第62話 夏祭り前夜
春人がやって来てから早二週間が経過。
夏祭りを翌日に控えた今井家では?
☆亜美視点☆
──亜美の部屋──
私は、ベッドで寝転がりながら最近の事を思い出していた。
春くんが夕ちゃんの家に来てから、二週間が過ぎた。
この二週間で、私達はプールや市内の方へ遊びに行き、親睦を深めた。
希望ちゃんもすっかり慣れたようで、いまでは普通に春くんと話したり出来るようになった。
私はというと、たまに春くんの部屋にお邪魔して、アメリカでの生活や、文化の違いについてのお話を良く聞きに行っている。
「そんなことしてるから、夕ちゃんや希望ちゃんが勘違いするんだろうなぁ」
春くんは、あんまりそういうの意識してないと思う。
どこか大人びているところがあるし、私みたいな子供っぽい女の子は眼中にないのでは?
もしかしたら、アメリカに彼女がいるかもしれないし。
「精々私は、良い友達って感じかな?」
コンコン……
不意にドアをノックする音が聞こえてきた。
この控え目なノックは、多分希望ちゃんだ。
「どうぞー」
ドアを開けて入って来たのは、やはり希望ちゃんだった。
「そろそろ、夕飯作りに行こ?」
私はスマホで時間を確認して、既に良い時間になっていた事に今頃気付いた。
「そだね、行こっか」
ベッドから起き上がり、スマホと家の鍵を持って部屋を出た。
◆◇◆◇◆◇
──今井家ダイニング──
今日の夕飯はエビフライだ。
春くんが加わり4人で食卓を囲む。
「夕也、明日は夏祭りなんですよね?」
「ん? おぅ、そうだぜ。 駅前の辺り一帯が賑わうんだ」
「楽しみだなぁ」
と、希望ちゃんは夕ちゃんの方を見て、にこにことしながら言った。
希望ちゃんは特にそうだろう。
何せ今年は恋人と一緒なのだから。
「夕ちゃんは希望ちゃんと二人で回るんだよね?」
「え? 皆さん一緒じゃないんですか?」
「春人、ちょいと空気読みたまえよ?」
「そうだよ春くん。 恋人同士、二人で回りたいに決まってるじゃん」
「わ、私は別に楽しければどっちでも……」
「ダメッ!」
「はぅ」
全くこの子は!
「では、奈々美さんと宏太も?」
「うん、二人で回るって」
「それは寂しいですね……僕は亜美さんと二人ですか?」
「ううん。 あともう二人、私の部活の仲間が一緒だよ」
バレー部売れ残り三人衆である。
うわわ、何か胸にグサッと来るね。
「亜美さん達はバレーボール部でしたっけ?」
「うん、明日は皆揃うから、紹介するね」
「はい、お願いします」
春くんは、ぺこりと頭を下げる。
礼儀正しいというか堅苦しいというか……。
そういう風に教育されたんだろうなぁ。
と、考えていると希望ちゃんから話を振られた。
「そうだ、亜美ちゃんは明日浴衣着るの?」
「浴衣?」
確かに持ってはいるけど、別に着なくていいかなぁ?
「亜美さんの浴衣姿、僕は見たいですね」
「え? そう? じゃあ着ちゃおうかなぁ?」
私は案外ちょろいのかもしれない。
「亜美ちゃん、見てくれる男の子いて良かったね?」
「あはは、そだね」
「ふーん……」
夕ちゃんは少し面白くなさそうだ。
また、嫉妬してるのかな?
