第80話 希望チーム結成
亜美が奈々美を味方につける事を読んでいた希望は、先手を打っていた。
☆希望視点☆
ようやく、亜美ちゃんが本気で私から夕也くんを奪うと宣言した。
ここからが本当の勝負だ。 多分夕也くんの中ではまだ、亜美ちゃんへの気持ちが燻っているはず。
亜美ちゃんの出方を窺っている余裕はなさそうだよ。
私は、奈々美ちゃんに呼ばれて緑風へ来ている。
話の内容自体は、予想していた通りのものだった。
「ごめんなさい希望」
「ううん、大丈夫だよ奈々美ちゃん」
奈々美ちゃんは全面的に亜美ちゃんのサポートをしたいという事。
それに対しての私への謝罪。
わかっていた事なので、私は特に怒りを覚えたりすることはなかった。
こうやって正直に話してくれた奈々美ちゃんを責めたりできない。
「本当にごめん。 私、あんたに恨まれても仕方ないわよね」
「ええっ?! そんな、恨んだりなんてしないよ!! 何言ってるのよぅ」
そんなことで、恨んだり嫌いになったりするような浅い仲じゃない。
奈々美ちゃんにだって今まで色々助けてもらったし、感謝してる。
「ありがとう希望。 頑張んなさいよ」
「うん、話してくれてありがとうね」
私達はその後は、この事には触れずに世間話やバレーボールの話をして、緑風を出た。
奈々美ちゃんが、亜美ちゃんの味方をするだろうっていう事はわかっていた。
だから、私は私で先手を打って味方になってくれそうな人に相談しておいたのである!
◆◇◆◇◆◇
9月22日の日曜日。
私は私の協力者の家におじゃましている。
「と、言うわけで予想通りの流れになったよぅ」
「ふむふむ。 こっちも希望ちゃんの予想通り、亜美ちゃんがこの間相談に来たよん」
そう! 私の協力者、紗希ちゃんである! 恋愛の師匠である紗希ちゃんを味方につけて、私は亜美ちゃんと戦うよ!
「でも、よく私のとこにも相談に来るってわかったねぇ?」
「こういうドロドロとした恋愛は、経験者の紗希ちゃんに相談する方が良いって私も思ったからね」
「なるほどぉ。 ナイスだね!」
「亜美ちゃんには、なんて言ったの?」
「正直に話したよー? 私は希望ちゃんの味方だから、亜美ちゃんの相談には乗れないの。 ごめんなさいって」
「そっか……ごめんね? 亜美ちゃんに恨まれたりしたら私の所為だね」
恋は戦争だって、紗希ちゃんに相談した時に教えてもらった。
周りの人を巻き込むのはあまり良いとは言えないけど、一人で亜美ちゃんに勝つ自信はない。
「だいじょぶだよー? 亜美ちゃんね『そっか、うんわかったよぅ! 希望ちゃんの事は紗希ちゃんに任せるからお願いね』って、逆に頼まれたぐらいだもん」
ボケねこさんをぎゅっとしながら、その時の亜美ちゃんの様子を話してくれた。
亜美ちゃんってば、本気になっても私に甘いんだなぁ。
基本的に、私や周囲の友人達の関係にひびが入ったりする心配は無いのかもしれない。
「私はこれからどうしたらいいのかなぁ」
「とりあえず、恋人のアドバンテージをどんどん使って行くべきだと思うよー?」
「やっぱりそうだよねぇ。 デートしたりできるのは私の大きなアドバンテージだよね」
「そうだね。 スタート時点で恋人って状態は、既に勝ってるも同然だから気負わずに今のまま確実に進んでいくのがベストだよ」
「うんうん」
「具体的には、さっさとえっちしてしまうといいよ」
「え、えええ、えっち……」
付き合ってる以上はそういう事をいつかするんだろうけど、まだ心の準備が出来てないんだよねぇ。
付き合い始めてまだ1ヶ月半だし、早いんじゃないかなと思ってもいる。
「恥ずかしがってる場合じゃないよー? 亜美ちゃんはもうそっちではアドバンテージあるんだからさぁ」
「あ、亜美ちゃんのアドバンテージ?」
「だって、亜美ちゃんは今井君とえっち済ませてるじゃん」
確かに、亜美ちゃんは私と夕也くんが付き合う以前に一度えっちをしたことがある。
それが亜美ちゃんのアドバンテージ。
「そのアドバンテージを早めに無くしてしまうに越したことはないよ? 亜美ちゃんは間違いなく今井君を寝取りに来るよ?」
「ね、寝取り……」
そんな大胆な作戦を亜美ちゃんが取るとは……いや、ありそうではある。
亜美ちゃんに迫られたら、夕也くんはコロッと亜美ちゃんとえっちしちゃうかもしれない。
「まぁ、今井君を信じて今のままゆっくり行くでも良いとは思うけど、常にそういう可能性があるって事は覚えておいた方が良いよー? 今井君だって男の子だし、えっちさせてくれない女の子より、させてくれる女の子の方が良いと思うだろうし」
「はぅ……」
「そこの判断は希望ちゃん次第だけどねー」
とても難しいところだね。
私だって、夕也くんとえっちする事自体は吝かではない。
でも、いざ考えるとちょっと怖い。 まだ私の方が覚悟が決まらない。
「それと、もう1人協力者を作ろう」
「もう1人?」
奈央ちゃんか遥ちゃんってことかな?
