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第77話 希望の幸せ

希望の言葉に亜美は困惑。

希望が遂に亜美に自分の想いを語る。

 ☆亜美視点☆


 夕ちゃんが部屋を出て行ってから、希望ちゃんと話しを続けていた。

 夕ちゃんは私を忘れるために、私との結婚式体験の写真を片付けたらしい。


「早くしないと手遅れになるよ?」

「え?」


 手遅れ? どういう意味?


「わかるでしょ? 夕也くんは、亜美ちゃんを忘れて私だけを見てくれようとしてるんだよ?」

「そ、そうだね。 良かったじゃない?」

「そりゃ、私はね」


 そう言うと希望ちゃんは、話しが長くなりそうだからと椅子に座った。

 目は真剣だ。

 体育祭の時に私に宣戦布告してきた、あの真剣な顔をしている。

 これは怒っている時の希望ちゃんだ。


「ど、どうしたの急に?」

「怒ってるの!」

「な、なんで?」

「亜美ちゃんがあまりにものんびりしてるからだよ」


 のんびりって……。

 何の事を言ってるのかさっぱりわからない。

 希望ちゃんは何に怒っているの?


「えっと?」


 希望ちゃんは可愛いタレ目を目一杯吊り上げて私を睨んでいる。


「亜美ちゃん、夕也くんの事好きなんだよね? だから春人君の告白を断ったんでしょ?」

「う、うん。 そうだよ」


 その通りだ。 私は夕ちゃんが好きで好きで仕方ない。

 だからこそ、今は春くんの告白は受けなかった。


「春人君の事は今は置いておくよ? 夕也くんの事好きならどうして何もしないの? どうしてのんびりと私と夕也くんが仲良くなっていくのを見てるの?」


 な、何を言ってるのこの子は?


「そんなの、夕ちゃんと希望ちゃんが恋人同士だからに決まってるじゃない。 私が今更しゃしゃり出たって──」

「私はいつでも奪いに来て良いって言ったよね? 亜美ちゃんだって、夏休みの間に色々考えたんでしょ? 私に覚悟しといてねって言ってたじゃない?」


 どんどんヒートアップしていく希望ちゃん。

 奪いにって言われても、私はまだ希望ちゃんと戦う覚悟なんてできていない。


「それが何? 好きなのにお互い距離作るようなことして? 夕也くんに忘れられたらもう終わりだよ?」

「お、終わり……」

「そうだよ? そうなったらもう、後は私と夕也くんがどんどん先に進んでいくのを、指を咥えて見てることしか出来なくなるんだよ?」


 そ、それはそれで、私の願いでもある「希望ちゃんの幸せ」が盤石になるから別に……。


「大体、希望ちゃんは何を考えてるの? 私を焚き付けて恋敵にして何がしたいの? 私が夕ちゃんと二人で密会してるの知ってて何も言ってこない。 本当に夕ちゃんの事好きなの?」

「好きだよ! 愛してるよ! 亜美ちゃんに負けないくらい!」

「だったら、私に構わずに夕ちゃんとどんどん進んでいけばいいじゃない」


 本当に何がしたいのかわからない。

 恋敵を増やすことに希望ちゃん側のメリットは何もない。

 

「私は……」


 希望ちゃんは黙って下を向いてしまう。

 

「良いじゃん、今のままで。 私はゆっくり進むよ。 いつかそのうち、希望ちゃんの恋敵になるかもしれないよ? その時、夕ちゃんが私なんかどうでもよくなってなければだけど」

「ダメだよ……そんなの……」

「ダメって……希望ちゃんはそれで幸せになれるんじゃん」


 その言葉を聞いた希望ちゃんが、急に涙を流し始めた。

 肩を震わせて涙を流しながら、それでも表情は怒っている。


「幸せ?」

「そうだよ。 希望ちゃんは夕ちゃんと一緒にいれば幸せでしょ?」

「幸せだよ、もちろん」

「じゃあ、いいじゃない? 私もそうなってほしいから希望ちゃんの応援を続けてきたんだよ?」

「自分の気持ちを押し殺してでしょ?」


 それはそうなんだけど……。


「亜美ちゃんにとって、私の幸せって何?」

「え? それは、将来夕ちゃんと結ばれて……」

「それだけ?」


 希望ちゃんは相変わらず涙を流しながら椅子から立ち上がり、私を見下ろす。


「違う……私の幸せはそれだけじゃないよ」

「え? じゃあ他に何が欲しいの? 夕ちゃんだけじゃ足りないの?」

「もう欲しい物なんて何もないよ! 全部……全部、亜美ちゃんがくれたじゃない!」


 バッと私に抱き付いて、泣きじゃくる希望ちゃん。

 希望ちゃんの涙が私の服を濡らしていく。

 全部……上げた?


