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陸地の鮫

 それは、土の身体を持つ鮫。

 大きく口を開けて襲い来る鮫をクロキが咄嗟に回避すると、鮫は再び地面に潜った。


 ブレイドの固有魔法シャーク・レイド。その場にある物質で鮫を作り出す魔法だ。鮫は自らを構成する物質の中を潜行することができる。土で生み出された鮫は、地面の中を潜り、そして――


「くっ……!」


 クロキが真上に跳ぶと、地面から鮫が口を開けて飛び出し、クロキに鋭い歯を見せつけた。

 クロキは鮫の鼻先を足で蹴り、さらに高く跳ぶ。これで鮫は落下し、再び地面に潜ることとなる。が、気を緩める間もなく、クロキの背後にブレイドが現れ、クロキに向かって剣を振るう。

 クロキは刀で受け、空中を落下しながら斬り合うと、ブレイドの蹴りがクロキのボディに命中した。


 クロキが咄嗟に落下地点を確認する。

 地面の状態、敵兵の配置、このまま落下して問題ない。と思いきや、鮫が地面から顔を出し、落下して来るクロキに向かって大きく口を開けた。

 このまま落下すれば、落下地点は鮫の口の中。


「……んなろうっ!」


 クロキは、右腕のガントレットからワイヤーを取り出して真上にいるブレイドに投げて巻き付けると、全力でブレイドを引き寄せた。

 思わぬ反撃にブレイドは対処できずにクロキの近くに引き寄せられ、今度は逆にクロキに蹴り飛ばされた。


「うぬ……っ!」


 絶妙なコントロール。蹴り飛ばされた方向には鮫の口。

 ブレイドは咄嗟にシャーク・レイドを解除し、鮫をただの土の塊に戻し、その土の塊に落下した。

 そして、再びシャーク・レイドを唱えようと、地面に擦れるほど低い位置から剣を振り上げようとしたとき、ブレイドの身体に巻き付いたワイヤーを高速で巻き取る勢いを利用し、クロキがブレイドの顔面に固いブーツの底を激突させた。


 クロキは着地を失敗しつつも直ぐに起き上がり、ブレイドに向かって刀を構えたが、ブレイドは鼻が曲がり、歯が折れ、顎が外れた状態で気を失っていた。


「クハハッ、相変わらずキレッキレだな!」


 カーディナルは敵兵の中心で鬼神のごとく暴れ回りながら、クロキの戦闘を見て、楽しそうに笑った。


「おい、余所見している暇はねえぞ」

「あん?」


 クロキの忠告にカーディナルが敵兵の集団に目をやると、ブレイド隊の陽動部隊がカーディナルを標的に定め次々と襲い掛かってきた。


「あんたと戦う方が、面白そうね!」


 露出の多い恰好で小柄な女――クッキーがカーディナルに接近し、巧みな足技で攻撃する。


「クハハッ、なりは小せえが、良い女じゃねえか」


 カーディナルは攻撃をかわすことも防御することもせず、全て受け、最後の強い一撃で地面に倒れた。


「カーディナル何をしているのですか、真面目にやらないのなら、クビにしますよ」


 仰向けに倒れるカーディナルを冷ややかな目でカルガナが見下ろす。

 その視線にカーディナルの股間が大きく膨らむと同時に、カーディナルの口角が大きく上がり、悪魔の様な笑みが浮かぶ。

 クッキーが追撃するためにカーディナルに接近すると、カーディナルが突然起き上がり、クッキーの頭部に頭突きを命中させた。

 クッキーの走る勢いを利用したカウンターと、ついでにネイセイヤーで頭部から衝撃波を流した。

 この一撃でクッキーは気絶し、動かなくなる。


「悪いな、お前も良い女だが、あいつとは比べもんになんねえ、クハッ」


 カーディナルは口元の血を腕で拭って敵兵を見た。


「次はどいつだっ、来いっ! 休んでんじゃねえぞ!」


 カーディナルの威勢に怖気づくマフダリ王国の兵士たちをかき分け、髪の毛からブーツまで、全身を緑色で身を包んだ男――グリーンバックライトが現れた。


「次は俺の相手をしてもらおう」

「クハハッ、何だお前、緑すぎて目がチカチカするな」


 カーディナルとグリーンバックライトのやり取りにクロキが口を挟む。


「何だ、そいつ、色付き(コロラト)のメンバーかと思っていたが、違うのか」


 カーディナルが答える。


「ああん? こんな奴知らねえよ、ただの緑マニアだろう。それより、色付き(コロラト)なら、本物がいるじゃねえか、お前の後ろに」


 クロキがハッとして身体を反らすと、ナイフが身体の上を滑る。

 直ぐに距離を取って相手を見ると、それは黒づくめで黒い仮面の人物であった。


「よう、久しぶりだなあランプ」


 カーディナルが声を掛けると、仮面の人物はフードを取りながら仮面を外した。


 幽霊のように青白い顔で細身の身体の男。

 地下闘技場で見かけた色付きのメンバー――ランプ。


「カーディナル、元気そうだな」

「お前は相変わらず死にそうな顔してんな」

「そうか? 元気なつもりなんだが……まあ、良い、さて、どちらを優先すべきか、アッシュさんもこれは想定外だろう」


 ランプはカルガナとクロキを見比べた。


「まあ、悩むだけ時間の無駄か、二人とも殺ってしまおう」


 ランプはクロキとカルガナの双方をターゲットに定めた。


「クハッ、カルガナを殺るなら俺も黙っちゃいねえぞ」

「ふん、お前の相手はそこの連中だ」


 ランプが言うや否や、カーディナルに向かってグリーンバックライトと陽動部隊を率いている老傭兵が攻撃を仕掛ける。


 カーディナルが二人の相手をする間に、ランプはカルガナに向かって走り出す。クロキは直ぐにランプの前に立ちはだかり、ランプを攻撃しようとしたが、ランプはクロキの行動を読んでいたかのように、クロキをナイフで斬りつけた。

 クロキは刀とガントレットでナイフを受けてから低く屈み、ランプの脚を払おうとしたがランプは後方に飛び跳ねてかわす。しかし同時に、クロキの後ろからカルガナが投げ飛ばした盾が飛んで来たため、ランプは両腕で盾をガードし、膝をつきながら着地した。

 その隙をついてクロキはランプに接近し、刀で斬り掛かる。ランプはナイフで受けたが、腕が弾かれ、露になった鳩尾に蹴りを受け、後ずさった。

 さらにランプの背後からカルガナの侍女が斬りかかったが、ランプは屈んで剣をかわすと、背後の侍女の脚を払って体勢を崩し、侍女にナイフを向けた。

 が、いつの間にか接近していたカルガナがランプのナイフを持った手を蹴り上げ、ナイフを弾く。と、ランプは素手となった手をカルガナに向ける。カルガナは咄嗟に盾で受けて後方に跳んで距離を取った。


「参ったな……」


 ランプの腕から血が滴る。

 先程の攻防でカルガナの剣がランプの腕を切っていた。


 クロキはカルガナの盾を見て目を細めた。

 黒い半透明のジェル状の液体が盾に付着している。

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