1人とも恋愛経験という意味ではあまり豊富とは言えないと思うけど。
「いるじゃん? 亜美ちゃんの事が好きで、今井君とくっついて欲しくないと思ってる男の子が」
……!
「春人君!」
「その通り!」
確かに、亜美ちゃんと夕也くんがくっつくのは何としても阻止したいはずだ。
協力者になってくれる可能性は十分にある。
「春人君に話してみるよ」
「そうしなそうしなー。 彼にどんどん、アタックさせて亜美ちゃんの気をそっちに向けさせるのよー」
「外側からも攻める!」
「イエス!」
「よぉし頑張るよ私!」
「またいつでも相談乗るよー」
そうと決まれば早速春人君を呼び出してお話だよ!
◆◇◆◇◆◇
私は、紗希ちゃんの家を出てすぐに春人君に電話をして、緑風で待ち合わせることにした。
春人君は私に協力してくれるだろうか?
「お待たせしました」
「あ、ごめんね? わざわざ来てもらっちゃって」
「いえいえ。 それでどうかしたんですか? 夕也じゃなくて僕を呼ぶなんて」
「うんと、実はかくかくしかじかで」
「わかりません」
「だよねぇ」
ということで、ここ最近の出来事をちゃんと説明した上で、協力しないかの提案をしてみた。
「利害は一致しているという事ですね?」
「うん、どうかな?」
「どうして、わざわざ亜美さんを焚き付けたんです? そんな面倒な事をして、希望さんには何一つ得は無いでしょう?」
もっともな質問だ。 はたから見ればただのバカでしかないだろう。
でも私は、こうやって亜美ちゃんと本気の勝負をずっとしたいと思ってた。
ちょっと私がズルいせいで遅くなったけど、やっとそれが叶ったのだ。
亜美ちゃんには幸せになって欲しいと思ってはいるけど、私だってもう譲らない。
「うん、そうだね……春人君にも迷惑かけちゃってごめん。 でも、こうやって亜美ちゃんと夕也くんを取り合うのは、私の願いだったから」
「ふむ……理解しがたいですけど、こうなった以上は手を組んだ方がいいかもしれないですね。 わかりました、これからは協力していきましょう」
春人君は手を差し出してきた。 私はその手を取り、握手を交わした。
これで、私と春人君は協力関係という事になる。
「私は夕也くんとラブラブで居続ける為に頑張るよ!」
「僕は、亜美さんをアメリカに連れて行くために頑張ります」
なんだか大袈裟なことになってきたけど、大丈夫だよね?
夕也くんを亜美ちゃんには渡さないよぉ!
紗希と春人を味方に付けた希望。
亜美と希望の戦いはどうなる?
「希望ですっ! 春人君と手を組む事は考えてなかったよ! 紗希ちゃん頭良い! 続きが気に鳴るよ! 希望ちゃん可愛い! という方はブックマークや評価をお願いします! 私もブックマーク評価しないと!」




