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待ち受けるヘザー

 クロキは死者の軍団との戦場に行くために使った馬を駆り、途中でテイラーを拾って、ヘザーの後を追った。


 周囲の景色は平原から森へと変わり、段々と森が深くなる。そして、世界樹まで後1時間程という所まで来たとき、突然馬がいうことを聞かくなった。


「どうした?」


 クロキが馬を止めて、周囲を見回す。

 と、森の中をかき分ける大きな音が響いたかと思うと、見上げるほどの大きさのサーベルタイガーが飛び掛かってきた。


「なっ……」


 クロキは咄嗟にテイラーを抱きかかえ、馬から飛び降りると、馬はサーベルタイガーの一噛みで首をへし折られてしまった。

 一瞬、クロキとサーベルタイガーの眼が合うと、サーベルタイガーがクロキに向かって前足を振り上げた。

 クロキは素早くかわし、サーベルタイガーの喉元を刀で斬る。

 巨大な体躯に相応しい分厚い筋肉に阻まれ、サーベルタイガーに致命傷を与えるまではいかなかったが、サーベルタイガーの注意を上手く引くことができ、その隙にテイラーが威力の高い稲妻をサーベルタイガーに直撃させ、昏倒させた。


 意識を失い動けなくなったサーベルタイガーの喉を、クロキは丁寧に掻き切って絶命させてからクロキは周囲の気配を探った。森の奥から獣の唸り声と草や枝をかき分ける音が微かに聞こえる。


「クロキ、ちょっと待って……パーセプション」


 テイラーが覚えたての魔法を唱えると、クロキとテイラーの感覚が研ぎ澄まされ、周囲の気配をより広範囲に、正確に知覚できるようになった。


「これは、大型の獣……いや、魔獣か」


 クロキがそう言ってテイラーを見ると、テイラーはうなずく。


「ここから先は、凶暴な魔獣の生息地みたいね」

「だが、ヘザーはこの先に行った。俺たちも行くしかない」

「そうね……じゃあ、もう一つ魔法を使うわ」


 と、テイラーが魔法を唱えると、聖なるオーラがクロキらを包み、付近の悪しき魔獣の気配が遠ざかった。


「光系魔法タリスマン。これでこの程度の魔獣は近づいて来ないわよ」

「すまない。だが、世界樹の近くは魔素が濃くてまともに魔法が使えないらしいが、さっきのライトニングといい、よく使えたな。それに、この魔法、いつ覚えたんだ?」


 クロキが聞くと、テイラーは自慢げな顔を向けた。


「凄いでしょ。ナイアの計らいで、城の人に色々教えてもらったの」


 テイラーが世界樹に行くことを知ったナイアにより、テイラーは城の魔術師から世界樹に近付くために必要な魔法――光系魔法のパーセプションとタリスマンを教わるとともに高濃度の魔素の中で魔法を使う訓練をしたのだ。


「よし、それじゃあ、先に進もう」


 クロキは刀についたサーベルタイガーの血を拭って鞘に納めると、先頭に立って歩こうとしたが、研ぎすまされた感覚がおぞましい気配を感知し、世界樹の方角を見たまま立ち止まった。

 テイラーも同じものを感知したのであろう、珍しく緊張が顔に浮かんでいる。

 おそらく、この気配はヘザーのもの。

 行くしかない。

 二人は決意を固め、世界樹に向かって進む。




「ああ……クロキ、遅かったじゃない」


 森が終わり、足元に無数の根が張り巡った場所に出た。クロキとテイラーの目の前には、天にそびえるバベルの塔の如き巨大な大樹――世界樹。そして、世界樹の根に抱きかかえられるように覆われた岩の上に、白いローブを身にまとったヘザーが、まるでクロキを待っていたかのように腰を掛けている。その脇ではケルベロスが地面に腹をつけて休んでいた。


「用は済んだのか?」


 クロキが聞くと、ヘザーは眠たげな眼で笑みを浮かべた。


「ええ、マーキングは終わったわ」


 マーキング……アトランティスでオリバーも言っていた。何の目的で、どのようなマーキングを破壊の七徒は世界樹に施しているのか。


 だが、そんなことよりも今やらなければならないことは、ヘザーの相手だ。

 用が済んだにもかかわらず、この場に残り、クロキを待っていた。

 ただ会話をしたいだけ、何てことはもちろんないだろう。


「あんた、クロキに何の用なのよ」


 クロキに代わってテイラーがヘザーに向かって言った。

 ヘザーの瞳が冷たく輝き、テイラーを睨む。


「あなた……クロキの何なの? なぜクロキと一緒にいるの? 私からクロキを奪うつもりなら、許さない」


 テイラーは思わず半歩後ずさった。だが、挫かれることなく言い返す。


「クロキを奪う、って、そもそもあんたの物じゃないでしょ」

「何を言っているの? クロキはこれから私の物になるのよ。それをあなたは横取りしようとしているんでしょ」

「い、意味が分からないわ……あんた、頭おかしいんじゃないの……?」

「頭がおかしいのはあなたの方よ……どうせ、私とクロキの関係に嫉妬しているんでしょ」


 テイラーは、ヘザーが何を言っているのか理解できず、ついに言い返せなくなった。

 するとヘザーはテイラーを睨みつけたまま、岩から飛び降りて地面に立った。


「やっぱり……言い返せないってことは、私が言っていることが正しいのよね。クロキ、あなたを縛る魔女は私が倒すわ。そして、あなたは自由になって私と一緒に行くの」


 ヘザーがクロキを見て微笑んだ。


「悪いなイカレ女、お前の話は後で聞いてやるから、とりあえず拘束させてもらうぜ」


 クロキとテイラーの第一の目的はヘザーの目的を達成させないこと。だが、ヘザーが目的を達成してしまったのであれば、拘束し、必要な情報を聞き出す。


「拘束……! クロキ、案外積極的ね、実はツンデレ?」

「言ったろ、ここでお前と会話するつもりはない」

「……やっぱり、そこの魔女に操られているのね……安心して、私が魔女を倒して、あなたを開放してあげるから」


 ヘザーが杖を振るうと、ケルベロスがテイラーに向かって駆け出した。

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