)〕を使っていたソイフォルが、

「なっ……!」

 驚いたようすで立ち止まった。


「どうしたの……?」

「この奥にすごく強い魔物がいる……でも、その周りに魔物がたくさん……逃げていない……?」

「え……」

「強い魔物も、全く他の魔物を襲っていないのか?……まさか、魔族? いや、それしか考えられない。奥に、魔族がいる」

 みんなに衝撃がはしる。


「まるで誰かが意図的にやったみたいとは思ってたけど、やっぱり、魔族が関わっていたんだね……」

「予想は間違ってなかったな」


「ソイフォル、その魔族は私達だけで倒せますか……?」

「わからない。ただ、こっちが何もできずに殺されるほど強くはない」

「他の冒険者を巻き込むのはしたくない。私たちが倒すよ!」


 奥へ進んでいく。


 また魔物の群れがこっちに来る。放浪狼(ワンダーウルフ)3体の群れだ。


 私とケイディンが切りかかろうとしたところで、

「その魔物たち、何か変だ! 気を付けて! 〔雷弾(エレキバレット)〕!」

 ソイフォルから忠告と共に〔雷弾(エレキバレット)〕が飛んでくる。


 地面に電流がまき散らされるけど、魔物たちはそれを跳んで避けてしまった。普通、放浪狼(ワンダーウルフ)にここまでの反射神経はないはず。


 明らかにおかしい。


 魔物の着地に合わせて剣を振るう。


 剣は魔物の体に食い込んだけど、切り離すことはできなかった。ケイディンの方も同じだったらしい。


 魔物を蹴り飛ばしてどうにか剣を取り戻した。まるで岩を蹴ったかのように足が痛い。

「魔族の力で強化されているみたいだ!」

ソイフォルが魔物の異常な強さの原因を突き止めた。

「じゃあ、これは効くよねっ! 〔聖剣〕!」

 私の魔力が、持っている銀の剣に流れ込んでいく。勇者の魔力は聖なる力だから、剣に魔力をこめる〔魔力剣〕が〔聖剣〕に変わる。


 剣は日中にはまぶし過ぎるほど白い光をまとう。


 そのまま剣を振り下ろし、振り上げて剣筋から光の刃を飛ばす。


 光の刃は2体の魔物を縦に真っ二つに切り裂いた。


魔力:331/331 → 301/331

<経験値を入手しました>


 ケイディンは盾と斧で交互に魔物を殴って仕留めていた。盾をあんな風に使うのは、一体誰から教わったんだろう。私が知る中で、そんな盾の使い方をする人はいない。


「ここから先の魔物はみんな魔族に強化されてる?」

「……そうみたいだ。みんな、気を付けて」


 次は暴れ猪(アングリーボア)5体の群れ。視界が開けているからすぐに見つかる。


 魔物たちはこっちを見つけると同時、突進してくる。


 魔族の強化で突進の衝撃がかなり強くなっているけど、私とケイディンが牙に武器を当ててそらす。


 2人とも1体ずつはしのいだけど、続く2体目で私は体勢を崩される。


 そこに、3体目。体勢を崩されて動けない私の方に暴れ猪(アングリーボア)が来た。


 衝撃、そして回る視界。空が足元に、地面が頭上に。私は、宙にはね上げられていた。


 体力:430/437 → 314/437


 身体を強引に捻って暴れ猪(アングリーボア)の背中に着地。そのまま剣を突き立て、転がり落ちるように降りる。



「ワオ、いい着地」

「魔物にはねられた私の身体を心配してほしかったな!」


「〔自然治癒(リジェネ)〕! 〔治癒(ヒール)〕!」

 アギサの聖魔法でお腹の痛みが引いていく。

 体力:314/437 → 428/437


 私は立ち上がるまでの間、ソイフォルが魔物たちを足止めしていた。


 〔氷牙(アイスタスク)〕の氷柱で魔物たちを穿ち、動きを止める彼。

「そろそろ限界だ! 〔氷牙(アイスタスク)〕が壊れる!」

 その声に合わせて、私とケイディンが魔物に突っ込んでいく。


 突進してこない猪は、牙が当たるほど近づかなければ何も怖くない。


 私は〔聖剣〕で、ケイディンは盾と斧の二刀流で攻撃する。


<経験値を入手しました>


 周りにはまだいっぱい魔物がいる。どうにか広い範囲を攻撃したい。……〔聖剣〕で一気になぎ払おう。


中級魔力ポーションはたくさん持ってる。魔力を使い切ってしまっても、どうにかなるはず。


「今から〔聖剣〕でなぎ払う! ソイフォルとケイディン、アギサは生き残った魔物に気をつけて!」


 また、剣に自分の持つ魔力をこめる。さっきよりもっと強く、強く……。


 剣はキィィンと高い音を出し始める。


 私はそれを横に、思いっきり振り抜く。


 放たれた光の刃は、今まで見てきた中で一番大きかった。三日月状の光の刃は(ドラゴン)のように進み、魔物たちを切り裂いていく。


 魔力:301/331 → 1/331


<経験値を入手しました>

<Lvが上がりました>


 魔力が尽きかけて体が少しふらつく。


「〔岩牙(ロックタスク)〕! 〔岩牙(ロックタスク)〕! 〔岩牙(ロックタスク)〕! ……」

 ソイフォルが残った魔物に向けて〔岩牙(ロックタスク)〕を乱発する。


 ケイディンが正面に立っている間に〔亜空間倉庫(インベントリ)〕から中級魔力ポーションを取り出して飲む。苦くてまずい液体がのどを通り過ぎる。


 魔力:1/340 → 211/340


「回復完了! みんな、行くよ!」

 全員がとび出していく。前に一気に進みながら、魔物を蹴散らしていく。

「ハァッ!」

「オラァッ!」

「〔光牙(ライトタスク)〕! 〔光弾(ライトバレット)〕!」

「〔治癒(ヒール)〕! 〔浄化(ピュリフ)〕!」


<経験値を入手しました>

<経験値を入手しました>

……


 もう何十体と倒した。〔亜空間倉庫(インベントリ)〕から取り出した中級魔力ポーションを飲み干す。これで魔力ポーションはもうない。


 魔族が向こうに見える。魔族と戦う前に魔力が減った状態で戦うことにならなかっただけよかった。


 魔族はこちらへゆっくりと歩いてくる。魔族の傍には4体の、かなり強い威圧感をだしている魔物がいる。


 魔族のゆっくりと歩いてくる。余裕が見てとれる足取りなのが不気味で、いかにも何か策や罠を持っていそうな感じだった。それを考えると、いきなり突っ込んでいくのはできなかった。


 飛び込めない私たちは、一か所に集まって陣形を組み、武器を構える。私たちと魔族の距離は少しずつ、少しずつ縮まっていく。

<〔魔纏〕と〔魔法剣〕について>

〔魔法剣〕...武器に魔力を浸み込ませ、切れ味、耐久性など、武器の能力をあげる他、スキル使用者の魔力の性質に応じて、特殊能力が付与される。例:地面に武器を突き刺すと、周囲の地面から武器の形をした炎が何本も突き出て、敵を貫く。


〔魔纏〕...邪法使い専用のスキル。武器の表面に魔力を纏わせ、切れ味を上げる。〔魔纏〕中はその魔力の部分が破壊されない限り、武器が破壊されることはない。また、ものを切るときに触れるのは魔力の部分なので、物理攻撃が全く効かない魔物に対しても有効。特殊能力は付与されない。

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