「良いじゃん別に。 夕ちゃんは希望ちゃんの浴衣姿をじっくり見れば」
「じ、じっくり見られるんだ……」
「言われんでも穴が開くぐらい見てやるわ!」
「穴開けられるんだ……」
いやいや、例えだよ希望ちゃん。
「奈々ちゃんも浴衣だって言ってたね」
「奈々美ちゃん身長あるし、スタイル良いし似合うんだよね」
私もスタイルには自信あるんだけど、いかんせん身長がね。
奈々ちゃんと紗希ちゃんは本当モデルでも通用すると思う。
「希望さんや、奈々美さんを独占出来る夕也と宏太は、幸せ者ですね」
「まぁな」
「はぅー」
希望ちゃんは赤くなって縮こまってしまった。
まだ、夕ちゃんとの事でイジられるのは慣れないみたいだ。
◆◇◆◇◆◇
食事を終えて、私と希望ちゃんはキッチンで洗い物中。
私が洗い終えた食器を拭きながら、希望ちゃんが話しかけてきた。
「ねぇ? 本当に私と夕也くんと一緒に回らなくていいの? 私、夕也くん説得してあげようか?」
「また、そんなこと言って。 せっかくのお祭りデートじゃない? 変な気を遣わなくてよろしい」
「はぅ、わかった」
まあ。気を遣ってくれるのはありがたいけどね。
今一、夕ちゃんの彼女としての自覚が足りてないような気がするよ。
私達は、ササッと洗い物を終えて、夕ちゃんに一言だけ声を掛け、家に戻った。
──清水家亜美の部屋──
「うーんと、あったあった。 浴衣ー」
一人で何やってんだろ私。
私は浴衣の状態を確認して、一応着てみる。
紺色ベースに、所々にカラフルな水玉模様を散りばめた少し地味目の浴衣。
「うん、大丈夫そう」
ちゃんと入ることも確認して、そのまま脱ごうかと思ったところで、ふと思い留まる。
「そうだ!」
私はスマホを手にして、夕ちゃんにメッセージを送信し、ベランダへ出た。
最近、ベランダは私と夕ちゃんの密会のスペースみたいになっていた。
少し待っていると、夕ちゃんの部屋の窓が開いて、夕ちゃんが姿を見せる。
「何だよ今日は?」
「じゃーん!」
「おう? 浴衣か?」
「明日着て行くやつだよ。 夕ちゃんに特別に先行で見せてあげる」
私はその場でゆっくりと回る。
「どう?」
「相変わらず可愛いな、お前は」
「ありがと。 明日は向こう着いたら自由行動でバラバラになるし、ゆっくり見れないでしょ? 今の内に良く見ておいてね」
「あぁ、穴が開くぐらい見てやるよ」
「どぞ、ほらほら、こっちおいでよ?」
私は手摺りから少し離れて、夕ちゃんのスペースを空けてあげる。
夕ちゃんは手摺りを越えて私の部屋のベランダへやってきた。
「こんな密会してるとこ、希望ちゃんに見られたら大変だねー?」
「あー、何か気付いてるみたいだぞ」
「えっ? バレてるのこれ? やめた方が良いかな?」
「別に良いんじゃないか? 何も言わないぞ希望ちゃん」
「そ、そうなの?」
密会を黙認してる? 余裕なのかなんなのか分かんないけど、無用心だなぁ。
「近くで見ると尚可愛いなお前」
「そう? ちょと照れるなー」
夕ちゃんに「可愛い」って言ってもらうのは嬉しい。
いつでも、どんな格好しても「可愛い」って言ってくれる。
語彙力不足は否めないけど、それでもそんな優しい夕ちゃんが大好きだ。
「夕ちゃんっ」
私は夕ちゃんの胸に顔を埋める。
「おっ? どうした?」
「……少し甘えたくなった。 嫌なら言ってね?」
久しぶりに夕ちゃんに抱き付いた気がする。
「別にちょっとぐらいなら構わないぞ」
「うん……じゃあ、ちょっとだけこのままでいさせて」
「はいはい」
時間にすれば十数秒だったかもしれない。
それだけでも十分だ。
夕ちゃんから離れた私は、いつもの世話焼きな姉に戻る。
「明日は、希望ちゃんの事お願いね?」
「あぁ、わかってる」
夕ちゃんに任せておけば心配無い。
「甘えさせてくれてありがとね」
「こんなんで良いならいつでも言えよ」
「希望ちゃんに悪いよ」
「そら違いない」
「希望ちゃんは夕ちゃんに甘えてる?」
「二人の時は割とベタベタだぞ」
うーん、あまりイメージ出来ないけど上手くいってるんだね。 感心感心。
「さて、満足したし今日は解散しよっか?」
「勝手な奴だなぁ、お前は」
「あはは、ごめんね。 おやすみ夕ちゃん」
「あぁ、おやすみ」
挨拶を交わしてお互いの部屋へ戻った。
浴衣からネグリジェに着替えて、寝る事にした。
ピロリンッ
「希望ちゃんからメッセージ?」
そこには「仲良さそうだね? 私、嫉妬しちゃうよ」と書かれていた。
「ベランダの会話、希望ちゃんの部屋にも聞こえるんだ……」
私は「ごめん」とだけ返信して、眠りについた。
「やほほー紗希でぇす。 亜美ちゃん、まだ今井君に未練ありまくりねー? これからどうなってくんだろ? 次回からは夏祭り回! 奈々美のとこと希望ちゃんのとこ、んで、亜美ちゃんと新顔君のとこの3視点でお送りします! 良かったら読んでね! あれ? 私と裕樹視点はないの?」
続き気になる、これから読んでやってもいいと、とりあえず作者は頑張れ、という方は評価ポチッ、ブクマポチポチッ、感想かきかきお願いします><
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