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三位一体アーキテクツ

「氷徹のオーウェンにそう言われるとは、光栄ですね。それに、確かにあなたの眼鏡は私も気になっていました。よろしければ、どちらで購入されたのか聞いてもよろしいですか?」

「ほう、やはり、ファッションセンスについては気が合いそうですね……それで、何を時間稼ぎしているのですか?」


 オーウェンが眼鏡を上げるとキラリと眼鏡が光る。

 と、セルゲイの蛇の様な口から笑みが零れる。耳元まで避けたように見えた。


「今さら気付いても遅いですよ。準備はできました!」


 セルゲイが腕を上げて指を鳴らした。


 メリメリメリ……


 キールの足元の甲板が上に向かって盛り上がったかと思えば。キールの足元から巨大な木の塊が現れ、その中にキールを取り込んだ。


「三位一体アーキテクツ、タイプ・ゴーレム!」


 キールを取り込んだ木の塊から腕と脚が生え、甲板の上で立ち上がる。


 全高約5メートルの木製のゴーレム。


 ゴーレムの胸元が開け、キールが顔を出す。


「覚悟!」


 ゴーレムの背後の煙筒から風が吹き出し、その風を出力に、巨大な体躯に合わぬスピードでゴーレムは動き出し、オーウェンに向かって腕を振り下した。

 オーウェンは回避したが、想像を超える勢いに僅かにバランスを崩した。


「キール、行くぞ!」


 後方でヨシフが叫び両腕のナイフをゴーレムに向けて魔力を込めると、ゴーレムの右腕からはオーウェンに向かって火炎が放たれ、左腕は氷が覆い、氷の刃を形成した。

 ゴーレムが風の力を利用し上空に跳び上がり、オーウェンに向かって氷の刃を振り下ろすと、軍船が切断される。

 オーウェンは回避したが、やはりその威力に空中に放り出される形となった。


「今だ、増やすぞ!」


 セルゲイが叫びながらゴーレムに腕を向けると、ゴーレムにもう一対腕が生え、やはり右腕から火炎を吐き出し、左腕からは水流を放った。

 オーウェンは体勢を崩しながらも空中で水を纏った槍を盾のように回転させて火炎を防いだが、横から水流の直撃を受け。吹っ飛ばされた。

 さらに、ゴーレムは腹部を展開すると腹部からガトリング銃のように氷柱を撃ち出しオーウェンを追撃する。


「くっ……スプラッシュ!」


 オーウェン目の前で水柱が発生し、氷柱を防ぐ。オーウェンは着地すると直ぐに走り出したが、ゴーレムはオーウェンの動きに合わせて身体の向きを変え、オーウェンに向かって氷柱を撃ち続けた。


 オーウェンは走りながら気付いた。ゴーレムの氷の刃で切断された船が歪ながらも再びくっついている。おそらくセルゲイが魔法によって木材を操作したのだろう。ゴーレムへの対抗策として海に落とす方法も考えていたが、それは困難と悟り、作戦から消した。


 オーウェンは氷柱を回避しながら逆にアイス・ニードルを唱え、ゴーレムに氷柱を命中させたが、ゴーレムはビクともしない。


「ならば……術者を討つまで!」


 オーウェンは急角度で方向転換すると、セルゲイに向かって行きつつ、槍を持っていない方の手で水の刃――ウォーター・スライサーを放った。

 セルゲイは剣で水の刃を切り払うと、接近して来たオーウェンの槍を剣で受け止めた。オーウェンは蹴りでセルゲイを吹っ飛ばすと槍の穂先を向け、セルゲイに向けて水流を放ち、セルゲイを水流に巻き込み甲板に叩きつけた。

 そして追撃しようとしたところでゴーレムが真横に現れ氷の刃を向けてきたため、ゴーレムの攻撃を回避しつつ、距離を取り、倒れるセルゲイに向かってアイス・ニードルを唱えた。


「ヨシフ、合身するぞ!」


 セルゲイがそう叫ぶと。甲板の木材がセルゲイを包み、アイス・ニードルからセルゲイを守る。と、オーウェンがヨシフを見ると、ヨシフもまた木の塊に包まれている最中であった。


「これは……?」


 オーウェンが警戒する。同時に今後の展開を予想しようとしたが、オーウェンが予想を立て終わる前に目の前で結論は出た。


 キールのゴーレムと、セルゲイとヨシフの木の塊が1つとなり、さらに大きなゴーレムになったのだ。


 全高約10メートル。胸にメイン操縦者のキールの顔が見えるのは変わらないが、ゴーレムの本体を維持するセルゲイと、火系魔法と水系魔法を担当するヨシフもその内部に取り込んでしまったため、術者を倒してゴーレムを作る魔法――アーキテクツを解除するという作戦は不可能となった。


「この形態となったからには、勝ち目はありませんよ」

「この魔法でどれだけの軍隊を、城を壊滅させてきたか知れない」

「さあ、行くぞ、氷徹のオーウェン!」


 セルゲイ、ヨシフ、キールが次々と吶喊し、オーウェンに向かってゴーレムは突撃した。


「もう少し手の内を見たかったのですが……やむを得ません。インフィニティ・オン・ハイ」


 オーウェンが両腕広げると、周囲の気温が一気に低下した。

 ゴーレムの中の三人は周囲の変化に気付かぬまま、肩の砲筒から火球を撃ち出し、腕の氷の刃でオーウェンを攻撃した。

 が、オーウェンは少し走ったかと思うと、上空に向かって跳び上がる。


「何だと!?」


 セルゲイが驚くのも無理はない。

 オーウェンが空中を飛び回り始めたではないか。

 見ればオーウェンは、氷片を集めて作った氷の板に乗っている。

 ゴーレムは腕を振り回し、肩の砲筒から火球を放ち、胴体から氷の塊を連射したが、オーウェンは全て回避する。


「セルゲイ様、飛びます!」

 キールが叫ぶと同時にセルゲイがゴーレムの背中に羽根を作り出すと、キールの魔法によってゴーレムは空中に浮かび上がり、肩の砲筒から火球を放ちながら飛び回るオーウェンを追いかけ始めた。


「なるほど、こんなこともできると……それは少し邪魔ですね」


 オーウェンは氷の板で空中を飛びながら、ゴーレムに腕を向ける。そしてしばらくすると、ゴーレムの両肩の砲筒が爆発した。

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