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絆、散って

「な、何が起きたのですか?」


 ヨシフは狼狽えた。

 セルゲイがゴーレムの状態を分析する。

 砲筒から火球を放とうとしたところで砲筒が爆発した。


「これは……砲筒に何かが詰まって……火球の行き場がなくなったのか?」


 そう、オーウェンは氷片を操作し、砲筒に詰めたのだ。

 しかし、砲筒が損傷したのも僅かの時間。ヨシフが念じると、直ぐに砲筒は修復され元通りとなった。


 その間にオーウェンはゴーレムの背後に回った。この巨体、背後は死角であるはず。

 と、思いきや――


「ちょこまかと……そこか」


 ゴーレムの上半身が180度回転し、背後のオーウェンを向いた。


「喰らえっ!」


 ゴーレムの胴体のガトリング銃から氷の弾が連射され、近距離でオーウェンを襲う。

 オーウェンは直ぐに自分が乗る氷の板を操作し、ガトリング銃の射線から離れたが、身体にかすり、軍服が破け、血が流れた。


「なるほど、そういうのも有りですか」


 オーウェンはいたって冷静。ゴーレムの戦力を分析し続けながら、甲板スレスレの低空を飛行し始めた。

 ゴーレムは上空からオーウェン目掛けて急降下すると船に激突し、船を大きく破壊した。


 オーウェンは動きを見切ってかわしたが、船の破片を全て回避することはできず、一旦氷の板から投げ出されるも、空中で再び氷の板に乗ることに成功し、ゴーレムから距離を取ろうとした。しかし、セルゲイが魔法を唱えると船全体が形を変え、船から細い枝が伸び、オーウェンを捕えようと触手のようにオーウェンを追い掛ける。


