誰と結ばれるのか、エンディングは如何に
私の気持ちは……私が望むエンディングは……
やっぱり私は、推しカプをくっつけたい!!!
私の推しカプは、「SALT」のメンバー、悠太くんと大我くんのシンメコンビなんだ。可愛らしい悠太くんと天然俺様で実は優しい大我くんのほっこりコンビが推しだから。
会長を探さなきゃ。会長に会いたい、会って想いを伝えたい。
手当たり次第に会長を探す。校内の会長が居そうな場所を走り回る。
生徒会室の前、落ち着いて深呼吸する間もなく扉を開ける。そこには、副会長様だけが居た。
「あ、悠太くん。どうしました?息を切らせて……」
「会長、居ますか」
「え?会長ですか?会長なら今さっきどこかへ出て行きました」
「分かりました。ありがとうございます。」
生徒会室から出ようとすると、副会長様に呼び止められた。
「会長のところへ行くんですか」
「……はい」
「……どうして」
「会長に会って、話したいことがあるんです」
副会長様の目を見て真剣に話す。
「悠太くん、僕はあなたのことが好きです」
副会長様がぽつり、ぽつりと悲痛な表情で話しはじめた。
「最初に会った時からずっと。一目惚れでした。本気で好きなんです。」
「副会長様……」
「はじめてなんです。こんなに何でか分からないくらい惹かれてるのは。」
「……」
「なんで、会長なんですか」
なんでだろう。推しカプだから?それもあるけど、本当は……。
「自分でも、不思議なんです」
「え?」
「でも、会長に会わなきゃ、会って気持ちを伝えたい。無性にそう思うから。行かなきゃならないんです」
「そうですか……」
「受け入れてくれるかは、分からないんですけどね……」
それじゃ、副会長様から離れ、再び生徒会室と扉を開ける。
「きっと、うまくいきますよ」
「副会長様……」
「大丈夫だから、早く行ってください」
「……はい!」
会長を探す。闇雲に走り回る。行くあてもないけれど、とにかく全力で探し回る。
何故か寮の会長の部屋に来ていた。ここに行けば会長に会える、そんな気がした。
「やっと来たか」
ドアを開けた会長が優しく微笑む。
え?大我くん、いや、会長、今なんて言った?
「お前は俺を選ぶだろうと思ってた」
「え?え?」
「ほら、俺に何か言いたいことがあるんだろ?」
「えっと、その……」
私は、会長になんて伝えたい?なんで好きになったのか?
私は、推しカプだからってのもあるけど、それ以前にもっと、もっと、単純な話で、会長の側にいたい。
「好きです」
「……」
「会長といると、心が落ち着くというか、会長と居なきゃ駄目なんです。」
「ありがとう、よく言えたな」
会長がこちらに近づく。
「俺も、悠太のことが好きだ」
これで、晴れて会長と結ばれ、エンディングだろう。小説は完結だ。そう考えていると、会長が俺の手を握る。
「でも、お前の居場所はここじゃないんだ」
「え?」
次の瞬間、視界が真っ暗になった。
寮の部屋に居たはずなのに、家具も何もない、真っ暗の空間が広がっている。
「えっ、これなに」
「小説は無事に完結したみたいだね」
「葉山くん!?」
「おめでとう、作戦は成功だね」
どこからともなく現れた葉山くんが消えていく。
「悠太くん、これはあなたが自分で決められた、結末ですよ」
「副会長様!」
「これからも頑張ってくださいね」
何が起きているのか分からない。ただ、頷くことしかできない。
会長がやってくる。優しい笑みを浮かべたまま。
「会長……」
「お前がいる世界はここじゃない、ちゃんと居場所があるはずだ」
私の、居場所……。
私が元いた世界だ。あんなにいたくなかった、地獄の日々。それでも、ここにいるべきじゃない。
「私、帰らなきゃ」
そうだ、私は現実に帰らなきゃ。現実に帰って、やらなきゃいけないことが沢山ある。
暗闇から光が差し込む。無性にそこに惹かれている自分がいた。確信はないけれど、多分元に戻れる。
「また、絶対に会えるから」
去り際に何かが聞こえたが、振り返っても、もうそこには誰もいなかったのだった。