「希望ちゃん?」

「私……幸せなんだよ?」

「それは、好きな人と両想いになれたから……」

「それだけじゃないよ……」


 私に抱き付いたまま、言葉を続ける希望ちゃん。


「私が実の両親を失って、お爺ちゃんの家に引き取られるってなった時のこと覚えてる?」

「うん……」


 希望ちゃんはここに残りたいと言ってそれを拒否した。


「嫌がった私を見て、亜美ちゃんは『私に任せて!』って言って、私のお願いを聞いてくれた。 おかげで今でも私はこの街に残れて皆と一緒にいられる。 幸せだよ」


 そう言って、私から離れて一歩下がる。

 涙を拭いてさらに言葉を続ける。


「塞ぎ込んでた私に、毎日毎日声を掛けてくれて夕飯も作ったりしてくれて元気づけてくれた。 こんなに良いお姉ちゃんが出来て凄く幸せ」


 私が今までして上げた事を一つ一つ挙げては「私は幸せだ」と私に諭すように話していく希望ちゃん。


「今まで、ちゃんと言ってあげなくてごめんね……私、どこかで亜美ちゃんに負けたくないって思ってて……私がこんなに有利な状況なるまで引っ張って……ずるい女の子だよね?」


 希望ちゃんは止まらない涙をぬぐいながら、言葉を紡いでいく。


「夕也くんの事が無くたって、私は凄く幸せなんだよ? 亜美ちゃんが私を幸せにしてくれたの」

「のぞ……みちゃん……」


 私の視界も涙で歪み始めていた。

 そっか、私はちゃんと希望ちゃんを幸せにできてたんだ。


「私の為に自分の気持ちを押し殺してきた亜美ちゃんには、凄く恩を感じてる。 だから亜美ちゃんに幸せになってほしいと思ってるの」

「だから私と夕ちゃんを?」

「もちろん、簡単に譲るつもりなんてないよ? 私の幸せの一つであることには変わりはないから」


 希望ちゃんは涙を拭いて、キリッとした目をこっちに向けた。

 強い意志を秘めた目。

 これから、私と本気で戦うと決断した女の目だ。


「亜美ちゃん、誕生日にくれた『何でもお願いを聞いてくれる権」ってまだ有効だよね?」


 希望ちゃんの誕生日に、お金が無かった私が上げたプレゼントだ。

 来年の希望ちゃんの誕生日まで有効なその権利を「ここぞで使う」と、希望ちゃんは言っていた。

 今がその時だと、希望ちゃんは判断したのだろう。


「うん、有効だよ」

「じゃあ、今から使うね?」


 希望ちゃんは目を閉じて大きく息を吐いてから、お願いの内容を口にした。


「亜美ちゃん、お願い。 もう私の為に自分の気持ちを押し殺して生きていくのはやめてください」


 私はそれを聞いて、深く頷く。


「亜美ちゃんは、自分の幸せの為に生きてください」


 もう一度頷く。


「私の、恋敵(ライバル)になってください」


 希望ちゃんのお願い……まさかこんな風にあのプレゼントが使われることになるとは思ってなかった。

 けど、もういいんだ……私はやっと。


「うん……わかった」


 今度は私から希望ちゃんに抱き付いて涙を流す番だった。


「私、希望ちゃんから夕ちゃんを奪ってみせる。 私だって好きな人と結ばれたい」


 私はやっと、呪縛から解放されたんだ。



 ◆◇◆◇◆◇



 しばらくの間二人で泣き合って、お互い泣き止んだところで意志の再確認をされた。

 本当にこれからは遠慮しないのかと聞かれ、私は迷わずに頷いた。

 もう、私も迷わない。


「ここからの私は本気だよ? しっかり夕ちゃん掴まえておかないと、あっさり持って行っちゃうよ?」

「ふふん、私結構リードしてるもん! 恋人だよ恋人。 幼馴染とはわけが違うよ」


 踏ん反り返って偉そうに言う希望ちゃんはやっぱり可愛い。

 恋人というアドバンテージを持っている希望ちゃんは正直言って強敵だ。

 特に今の夕ちゃんは、希望ちゃんを第一に考えていこうとし始めたところだ。


「えっちもまだなくせに」


 ここは私が持ってる武器で勝負するしかないけど……。


「そんなのいつでもできるもんっ!」


 そうなのである……。 夕ちゃんとえっちの経験があることは、特に大した武器にはならない。


「ふふ、楽しい。 こういうのがしたかったんだよ私」

「ごめんね、私バカで」


 希望ちゃんは「本当だよ」と苦笑いした。


「私も、今更になってこんなこと言って。 ずるいよね」

「良いハンデだよ」

「ほう、言うねぇ」


 私と希望ちゃんは固く握手を交わして笑い合うのだった。

 ここからは私も遠慮しないよ。

 夕ちゃんも希望ちゃんも覚悟してもらうよ!


 

希望の幸せは既に叶っていたいたことにようやく気付いた亜美。

もう迷わず、希望と向き合うことを誓うのだった。

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