 オーウェンは回避し続けていたが、枝の本数が増え続け、ついに逃げ場がなくなった。

 なんとしても捕まるまいと、オーウェンが枝を回避することに気を取られる間に、ゴーレムの頭部が変形し、大きく口が開いた。


「エレメンタル・バースト!」


 ゴーレムの口から高威力の魔力の光線が発射された。

 直撃すれば、いや、触れただけで致命傷は免れない。オーウェンは咄嗟に氷片を集めて巨大な分厚い氷の盾を作り出した。

 光線と氷の盾が衝突すると、氷の盾は少しずつ溶け、そしてついに粉々に砕かれ、光線はそのまま上空へ、雲を斬り裂き、彼方へ消えた。


 何とかエレメンタル・バーストを防ぐことに成功したオーウェンが甲板に着地しゴーレムを見ると、ゴーレムは船と合体し、さらに巨大な姿へと変貌していた。


「ふはははっ、さらに強力となったゴーレムにどうやって抗う。そろそろ観念しなさい」


 セルゲイがそう言うと、キールとヨシフも笑った。

 オーウェンは溜息をついて、いつの間にかレンズにひびの入った眼鏡を中指で上げた。


「いや、確かに素晴らしい魔法です。大変良い経験になりました」


 遂に諦めたか、とセルゲイらは思ったが、オーウェンは片手で槍をゴーレムに向けた。


「もう少し堪能したかったのですが……悔しいですが、手加減をして勝てる相手ではないと認めましょう」

「なに? 今何と?」


 セルゲイは思わず聞き返した。勝てると言ったように聞こえたが、間違いではないか。

 だがオーウェンの表情は、敗北を受け入れた表情とは程遠い、確信に満ちた表情。


 セルゲイの一抹の不安をよそに、キールは船と一体化したゴーレムを動かした。


「我らがゴーレムの力、受けて見ろ!」


 大きく腕を振り上げ、オーウェンに向かって振り下ろす。

 しかし、キールの意志に反して急に腕の動きが鈍くなり、ついには操作が利かなくなり落下するように甲板上に拳が落ちた。


「どうしたというのだ、これは。セルゲイ様、一体何が起きているのですか!」


 キールがセルゲイに聞くと、セルゲイは既にゴーレムの状態を分析し始めていた。

 ゴーレムの身体に大きな損傷はない。三人の魔法も十分機能している。ではなぜ突然動かなくなったのか。

 セルゲイはなかなか原因を判別できずにいたが、しばらくしてようやく気付いた。

 ゴーレムの身体を構成する木の隙間という隙間に氷の破片が入り込んでいる。そのためにゴーレムの動きが鈍くなっているのだ。


「……いつの間に、このような……」


 セルゲイが声を絞りだす。

 オーウェンはゴーレムから目を離さず、その身体の中に入り込ませた氷片の操作に集中しながら答える。


「さあ、いつからですかね……そのボディがいくつもの木材を組み合わせていると気付いたときから、でしょうか」


 つまり、始めからであった。

 オーウェンはインフィニティ・オン・ハイを唱えた直後からゴーレムを構成する木材と木材の隙間に少しずつ氷片を入り込ませていた。


「ヨシフ、燃やせ、溶かせ!」

「は……しかし……」


 木製のゴーレムを火で包めば、当然燃える。炭化してしまえばセルゲイの土系魔法でコントロールすることはできない。だが、この状況を打開するには、ゴーレムを火で包み、内部に入り込んだ氷片を溶かすほかない。


「素材はまだある、表面が使い物にならなくなったくらいならば支障はない」

「そうです、ヨシフさん。我らがこれまで受けた苦難を考えれば、火の熱さなど耐えられましょう」


 キールも覚悟を決め、ヨシフを促す。


「分かりましたぞ、少しの辛抱、耐えてくだされ! フレイム……んなっ!」


 ヨシフは氷を解かすため、魔法を唱えようとしたが、途中で止めてしまった。

 オーウェンがため息をついて言った。


「素晴らしい絆ですが、いささかやり取りが長い。その間に、勝敗は決しました」


 ゴーレムのコクピットとも言える、胴体内に造られたセルゲイらのスペースまで氷片が入り込んでいた。


「い、いかん、溶かしている暇はないっ……これで決めるしか、ない……エレメント・バスター!」


 セルゲイが叫ぶと、再び頭部が変形し、大きく空いた口から魔力の光線が放たれようとしたが、最早遅い。

 内部に入り込んだ氷片が集まり氷柱となり、狭いスペースで身動きができない三人を突き刺した。


 オーウェンが腕を降ろすと、ゴーレムの身体が崩れ、セルゲイら三人の姿が露となった。

 キールは胸元に氷柱が突き刺さり即死。ヨシフは腹部に氷柱が突き刺さり、息はあるものの大量の血を流し、長くは持たないだろう。

 そして、セルゲイは――


「はぁ……はぁ……ま、まだ終わってはいませんよ」


 右腕から激しく流血し、動かせない様子だが、立ち上がりオーウェンを睨む。


 咄嗟に自身のコクピットの内部の木を操作し、致命傷を避けていた。

 だが、最早戦う力は残っていない。三人の合体魔法アーキテクツの核となるセルゲイの消費魔力はほかの二人とは比較にならない。ましてや、オーウェンに対抗するため、船全体と合体するという荒業も使った。セルゲイの魔力はほとんど残っていなかった。


 オーウェンが接近し、セルゲイに槍を振るう。

 セルゲイは左手の剣で槍を受け止めようとしたが、弾き飛ばされる。


「ぐっ……ま、だまだぁっ!」


 諦めずに闘争心を燃え滾らせるセルゲイ。そんなセルゲイを見てオーウェンは眼鏡を上げた。


「合理性で動く冷酷な指揮官かと思っていましたが、案外熱いところがあるとは……少しあなたのことが好きになりました」

「そんなことはどうでも良い……まだ終わっていませんよ、早く、決着を……っ」


 セルゲイは脂汗を流しながら蛇の様な顔で笑った。

 オーウェンは一瞬でセルゲイと距離を詰めると、その身体に槍を突き刺し、一気に振り上げた。

 オーウェンの上着にセルゲイの血が飛び散る。


「お……見事……です」


 セルゲイは消えゆく声でそう呟くと、前のめりに倒れ伏した。


 オーウェンは動かなくなったセルゲイを見下ろした後、周囲を見回し、超長距離砲カタストロフィを確認すると、カタストロフィに槍の穂先を向けた。

 カタストロフィに真上に大きな氷の塊が現れ、さらにその塊にインフィニティ・オン・ハイの氷片が集まっていき、氷の塊がさらに大きくなってからオーウェンは落下させ、カタストロフィを破壊した。

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