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出会いを増やそう作戦

葉山くんに相談して協力してもらえることになり、色々と作戦を練った。二人とも真剣に、様々な案を出し合い、解散したのは日付を越えてから。


そして、いざ作戦を実行に移す週明けの放課後がやってきた。


「とりあえず、手当たり次第に声を掛けていくこと!分かったら食堂とか図書館とか会った人みんなと話して行こう!」

「う、うん……」


その作戦とは、出会いを片っ端から作りだすことだ。


展開がないから生み出せばいい。でも、その糸口が今は見つからない。


だから、どうすればエンディングに持っていけるのかを探して行こうという考えにたどり着いた。



「まずは食堂だね……って言っても、僕達以外だれもいない……」


放課後だから当たり前に食堂に来るはずもなく、そもそも放課後の食堂を描いているシーンがないから出会う人もいない。


「ここでご飯食べてても仕方ないし、次行こう!」


次にやってきたのは、図書室だった。さすが一流高校なだけあって、その広さと蔵書数は尋常じゃない。


「でも……また人いないね……」

「うん……」


君が悪いほど静かだった。通常ならいるはずの図書委員も、学生も、見当たらず、シーンとした図書室と廊下が広がっている。


「やっぱり、展開のしようがないのかな……」

「う〜ん」


人が居なければ作戦の実行も出来ず、困っていると、葉山くんのスマホが鳴った。


「はい、はい……分かりました。すぐ行きます」


途端に真剣な表情になる葉山くん。少し焦っているようだ。


「ごめん、椎名様から呼び出されたから、ちょっと行ってくる。多分会議かも」

「うん、分かった」

「でも、どうする?今日はもう作戦、できそうにないよね……」


葉山くんが申し訳なさそうに言ってくる。


「大丈夫!まだ考えはあるから!一人で実行してみるよ」

「本当?」

「うん、だから気にしないで」


そう言って葉山くんを見送った。




「あれ、特待生くんじゃん〜。こんな所で何してるの?」


とはいえどこに行けばいいか分からず、困り果てた私はひとまず生徒会室に来ていた。来たはいいものの、入ろうか戸惑っていると、会計の莉人くんが声を掛けてくれた。


「あ、先輩、おはようございます。」

「まだみんな来てないはずだけど〜、よかったら入んなよ」


お言葉に甘えて、中に入る。


「特待生くん……じゃなくて〜悠太くんはさぁ、学校慣れた?」

「あ、はい、慣れました。相変わらず校舎の広さには戸惑いますけど……」

「そっか〜いっつも椎名が話題に出してたから、気になっちゃって」


副会長様が?


「え?俺のことですか?」

「そうだよ〜。いっつもいっつも悠太くん悠太くんって。あんなに楽しそうな椎名、滅多にみないよ」


確かに副会長様はよく心配をしてくれる。気にかけてくれてるとは思っていた。


「副会長様って優しいんですね」

「え?違うと思うよ」


それってどう言う意味なのか、そう聞こうとしたら、莉人先輩に腕を掴まれていた。


「悠太くんが椎名のお気に入りだからでしょ」

「は?」

「ねぇ、椎名とどこまで関係持ってるの?」

「何、言ってるんですか?」

「もう抱かれた?それとも付き合ってんの?」

「何もないですから、離してください。」


莉人先輩に掴まれた腕がびくともしない。身体を拘束され、身動きが取れなくなっていた。


「俺さぁ、人のもの取るの大好きなんだよね〜」

「やめて下さいって……」


逃げなきゃと思ってもびくともしない。体格があまりにも違いすぎる。泣きそうになっていると、生徒会室の扉が開いた。


「莉人、その辺でやめておけ」

「大我先輩……」

「あ〜あ、邪魔が入っちゃった」


生徒会長の大我先輩がいた。


「莉人、お前のところの親衛隊が呼んでたぞ。」

「まじ?じゃ〜、ちょっと行ってくるわ!」

「あぁ」


「またね、悠太くん」


莉人先輩は去り際にそう言って行った。


「あの……」

「あいつは素であんな感じなんだ。悪い奴じゃないんだけど」


会長は、自分の席に着いて書類を整理しながら落ち着いて話す。


「助けてくれて、ありがとうございます。」


そう言うと、照れくさいのかこちらを見ないまま、


「気にするな。」


とだけ言った。大袈裟に気にかける訳でもなく、かと言って放っとかれる訳でもない、絶妙な距離感が心地よかった。


「よかったら、お茶でも飲みませんか?俺、淹れてくるんで」


そう言うと、少しだけ驚いて優しく微笑んだ。


「あぁ」


この学園の歴史、とか最近見た映画とか、おすすめのお菓子とかいろいろと話が尽きない。


会長と過ごす時間は、今まで体験したことないくらい穏やかで、不思議とずっと昔から一緒にいるような気持ちになった。


(はじめてちゃんと喋るのに、なんでだろう……)


それから気が付けば辺りがすっかり暗くなるまで、長い時間話し込んでしまっていた。

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